今回は、マーケティングに関するプロジェクト管理を扱います。管理シートを用いてマーケティングプロジェクトの所要時間を見積る方法をご紹介します。この方法を学ぶことで、納期に遅延するリスクを最小限に抑えられます。
何かの作業をするとき、おおよその作業時間の予測を立てると思います。でももしその予測が外れるのであれば、それは予測を立てる方法に問題が潜んでいるからです。各タスクを担うメンバーのスケジュールや技量を踏まえ、現実的な予測を立てなければなりません。管理シートを活用することで、全体を俯瞰的に把握し、プロジェクトを安全に進められるようになります。
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納期に遅れる原因:作業時間の不足
納期を過ぎてしまう大きな原因の1つは作業時間の不足です。作業時間の不足とは、具体的には次の状態をいいます。
- 作業の合計時間がチーム全体のリソースを超過している
- 各メンバーの作業時間が持ち時間を超過している
チーム全体として、時間が足りない。そしてそれがチームメンバー個人においても起きている。というのが一番の原因だといえます。裏を返せば、納期に遅れないためにはチームや各メンバーの持ち時間を超過しないよう、作業時間を管理する必要があるということです。
シートを使って2種類の時間をチェックする
納期に遅れた過去の失敗例を振り返ってみてください。所要時間の予測と実績の間に、大きな乖離があったのではないでしょうか。そして、予測が不正確だったということは、予測を立てる方法に問題があったということです。正確な予測をするには、その方法を見直さなければなりません。
そこで、今回のレクチャーでは「マーケティング作業時間管理シート」をご用意しました。この管理シートに情報を記入していくことで、タスクの所要時間を正確に見積れるようになります。
このシートの特徴は2つあります。
1つは、チーム全体の作業時間を見積もることができることです。つまりプロジェクト1つあたりの合計作業時間をチェックできます。
もう1つは担当する各メンバーごとの作業時間の合計も把握できることです。チーム全体としての作業時間が問題なくても、メンバー個人の作業時間が偏っていて持ち時間をオーバーしてたのでは、プロジェクトはうまくいきません。この時間管理シートを使って、この両者の時間が適切かどうか?をチェックしていきましょう。
管理シートを使って合計の作業時間を確認する
所要時間を適切に予測するには、各職務メンバーに確認するのがもっとも確実です。マーケティング作業時間管理シートに各タスクとその所要時間の予測値を記載し、問題がないか判断してもらいましょう。具体的には、次の6つステップでシートに記入・確認していきます。
ステップ#1:プロジェクトの種類ごとにタブを作成する
シートはプロジェクトの種類単位で管理します。つまり1プロジェクトにつき1シートです。たとえば、ブログ記事1つ、メールマーケティング1本やSNSキャンペーン、eBookの作成などが単位となります。単位ごとにタブ部分で新しいシート作成し、情報が混在しないようにしましょう。
ステップ#2:作業をブレイクダウンする
1つのプロジェクトは複数のタスクから構築されます。細かいタスク単位にブレイクダウンすることで、どのタスクを誰がどのくらいの時間をかけて遂行するのかが分かりやすくなります。細分化されていないタスクは、見積もりが甘くなりがちです。これはタスクリストを作った人であれば、誰もが無意識のうちに感じているはずです。
たとえば、ブログ記事の作成であれば「競合メディアの調査」「見出しの作成」「執筆」「SEO対策」「グラフィックの用意」などのタスクに細分化されるでしょう。この細分化のときに、実際に担当するメンバーにヒアリングを行ってください。実際の作業を知る彼らにヒアリングすることで、タスクを細かく区切ることができるようになります。
ステップ#3:担当する職種を決める
ステップ2で書き出した各タスクに、担当する職種を割り当てます。たとえば、ブログ記事のプロジェクトにおいて「競合メディアの調査」「執筆」などの段階はライターが担うことになるでしょう。また、SEO対策であればブログマネージャー、「グラフィックデザインの用意」はデザイナーが担当します。
