海辺に行けばシグナルあるよ。そう聞いて夜な夜な海に向かって歩き出す僕。確かにコテージにいると圏外なのに、海の近くでは2本の電波が立っています。電波の横にはEの文字が。3Gの前ってEだったっけ?ところでEってなんの頭文字なの?独りごちていると、Gmailがせっせと受信箱にメールを集めている模様。頑張れ頑張れとiPhoneを応援します。なんせ電波が弱いから件名と差出人を収集するだけで1時間近くかかります。ごく一部のサービスを除いては、5営業日以内に返信することにしているので毎日メールを確認する必要はないんだけど。ほら、まあ職業病みたいなもんです。売上通知のメールを見ながら「昨日はこんなにも売れたのね」と1人ほくそ笑むのは事業をスタートしてから今日までのルーティンであり今後も変わることのないイベントだと思います。
このプラランリゾートには三つのエリアがあるんですけど、隣接するエリアがバックパッカー向けの格安ドミトリーになっていて、夜遅くまで趣味の悪い音楽が流れ続けます。Amazonの流通にすら乗らない激安のスピーカーを使い、耳障りな甲高い声で何かを叫んでいます。なかには30を過ぎたシングルのオッさんやオバさんがいて、彼らを見ると、若いうちに遊び足りなかったのかなと、余計なお世話を焼きたくなるものです。
オッさん、オバさんだけでなく、リタイア層のおじいちゃん(ほとんどがサーファー)にも同じ気持ちを抱くわけです。彼らは割りかしお金があるのでボーズのサウンドリンクなど比較的クオリティの高いスピーカーを使い、やはり趣味の悪いカントリーミュージックを聴いています。
ここは素敵な場所だね、と奥さんは言いました。「疲れている時とか仕事のことを一切忘れたい時とかね」と限定的にこのリゾートを評価します。そうなんですよ。リゾートは仕事に疲れている時に来るものなんです。代ゼミの古文担当で有名だった吉野啓介先生はオフシーズンになると彼女とハワイに行って五つ星のホテルに泊まり「今日は何をしようか?」と予定のない休暇を楽しむと言っていました。普段から(流し)で生きている僕なんかは、基本的に手を抜きながら作業をしているので、仕事で疲れる感覚が全くわかりません。それでも数ヶ月くらい集中的に働くと、嗚呼そろそろ南の島でゆっくりしたいなと思います。現実に今、ここ、南の島にいるわけですし。
もちろんこの後に仕事に戻るという前提があるからこそ、暫定的に休みたいと思うのです。リゾートはエンドではなく、あくまでもプロセスの途中にあるワンポイントです。
じゃあバックパッカーやリタイア層はいったい何のためにこのリゾートにやってきているのでしょうか。どんなモチベーションでこのカタンドアネス島にやってきたのでしょうか。彼らはリゾートをエンド(終着点、ゴール)と捉えています。謎は深まるばかり。まさかサーフィンでもしながら疲れ果て、この地に埋葬されたいと思っているのでしょうか。遺骨は海に撒いてくれ、とか、ちっともかっこよくない注文を出しながら。
朝8時からサンミゲルビールを飲んだり、満月の夜にサーフィンへと出かける彼らを見ると、遊びに対する執着が強すぎて傍目にも驚くばかりです。どーなんでしょう。若いうちに遊び足りなかったから今こうやってチャンスを活かして必死に遊んでいるのかな。
遊びだけの生活なんてマジでつまんないですよ。もちろん過労死するほど一途に働くのも嫌ですけど。適度にバランスとって、生きていくのが一番です。バランスをとるって、実は勇気の必要な決断なんですよね。働くのも遊ぶのも一つだけに集中していれば、他のことを考えなくて済みますから楽です。バランスを取るには強いリーダーシップを自分自身に対して発揮し、仕事も遊びも両立する根性が必要です。この根性が足りないと、僕の眼前に登場する人物たちのように命を削りながら必死に、そう、文字どおり必死に遊ぶだけの空虚な生活を送ることになります。
老後なんて糞食らえ。セミリタイアを今しろ。そして定年後も猛烈に働け。Work hard, Play harder.
それなりに懸命に働き、その2倍くらい懸命に遊んでいます。