今回のレクチャーでは、高品質なコンテンツを継続的に作成するためのパフォーマンス基準についてご紹介します。このレクチャーにより、チーム内で品質のバラツキを出すことなく良質なコンテンツを作れるようになります。
「良質なコンテンツ」はすべてのマーケターが目指すものですが、「良質」とはどのような条件を満たすことを言うのでしょうか。その定義がチームメンバー間で統一されていないとクオリティがバラバラになります。その条件こそがパフォーマンス基準です。継続的に良質なコンテンツを提供し、オーディエンスからの信頼を獲得しましょう。
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パフォーマンス基準とはコンテンツ作成のガイドラインのこと
コンテンツを作った際には、それを外部に公開したり社内で共有したりする前に、何らかの方法で品質をチェックすべきです。そうすることで、十分な品質に至らないものが人目に触れるのを回避できます。
しかし、チェックするにはチェックリストのような基準となる指標が必要です。そこで利用されるのがパフォーマンス基準です。パフォーマンス基準とは、コンテンツが満たすべき要件をまとめたガイドラインのことを言います。タスクを完了する前に自分のプロダクトをパフォーマンス基準と照らし合わせることで、一定の品質が満たされていることを確認できます。
なぜパフォーマンス基準が重要なのか?
かのアリストテレスは、次のような名言を残しています。
「人は繰り返し行うことの集大成である。だから優秀さとは、行為でなく、習慣なのだ。」
確かに、人は習慣によって作られます。日々筋トレに励んでいる人はやがて筋肉質な体になるでしょうし、日々読書をしている人は博学になっていくでしょう。したがって、「習慣=その人の人格」であり、「優れた習慣を持っている人=優秀な人物」であると言えます。これは僕がお客さんから教えてもらった話なんですが、そこでも同じことが言われていました。
スポーツ心理学の世界で有名な田中京(たなかみやこ)さんによると、スポーツ心理学の世界でもモチベーションというのは維持するというものではないそうです。行動の継続こそが重要だということです。
まさに僕たちも同じ発想に立ってビジネスを設計しています。モチベーションを上げて、頑張って働こうみたいなやり方は、僕の性に合いません。なるべくやることを平準化させて、毎週同じようなことをやる。モチベーションがなくてもビジネスが回るように仕組みを整える作業です。
僕の好きな小説家の村上春樹さんも同じようなことを言っています。朝早く起きて午前中は5時間くらい集中して執筆を済ませてしまう、午後は体力維持のためにジョギングしたり好きなことをして過ごす。
春樹さんはこんな感じの規則正しい生活を20年、30年という単位でやられてきたそうです。海外にいようが日本にいようが、それが変わることはありません。春樹さんのような文豪といえばすごく破天荒なことをしていそうですが、意外と地味というかコツコツとした習慣によってものすごい成果を出しているんです。
つまり、僕が言いたいのは人は「優れた習慣を持っているかどうか」によって、優秀かどうかを周囲から判断されうるということです。
もし、マーケターとして高品質なコンテンツを継続的に発信していれば、オーディエンスはあなたを優秀なマーケターとして信頼してくれるようになります。反対に、コンテンツが劣悪なことがあれば、あなたはオーディエンスからの信頼を損なうことになるでしょう。オーディエンスの信頼を勝ち取るには、コンテンツを十分に練り上げて、良質なコンテンツだけを発信していかなければならないのです。
ところが、多くのコンテンツ制作者は自分が制作したコンテンツを高い基準に照らし合わせてチェックしていません。マーケティングサービス企業のConductor社は次のように述べています。
「1,000以上のシェアを獲得できるコンテンツはわずか0.1%であり、コンバージョン率は1%を大幅に下回る」
出典:https://www.conductor.com/learning-center/content-moneyball-marketing/
パフォーマンス基準を設け、それをクリアしたコンテンツだけを公開することで、上記のような努力の空回りを防げるでしょう。
パフォーマンス基準の実例
では、具体的にどのようにパフォーマンス基準を設定すればよいのでしょうか。ここではマーケティングカレンダーのツールを開発しているCoScheduleの例を紹介します。CoScheduleの出す集客用コンテンツに関するパフォーマンス基準を見てみましょう。
