今回のレクチャーでは、クリエイティブ・ブリーフの作り方についてご紹介します。クリエイティブ・ブリーフとは、広告を作る際のプロジェクトの設計図です。このレクチャーを受けると、クリエイティブ・ブリーフを作ってチーム作業を円滑化できるようになります。
プロジェクトの概要からクライアント、ターゲットに関する情報、そしてクリエイティブのルールなどをまとめ、メンバーやステークホルダーと共有します。方向性を明確にし、現実性をもってプロジェクトを完遂するために必要な計画書なのです。
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クリエイティブ・ブリーフとはプロジェクトの設計図
ビジネスで何らかのアクションを起こす際には、目的や方法を関係者と共有する必要があります。このことはマーケティング活動において、広告を作る際も同じです。ターゲットや伝える事柄、効果がある根拠などをまとめた設計図を作成しなければなりません。
マーケティング活動におけるこのような設計図を、クリエイティブ・ブリーフと呼びます。広告の作り手と、ステークホルダーの間で認識を一致させるための計画書です。アドバタイジング・ブリーフと呼ばれることもあります。
クリエイティブ・ブリーフに何を書けばいいのか?
では、クリエイティブ・ブリーフには具体的にどのようなことを記せばよいのでしょうか。このレクチャーでは、記載事項を4つに分類してご紹介します。僕が用意した「クリエイティブ・ブリーフ作成シート」の見出しに沿って、必要な情報を記入していきましょう。
項目#1:プロジェクトの概要
最初に記載するのはプロジェクトの全体像を伝える情報です。まず、プロジェクトの目的について書きましょう。「サイト訪問者を増やす」「製品Aの認知率を向上させる」などが該当します。
例えば僕らであれば「Kindle出版でリストの数を120%増やす」みたいなことをプロジェクトとして作ります。これは、単にKindleの売上を狙うだけでなく、Kindleの読者に後ろの自社サイトでバックエンド商品をオファーします。また商品を買わなかったとしても僕に興味を持ってもらい、メルマガに登録してもらいます。
あとは直接的にKindle書籍を読んでもらう他にも、きちんと権威性を出すことで結果的にリストを増やす。みたいなことを考えています。例えば、UdemyとかYouTube広告で僕のことを見た人がいたとします。
彼らは石崎力也の名前でGoogleで指名検索します。その時に検索結果にAmazonの書籍リンクが出ていて、Amazonの著者ページにも沢山の本が並んでいることを想像してください。間違いなく「信頼に値する人物だ」と無意識に感じてもらえるはずです。こういった副次的な効果も狙っているわけです。
続いて、プロジェクトに関する詳細な情報を記載していきます。具体的には、販売したい製品やサービスといった情報を列挙していきましょう。また、従うべきルールやガイドラインがあれば、それを記載しておくことでプロジェクトの方針が明確化します。
次は、成果物について記載します。どのようなプロダクトを作るのか、文章だけでなく画像やリンクを用いて表現しましょう。最後にプロジェクトのゴールを設定します。ここで役に立つ考え方が「SMARTゴール」です。SMARTゴールとは、次の5つの要素を踏まえたゴールのことです。
Specific:具体的
最初にプロジェクトの目標を設定しましたが、これを具体的な数値で示しましょう。たとえば、「サイト訪問者数を20%増やす」などが該当します。
Measurable:測定可能
具体的に目標を定めた際、その目標が定量的に測定可能であることが大切です。前述の例のように、パーセントなどを用いて表現できるものをゴールに設定し、その具体的な測定方法も考えておきましょう。
Attainable:達成可能
どれほど具体的な目標でも、現実的に達成不可能では意味がありません。これまでの実績などを踏まえて、実現可能な数値を設定しましょう。
Relevant:適切
そもそも、立てた目標がビジネスにおいて適切であるかを検討する必要があります。サイト訪問者数の増加を目標とするのであれば、それが確実にビジネスの成長につながるようでなければなりません。
Time:期限付き
何月何日までに達成するのか、具体的な期限を設けましょう。あまりに短くすると達成不可能になりますが、余裕を持たせすぎるとメンバーの意欲が失せ、成長が鈍化します。上記の5つの要素を踏まえ、適切なゴールを設定してシートに記載しましょう。
項目#2:クライアントに関する情報
次は、クライアントに関する取引上の情報をシートに記載していきます。具体的には、シートに以下の情報を記入します。
納品期限
成果物を納品する期限を設定します。最終納品日はもちろんですが、その途中でも何度か成果を報告する必要があるでしょう。その日時も明確に定めておくことが大切です。
予算
プロジェクトにかけられる予算は無限ではありません。どの程度の予算で進めるのか事前に決め、その範囲内でプロジェクトを完遂できるよう計画を立てましょう。
