今回のレクチャーではグロースハックの考え方と、それをコンテンツマーケティングに応用するコンテンツ・ハッキングについてご紹介します。このレクチャーを見れば、グロースハックにおいてアイデアを洗練させるために決定すべき3つの要素を知ることができます。
従来のコンテンツマーケティングでは、緻密な計画によってフットワークが重くなり、結果的に時間がかかりすぎて計画の価値が損なわれることがありました。そこで、グロースハックではよりシンプルな戦略に基づき、高速にプロセスを進めていきます。3つの制約だけを定め、身軽で柔軟な改善サイクルを回していくのです。
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グロースハックとは優秀なアイデアのみを実行すること
グロースハックという言葉が誕生したのは2010年のことです。『Hacking Growth』の共著者であり、GrowthHackersのCEOでもあるショーン・エリス(Sean Ellis)が、ブログ記事”Find a Growth Hacker for Your Startup “の中で、グロースハックという言葉を使用しました。
出典:https://www.startup-marketing.com/where-are-all-the-growth-hackers/
エリスは、ブログ内でグロースハッカーについて次のように述べています。これは「グロースハッカーとは、成長を第一に考える人のことだ。彼らが行うことはすべて、スケーラブルな成長に影響するインパクトの大きいものです。」
また、彼は「成果を上げるグロースハッカーはまた分析力に優れていなければいけません。自分とチームメンバーが出したアイデアの優先順位付け、そのアイデアのテストを行います。そしてテスト済みの成長を牽引してくれるアイデアとそうでないものを判断し、切るべきアイデアを明確にします。そういったグロースハックのプロセスに従うための規律を持つことも、成果を上げるグロースハッカーに大事な資質です。このプロセスを素早く繰り返すことができれば、ビジネスを成長させるためのスケーラブルで反復可能な方法を見つけることができるのです」と続けています。
つまり、グロースハックとは成長にのみ焦点を当てた活動を指します。アイデアを次々と精査し、有効なものとそうでないものを取捨選択するのです。もちろん、これらのプロセスは考えなしに行われるのではありません。高速であることに加え、適切な戦略に則って遂行されます。
しかし、ここでいう戦略とは、従来のマーケティングにおける成長戦略とは異なります。ブログやソーシャルメディアに投稿する頻度をまとめた書類のような、形式的な計画ではありません。
従来型のマーケティングプランでは、計画されること自体が目的化されがちでした。さまざまな事柄を文書として書き留め、それを上司に提出し、検討・承認された途端に思考が止まってしまいます。結局、計画は立てた人の手から離れ、上司の所有物になります。やがて、時の流れとともに市場の様子が変化すれば、数か月前に立てられた計画は意味をなさなくなるでしょう。
このような従来型のマーケティングプランの欠点を取り除くのが、グロースハックという考え方です。一定の戦略は持ちつつ、計画倒れにならないよう高速にプロセスを回すことで、努力を着実に利益へ結び付けていきます。
グロースハックを実現する3つの制約
テキストや動画といったコンテンツによって顧客を獲得するマーケティングを、コンテンツマーケティングといいます。そして、コンテンツマーケティングにグロースハックの考え方を応用することを、コンテンツ・ハッキングと呼びます。高いコンバージョン率を実現し、ビジネスの急成長を叶えるマーケティング手法です。
では、従来型のコンテンツマーケティングをコンテンツ・ハッキングへ進化させるにはどうすればよいのでしょうか。そのために必要な3つの制約をご紹介します。
制約#1:One Metric that Matters
「成長を追い求める」と言うのは簡単ですが、では「何をもって成長とするのか」は難しい問題です。コンテンツマーケティングにはさまざまな要素が関係するため、どこに着眼するかによって成長の定義は変わってくるでしょう。
したがって、どの指標に焦点を当てるのかを最初に決定します。一度決定したら、徹底的にその指標でよい結果を出せるよう行動しましょう。ここで決定する指標を、OMTM(One Metric that Matters)と呼びます。One Metric that Mattersとは、ビジネスにインパクトをもたらす重要な指標のことです。