ステップ#4:タスクの説明を記入する
「見出しの作成」や「SEO対策」などとタスク名を書いただけでは、各タスクの内容を把握できません。これでは所要時間の予測も困難でしょう。そこで、次はシートの説明欄に具体的な作業内容を記入していきます。特に「どうなったら完了なのか?」ということが明確にするよう気をつけてください。
たとえば、「競合メディアの調査」であれば「トップ10の投稿を読み比べ、自社とのギャップを分析する」などとすれば分かりやすいでしょう。同様に、「執筆」なら「2,500~3,000文字」のように、できる限り定量化するのがおすすめです。定量化できない場合も、具体的な作業内容や考えるべき点、踏むべき手続きなどを含めて書けば、所要時間を見積りやすくなります。
ステップ#5:所要時間の予測値を記入する
ここまで整理した情報を踏まえて各タスクにおける所要時間の予測値を記入します。各タスクの予測値を書けば、それを合計することで、各職種やプロジェクト全体の所要時間が導かれるでしょう。
シートが一通り埋まったら、それを各職種の担当者とシェアし、予測値が現実的なものであるかを確認してもらいます。担当者のスケジュールや技量によっては、予測値の変更を要求されるかもしれません。要求の内容と、プロジェクト全体にかけられる時間を考慮して再度全体を調節し、予測の精度を高めていきましょう。
ステップ#6:プロジェクト終了後に実測時間と比較する
プロジェクト終了後に予測した所要時間と実際に掛かった時間を比較しましょう。この作業は本当に億劫な作業ですが、これを行っておくと次回からの所要時間の見積もりがさらに正確になっていきます。
これを実現するにはプロジェクトの最中、チームの各メンバーに実際の作業時間を記録しておいてもらってください。今はパソコン上で動作するToggl(トグル)などの仕事時間を計測するツールがたくさんあります。こういったものを使って計測してもらうと、定着しやすいはずです。
そして、プロジェクト終了後に実際の作業時間をシートに書き込んでもらいましょう。先程の予測のシートを複製して、実測という名前をつけておくと良いです。実測値を入力したらチーム全体の所要時間と、担当メンバーごとの時間配分を確認してください。また予測段階からどの程度の差があったのか?ということも確認し、次回の予測に活かしてください。
バッファタイムを計算して急な依頼に備える
ここまでは、マーケティングプロジェクトのみに着眼し、その所要時間を予測する方法を解説してきました。ところが、現実にはメンバーたちがマーケティングプロジェクトのみに時間や労力を割り当てられるわけではありません。社外や社内の別部門から急に作業を依頼され、思わぬ遅延が発生する可能性があります。
急な依頼に備えるためには、自分たちにどの程度の余裕が残されているのかを常に把握しておくことが大切です。正確に把握していれば、非現実的な依頼を受け、メンバーたちの健康やメインプロジェクトの進捗が犠牲になるのを防げます。
そこで突発的なタスクに対応できるバッファタイムを計算しておきましょう。すでにマーケティング作業時間管理シートによって、個人個人の作業の所要時間が判明しています。あとはその所要時間からメンバーに空き時間を算出してください。マーケティングプロジェクトのメンバーが、1週間に他の作業へ割ける余白の時間を算出・共有します。
まとめ:管理シートを活用して所要時間を正確に見積る
納期に間に合うかどうかは、プロジェクトの成否を大幅に左右します。そのため、できる限り精度の高い予測をし、現実的な計画を立てることが大切です。ところが、立てた予測は往々にして外れ、予実の間に大きな乖離が発生してしまいます。
そこで有効なのが、プロジェクトをタスク単位にブレイクダウンし、シートにまとめて整理する方法です。各タスクや各職種に要する時間を予測し、それを担当者に確認してもらうことで、無理のない計画を立てられます。
また、急な依頼に備えてバッファタイムを計算しておくことも重要です。常に余裕を確保しておくことで、より安全にプロジェクトを遂行できます。今回のご紹介はここまでです。また次回、お会いしましょう。
マーケティング作業時間管理シート
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