(シカゴ、マイナス20度です)
僕が仕事をするとき、まずは水平展開をします。水平展開をしてその中から芽の出ているもの見つけ、その一点に対して他のリソースをつぎ込むという手順を踏みます。水平展開から垂直展開への転換ですね。いつからこんな仕事の進め方をするようになったかはわからないけど、この世界で生き延びていくために身につけたナチュラルな仕事術だと思います。仕事術なんてやろうと思ってできるものではなく、あれこれトライアル&エラーを繰り返していたらいつの間にか手元に残っていたそれが一つの術(すべ)として機能していた・・・という感じではないでしょうか。
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出入国カードに「職業:情報起業家」
大学生の当時、グーグルアドワーズの入札単価が5円とか10円でして、ぶっちゃけアクセルをベタ踏みして広告を打ったとしても1日に10万円を超えることはまずありませんでした。2016年にイギリスの9歳の子供が誤って1100万円アドワーズから課金されたけどグーグルは不問にした件がありましたね。当時、そんな奇異な現象は起こりえなかったのです。さて・・・仮に10万円払ったとして、クリック単価が10円なら1万アクセスです。その一万アクセスに対してベローンと長いセールスレターを見せて情報商材が売られていました。未だにいかがわしい存在の情報商材は、当時もっと怪しかったんです。話は少しそれますが、空港の入管職員に渡す出入国カードがありますよね。あの Occupation(職業)の欄になんて書いていますか。
以前YouTubeのコメントに「マーケターとかカッコつけているけど、アフィリエイターのことですよね」と書かれたことがあります。僕自身アフィリエイト活動をやっていないのでアフィリエイターを自称するのに抵抗があるんですけど、彼らの呼称に従い Occupation のブランクに Affiliater と書いたところで「君は何をやっている人なのかね?」と首を傾げられるだけです。デジタルコンテンツを売っているから、Degital Content Marketer とか。なんかよくわかりません。ましてや Info-preneur(情報起業家)なんて造語を使おうものなら、スノーデンがかつて籍を置いていたNSAから監視されるかもしれません。僕自身はそこでお金をもらっている以上、なんと呼称されようが一切構わないのですが、やはり世間的な地位を得た職業の方が国境を越える時にある程度「楽できる」のは間違いありません。ちなみに会社を持っているので Company Director(会社役員)と書くことがほとんどです。
学生が副業しても稼げる額は知れている
さておき。とにかくネットには今以上の誇大広告がペタペタと貼られていた当時ですから、僕を含めてお金の欲しい学生諸君はそれに興味を持つのは当然です(たぶん)。独自に検索をしながら、あるいはコーチャンフォー・ミュンヘン大橋店で関連書籍を立ち読みをしながら、インターネットでお金を稼ぐにはどうすればいいかを研究しちょっとずつ手を動かしていました。かっこよく言えば水平展開なんですけど、俗に言ってあれもこれも手を出していたんです。いくら学生で時間があるとは言え、片手間でできる仕事なんて高が知れています。いろんな蛇口からちょぼちょぼと水が溢れるように収益が落ちてきている程度でした。月額にして20万円から30万円ほどでしょうか。
お金の神様から啓示が降りたインド渡航前夜
そんな田舎の平凡な学生に、ちょっとばかしの啓示みたいなものが降りてきたのは、インド旅行の前日でした。僕は中板橋にいました。駅から離れた最悪のロケーションでした。会話は一緒に旅を共にする友人から始まります。
「国際線は3時間前に空港におらんなんらしいぞ」
「大丈夫やって。少しくらい遅れても飛行機待ってくれるって」
「ふーん、そんなもんなんかな」
「それよりも前から話しとった”セールスレター”を書いてみんけ?」
「だから今日は早く寝んなんって」
