今回のレクチャーでは、マーケティング戦略のうち、目標設定の方法についてお話しします。ビジネスを成功に導くマーケティングを行うためには、具体的かつ測定可能な目標や指標を持つことが重要となります。これを見れば、マーケティングにおける目標設定の方法が分かります。
マーケティングにおける目標とは、すべてのマーケティング活動の原動力となるようなものです。具体的かつ期限付きの目標を持ったマーケターは、それを現実化する可能性が高くなることがわかっています。今回は、そんな具体的で期限の付いた目標の立て方も説明していきます。
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SMART目標とは
マーケティング戦略における目標は「SMART目標」であるべきです。はじめに、SMART目標とは何なのかについて簡単にご紹介しておきましょう。SMARTというのは、5つの単語の頭文字から来ています。SMARTの5つの文字は、それぞれ次の言葉を表しています。
- Specific(具体的、分かりやすい)
- Measurable(計測可能、数値化されている)
- Aspirational(野心のある)
- Relevant(関連のある)
- Time-bound(期限が明確な)
つまり、SMART目標とは「具体的で計測可能な、経営目標と関連のある期限付きの目標」であると言えます。実は、僕らの掲げているSMART目標のAの部分は、普通言われているものとは異なってます。
普通はここにAchievable(達成可能な)という単語が来ますが、僕らはあえてAspirational(野心的な)と表現しました。あえて、現実的な数値から離れた数字を目指してほしいからです。厳しい制約のあるところに、新しいアイデアは生まれます。
僕は大学を出てすぐの起業して間もない頃、1日中パソコンに向かって働いていました。それこそほんと1日に16時間とか平気で働いていたんです。それは制限が無かったからです。いい悪いは別として、頑張りすぎてしまう性格のためか、いくらでも時間を使えてしまったんです。
でも結婚して子供ができて、生活が一変しました。うちは妻と僕の2人で子育てをしていたので、圧倒的に仕事の時間が無くなりました。仕事できたとしても、小さな赤ん坊をおんぶしたまま。パソコンでの仕事も重労働になりました。
働く時間や環境に制限が加わった瞬間、僕の働き方が変わりました。「こんな働き方いつまでも出来ない」そう思って、自分の労働力をもっと効率的にお金に変えるための方法をやっぱり考えるようになりました。
その時立てた目標が「週4時間だけ働く」でした。同名のティモシー・フェリスの著書にも影響を受けて、途方も無い目標を立てていたと思います。途方もない、つまりAspirationalな目標を立てたからこそ、今のような少ない時間で働く方法を思いついたとも言えます。
もしあのとき僕に何の制限も加わらなければ、僕は今でも西麻布のオフィスで仲間と1日中パソコンに向かって仕事ばかりしていたはずです。つまり、SMART目標で大事なのは現状の枠を超えた野心的な目標だと覚えておいてください。
目標設定のフレームワーク
早速、あなたのビジネスにおけるSMART目標を設定しましょう。明確な目標を立てるためには次のフレーズに沿って、あなた自身の名前や目標数値を入れてください。
「{目標の年月日}までに、{あなたの組織の名前}のマーケティングチームは{期間}ごとに{数字}を達成する」
ここに僕らの例を当てはめるならば、このようになります。「2023年12月31日までに、石崎力也のマーケティングチームは、毎月6000人のオーガニックリードを獲得できるようになる」という形です。
目標数値については、現在からどれだけ成長したいのかという視点で考えます。例えば、現状の10倍の成長を目指す場合は、次の公式を使って目標を計算してみると良いでしょう。
「直近の月間の平均数値 × 10倍」
つまり直近の2〜3ヶ月の数値の平均を取り、それを10倍した数値が目標値になります。なぜなら、実際に月間の数値というのは揺れ動いていますよね。単月の数字だけでは誤差が大きいので、直近数ヶ月の平均値を取ってそれに10を掛けているという訳です。
もちろんビジネスによっては、10倍という成長目標は非現実的かもしれません。そのような場合は、2倍や30%など、もう少し実現可能な目標に置き換えて目標数値を決めてください。あまりに野心的すぎて心が折れてしまうようなものであれば、少し目標自体を下げても構いません。
