今回のレクチャーでは、クリエイティブなSNSキャンペーンの企画方法について解説します。キャンペーンの立ち上げは、共同作業です。一人であってもチームであっても、使える頭脳を最大限に活用して素晴らしいアイデアを生み出す方法があります。このレクチャーを学べば、SNSキャンペーンの成功事例からSNSキャンペーンのアイデアを作りやすくなるはずです。
どのようにアイデアを出せば良いのか、最終的な企画案をどう提案すれば良いのか、一つずつお話ししていきます。また、実際の企業でのSNSキャンペーンの成功例も紹介します。キャンペーンを具体的にイメージするためにぜひ参考にしてください。
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ステップ#1:ブランドとフォロワーの興味の接点を見つける
あなたのフォロワーは、おそらく多様な関心を持っています。Followerwonk(フォロワーウォンク)を使ったTwitterのリサーチや、アンケート調査、Copy Stalkingなどから彼らの興味を知ることができます。Copy Stalkingとは、ネット上に存在するフレーズや発言をスワイプファイルのようにストックして人々の興味関心をリサーチすることです。あなたのブランドとフォロワーの興味が重なる部分を探すことで、SNSキャンペーンのアイデアを得られるでしょう。
例えば、あなたがボードゲームを販売している場合、見込み客がボードゲーム中にスナックを食べたりしていることを発見するかもしれません。その場合にはスナックメーカーとコラボしても良いでしょう。スナックを作っているブランドに連絡を取り、共同でキャンペーンを行う。そのスナックを景品とするキャンペーンを実施します。そのスナック菓子を利用して、ブランドの認知度を高めるキャンペーンを行います。例えばボードゲームとそのスナック菓子を使った写真を投稿するといった具合です。
または、あなたが水筒を売っている場合にはフォロワーはスポーツやアクティビティに興味があるかもしれません。ジム、スケボー、ランニング、ヨガ、スイミング、スノーボード、サーフィン、登山、マウンテンバイクなどです。そういった趣味のあるグループや個人に連絡して、自社のSNSキャンペーンに登場してもらうのも良いでしょう。
僕のやっているオンラインコースビジネスの場合は、旅行や移住に興味のある人が多いです。またデジタルコンテンツを売って労働集約的な働き方をやめて時間が出来たら、新しい趣味やアクティビティを始めたいと思っている人もいます。カメラやデジタルガジェット、または海外のインターネットツールへの関心も高いです。
このようにあなたのアカウントのフォローには、何らかの共通点があるはずです。フォロワーたちの発言や日常の発信を観察し、その中から投稿のヒントを得てください。
ステップ#2:ブレインストーミングでアイデアを絞り込む
実際にどんなキャンペーンを打ち出すのかを考えるには、シンプルなブレインストーミングが有効です。次の3つのステップを実施してください。
- 10分間のブレインストーミング:思いつく限りのアイデアを書き出します。この時点では、簡素なキャンペーンのタイトル、タグライン、一行の説明文でも構いません。ポイントは思いついたら、アイデアの良し悪しや実現可能性を考えることなくアイデアを書き出すことです。
- 10分間のアイデア選別:ブレインストーミングで出たすべてのアイデアを3段階で採点します。3点はキープ、2点はまあまあ、1点は不採用です。
- 10分間の実行アイデア決定:3点が付けられたものを優先に、実行に映すアイデアを決定します。
このプロセスに従うことで、素晴らしいアイデアを迅速に得られます。各ステップに10分ずつ時間をかけるだけで、たくさんのクリエイティブなアイデアを手に入れられるのです。
アイデア出しにはホワイトボードや付箋を活用する
アイデア出しにはホワイトボードの活用がおすすめです。オフィスのどこかに1つはあるはずです。
- アイデアを書き込む書記役を用意する
- マーカーを用意する
- キャンペーンに関連する考えやアイデアを自由に書き込む
- ビジュアルイメージがある場合はそれも描き出す
すべての作業をパソコンで行うことに慣れている人もいるかもしれません。しかし、ホワイトボードには次のような利点があります。
- 狭いパソコンの画面から離れられる
- 考えながら動くことができる
- パソコンで開いている他の資料に気が散らない
- キーボードとマウス以外のもので作業することで、創作意欲が高まる
ミネソタ大学による研究結果では、部屋の天井が高いほどアイデアが出やすいとされています。これは天井の高さによって人間が自由を感じてアイデアを出しやすくなるためだと説明されています。これと同じ発想に立って、狭いパソコン画面を離れて広いスペースを使って発想すると良いでしょう。
