さて今日の話は「バイオパワー」。
2014年の5月頃に、世界同時発売の衝撃作が書店に登場しました。スノーデン(元NSA職員)の機密情報リーク事件です。リーク事件なんていうと「けしからん!大事な情報を漏洩させやがって!!」となるのが普通なんですが、今回の場合は、アメリカでも日本でも、というか世界中のほとんどの人がスノーデンのリークにリスペクトを示しました。
実際に彼は今、アメリカから指名手配されており、ロシアに亡命中です。ウィキリークスに情報をリークして、実際に誰がリークしたかをアメリカ当局が突き止めた場合、かなーり思い罰則が待っています。
さて、詳細はスノーデンの顔がデカデカと表紙に乗っている『暴露』という本をご覧いただきたいのですが、簡単にかいつまんで説明しますと、彼がリークした情報は「NSAおよびアメリカ政府の行き過ぎた監視技術」についてでした。
NSAはCIAのハッカー版だと思って下さい。CIAが足を運んで情報を集めるプロだとすれば、NSAはネットワークを通じて情報を集めるプロです。
スノーデンはCIAにもNSAにも所属していた超優秀なハッカーです。職務を全うする中で、NSAのやり過ぎた監視技術に疑問を持ち始めます。いや、僕らみたいなフツーの人でも、NSAが実際にやっていることを知ったら「えっ?」と思うはずです。
たとえば、CISCOグループのルーターにICチップを埋め込み、”NSAが”「未開封」というシールを貼って、世界中に出荷したり・・・。
僕らの家庭にあるWi-Fiルーターが、そのまま監視カメラとして機能しているのです。
もしも僕が「北朝鮮 行き方」「爆弾 作り方」「NSA むかつく」とか検索すると、NSA当局のモニタ画面にフラグがパーンっと立ち、NSA職員による目視が入るわけです。仮に僕がテロリスト候補のリストに名前が載っていれば、愛国心法に基づき事情聴取されたり、最悪の場合、反逆罪で逮捕される可能性だってあるんですよ。(極論ね)
他にも電話のメタデータ(どこから、何時に、誰に電話をかけたか、等の情報)を取得したり、FacebookやGmailの内容も簡単に閲覧できたりするのです。
以前僕の書いていたビジネスメルマガに「中国やイスラエル周辺諸国がGmailを禁止するのは、それらの国がGoogleの後ろにはアメリカ政府がついていて国家情報が筒抜けであると勘ぐっているからだ」と半分冗談で書いたのが、事実だったのです。
当然、中国やアメリカの敵国等は、アメリカが通信傍受していることをかなり前から知っていたのでしょうね。
さてさて。この『暴露』という本では、政府の行き過ぎた監視がいかに市民の自由を奪っているかを力強く指摘しています。前提としてベンサムのパノプティコン(一望監視施設)を例に出します。
去年、韓国のとある収容所に行きました。韓国併合以降、日本が韓国人を収容していた場所です。まさに作りはパノプティコンそのものでした。同心円形に囚人達を配置し、センターに監視塔を置きます。監視塔からは360度見渡せるようになっており、囚人達は常に「見張られているかも」という感覚を持ち、悪さをしなくなる作りです。
大事なのは「見張られているかも」という可能性でいいわけです。コンビニの監視カメラがわざと大きくしてあったり「監視カメラ作動中!」という張り紙をしてあるのは、まさにこの「見張られているかも」という可能性を感じさせることで、万引きを事前に防ごうとしているからです。監視したいなら、小さくてもいいわけです。でも敢えて、それを意図的に告知する。
フランスの哲学者ミシェルフーコーはこのパノプティコンの概念を更に拡大解釈し、我々の生きているこの世の中がまさにパノプティコンそのものだと言い張ります。社会のシステムが、人々の心に自ら監視者という存在を想定させ、自身の行動を規制させていると。
車が明らかに来てない横断歩道で信号無視をしようとすると「警察が見ているかも」とか「見ている市民がチクるかも」みたいに思う、あの感情です。
この感情を「バイオパワー(生かす権力)」とミシェルフーコーは呼びました。
もしもアメリカ政府や日本政府がスカイプの内容を全て録音しており、Gmailを自由に閲覧しているとしたら、きっと僕たちは自らの行動を規制します。卑猥なことを発言しなくなったり、少しでも「危ないかも」と思うようなことは書かなくなります。
おそらく全ての行動にこういった判断を介在させねばならなくなるでしょう。「もしかしたら・・・」という起こるかどうか分からないことを憂慮して生きることほど非合理的な生き方はありません。
だからこそ行き過ぎたプライバシーの侵害は、たとえ国家でも許されない!そういった論調が『暴露』の根底には流れています。ここ2週間の間で読んだ30冊近い本の中でもトップクラスに刺激的だった内容でしたので、ぜひとも手に取って、僕らに迫っている(いや、到達している)国家権力の濫用を知って下さい。
さて、今日、僕が言いたいのは「ふぁ*くゆー、バイオパワー」ってことです。
DRMモデルに従い情報発信をしていると「こんなこと言ってもいいのかな?」と思うようなことは多々ありますよね。僕なんて毎日そう思っています。
その「こんなこと言ってもいいのかな?」と思う感情がまさに、僕たちはバイオパワーの影響をもろに受けている証拠であります。
これだけ前半部分で脅しておいて、後半にけて「まぁ、気にするなって」なんて言うのもはばかれますが、でもそれが僕の本心。
バイオパワーの影響を受けている人ほど、面白くありません。中学校で言えば、いつも親の目を気にして行動しているヤツ。高校で言えば、いつも先生の目を気にして行動しているヤツ。大学で言えば、4年間を就職活動のためだけに費やすヤツ。
「ここであんなことをすれば、きっと周りの人は・・・」
そんな見えない権力に怯え、存在しないパワーに屈して生きているヤツほどつまらないものはありません。大丈夫です、国家は僕ら程度のことを監視していません。
ファ*クユー、バイオパワーの精神で、他人の目を気にせずに情報発信をしてみましょう。意識するだけで文章はかなり変わりますから。
世の中の人が無意識的にバイオパワーに恐れているとき、あなたが少しの勇気を出して「監視されていることを気にしない文章」を書けたなら、それこそ前回申しましたように、その効果が資本主義下で増幅(アンプ)され、とてつもなく増幅された結果が得られることでしょう。
はい、今日も頑張りましょう。握手。