この数字をマーケティングチームに伝えることで、全員が同じ方向を向いて行動することができます。そして、全員が同じ目標に向かって動くことで、高い結果が生まれるのです。
SMART目標の前提を設定する
具体的なSMART目標を設定していきましょう。今回は「石崎式!目標トラッキングシート」を使ってSMART目標を作っていきましょう。「目標トラッキング」とは、最終的な目標から逆算して、中期的な目標数値やその達成度合いを確認していくものです。
では「石崎式!目標トラッキングシート」の使い方を見ていきましょう。まずはシート内の「前提」の部分を記入していきます。ここでは、目標とする数値とそれを達成する目標期間の合計4つの項目について記入します。
#1:開始時点での数値を入力する
まずは、開始時点での数値を入力してください。
この例を見ると、開始時である1月時点の数値は「600」と記入されていることがわかりますね。これは前半でもお伝えしたように直前の10月、11月、12月に発生したオーガニックリードの平均値です。
オーガニックリードとは、有料広告以外から集まった見込客のことです。もちろん、数値や項目はあなたのビジネスに合わせたもので構いません。売上やアクセス数、顧客数など、あなたのビジネスや目標に沿ったものを記入してください。
#2:最終目標の数値を入力する
開始時点の数値を入力したら、次は最終目標値の数値を入力します。ここで記入するのは、目標期日までに達成したい具体的な数字です。
今回の例では、最終目標値は「6,000」となっています。つまり、設定した目標期間である12ヶ月間の間に、毎月6,000人のオーガニックリードを獲得できるような状態になるということですね。
#3:ストレッチ目標を入力する
ストレッチ目標とは、少し背伸びすることではじめて手が届くような、難易度の高いレベルの目標のことです。万が一、通常の目標値を達成してしまったときのバッファーの役割を果たします。これを「最終目標値」の下のセルに入力してください。
この例では、ストレッチ目標は「7,000」という風に入力してみます。つまり、理想的には1年後に月に7000件のオーガニックリードが得られているという状態です。これをストレッチ目標に入れてます。
#4:達成期間を入力する
「目標までの月数」のセルは、目標を達成するために必要な月数を示しています。ここに12と入力すれば12ヶ月つまり1年で目標を達成することを意味しています。
この例では、「目標までの月数」は12と記入され、1ヶ月ごとの目標数値と進捗状況の記入欄が12ヶ月分用意されています。1月に目標達成に向けての取り組みが始められ、12月に目標達成することを目指していることがわかりますね。
この時点で、12月の欄の最終目標値とストレッチ目標の数字が、「前提」の欄の最終目標値とストレッチ目標のセルに入力した数字とそれぞれ一致していることに気づくでしょう。12月の最終目標数値を起点として、それを達成するためには月々どれくらいの成長を達成しなければならないのかが明記されています。
#5:毎月の実績を入力する
ここまでで、前提となる条件の記入が終わりました。ここからは、毎月の運用方法です。といっても、基本的な項目の入力が済んでいるのでやることはシンプルです。
毎月1日に、前の月の数字を「実績」のセルに入力します。そうすると、自動的にその月の目標達成率が計算されます。目標と書かれている部分は、前提となる目標から割り出した、その月の目標地です。これは1月から上がっていって、どんどん目標に近づいているはずです。
そのときに同時に、その月のストレッチ目標とストレッチ目標に対する達成率も表示されます。自分がいまどのくらい目標を達成できているのか、毎月入力することで確認していくことが出来ます。
まとめ:具体的かつ期限付きの目標を決める
マーケティングにおける目標は、具体的かつ計測・達成可能で、ビジネス上の目標と関連性のある、期限付きの目標であるべきです。具体的な目標を決めることで、月々、あるいは日々、どれくらいの成果を上げれば良いのかがわかるようになります。
SMART目標を作り、それをきちんと達成していくにはお伝えしたシートのようなものが必要になります。またこういった資料として、明文化しておくことで進捗状況も客観的に把握できるようになるでしょう。ぜひ野心的な目標を立てて、その達成のために紹介したシートを活用してください。今回は以上です。また次回のレクチャーでお会いしましょう。
石崎式!目標トラッキングシート
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