今回のレクチャーではシンプルかつ現実的なワークフローを設定する方法をご紹介します。このレクチャーを学ぶと、複数のチームで1つのプロジェクトを進める際の進捗管理が効率化します。
タスクが多いからといってワークフローが複雑になるとは限りません。本当に必要なタスクを選び抜き、同時に進められるものを統合することで、管理はずっと簡単になります。反対に、管理方法が悪ければ簡単なプロジェクトさえ難解になります。適切な管理方法を身につけ、安全にプロジェクトを遂行しましょう。
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コンテンツ制作のワークフローを組むための6つのステップ
大規模なコンテンツ制作プロジェクトには大人数が関わることがあります。そして、プロジェクトを適切に遂行するには、大人数のタスク進捗状況を効率的に把握しなければなりません。
そこで必要になるのが、ワークフローの設定です。同じ作業でも、ワークフローを上手に組めば管理はずっと楽になります。余計な作業も減り、少ない負担でプロジェクトを完遂できるようになるでしょう。
では、具体的にどうやってワークフローを組めばよいのでしょうか。ここでは、シンプルな6つのステップに分けてご紹介します。
ステップ#1:必要なタスクをすべてリストアップする
ワークフローの最初のステップは、必要なタスクを列挙することです。本来あるプロセスを省略して書いてはいけません。時系列に沿って、すべてのタスクを漏れなく書き出しましょう。
インテル元会長兼CEOであり多数の著書を執筆してきたアンドリュー・S・グローブ氏は、「High Output Management」という書籍の中で「まず、現存する生産プロセスのフローチャートを作成する必要がある」と述べています。
ここからは、以下のタスクリストを例に各ステップの作業を解説していきます。ここではブログ記事を作るということを題材に、一通り思いつくタスクをすべて書き出していきます。
- 10倍のアイデアであることを確認する
- キーワードを探す
- 記事の方向性を決める
- WIIFM(ウィーフム)とアウトラインを書く
- 20-30個のヘッドラインを書く
- アウトラインのピアレビュー
- コンテンツのアップグレード
- ブログ記事を書く
- 文章の校正
- 検索エンジンに最適化する
- ヘッダーグラフィックのデザイン
- ボディコンテンツグラフィックのデザイン
- コンテンツのアップグレードのデザイン
- ソーシャルメディアグラフィックのデザイン
- ヘッダーグラフィックのレビュー
- ボディコンテンツグラフィックのレビュー
- コンテンツアップグレードのレビュー
- ソーシャルメディア・グラフィックのレビュー
- 投稿へのグラフィックの挿入
- ソーシャルメディア投稿ツールへの画像挿入
- フィーチャーイメージの設定
- カスタムフィールドの設定
- クッキーの設定
- 宣伝用ソーシャルメッセージの作成
- ソーシャルテンプレートのスケジュール設定
- ブログ記事の予約投稿
- オーディエンスへのメール送信
- ブログコメントへの返信
あとでタスクを整理していきますから、この段階では頭の中で出てきたアイデアはすべて書いてしまって大丈夫です。
ステップ#2:リストから不要なタスクを除く
前のステップで書き出したタスクのリストから、不要なものを削除します。次の条件に当てはまるものを削除しましょう。
- 他のプロセスと一緒になっているもの
- 以前は有益だったが今では時代遅れのもの
- 費用対効果の低いもの
- そもそも不要なもの
たとえば、前述のリスト例では「アウトラインのピアレビュー」や「ヘッダーグラフィックのレビュー」といった各種レビューは、ワークフローとして設定する必要があるのでしょうか。不要なら消してもよいですし、他のプロセスと一体となっているのなら、わざわざワークフローとして挙げなくても完了するはずです。また、ブログコメントへの返信も利益に直結しないのであれば、省いてもよいかもしれません。
ステップ#3:同時に完了するタスクをまとめる
タスク自体はなくならなくても、他のタスクと同時に完了するのならまとめて1つのタスクとして扱えます。たとえば、記事本文の画像とソーシャルメディア用の画像は同じものを流用したりと、同時に作業できる場合がほとんどです。先ほど挙げたリストの例では次の4つの作業を1つにまとめられそうです。
- ヘッダーグラフィックのデザイン
- ボディコンテンツグラフィックのデザイン
- コンテンツのアップグレードのデザイン
- ソーシャルメディアグラフィックのデザイン
また、次の設定作業もまとめて完了できるのではないでしょうか。
- フィーチャーイメージの設定
- カスタムフィールドの設定
- クッキーの設定
こうした類似タスクを1つにまとめると、タスクリストは次のようになります。
- 10倍のアイデアであることを確認する
- キーワードを探す
- WIIFMとアウトラインを書く
- 20~30個の見出しを書く
- ブログ記事とコンテンツアップグレードを作る
- 文章の校正を行う
- 検索エンジンに最適化する
- ヘッダー・本文・ソーシャルメディア用グラフィックのデザイン + コンテンツのアップグレードを行う
- ヘッダー・本文のグラフィック・コンテンツのアップグレードを確認する
- 記事とソーシャルメディア投稿ツールにグラフィックを挿入する
- フィーチャーイメージ・カスタムフィールド・Cookieを設定する
- ソーシャルメッセージの作成と予約投稿を行う
- ブログ投稿の公開スケジュールを設定する