具体的にどの指標に焦点を当てるべきかはケースバイケースです。ビジネスの性質や企業の規模などによって変わってくるでしょう。代表例は下記のとおりです。
- Webサイトの月間訪問者数
- 7日間以内の新規ユーザー保持率
- 検索エンジンからの月間流入者数
- 特定の地域からのユーザーにおけるコンバージョン率
- ECサイトにおける「カートに入れる」ボタンのクリック率
多くの指標が考えられるため、複数の指標を参照したいと考える人もいらっしゃるかもしれません。しかし、そうすると努力が分散されてしまいます。反対に、指標を1つに絞り込めばその指標の向上のみに着眼すればよく、行動の指針を立てやすくなります。
例えば僕らであれば、ブログ経由のファネルへのコンバージョン率をベンチマークしています。ブログの右下にSUMOでポップアップを出しています。ブログの読者がこのバナーをクリックして、どのくらいファネルにオプトインしてくれるのか?というのを見ています。僕らは結局ファネルにトラフィックを送り込むことで売上を立てています。
どれだけ多くのトラフィックを集めても、ファネルに入ってもらえないことには一銭にもなりません。しかもリストとして蓄積されるわけでもないのです。逆にオプトインしてくれた見込客はそのファネルの中で購買行動をしてくれるか、リストに入って最終的に別の入口から商品を購入してくれるかもしれません。
このように基本的には、OMTMをそのビジネスのボトルネックとなっている部分に設定します。たとえば、ECサイト訪問者数は十分多いのに、「カートに入れる」ボタンのクリック率が低いのであれば、このクリック率をOMTMに設定します。もともと訪問者が多い以上、彼らをうまく購買に導けるようになれば大きな成果が得られるでしょう。
制約#2:具体的な数値によるゴール
制約#1でご紹介したように、まずOMTMとなる指標を選ぶ必要があります。しかし、ここで選ぶ指標はコンテンツ・ハッキングにおける本当のゴールではありません。コンテンツ・ハッキングのゴールはあくまで利益の獲得であり、OMTMの向上はそのための手段に過ぎないのです。どれほどWebサイトの月間訪問者数やコンバージョン率を高めても、十分な利益に結びつかないのであれば意味がありません。
そこで必要になるのが、ゴールからの逆算です。真のゴールを達成するために、OMTMでどの程度の数値を達成すればよいのかを計算します。リバースエンジニアリングのように、自分が何を行うべきなのかをゴールから分析するのです。
制約#3:実現までのタイムライン
グロースハックの重要な要素の1つはスピードです。コンテンツ・ハッキングにおいてもスピードは非常に重要で、可能な限り早いペースでプロセスを回す必要があります。ドッグイヤーと表現されるように、デジタルにおける市場変化は極めて早く、時間がかかると努力が成果に結びつかなくなります。
いつまでに何をするのか、年・月・日単位で具体的に設定しましょう。達成可能な範囲であれば、この期日は短ければ短いほど有益です。快適でやりやすいと感じられるよりも短い期日を設定しましょう。
あなたの制約を文章にする
最後に、上述した3つの制約を明文化しましょう。その文書こそが、コンテンツ・ハッキングにおける戦略です。このように言うと、拍子抜けする人もいらっしゃるかもしれません。ここで決めたのはOMTMと具体的な目標数値、そして期日だけだからです。わずか3つの決定事項を戦略と呼ぶことに抵抗を感じられる人も多いでしょう。
しかし、このシンプルさこそが武器です。複雑な規則にがんじがらめにされることはなく、コミュニケーションをとりながら流動的に行動できます。余白を残し、中途半端な戦略にしておくことが、かえって高速かつ効果的なプロセスを実現するのです。
まとめ:3つの制約に基づいて高速にPDCAを回す
今回はグロースハックの考え方と、それをコンテンツマーケティングに応用したコンテンツ・ハッキングについてご紹介しました。グロースハックとは利益の獲得に着眼した戦略であり、これを実現するには以下の3つの戦略を立てることが大切です。
- 制約#1:どの指標に焦点を当てるのか?
- 制約#2:いくらの数値を目指すのか?
- 制約#3:いつまでに達成するのか?
グロースハックはスピードが肝要です。早速、この3つを決めて行動してみてください。きっと数週間後・数か月後には変化が起きているでしょう。今回のレクチャーはここまでです。また次回、お会いしましょう。