担当者
誰がプロジェクトの承認権限を持つのかを記載する項目です。連絡先なども書いておくとよいでしょう。
クライアントの連絡先
クライアントと適切にコミュニケーションを取れるよう、連絡先を記載しておきましょう。何か確認すべき項目が出てきたときに、すぐに連絡を取るためです。
項目#3:ターゲット・オーディエンス
マーケティングにおいてターゲットの設定は不可欠です。ターゲットとなる人物のペルソナを決め、そのペルソナの心に響くようなコンテンツを作らなければなりません。そこで、次は以下の項目を埋めていきましょう。
誰をターゲットにしているか
ペルソナを設定する段階です。ターゲットの年齢や性別、住所、家族構成、価値観、悩み、ニーズ、ライフスタイルなどを具体的に設定します。対象の人物が頭の中に思い浮かぶようになるくらい、丁寧に作りこみましょう。
プロジェクトが解決する問題は何か
ターゲットに対しどのような価値を提供できるかを考えましょう。ターゲットが抱えている悩みと、自社の商品・サービスが解決できる悩みが一致した際に、コンテンツは大きな効果を発揮します。
どのようにターゲットのエンゲージメントを獲得するのか
商品・サービスが解決できる悩みと、ターゲットが抱えている悩みが一致しても、そのことが伝わらなければ意味がありません。コンテンツのどのような要素が、どのように顧客の心の琴線に触れるのか計画しましょう。具体的には、画像やコピーライティングなどが該当します。現状はターゲットにどう思われているのかを分析し、その気持ちを狙い通りの方向へ導ける要素を盛り込みましょう。
項目#4:クリエイティブに関するルール
企業やブランドにはイメージがあります。そのイメージと広告のイメージが一致していなければ、オーディエンスは違和感を感じ、広告を信用しなくなるでしょう。そこで、広告なども含めて自社のコンテンツを作る際には次のルールを守る必要があります。
コンテンツ・スタンダード
コンテンツ・スタンダードとは、当該のブランドが提供するあらゆるコンテンツに共通する基準のことです。ECサイトを作るための仕組みを提供しているShopify(ショピファイ)を例に取ると、次のようなことをコンテンツ・スタンダードとして定めています。
- Respond to merchant needs(顧客のニーズを満たすこと)
- Use plain language(分かりやすい言葉を使うこと)
- Encourage action(読者に行動を促すこと)
- Be consistent(一貫性のあるコンテンツを出し続けること)
たとえば、「顧客のニーズを満たすこと」を基準とするなら、広告もそれに従わなければなりません。単に購買意欲を刺激するだけではなく、オーディエンスが抱いている欲求を満足させられることを伝えなければならないのです。こうした基準を事前に明確化し、メンバー間で共有することで、プロダクトの品質を維持できます。
ブランド・トーン
前述のコンテンツ・スタンダードが「内容」に関するルールであるとするならば、こちらのブランド・トーンは「雰囲気」に関するルールと言えます。語り口調や画像のイメージなどを、ブランドのイメージに沿ったものにするのです。
たとえば、前述の「常に顧客のニーズを満たすこと」をコンテンツ・スタンダードとするなら、ブランド・トーンは「リアルさを押し出しつつも、顧客に寄り添う優しい雰囲気」「大胆ではあるが、インパクトを前面に出しすぎない」などとなるでしょう。使う画像や言葉、フォントなどを調節し、イメージを損なわないようにしましょう。
サポートセンター向けのツールを提供しているZendeskならば、「楽しげでフレンドリー」と表現します。
Nikeであれば「大胆で、意欲的で、活気に満ちている」という感じです。こういったブランド全体としての語り口を定義しておくと、コンテンツ制作にも一貫性を持たせることができます。
僕たちもなるべく他と違う語り口にしようと決めています。遊び心があって、信頼できる仲間と楽しみながらビジネスをやっている。あんまり「お行儀の良いコンテンツ」ばかりじゃなくて、ちょっと人間臭いものを作りたい。そんな風に考えています。あなたの理想とするブランド・トーンもシート上にきっちり言葉として残してみてください。
まとめ:クリエイティブ・ブリーフで現実的な計画を立てる
クリエイティブ・ブリーフとは、広告を作る際の計画書です。以下の4つの要素を記入します。
項目#1:プロジェクトの概要
項目#2:クライアントに関する情報
項目#3:ターゲット・オーディエンス
項目#4:クリエイティブに関するルール
プロジェクトには複数のメンバーが携わる以上、その内容について適切に共有しなければなりません。また、最初から現実的な見通しを持っておくという目的のためにもクリエイティブ・ブリーフは有効な方法です。シートを活用し、必要な情報を整理・共有しましょう。今回はここまでです。また次回、お会いしましょう。
クリエイティブ・ブリーフ作成シート
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