あなたはヨーロッパへの海外移住に憧れを持ちながらも、実際の現地の生活がどのようなものか不安を感じていませんか。「世界で最も自由な国」や「美しい運河の街」といった表面的なイメージだけで移住先を決めてしまうと、後から取り返しのつかない後悔をするかもしれません。せっかく時間とお金をかけて移住したのに、想像していた生活と全く違ってストレスを抱えるのは避けたいはずです。ここでは僕がオランダに5年間住んだ末に、なぜそこを去ってポルトガルへ移住することを選んだのか、その7つのリアルな理由について紹介します。
移住先の国を選ぶ時、多くの人はネットのポジティブな情報ばかりを集めてしまいがちです。しかし実際に住んでみなければ分からない「違和感」や「閉塞感」というものが確実に存在します。美しい景色が人工的すぎることへの息苦しさや、予測可能な単調な日々の連続など、住んでみて初めて気づくリアルな感情があります。ここからは僕自身がオランダという国で感じた、海で泳いでいると思ったら実は水槽の中だったという特有の違和感や、退屈すぎる生活の実態について詳しく解説していきます。
海ではなく水槽の中を泳いでいたことに気づいたオランダ生活
オランダでの生活を表現するのに、これほど的確な言葉はないと感心した表現があります。それはあるオランダ人が英語のQ&Aサイトで書き込んでいた「広い海を泳いでいると思っていたけれど、実は管理された水槽の中で泳がされていたんだ」という言葉です。オランダで数年間暮らした僕にとって、この表現はまさに自分自身が心の中で抱えていた違和感を完璧に言語化してくれたものでした。この「水槽の中」という感覚は、日常生活のあらゆる場面で顔を出します。

例えばオランダで電車に乗っている時、その違和感を強烈に感じます。車窓からはどこまでも平坦で同じような風景が延々と続き、駅に近づくと街が現れます。しかし驚くべきことに、その街を構成しているパーツがどの街に行っても全く同じなのです。僕はデン・ハーグという街に住んでいましたが、隣の街に行ってもデン・ハーグをそのままコピペしたような街並みが広がり、さらにその隣の街に行っても同じコピペの景色が続きます。街全体がまるで精巧に作られた人工的な箱庭のように感じられるのです。
現在僕が住んでいるポルトガルの場合、ポルトからリスボンまで電車や車で移動すれば、景色は目まぐるしく変化します。険しい坂道があり、緑豊かな山があり、視界が開けて美しい海が見えることもあります。自然の起伏と多様性がそこにはあります。しかしオランダの風景にはそういった予測不可能な変化が一切ありません。世界で最も自由な国に見えて、その実態はすべてが政府や巨大な組織の完璧な管理下に置かれた、巨大な実験室のような息苦しさがあるのです。
オランダの売春やマリファナが合法であるという事実を指して「自由な国」と評価する人もいます。しかしそれは決して野生の自由ではなく、管理者の監視下で許された範囲内で行われる「管理された自由」に過ぎません。すべてが計算され尽くした安全で便利な国である一方で、そこには人間が本来持っているはずの野生や予測不可能なエネルギーが入り込む余地がありません。この完璧すぎる管理社会こそが、僕がオランダを去る決断をした根本的な理由の1つです。
予測不能な自然が1ミリも存在しない典型的な人工物の世界
オランダには本物の自然が存在しないという話をすると、現地に住んでいる人から「いや、オランダにもちゃんと自然はあるよ」と反論されることがあります。しかし彼らが「自然」と呼んでいるものは、行政によって綺麗に刈り込まれ、完全に管理された公園のような森のことです。木々が不自然なほど一直線に等間隔で並び、その間を車がまっすぐに走れるような場所を、彼らは自然と呼んでいるのです。しかしそんな光景は、どう考えても人工的に作られたものでしかありません。
僕が日本にいた頃、新潟県の苗場や神楽スキー場の近くに住んでいたことがあります。その周辺を車で走れば、アスファルトの道路は生い茂る木々や地形を避けるようにして、くねくねと曲がりくねっていました。自然の力強さの前に人間が妥協して道を作っているからです。しかしオランダの道は、自然を完全にコントロールし、ただひたすらに一直線に伸びています。「自然っぽく見せかけられた典型的な人工物」がどこまでも続く風景に、僕は次第に嫌気がさしていきました。

