今回のレクチャーでは、マーケティングについての話題をお届けします。One Metric That Mattersという概念を用いてチームに集中力と規律をもたらす方法をご紹介します。このレクチャーを参考にすれば、最終目標到達のために今すぐすべきことは何なのか、明確化できるようになります。
今日のマーケターは、データの不足で悩んでいるのではありません。むしろ、膨大なデータから本当に着眼すべきデータをふるい分けられなくて悩んでいるのです。One Metric That Mattersの考え方を用いれば、ただ1つの重要なデータに着眼し、目の前のことに邁進できるようになるでしょう。
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One Metric That Mattersとは最重要なたった1つの指標のこと
One Metric That Mattersとは、ただ1つの重要な指標のことです。略して1MTMとも呼ばれますが、他の雑多な指標に惑わされることを避けるために設定する
マーケティングにおいて、注意すべき指標は無限にあります。訪問者数や離脱率、回遊率、滞在時間、再訪問率など、分析対象となるデータは膨大です。
そして、無限にあるデータこそがマーケターを苦しめています。あまりにデータの数が多すぎて、どこに着眼すればよいのか分からないのです。「良質なコンテンツとは何か」「どの指標を見れば成長が分かるのか」など、課題は山積みです。
そこで1MTMという考え方が登場します。多数ある指標のうちからもっとも重要な1つを選び出し、その指標に基づいてマーケティング施策を実施していくのです。
あなたの1MTMを追求すべき理由
何を1MTMに設定すべきかは、今あなたが置かれている状況によって異なります。なぜなら、「成長」という言葉が指す内容が、状況次第で左右されるからです。
例として、作家であり金融の達人でもあるデイブ・ラムジー氏が提唱する7つのステップを見ていきましょう。以下は、彼が金融負債を抱えている人々を支援する際に適用したステップです。彼はこれらをベイビーステップと呼んでいますが、これは赤ちゃんの歩みのように少しずつ段階的に進むということを意味しています。
- ベイビーステップ#1:初心者向けの緊急用資金として現金10万円を用意する
- ベイビーステップ#2:借金雪だるま方式で、家以外のすべての借金を返済する
- ベイビーステップ#3:3~6ヶ月分の緊急用資金を準備する
- ベイビーステップ#4:家計の15%を老後のために投資する
- ベイビーステップ#5:大学進学のための貯蓄を始める
- ベイビーステップ#6:住宅を繰り上げ返済する
- ベイビーステップ#7:富を築き、惜しみなく寄付をする
注目したいのは、ステップごとに目標が変化していることです。ステップ1では現金10万円の準備がゴールでした。しかし、ステップ5では進学費用の貯蓄になっています。貯める金額や目的が変化し、その達成度を測る指標、すなわち1MTMも状況に応じて変化しています。
これと同じことがビジネスでも言えます。あなたが意識すべき1MTMと、隣の会社が意識すべき1MTMは同じではありません。自社がどのような状況にあり、何を目指すべきなのかを洗い出したうえで、それを反映した自社オリジナルの1MTMを設定する必要があるのです。
1つの指標だけを追いかけるメリット
自社オリジナルの1MTMを設定すべき理由は今お伝えしました。では、そもそもなぜ数ある指標のうちから1つだけを選定し、1MTMとして掲げる必要があるのでしょうか。
デイブ・ラムジー氏は、ベイビーステップがうまく機能するのは集中と規律を促すからだと述べています。各ステップにおいて目先の目標に全力を投じることが、最終目標達成のための最短ルートであるということです。これとまったく同じ理屈が、ビジネスにおける1MTMにおいても成立します。
メリット#1:重要事項に集中することが出来る
重要な指標を1つ選んで1MTMに設定することで、重要事項に集中できるようになります。これまで分散されていた戦力を、一点に集中投下できるようになるのです。「二兎を追う者は一兎をも得ず」ということわざがありますが、より重要な一兎に狙いを定めて全力を投じれば、きっとその一兎は捕まえられるでしょう。
ただし、別の指標が無意味であるということではありません。別の指標は、1MTMがなぜ増加あるいは減少したのかを分析する材料になります。そういう意味では有用ですが、あくまでもっとも重要なのは1MTMであり、リソースは1MTMに集中すべきということです。
例として、Webサイトで新規顧客の獲得を目指すにあたって、資料請求数またはオプトイン数を1MTMに設定したとしましょう。この場合、チームのリソースはオプトイン数の向上にのみ投じるべきです。そのほかの、サイト滞在時間や利用デバイスといった指標を伸ばすためにリソースを投下することは行いません。
しかし、1MTM以外の指標は、1MTMがなぜ変動したのかを理解する手掛かりになります。オプトイン数が減ったのは、サイト訪問者自体が減ったからなのか、離脱率が高くなったからなのかといったことを分析するのに役立つのです。
メリット#2:チームに規律が生まれる
1MTMを設定することで、チームに規律が生まれます。自分たちが今何をすべきなのかが明確化されるのです。僕らのチームでも過去に、各メンバーの規律が乱れていたことがありました。どの指標に集中すべきかが明確でなかったため、すべての成果物を同じ比重で扱ってしまっていたのです。その結果、対して重要でもないタスクに膨大なリソースが当てられてしまったんです。
例えば、ブログ記事の中に挿入する画像の選定に時間を掛けたのに、肝心の記事のCTAが盛り込まれていなかったり。一時的なプロモーションメールの執筆作業に追われて、定期的に出している集客コンテンツの作成が疎かになったり。という具合です。
1つの指標に集中すれば、その指標を向上させるために100%の責任を負えるようになります。そして、1MTMの向上こそが、チームの行動の良し悪しを判断する評価軸となります。このシンプルさが、チームの活動にメリハリをもたらしてくれるでしょう。
1MTMを使ってデータを活用する
最後に、自社が置かれた状況をふまえて1MTMを選定する方法をご紹介します。まず、自社の成長にもっとも密接に結びついた指標を考えましょう。例として、最終的な目標が毎月500件のリードジェネレーションだとします。そこに到達するには何が必要でしょうか。
もしあなたのサイトに訪問しているユーザー数が1ヶ月に2,500人であれば、毎月500件のリードジェネレーションを達成するには、訪問者の20%をリードに変える必要があります。しかし、これは現実的ではありません。
一方、訪問者の5%をリードに変えることは可能だと仮定します。この場合、サイト訪問者を10,000人/月にすれば、毎月500件のリードを生み出せることになります。これなら現実的に達成できそうではないでしょうか。したがって、上記の例における1MTMはサイト訪問者であり、目標数値は10,000人/月ということになります。
サイト訪問者を1MTMと定めた瞬間から、1MTMの向上だけを目標とします。サイト訪問者の増加にのみリソースを投じ、この目標の達成に寄与するか否かというシンプルな視点で施策を計画しましょう。
まとめ:現状を反映した1MTMを定めて全リソースを集中する
今回は1MTMの考え方と、自社の現状を踏まえた独自の1MTMの設定方法、1MTMを設定するメリットをご紹介しました。多種多様な指標の中からもっとも重要な1つを選び出すことで、とるべき行動が明確化されます。
まずは、自社が最終目標を達成するために目指すべき、目先の目標を洗い出しましょう。そして、その達成度を測るのに役立つ指標を1MTMに設定してみてください。
一度設定したら、あとは1MTMの向上に情熱を燃やすだけです。わき目を振らず、目標到達に向けて邁進していきましょう。今回のご紹介はここまでです。また次回、お会いしましょう。