死刑は国が人を殺す行為です
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「『自白の研究』という本だったと思うけど、心理学者がこんなことを書いている。死刑になるかもしれないというのは、あくまでも将来の可能性に過ぎない。今現在の取り調べの苦痛に比べたら、遥か遠くのことのように感じられる。それに実際に罪を犯した人間なら、『死刑』という言葉は生々しい現実感を伴ってわが身に迫ってくるかもしれないが、罪を犯していない人間の場合には非現実的にしか感じられない、と。自白を迫る村上の怒鳴りが誘惑の声に変わったという表現は的を射たもので、あなたの話はよく理解できる」
「さすがは冤罪事件のプロだけありますね」山崎は心底、驚嘆したように言った。
始終じとっとした生温い空気を身体に感じながら読んでいる感じだった。大抵のエンターテイメントは子供(特に少女)を殺したりはしないのだけど、この小説は最初の段階で乙女ちゃんを殺している。あの資産家夫婦にその悲報が届いた時、彼らはどんなリアクションをしたのだろうと頭の片隅で想像しながら、かたや緒川さんの展開するストーリーを追うので、頭の中では2つ・3つとストーリーが流れていた。
冒頭の死刑執行シーンにはじまり誘拐されたときの母親の心象など人間の「ネガ」な部分をあまりにもリアルに描いている。身体が涼しくなったのは部屋に帰ってシャワーを浴びた瞬間だけだった。
石崎力也