続妄想日記。
前回の療養計画を覚えていますか。村上春樹さんが旅情という言葉を素敵に使いこなすもんだから、勝手に感化されて3回も文中に使ったぜ。そんな感じの締めだったはず。
出国日に近づくほど鬱値が低下していくんだけど、今回は風邪も引いたせいで一向に回復しない。プチ鬱なんて言葉を使う人間はどうせ鬱なんかじゃないんだけど、気持ちよくない日が続いているのは事実。憂鬱な日が続いています。北陸地方は雨が多いのです。強制的引きこもりです。
未来のこと妄想して元気になっていいですか。美味しいご飯を食べるでもなし、素敵な音楽をきくでもなし、美人な女性と交差するでもなし。ただ文章を書いて元気になるんだから、いかに人間は精神の生き物かってシミジミ思いますね。ということで妄想します。ただしこの妄想は過去の記憶をベースにして作られた妄想なので、8割型実現します。今から話す内容も、目的地にテロリズムが起こらない限り或いはテクノロジー集団が近代化を進めない限り、まず間違いなく実現します。だって去年行った場所なんだから。去年は一昨年と変わらず同じ旅情でした。(あ、また使った)
カタンドアネス島にはVIRACという空港があります。これが唯一の空港。ニノイ・アキノ国際空港から月、水、金に1本ずつフライトがあることは既に述べました。
乗客には2パターンあります。行くフィリピン人と、戻るフィリピン人。僕のような外れ値(外国人)は統計上全く意味をなさないので除外して結構です。
あぁ都会の暮らしに疲れたわ。そんなマダムが2割。ロハスを愛する若者が2割。リタイア層が1割。これがカタンドアネス島に行くフィリピン人。アッパーミドル特有の落ち着いた都会人です。
残りの半分は地元に戻るフィリピン人です。真っ黒に日焼けした子供が機内を走り回ります。そいつと、そやつの親はまず間違いなく戻るフィリピン人です。SMモールのロゴがプリントされたビニール袋を両手に抱えている人たちも戻るフィリピン人。
そして僕。先進国に住む私は普段からクロックス履いてますよみたい雰囲気をだして実は旅行のために新調しただけで、靴擦れ起こして血が出ているジャパニーズは僕です。ABCマートの店員はもう信じない。普通にシューズ履いてくればよかった。
空港について痛そうにしていると、客引きが声をかけてくる。アンニョン。ちげーよ、俺はジャパニーズだ。こんにちはって言え。いててて。
レッスン1。カタンドアネス島には韓国人の旅行者がいるらしい。
客引きが続ける。
お前、血出てるけど大丈夫か。病院行くか。
なんでだよ。ただの擦り傷じゃん。
お前、ホテルあるのか。
あるよ。
どこだ。
言わない。
言え。
言わない。
言え。
俺ん家来いよ。
なんでだよ。
そんなやり取りを笑いながらしていると、戻るフィリピン人がバンドエイドを取り出して僕に渡してくれる。ありがとうを言おうとしたら、しゃがみ手当を始める。医務室から取ってきたアルコールをかけて、ガーゼで巻き巻きしてる。
え、靴擦れですけど。
レッスン2。カタンドアネス島の人たちは優し過ぎる。
はい、10ペソ。あ、金とるのね。
レッスン3。優しさの裏には金が隠れている。
・・・。これらレッスンは全て実話に基づくものです。今回は新しいクロックスを既に用意してあります。1ヶ月前から履いて慣れておく必要があります。血でも出したら客引きが「俺ん家こい」と言ってくるので気おつけて!
サラマー。
石崎力也拝