僕が考える本物の自然とは、今住んでいるポルトガルの海のような場所です。ナザレの海では20階建てのビルに相当する巨大な波が打ち寄せます。そこまで極端でなくても、ライブカメラで「今日は波が小さいな」と思って海へ行ってみると、実際に海に入った瞬間に溺れそうになるほど強烈な波の力に引きずり込まれることがあります。画面越しでは絶対に分からない、予測不可能で圧倒的な自然のパワーがそこには存在しています。
オランダの美しく整備された運河や公園は、最初の1週間はまるでおとぎ話の天国のように綺麗に見えます。しかしその真新しさが消えると、毎日同じルートをぐるぐると泳がされているような強烈な退屈さが襲ってきます。自然の脅威や予想外の出来事が排除された世界は、安全であると同時に信じられないほど単調です。僕はそんな人工的な環境に、これからの人生の貴重な5年、10年という時間を費やしたくないと強く思うようになりました。
カオスを去勢された管理社会と海外移住の本当の醍醐味
海外移住をする人というのは、そもそも安全で予測可能な日本の生活を飛び出し、ある程度の「カオス(混沌)」を求めて異国へやって来ているはずです。日本にいれば、お金がなくなっても安いスーパーの半額シールを狙ったり、どうにかして生き延びる方法が手に取るように分かります。しかし海外に出れば、言葉も通じず、税金の書類の読み方すら分からないという圧倒的なカオスに放り込まれます。僕自身、オランダに移住した直後は消費税の申告漏れでいきなり5,000ユーロの罰金を科されるという予測不可能なトラブルを経験しました。
そうしたトラブルも含めて、最初はすべてが新鮮で刺激的でした。しかしオランダに1年も住むと、この国のシステムがすべて見えてしまったのです。自分の人生の3年後、5年後、そして10年後が、全く同じことの繰り返しになるという未来が明確に予測できてしまいました。1年間のうち半分は暗くてどんよりとした冬が続き、午後2時には日が沈み始める。そして周りの人々の機嫌が悪くなっていく。この単調なサイクルが永遠に続くのかと気づいた時、強い絶望感に襲われました。
人間には生きていく上で、多少の予測不可能なカオスや野生の感覚が必要です。オランダの社会は、その人間の野生を完全に去勢してしまうほどシステマチックに管理されています。一方で現在のポルトガルでの生活は、移住して2年目になりますが、まだまだ分からないことだらけで心地よいカオスが残っています。自分で問題を解決し、自分で目標を設定して突き進んでいく余白がポルトガルにはたくさん用意されているのです。
海外移住の醍醐味とは、予測不能な環境の中で自分自身の力で問題をクリアしていく過程にあります。オランダのすべてが用意された豪華な環境は、僕にとっては刺激のない退屈な監獄のように感じられました。もちろん管理された安全な環境が好きな人はオランダが合っていると思います。しかし僕のように、未知のトラブルや自然の脅威に立ち向かいながら自分を成長させたいと願う人間にとっては、オランダの完璧すぎる管理社会は息苦しいものでしかありませんでした。
人工雪の室内スキー場で気づいた自分が本当に求めていた経験
僕がオランダを去る決断をした感情的な理由の1つに、「雪」に関する強烈な違和感があります。僕は石川県の金沢出身で、冬の寒さには耐性があります。しかし僕の人生において、厳しい寒さと美しい雪は常にワンセットでした。金沢でも、北海道でも、マイナス20度になるシカゴにいた時でさえ、寒い日には必ず雪が降っていました。しかしオランダの冬は、ただただ底冷えするほど寒いだけで、雪が全く降らないのです。この「雪のない寒さ」に僕は強いショックを受けました。

どうしてもスノーボードがしたくて、デン・ハーグからバイクで30分ほどの場所にある「スノーワールド」という室内スキー場の年間サブスクリプションを家族全員で契約しました。年間3000ユーロも払って人工雪のゲレンデを滑るのですが、そこには地形の変化も、コブも、壁もありません。昨日と今日のコンディションは全く同じで、節約のために雪はカチカチに凍っていました。その単調な人工ゲレンデを滑っている時にふと「俺は一体ここで何をしているんだろう」と強烈な虚無感に襲われたのです。
日本の神楽スキー場や苗場で滑っていた時は、毎日雪質が変わり、山の地形が変わり、1日として同じコンディションの日はありませんでした。リフトの上から見下ろす田代湖の息を呑むような美しさや、山の冷たい空気を胸いっぱいに吸い込み、深い雪に足を取られながら自然と格闘する楽しさ。そういった「予想外の自然体験」がすべて込みで、僕にとってのスキーやスノーボードだったのです。
オランダの室内スキー場でグラトリの技術自体は上達しましたが、心は全く満たされませんでした。人工的に作られた環境の中で、ただ技術だけを反復練習する日々に嫌気がさしたのです。自然の美しさや脅威、そして予測不可能なコンディションの中で遊ぶことの豊かさを、オランダの人工的な環境はすべて奪い取っていました。この室内スキー場での体験が、僕に「ここには自分の求める人生の豊かさはない」と気づかせてくれた決定的な瞬間でした。
まとめ 僕がオランダを去って海外移住の次なるステージへ進んだ理由
ここまで僕がオランダでの5年間の生活を終え、ポルトガルへと移住を決断したリアルな理由について解説してきました。最後に要点を4つにまとめました。
- オランダの生活は安全で自由に見えるが実際は完璧に管理された水槽の中のような退屈さがある。
- 街の風景や自然環境がすべて人工的で予測不可能な変化や刺激が完全に欠如している。
- 移住して1年で将来の生活がすべて予測できてしまい未知の問題に挑戦する余白がない。
- 人工的な環境で技術を磨くよりも予測不能な自然の中で試行錯誤することに人生の豊かさがある。