1.トピック
まず、コンテンツのトピックが適切かどうかチェックします。想定されるオーディエンスのペルソナに沿ったトピックになっているか確認しましょう。
2.キーワード
検索エンジンのアルゴリズムは、オーディエンスとコンテンツを結び付けるマッチングサービスのようなものです。良質なコンテンツでも、SEOを通じてそのコンテンツがオーディエンスにとって有益だとアピールできなければシェアは伸びません。そして、SEOの基本はキーワードの選定とコンテンツへの盛り込みです。ターゲットとなるオーディエンスに見つけてもらえるキーワードを設定し、適切な対策を施しましょう。
3.リサーチ
優れたコンテンツは直感では作れません。データに基づいて客観的に判断する必要があります。さまざまな事例や経験に裏付けられた、根拠あるコンテンツを作成しましょう。
4.包括性
コンテンツは求められる要素を網羅的に備え、オーディエンスのニーズを完全に満たせるものでなければなりません。単に競合他社が扱っている要素を羅列しただけでは意味がなく、それらを包括したうえでオリジナリティを含んだ最高のコンテンツを目指すことが大切です。
5.メール
メールは自社とオーディエンスを密接に結びつけるツールです。単なる「Webサイト運営者VS訪問者」というつながりよりもずっと強力で、コンバージョンに導きやすくなります。そこで、コンテンツのオーディエンスを積極的にメール購読者へ変換していくことが大切になります。メールアドレスの登録へスムーズに導けるよう、導線を意識したコンテンツを構築しましょう。
CoScheduleがパフォーマンス基準を作るためにやったこと
パフォーマンス基準が不適切では、良質なコンテンツを作るためのチェックリストとして機能しません。では、どうすれば適切なパフォーマンス基準を作れるのでしょうか。CoScheduleでは、パフォーマンス基準を作るための活動として次の6つを挙げています。
- コンテンツを公開する理由を明確にする
- 目的への到達度の測定方法を明確にする
- 到達度を示す指標を見つけるためのツールを決める
- 既存コンテンツの中で最大のパフォーマンスを発揮しているものを特定する
- データを列挙し、パフォーマンスに影響するものを特定する
- 分析結果に基づき、コンテンツ制作を計画する
つまり、既存コンテンツを分析することで、最適なコンテンツの在り方を見つけるという手法です。
たとえば、SNSへコンテンツを投稿する最適な時間帯を特定する場合、さまざまな時間にコンテンツを投稿してもっとも反応がよかった時間帯を見つけ出します。こうして特定した条件をパフォーマンス基準として設定すれば、コンテンツ作りの際に役立ちます。
パフォーマンス基準を作るには?
上記の手法は、既存コンテンツの中に成功した事例がある場合に有効です。しかし、成功事例がないケースもあるでしょう。その場合はどうやってパフォーマンス基準を作ればよいのでしょうか。
まず、次の点を意識しましょう。
- 競合コンテンツにないものを明確化する
高いシェアを獲得するには、競合コンテンツに勝利する必要があります。そのためには、競合コンテンツにない要素を明確にし、自社のコンテンツに含めなければなりません。
- 自社の強みを利用する
競合コンテンツになく、自社にはあるというのがもっとも望ましい状態です。自社のユニークな強みを分析し、競合他社と差別化しましょう。
最初から完璧を目指す必要はありません。むしろ、失敗を重ねてデータを収集し、適切なパフォーマンス基準を目指すことが先決です。これから公開されるすべてのコンテンツを、次のコンテンツ作りに活かしましょう。
まとめ:パフォーマンス基準で常に最高のコンテンツを作る
本当に良質なコンテンツはそう多くありません。今この瞬間にも世の中では膨大なコンテンツが作られていますが、その中で高いシェアを実現するのはごく一握りです。しかし、成功例のデータに基づいて適切な基準を設け、満たし続ければ、良質なコンテンツをコンスタントに提供できます。
そのための基準がパフォーマンス基準です。基準を満たして初めてタスクが完了したとみなせます。厳しい基準をクリアしたコンテンツなら、良質であることが保証されたようなものです。努力を効率的に成果に結びつけることができます。
早速、自社独自のパフォーマンス基準を設け、チェックリストを作成してみてください。どのようなコンテンツを作るべきなのか明確化し、迷うことなく行動に移せるでしょう。今回はここまでです。また次回、お会いしましょう。