どうも石崎です。
ある競艇場の優勝戦を見ようと思いました。現代人はやりたいことがあればキーボードを叩きます。御多分に洩れず、僕もググりました。
カタカタカタカタ。
きょうてえ
Enterをタンっと勢いよく叩きます。
Boat Race Webが検索結果の第一位に。おお、いつから日本モーターボート協会は競艇をボートレースと片仮名に変えたんだろうか。若年層を取り込もうったって無駄さ。僕は小学生の頃から三国競艇場に通いつめていたんだから。ファンファーレもモダンなものに変えなさって。僕は気落ちしているだからね。1レースから3レースまでが2連複だけだった時代を懐かしむこの頃です。あら、マニアック。
検索結果の第二位は「ぼっけえ、きょうてえ」という書籍タイトルのAmazonページが。あ、「きょうてえ」って検索してた。興味本心でクリック。いきなり怖そうな絵。ずっと夢の中でも追いかけてきそうな女性の絵でした。間髪入れずに購入。内心ドキドキ。500円の商品を買ってこんなにドキドキしたのは初めてです。
溜まっていた税金関係の仕事を放り投げて、カウチの上で読書を開始。集中したいので、Ed Sheeranの音楽を消します。窓を開ける。冷たい風が入る。急に足裏の冷たい温度を認知しました。くっつけられた。良い本に出会うと、こーゆープロセスがよく起こるんです。
結局「きょうてえ」と検索した時点で僕はハメられていたんです。一気に読破。ちなみに、ぼっけえは岡山地方の言葉で「すごい」という意味。程度の大きさを表す「すごい」です。きょうてえは「恐てえ」。そう、むっちゃ怖いって意味。
これ、寝る前に読むとトイレ行けなくなります。僕は怖かったので、隣にいる赤ちゃんを起こして一緒にトイレについてきてもらいました。そんくらい怖かった。
僕ら割とホラーが好きで、Netflixのサスペンス・ホラー系は見尽くしてしまいました。嗚呼なんて暇な大人たちなんだろう、アラサーの夜。はっきり言って、海外のホラーは怖くない。最近怖かったのはinsidiousの1と2。3は怖くなかった。いずれも日本のホラーには勝てません。なんたって、日本人は呪いますからね、相手を。(僕も何人のビジネス競合&元同僚を呪ったことか。ふふふ)
村上春樹さんや、桜木紫乃さん、山田詠美さんの小説を呼んだことのある人は、僕の文章が彼らから多大な影響を受けているのを感じたかもしれません。自分では意識していないんだけど、やっぱり文体は感染します。僕もハルキスト(春樹ファン)から指摘されてはじめて気付いたのです。
例えば情景描写。東野圭吾さんは一文一文が短く、行間を読ませないほど丁寧に情景を記述します。村上春樹さんの場合は行間すらありません。文章を追っているうちに、確実に「これ私のために用意された一文だ」と勘違いしてしまう。どこができっと経験したであろうことを、上手に記憶から引っ張り出される。今も世界のどこかで、そうそう!という相槌を打つ人がハルキストになっていくんだと思います。
今回読んだ「ぼっけえ、きょうてえ」。僕の頭のどこに、これほどの怖い記憶が蓄積されていたんだろうと疑うほど、おどろおどろしい映像を再生してしまいました。引っ張り出されたのは、5歳の記憶。家中の電気をつけて一人でトイレに行き、手を洗わずに猛ダッシュで寝室へ戻る。「ほんとあんた怖がりやねぇ」と言いながら母親が電気を消していた、あの記憶です。
きっとこの本を読まなければ、死ぬまで再生されることのなかった記憶です。
文字を飯の種にしている人間が、ここにきてもう一度、文字の威力に圧倒されました。ノルウェイの森を読めば次の二週間は寝込んでしまうほど、文字に影響されてしまう。自分で文字を書いて免疫を作ってきたはずなのに、ここにきてまた文字に打ちのめされている自分がいるんです。
アメリカ留学をしていた時に仲良くなったジョリーという同い年の女性がいます。彼女はコロンビア人で、僕なんかよりも数倍英語が上手です。もちろんスパニッシュも喋る。なんと日本語も喋る。日本語は若干僕の方がうまい。
そんなジョリーの夢はホラー作家になること。ジョリーのお父さんはいつも家族に暴力を振るったそうです。母親が家を飛び出す時に、銃口を向けた父の顔を今でも思い出すらしい。話し終えるといつもこう言います。だからホラー作家になりたいの。
これ、当時は意味がわかりませんでした。村上龍さんの「すべての男は消耗品である」の中にも、義理の父からレイプされた子供は小説家になるかレズビアンになるしか救われる方法はないとありました。これもやはり意味がわからなかった。
でも今なら、なんとなくわかります。
あなたは分かりますか。
ヒントをあげましょう。
書いたら大人になるんです。
石崎力也拝