もしホワイトボードに書いていくのに時間がかかるようであれば、各自が付箋に書いてホワイトボードに貼っていってください。ブレインストーミング中によく起こるのは、発話者のアイデアを聞いているうちに自分のアイデアを忘れてしまうことです。この方法では、アイデアが消えるのを避けるために各自のアイデア出しに待ち時間が発生しないようにする目的があります。
ステップ#3:SNSキャンペーンの企画書を作る
SNSキャンペーンに関する調査、ブレインストーミング、アイデアの立案を終えたら、これらをまとめた企画書を作成しましょう。これは、あなたのアイデアを関係者に売り込むためのものです。社内であればそれは上司を意味します。代理店の場合はクライアントとなるでしょう。
キャンペーンに名前をつける
キャンペーンにはキャッチーなネーミングが必要です。優れたキャンペーン名をつける際には、次の3つを満たしてください。
- キャンペーンのテーマに直接関係する
- 印象に残る
- 簡潔である
例えば、キウイのゼスプリでは中身の赤い商品「ゼスプリレッド」の発売時に「ゼスプリレッドってどんな味?」という名前のキャンペーンを打ちました。
これは赤いキウイの味に対する人々の好奇心を刺激しています。キャンペーンのテーマそのままで、印象にも残ります。また例えば「ゼスプリレッド発売記念リツイートキャンペーン」のような、ありがちで覚えにくい名前でなくスッキリとしていて簡潔です。
またAirbnbがパンデミック下で行った「Go Near」キャンペーンも完結で印象に残るキャンペーンです。通常、旅行というのは自分が住んでいる場所から遠く離れたところに行くことを指します。ですが、AirbnbのGo Nearキャンペーンは、パンデミックで大きな移動を制限された人たちが近場にも素晴らしい旅行先があることを気づかせるものでした。
目的とターゲットを明記する
このキャンペーンを実施する目的とターゲットを明記しましょう。具体的には次の項目を明確化してください。
- 目標:イベントのプロモーション、コンテストの立ち上げ、ブランディングの強化など、目的をはっきりさせてください。
- 対象者:誰をターゲットとしたキャンペーンであるのかを明らかにしましょう。
- 対象SNS:どのSNSでそのキャンペーンを実施するのかを決めます。目標と対象者に基づいて、最適なプラットフォームを選びましょう。
次はキャンペーンを実施するのに適したSNSの選び方を紹介します。
対象SNSプラットフォームを絞る
すべてのキャンペーンがすべてのSNSで成功するとは限りません。ある特定のSNSに限定して実施する方が効果的な場合もあります。次の質問に答えることで、最適なプラットフォームを選べます。
- 自分のブランドが最も得意とするSNSはどれか:あなたのブランドがデザインや写真に関連するものである場合、写真や動画がメインのSNSが最適かもしれません。そうでない場合は、写真や動画をあまり必要としないSNSを選択する必要があるかもしれません。
- 自分のブランドが最も苦手とするSNSはどれか:現在苦戦しているSNSでフォロワーを増やしたいなら、別の誰かとコラボしたキャンペーンが有効かもしれません。
- ハッシュタグが必要か:キャンペーンにハッシュタグの指定を含めるべきかを検討しましょう。この判断は、対象とするSNSとフォロワー層に大きく依存します。
SMARTでKPIを設定し成果の測定方法を明確にする
キャンペーンが終了したら、そのパフォーマンスを報告する必要がありますね。事前に、キャンペーンの成果をどのような指標やKPIを追跡して測定するかを説明しておきましょう。KPIを設定する際には次のような種類が存在します。
- フォロワー数の増加
- いいねやリツイート数
- インプレッション数
- リプライ数
- クリック数
- エンゲージメント率
またKPIの設定はSMARTゴールに沿って設定することをオススメします。SMARTゴールとは「S=Specific(具体的)」「M=Measurable(測定可能)」「A=Aspirational(野心的)」「R=Realistic(現実的)」「T=Time-sensitive(期限厳守)」のそれぞれの頭文字を繋げたものです。つまり測定可能で期限が設定され、
SMARTゴールに当てはめる場合のテンプレートは次のようになります。
「[期限の日付]までに、うちの[チーム名]は、[大きな成長目標]を実現するために[期間]ごとの[数値目標]を達成する」
これに具体的な数字を当てはめると「今年の8月31日までに、フォロワー数を50万人を実現するために1ヶ月ごとに7万人のフォロワー増加を達成する」のようになります。