「お子様かいや。機内で寝ればいいやん。どうせ周りインド人ばっかりで会話する機会もないし」
「周りインド人ばっかりやったら俺は寝れん気がする」
「テンピュールのアイマスク持っていけや。あれつけると宇宙におる気分やぞ」
「宇宙に行ったことないしなー」
「とにかくセールスレター書いて俺の英語教材を売ってみて。収益は6:4で俺が6な」
「テンピュールつけて、宇宙行ってきまーす」
「わかったフィフティフィフティ。折半しましょ」
「しゃーなしや。ちょここに5:5って書けや。あとで誤魔化されたらたまらなんしな」
「はいはい」
僕は 5:5 とティッシュ箱の上に書きました。今から思うと、そんな簡単に証拠隠滅できる場所に契約内容の書記を迫った友人は、非常にマネジメント能力の欠けた人間だと言えましょう。まあ学生だから仕方ないといえばそこまでなんですけどね。
「飯でも行こうや」
彼は書くことを生業としていた人間なので、セールスレターを書くなんぞ、お茶の子さいさいだったはずです。1時間やそこらで1本のレターを書き上げてしまいました。最後の署名は「石崎力也」となっています。まあ確かに署名が友人の名前だと違和感があります。トヨタのディーラーがホンダの商品を売るようなものだからです。書かれた内容を見ると、それはそれは顔から火が出るほど恥ずかしい内容でした。ポジティブな部分もネガティブな部分も強調して書かれたその文章を読むと、波乱万丈を生きた人間にでもなった気分になります。
「腹減ったから、飯でも行こうや」
そう彼を誘って中板橋の駅前にあるお店に入りました(確か焼き鳥屋だったはずです)。そこで彼の携帯に着信音がなります。
「ゲコゲコ、ゲコゲコ」
カエル好きの彼は、カエルの鳴き声(ゲコゲコ)を着信音に設定していました。正体は電話ではなくメールでした。当時も今も僕は携帯電話を持たない人種なので、アメブロのコメント通知が彼の携帯にいくよう設定していたのでした。僕らには技術力もなかったのでAmeba Blogにブログ記事の一環としてセールスレターを投稿したのです。コメントの中身はわかっていました。商品の申し込みです。セールスレターの最下部に「名前とメールアドレスと電話番号をコメントに書いてください(コメントは非公開です)」と付記しておいたのです。
アオガエルがトノサマガエルに変身したその日
恐ろしいことにそのカエルの鳴き声は、翌日、成田空港に向かう日比谷線の中でも鳴り響いていたのです。いや正確には鳴響き続けていたのです。
焼き鳥屋で会計を済ませている間にも「ゲコゲコ」
帰途セブンイレブンで家飲み用のほろよい(白、100円)を購入している間にも「ゲコゲコ」
パラノーマルアクティビティ1の予告をYouTubeで見ている間にも「ゲコゲコ」
床に就き目を閉じるも、寝れるわけがありません。カエルの合唱(和音でした)が僕らの意識をクリアに保ちます。神田昌典さんがセミナーの中でATMで現金を下ろす時にジャキジャキと聞こえるあの音を聞いて「ああ、なんて美しい」と思った・・・と言っていましたが、まさにその感覚です。1日で数百万円を稼ぐような大きな仕事ではありませんでしたが、それは確実に僕たちの想像を超える金額であったことは間違いありません。少なくとも大学生の身分でちょこちょことバイトしていては決して手に入らない額でした。
インドに到着し、ニューデリーからカルカッタに向かう公称18時間の電車(行路でストライキが起こったので30時間閉じ込められました)の中で、お金の神様から頂戴した啓示を言葉に置き換えていました。目の前で起こっている現実を理解したかったのだと思います。ここで言葉に置き換える作業を怠ると、きっと再現性の低い活動に落ちぶれてしまうと直感していたのでしょう。三頭自由席の車両にあるスペックの低い脳ミソを二つは、すでにオーバーヒート。もうここで脳みそが焼き切れてもいいやと思いながら、インド人が見守る中、エアコンのガンガン効いた車内で、猛烈な日本語の応酬をやり遂げました。
これを機に、全リソースを一点投下する垂直展開に転じたのは言うまでもありません。
・・・ゲコゲコ。(お、まだ鳴っている)