ドラッカーに関する書籍には必ずといっていいほど『イノベーション』について言及されている。しかもお決まりの文句として「その他の書籍はドラッカーのイノベーションを勘違いしている」ことが書かれている。まあいずれにせよ、僕らは各々の執筆者の言うことを気にすることなく、素直にドラッカーの言う7つの機会に着目すれば良い。それを拡大解釈することなく、そのまま受け止めてみようという姿勢が大事じゃないかな。
さて、ドラッカーがイノベーションを語る時に7つの機会。今回は個人にどう応用できるか?を考えながら一つ一つを見てゆきたい。おっとその前に。手元においておいたら良い本がある。P118から独立させてイノベーションの項を設けた以下の本。
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それと、昨日も紹介したこの本。この本なんかはイノベーションだけに特化している。
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- 予期せぬ成功・失敗
- ギャップ
- プロセスニーズ
- 市場と業界構造の変化
- 人口構造の変化
- 考え方・価値観・認識の変化
- 新しい技術
今回お届けするノウハウはこちら
1、想定外のものをチャンスに変える予期せぬ成功
ポストイットができたのは、ある研究者が絶対に剥がれない接着剤を作ろうとして、その過程で失敗作ができ、それがうけたことだった。20年くらい生きていれば、過去に何らかの成功・何らかの失敗があったはず。それを分析してみるといい。既に実験が終わり、結果が出ているから、あとは分析をするだけ。
イノベーションの第一「予期せぬ成功・失敗」が挙げられているのは、それが一番楽だから。過去を振り返るだけでいい。過去にうまくいったことはなにか?うまくいってないことはなにか?発想を転換し、イノベーションに繋げたい。ドラッカーも「リスクが小さく、成功の確率が高いので、これほど苦労が少なくてすむイノベーションのチャンスはない」と言っている。
例えば、スクールに通った後よりも、新公式問題集を解いた後の方がTOEICのスコアが伸びていたとかね。じゃあスクール行く必要ないじゃん、みたいな。
2、理想とする状況とのギャップを埋める
理想と現実のギャップ(差異)があること自体イノベーションのチャンスになる。こちらも1の予期せぬ成功と同様、既に起こっていることなので、コスト面(実験がいらない)からもリスク面からも、イノベーションに繋げるための機会として成功確率が高い。ギャップには①需要とのギャップ、②通念とのギャップ、③消費者の価値観とのギャップ、④プロセスにおけるギャップがある。
①需要が伸びれば売上も伸びるけど、そこにギャップがあればその解消がイノベーションになる。②通念とのギャップはいわゆる「常識・思い込み」をぶっ壊すこと。③消費者の価値観を企業が読み違えているときは、そのギャップがイノベーションになる。④プロセスのギャップは村上太一社長率いるリブセンスがその好例。ネットで欲しい求人が見つからない、企業はバイトは欲しいけど広告は掲載したくない。このギャップを埋めるために『掲載料不要サイト』を立ち上げお祝い金を出すことで確実に企業から斡旋料を取った素晴らしいイノベーション。
例えば、家から出たくないけどTOEICのスコアをあげたいって人のためにオンラインスクールを用意したり。
3、プロセスニーズを商品化、サービス化する
この場合は目標が明確。何を改善すればいいのかがみんな分かっているけど、技術が足りなかったり、誰もやろうとしていない場合、最初に手を上げてやった人がイノベーションを起こす担い手になる。天候に左右されずに野菜を作りたいという目標は明確だったけれど、それを実現させる人がいなかった→ビニルハウスの発明がこの悩みを払拭。
既にこうなりたい、こうしたいって理想があり、それを埋める方法を考えても見なかった場合は、一回考えてみるといいかも。既にゴールが明確だから、それを埋める方法を見つけたり、埋めるために努力をするだけでいい。見つかった瞬間がイノベーションになる。
4、市場と業界構造の変化を商品開発に生かす
ここからは個人の起こせるイノベーションではなくなってくるんだけど・・・。たとえば通信業界では富士通、NEC、沖電気の三社が安定的な経営をしていたけど、携帯電話やスマホの普及によって市場がガラッと変化してしまい、過去の会社となってしまった。ビックリするほど業界の変化は瞬時に起こる。そこについていけるかどうかが勝負。
5、人口構造の変化
こちらも企業イノベーションなんだけど、人口構造ってのは変化が見えやすく、予想もつきやすい。たとえば2013年に100万人に赤ちゃんが生まれたら2023年の10歳の子どもの数はほぼ同じであることが予想される。団塊の世代を対象とする主なマーケットは現在の所は旅行や趣味や高齢の女子会(?)だけど、10年後には老人ホームやケアハウス、老人医療の分野になってくる。着眼するポイントが絞られているから、やったもの勝ち、やれたもの勝ちのイノベーションかもしれない。
6、考え方・価値観・認識の変化を取り入れる
たとえば、これだけ就職不人気で「個の時代」とかテキトーなことが喧伝されている今、もしB層が本当にこぞってノマド生活をよしとするような価値観を持ち始め、それにメディアが便乗し、まじでフリーランス最高!みたいな文化が醸成されたら、今の僕やイケダハヤト君みたいな人がオピニオンリーダーになって、僕らの広告収入はもっともっと増えるんじゃないかな。個人的にはそれでも嬉しいけど、今みんなフリーランスになったって、半分以上はのたれ死ぬだけな気がするけど。まずはしっかりと勉強したり、負けないスキルを持ってからフリーランスにならなきゃ。
たぶんこれから「個」とか「個人」とか「フリーランス」周りのキーワードがもっともっと流行だすと思う。これだけ個人の哲学が欠け、生き方に確証を持てない世の中だから、個人的にはオウムみたいな新興宗教が来たら、一気に広がるような気がする。グルビジネスですね。
7、新しい技術
これはドラッカーが皮肉をこめて「イノベーションのスーパースター」と言うもの。最後にこれがあるのもその理由。日経新聞にイノベーション(技術革新)とかあるけど、実は、この技術革新っては一番時間がかかって一番リスクが高いもの。新しい技術にもとづくイノベーションは他のイノベーションとは異質なるもので、まずイノベーションまでの時間が長く、さらに失敗率が高く、予想が困難で、それに伴い様々な問題を発生させる。
たとえばコンピューターにとってかわる何かを生み出して下さいと言われて、次なる何かを発明するために一生を捧げる企業は、たしかに傍から見ればセクシーでクールだけど、その前に企業が存続するかどうかがまず頭に浮かぶでしょう。そんな感じ。
まとめ
実は僕たちのようにインターネット広告で収入を得ているような事業は、まだまだ未開拓で、そこら中にイノベーションの機会が存在している。市場の構造の変化が激しいため、毎日のようにギャップが生まれている。その生まれたギャップを全て埋めようとすればすぐにリソースは枯渇してしまう。そうイノベーションのチャンスは日常、身の回りに溢れまくっている。ただ僕らはその埋め方がまだまだ下手くそなのと、リソースが圧倒的に足りていないだけ。だいたい大衆は同じことしか考えていないから、少しでも大衆から距離を置き、違った生き方をするだけで、イノベーションはごろごろと落ちている。
・・・けど、そのイノベーションの起こし方がまだよく分かっていない。リソースがもう少しあれば・・・。まあいいや。なんとか生きているし。