SNSキャンペーンで成功した5社の実例
ここで実際に成功したSNSキャンペーンとは、どのようなものなのかを見てみましょう。ここで紹介する企業はいずれも現状を打破し、ユニークで魅力的かつ自社ブランドと結びついたキャンペーンを行っています。
Honest Tea:“#RefreshinglyHonest”
SNSを使っていると人間はしばしば最高の自分だけを見せ、自分の生活が実際よりもより良いものであるように見える投稿を作りがちです。
オーガニックティーを販売するHonest Teaは、「#RefreshinglyHonest」キャンペーンで、このような流れに対抗しています。ハッシュタグ「#RefreshinglyHonest」を使って、SNS上でより正直な日常を共有することを勧めているのです。そして、キャンペーン専用のランディングページでは、それらのストーリーの一部を紹介していました。
GoPro:“Photo of the Day”
ビジュアルコンテンツはSNSで最高のパフォーマンスを発揮するため、カメラブランドのGoProが、その膨大な画像コレクションを活用するのは当然と言えます。
しかし、このキャンペーンが本当に優れているのは、フォロワーの投稿をキュレーションしていることです。Photo of the Dayは、GoProユーザーからGoProで撮影した写真を募り、毎日1枚シェアするというキャンペーンなのです。
Spotify:“Year In Music”
Spotifyにはその年に自分が聴いた曲をランキング形式で表示し、それを共有する機能が何年か前から実装されました。現在ではSpotify Wrapped(スポティファイ・ラップド)と呼ばれています。どの曲やアーティストを最も多く聴いたかなどをSNSで簡単にシェアできます。
このキャンペーンのポイントは、Spotifyを通じてユーザーがSNS上で個性を表現できることです。自分の投稿の中に合計視聴時間などもシェアできるので、他人より多い視聴時間を自慢できるのも素晴らしい点です。競合他社にはないユニークな機能です。
Ritz-Carlton: “Memories”
バケーションは思い出づくり。高級ホテルチェーンのリッツカールトンは、このことをよく理解しています。「#RCMemories」とタグ付けして、リッツカールトンでの体験をシェアしてもらうというこのキャンペーンは、この点をうまく突いています。
このキャンペーンは、宿泊客とホテルそれぞれにメリットがあります。宿泊客としては自分がどこに泊まっているのかアピールできます。またホテルとして豪華な客室やアメニティをアピールできます。Win-Winで、しかも真似しやすいアイデアですね。ハッシュタグのRCMemoriesという言葉も上手です。一目ではリッツカールトンだと思わせずにさりげなく自慢したい人たちの心をくすぐっています。
KLMオランダ航空:“Happy To Help”
はい、待っていましたという感じですがKLMは僕の住んでいるオランダ王国のフラッグシップとなる航空会社です。航空会社のKLMは、”Happy To Help”キャンペーンで顧客サービスを新たなレベルへと導きました。混雑した空港に巨大なコントロールルームを設置し、モニターとスタッフを配置しました。
このチームは、KLMオランダ航空の顧客であるかどうかにかかわらず、不満のある旅行者からの苦情をTwitterで監視し、彼らが抱えるあらゆる問題の解決を支援サポートしました。その内容は、紛失したビザの捜索から、飛行機が遅れて空港で夜を越さなければならない人にベッドを提供することまで、多岐に渡ります。
このキャンペーンが効果的だったのは、「人の役に立つ」ことに焦点を当てたからと言えます。助ける相手がどの航空会社を利用しているかは関係ありません。KLMは、空の旅はストレスが多く、災難に見舞われることが多いことを理解しています。そして、彼らのストレスを和らげるキャンペーンを行うことで、不満を抱えた乗客から多大な好感を得たのです。
まとめ:効率的なプロセスでキャンペーンを形作る
- Followerwonk、アンケート調査、Copy Stalkingなどで自社フォロワーの興味の対象をリサーチしてください。
- ホワイトボードや付箋を使ったブレインストーミングでアイデアを探してください。
- SNSキャンペーンの企画書を作ってください。印象に残るキャンペーン名、目的やターゲット、展開するSNSプラットフォームも決定してください。
- キャンペーンの効果測定のためにあらかじめSMARTゴールに沿ってKPIを設定してください。
- 成功したキャンペーンでは、人間の承認欲求を上手に利用したり心を打つ仕組みが取り入れられています。