最初のリスト例に比べて、随分とすっきりした印象になりました。雑多なものが取り除かれ、類似したものはコンパクトにまとめられることで、ワークフローの管理が容易になります。
また、ここで注目すべきなのが、すべてのタスクが動詞形で書かれていることです。作業の名目だけを書くよりも、何をすべきなのかが具体化されるため迷うことなく作業に移れます。
ステップ#4:完了の定義と担当者を決める
続いて、各タスクを担当者に割り当てていきます。しかし、単にリストを見せて「これをお願いします」といっただけでは、何をすればよいのか分からないことがあります。具体的にどのような作業を行えば、該当のタスクが完了したことになるのかが伝わらないのです。
そこで、次は何をもって「完了」とすればよいのかを明記しましょう。作業担当者が、自分が何を期待されているのか判断できるようになります。
たとえば、次のように補足説明を記載するとわかりやすいでしょう。
- キーワードを探す:キーワードツール上でのSEO難易度50%以下、月間平均検索数100以上のキーワードを探す。
- WIIFMとアウトラインを書く:読者目線で「何が得られるか」に答える。トピックが良く、包括的かつ実用的で、検索エンジンやメール購読者向けに最適化されたものにする。
単に「キーワードを探す」と言われるよりも、どのような条件を満たしたキーワードであればよいのかが明確になり、作業しやすくなりました。
すべてのタスクについて補足説明を記入したら、担当者を決めます。このとき、1つの作業に対しては必ず1名のみをアサインしましょう。複数人で行うより1人で作業したほうが管理者・作業者の双方にとって明快です。
また1つ1つのタスクにおおよその所要時間を記載しましょう。例えば「キーワードを探す」は30分、「ブログ記事とコンテンツアップグレードを作る」は90分というように書き込んでいきます。もし作業にかかる時間がわからない場合は、ライターやデザイナーなど専門職のメンバーにヒアリングすると良いでしょう。
ステップ#5:各タスクの期限を公開日から逆算する
タスクの期限は、コンテンツの公開日から逆算します。ゴールを起点に考えて、必ず間に合うように期日を設定するのです。このため、時系列に沿って書かれたタスクリストの、末尾から期日を決めることになります。
たとえば、最後のタスクである「ブログ投稿の公開スケジュールを設定する」が、公開日の5日前に完了すべきだったとします。公開日を8月30日に予定するなら、このタスクは遅くとも8月25日に完了しなければなりません。
続いて、最後から2番目のタスク「ソーシャルメッセージの作成と予約投稿を行う」を、最後のタスクの4日前に終わらせなければならないとします。すると、このタスクの期限は8月21日となるでしょう。このように、公開日を起点として逆算し、1つずつタスクの期限を決めていくのです。
ステップ#6:出来上がったワークフローをテンプレ化する
さて、もう一度タスクリストを眺めてみてください。ここで洗練させ、出来上がったタスクリストはそのままあなたのチームのワークフローとなります。次回ブログ記事を作る際に、もう一度タスクを整理しまとめる作業をやる必要はありません。既にあなたは完璧な記事制作の流れを作り上げたんです。
このリストには、タスクの項目だけでなく、担当者名つまり担当すべきメンバーの職種、そして期日や所要時間といった情報が含まれています。これらの情報はあなたの飯の種だと思ってください。これを再利用することで、あなたは洗練されたワークフローの中でコンテンツを出し続けることができるようになります。あなたのこのワークフローは、Google SheetsなりNotionなりにテンプレートとして保存しておくと良いです。
もしコンテンツカレンダーと一緒に管理したいのであれば、CoScheduleのTask Template機能が便利です。CoScheduleでは新しいコンテンツの予定を立てる際に、保存したテンプレートからタスクを呼び出すことができます。
テンプレートから作った各タスクには「コンテンツ公開の何日前までに完了させる」という期日が、自動で入るよう設定することもできます。公開日を設定すると、各タスクに「5月30日」「5月26日」という具合に期日を設定してくれるというわけです。
ワークフローをシンプルにすることで成功が加速する
ここまででご紹介したステップに従って初めてワークフローを組んだ場合、複雑になりがちです。タスクの数が多いと、その分管理が大変になります。今、プロジェクトを20のタスクに分解したのであれば、それを10程度に抑えられないか検討してみましょう。不要なものは思い切って省き、まとめて作業できるものは1つのタスクにしてしまいます。
コンパクトにさえできれば、あとは「完了の定義」「担当者」「期日」の3点を決めるだけです。極力シンプルにすることで、作業担当者にとっても、管理者にとっても分かりやすいワークフローになります。何らかのトラブルが起きた際のフォローも簡単です。
まとめ:シンプルかつ現実的なワークフローでチームワークを向上
ビジネスの成否を大きく左右する要因の1つは「管理」です。取り組む作業が同じものであっても、管理が上手か否かによって得られる成果は大きく変わります。現実的なタスクや期日を設定し、それを分かりやすく共有することでチームワークを高められるのです。
最初にすべてのタスクを列挙し、不要なものを削除、似通ったものを統合します。そして完了の定義とタスクごとに1名の担当者、そしてゴールから逆算した現実的な期日を設定しましょう。このシンプルな管理で、部門横断的なプロジェクトを成功に導いてください。今回のご紹介はここまでです。また次回、お会いしましょう。