(香港の空港で一泊しました)
お金の神から啓示を受けたというのはもちろんメタファーであって、信教心のない僕には神様を見ることはおろか感じることすらできません。そもそもお金の神って誰のことを指すのでしょうか。ギリシャ神話のミダスさん?触ったものを全て金に変えちゃう神様ですよね。彼、のちにそのスキルを自ら放棄するからなあ。もちろん僕はミダスと知り合いではありません。
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早稲田の国教に通う学生がメールをくれた
僕の経験したものは、世界を変えるような劇的な出来事ではなく、甚だ個別具体的なもので、きっと石崎力也以外には全くポジティブな影響を与えるものではなかったはずです。しかし、僕という個人に限定すれば、それなりに大きなイベントであったのは間違いありません。空から降ってきたそれを、しっかりと両手で受け取った感覚です。これまでは片手をかするような体験ばかりをしていたけど、その時ばかりは両手でしっかりと掴み取ったんです。ああこれだ、と。これでいこうと思えました。
その、甚く個人的なエポックメーキングが起こったのはアメリカに留学している時でした。春セメスターを終え、「まあ、アメリカ留学ってこんなもんだよな」と渡米前に期待していた展開をやや下方修正し、次の新しい展開を考えていた頃です。早稲田大学の国際教養学部に通う、僕より2つか3つ年下の知人が「力也さん、これ面白いですよ」と日本からメールで動画を送りつけてきました。もう少し正確に言うと、彼が購入したマーケティングに関する動画がホスティングサービスにアップロードされていて、URLを知っている人だけが閲覧できる状態でした。これ、たぶん販売者からすると嬉しくないことですよね。本来なら僕がお金を払って購入すべきコンテンツを、彼がタダで見せてくれたんだから。
メッシが言う「それはサッカーだよ」
春セメスターの真ん中あたりでMICSというギークの集まるロボットコンテストで全米3位に(たまたま)入賞したんですけど、それで燃え尽きてしまったというか、なんだアメリカってこんなもんかっていう感覚が強く残ったため、それからは授業への献身がどんどんとフェードアウトしてゆきました。アメリカの大学はリベラルアーツ(教養)を重視するとどこかの本で読みましたが、少なくとも僕の留学したネブラスカ州立大学はただの職業専門学校でした。CSIS441:人工知能のクラスで学んだこと(バブルソートとかスクリプト理論とか)は確かにプラクティカルではなかったけれど、生徒の知的欲求を刺激するほどのインパクトはありませんでした。まあとにかく時間がたくさんあった頃ですから、友人や知人から「これ面白いですよ」とガイドをもらえれば片端からそれらコンテンツを消費していました。
で、早稲田の彼がくれたマーケティングの動画が大当たりでした。これまで自分のやってきたことを上手に体系的にまとめて説明していたのです。例えば、これまでボールに対して頭突きをするのが大好きな子がいたとします。彼はボールを蹴って遠くに飛ばすことも得意としていました。目の前の通行人に「はい!そこのあなた」と呼びかけボールをコロコロと渡すこともしばしば。そんな彼に対して、青と白の縦ストライプの服を着た男性が言います。「やあ僕の名前はリオネル・メッシ。君のやっていることはサッカーだよ」と。そこで彼は自分のやっていたバラバラな(に見える)プレーを、サッカーという一つの体系化されたスポーツの中で理解するようになりました。
僕はマーケターとしてぼちぼち成功を収めるだろう
僕に起こったのも、まるでそんな感じ。自分がこれまでバラバラにやっていた活動が一段や二段ほど抽象化されて、ようやく自分のやっていることが理解できたような印象でした。僕が見たものはセールスファネルでした。あの漏斗型の図ですね。逆三角を3つや4つに刻んだあの絵を見て、合点がいきました。間口の大きさが顧客の数を表し、その深度が顧客の信頼度を表す。上は間口が大きいけれども信頼度は低く、下は間口が小さいが信頼度は高い。僕が無意識に(そして適当に)作っていたビジネスモデルをたった1枚のスライドが説明したのですから、驚きを隠せませんでした。それと同時に、自分がどこに力を入れてどこを抜けばいいのかがはっきりとわかりました。何を辞めて何をやるかの「緩急」がしっかりと頭に描けました。その瞬間、非常に厚かましい表現ではありますが、僕はマーケターとしてぼちぼち成功を収めるだろうと確信しました。
ちなみに誰かからアドバイスを受けるときは「僕のビジネスモデルのどこかダメですか?」と聞きます。そこで「うんぬん、がダメですよ」と指摘されたとして、そのうんぬんが「緩急の緩」であればひどく喜びます。わざと緩めている場所というかそもそも手をつけていない部分ですから、(そのアドバイザーには申し訳ないのですが)これからも徹底的に無視し続けようと決心します。もしそこで別のパーツを指摘されたのであれば、まだまだビジネスモデルに最適化の余地があると理解するわけです。ビジネスモデルの良い所は聞きません。聞かなくてもお客さんが親切に伝えてくれるからです。
競争戦略における差とは「なるほど」の合点のこと
あまり同業者のことは知りませんが、きっとインターネットビジネスでうまくいっている人たちは、僕のように合点がいく経験を一度や二度はしているはずです。逆に言うとそのような啓示体験をしていない人は、この世界で勝ち残ることは厳しいかもしれません。ご存知とは思いますが、経営戦略論的に言って、利益とは「差」のことです。差がなければ理論的に利益は生まれません。経済学でいう「完全競争」の状態ですね。完全競争の条件が揃うと価格は均衡し、どの供給者も需要者も自分たちで価格を決められません。ゆえに儲からないわけです。そこでその均衡をぶち壊すために、マイケルポーターさん(SP:ポジショニング)やバーニーさん(OC:ケイパビリティ)が知恵をひねり出し競争戦略という形で世の中にアイディアを提供しなきゃならないわけです。
漏れ始めた商売道具
インターネットビジネスをする人たちにとっての差とは、合点のことです。「ああ、そうかなるほどね、そういうことか」と理解した内容がダイレクトに差別化に繋がる。あるいは緩急のつけ方がわかるようになり、何かを捨てることで独自のポジションを獲得することになります。マイケルポーターさんが言うように「戦略とは、捨てること」なのです。もちろんここで石崎が捨てたもの(あるいは捨てなかったもの)を紹介することはできません。秘密の7つ道具であり、商売道具そのものですから。ただ最近、思うところがあって、徐々に商売道具をリークするようになりました。まあリークするほど大した内容ではありませんが、過去の5年や10年に渡って他の同業者が気づかなかった内容であるのも事実です。僕も利己的な生き物ですから、わざわざ損をするようなことはしません。思うところとは、今よりも少ない労力で同じだけ報酬を得られるか、或いは今と同じ労力で今より多く報酬を得られるかのどちからのはずです。この点に関してはまたどこかでお話しできればと思います。