一昔前は(今でもかな)高画素=高画質な印象があったはずです。僕が高校生の時、クラスメイトの二人が持っている携帯(ガラケー)の写メ機能について本気で競い合っていた・・・というかほぼ喧嘩状態でした。「俺のケータイの方が上や。だって画質がX万画質やからな。それに比べてお前のは・・・」みたいな喧嘩ですね。
確かに画素数が大きいと高画質な絵が取れる気がする。僕もそう洗脳されていた一人かもしれません。実際に「画素数 高画質」などで検索していただくとわかりますが、画素数=高画質でないことがわかります。ブロガー兼フォトグラファーの意見の傾向として、高画質 = 大イメージセンサー(撮像素子)が謳われているようです。綺麗な写真を撮りたかったら、イメージセンサーの大きいものを買ってくださいねー、でもイメージセンサー大きいものは高いよー、と。
画素数は数字です。企業も宣伝しやすいわけですね。100万画素より200万画素でしょ。200万画素より1000万画素でしょ。1000万画素より5000万画素でしょ。みたいに。ある雑誌によると画素数は1200万〜1600万画素あれば十分に綺麗な絵が撮れるとのこと。さあ実際のところどうなんでしょ。いろいろネット検索しながら、これまで読んできた雑誌や書籍の内容をまとめると(個人的な見解も多分に含まれます、すいません)良い絵を撮るためには次の5つの要素が重要だとわかってきました。
解像力
解像力は写真の細部をどれだけ綺麗に再現できるかを左右します。似た言葉に解像度があるんですけど、これは画素数のことです。カメラ初心者や同級生の右谷君と高台君が気にしていたX万ピクセルとかX万画素とかいうアレです。イメージセンサーの大きさはほぼ決まっていますから、そこにたくさんの受光部品を並べれば(100万画素なら100万個並べる)、まるで朝7時台の山手線のようにギューギュー詰めになります。当然一人あたり、いや受光部品1つあたりの面積は小さくなります。逆に画素数が小さければ、今度は札幌の東西線のようにゆったりとした面積を確保できます。実際にプロ用に制作されたカメラは、アマチュア用のハイエンドに比べて低画素な場合がよく見受けられます。どうやら小さなイメージセンサーにもかかわらず、そこにたくさんの受光部品を並べようとすると、お互いの距離が近いためノイズを発生させるようです。ノイズのある写真は、綺麗とは言えません。
色再現
「あのメーカーは緑が弱いよね」という会話を家電量販店で聞きます。なるほど、人の肌、青空、木々の緑に関しては特に違いが出るようです。いざ色の再現度合と言っても、僕たちが目で見ているものをそのまま復元しても、それを心地よいと感じかどうかは別の話です。キャノン・パナソニック・フジは人間の記憶色を重視していると言われており、健康な人間が見ればおそらく美しいと思われる部分を誇張したり鮮やかしたりして表現しているようです。一方、コニカミノルタやニコンは再現性を重視しており、被写体の持つ色をそのまま表現するよう設計されているそうです。いわば、心地良さvs性格さ、みたいなもんですね。
高感度
高感度(ISO)には2つの役割があります。1つはブレ防止。もう1つは夜間撮影。暗い場所や光の足らない場所でも、それなりに被写体を見えるようにする技術ですね。ただし高感度が高いほどノイズが入るので、高ければ高い方が良いというわけではありません。僕の使っているGH4は、暗い場所でも確かにISOをあげれば被写体が見えるようになるんですけど、ちゃんとノイズが入っています。おそらく多くの人は多少被写体が暗く見えたとしても、ノイズは入らないでほしいと思うのではないでしょうか。GH4を含め、比較的高価な一眼レフやミラーレスは画像処理が優秀で、暗い場所でもISOが1600までくらいであれば綺麗に写るようです。少なくともデジカメやスマフォと比べた場合、その差は歴然です。とりあえず覚えておきたいのは、高感度と画質はトレードオフということです。センサーに入ってきた少ない光をアンプするわけだから、アンプが強ければ強いほどノイズも増幅されます。つまり絵が汚くなるわけです。
ダイナミックレンジ
フィリピンのカタンドアネス島は日差しの強い場所です。定期的に変えると、例外なく一度や二度ほど脱皮します。そのくらい日本人の肌にはダメージの強い光なんです。ある日、息子がバナナ食べている様子を逆光でスマフォで撮ろうとすると、あまりの彼の黒さに驚きました。いわゆる黒つぶれですね。日本人の子供ですからそれほど黒くはないだろうと肉眼で確認すると、やはりそんなに黒くありませんでした。僕にはバナナの黄色と子供の肌色がしっかりと見えました。でもスマフォはそれが見えていない。そうそう、人間の目が持つダイナミックレンジに比べて、スマフォのダイナミックレンジは小さいんですね。人間の目は強いシグナル(逆光)と弱いシグナル(息子とバナナ)の両方を捉えられるんだけど、スマフォにはそれが難しいようです。ダイナミックレンジはこの強いシグナルと弱いシグナルの比を表します。最大値と最小値の比を表すとも換言できます。
まとめ
某有名メーカーの社長さんがエンジニアのトップに繰り返し質問したようです。「高画質ってなんだ?」って。最初は「リアリティの追求です」とか答えていたんだけど、何度も質問されるうちに、もう少し深い哲学的な部分まで考える必要があると思ったそうです。そうやって絞り出された答えが「高画質って、感動のこと」とのこと。富士山に登頂した際、感動しますよね。そこにたどり着くまでのシンドサを思い出し、痛い足を労わりながら、富士山の空気を肺に吸引します。その一連のプロセスに「感動」が凝縮されています。その感動をテレビというエンターテイメントマシーンでどれだけ再現できるか。その感動の再現度合いが画質の良さを決めるのだと。なるほど・・・。仮にノイズがあったとしても、被写体の臨場感やエモーショナルな部分を伝えることができれば、それが高画質と言える”かも”しれないですね。