今回のレクチャーでは、マーケティング・コンテンツの作成における優先順位の付け方についてお話しします。オンラインでマーケティングを行うためには、ブログやSNS、YouTube、ニュースレターなどさまざまな媒体でコンテンツを発信することが重要です。
しかし、思いつくままにありとあらゆるコンテンツを発信しても、売上の増加や見込み客の獲得につなげることは難しいでしょう。コンテンツをビジネスの成長に確実につなげるためには、どのコンテンツから作成すべきかという優先順位を付ける必要があるのです。
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インバウンド・コンテンツとバイヤーズ・コンテンツ
コンテンツ制作の優先順位の付け方についてお話しする前に、マーケティング・コンテンツの目的について改めて確認しておきましょう。マーケティング・コンテンツの目的は、「より多くの売上を生み出す」ことです。これを絶対に忘れてはいけません。
どのようなコンテンツを作成する場合であっても、「これを作成して発信することで、売上につながるか?」ということを常に頭に置いておきましょう。そうでないと限られたリソースをどんどん無駄に使う罠にハマってしまいます。
さて、冒頭でもお話しした通り、オンライン上でのマーケティングでより多くの売り上げを生み出すためには、作成するコンテンツに優先順位をつけて取り組むことが重要です。具体的に言えば、セールスファネルの最上部に置かれる「インバウンド・コンテンツ」ではなく、最下部にある「バイヤーズ・コンテンツ」から優先的に作成する必要があります。
「インバウンド・コンテンツ」とは、ファネルの最も外側にあるもので、見込み客を呼び込むことを目的として作られるコンテンツのことです。
一方で「バイヤーズ・コンテンツ」とは、見込客を呼び込むだけでなく、さらに成約にまでつなげるようなパワーを持ったコンテンツのことです。例えば、見込み客が必要としている情報をまとめたブログ記事やビデオなどがこれに当たります。彼らが求めているものを提供しながら、悩みの解決と商品購入の橋渡しをすることを目指すコンテンツです。
このことを理解することで、ただ単にたくさんのトラフィックを生むだけのコンテンツ(=インバウンド・コンテンツ)作りのみに注力するのではなく、見込み客の購買意思決定に役立つコンテンツ(=バイヤーズ・コンテンツ)を優先的に作成していくことができるようになります。
成約につながるコンテンツの見分け方
それでは具体的に、どのような方法でコンテンツ作りの優先順位を決めれば良いのでしょうか。重要なポイントは、コンテンツのアイデアがインバウンド・コンテンツであるのか、バイヤーズ・コンテンツであるのかを見極めることです。
かつてコンテンツマーケティング企業の「The Sales Lion」を創業したマーカス・シェリダンは、同社におけるコンテンツ作成の優先順位付けの方法を公開しています。
それは、全てのクライアントに対して、これから発表を予定しているブログ記事やビデオなどのテーマを見せて、興味の度合いに応じて1〜3の順位を付けてもらうという方法です。
「1」の評価を得たものは、「バイヤーズ・コンテンツ」です。多くの人が興味を抱く内容であり緊急度が高いため、スケジュールの一番上に置きましょう。このテーマから優先して取り組んでください。
反対に「3」が付けられた場合は、「インバウンド・コンテンツ」となる可能性が高いです。つまり、あなたのサービスや製品に関連しているものの、必ずしも製品やサービスの購入につながるとは限らないものです。これに分類されたコンテンツの制作は後回しにして構いません。
このようにコンテンツのテーマごとの優先順位を付けることで、「製品を売ること」に重点を置いたコンテンツ(=バイヤーズ・コンテンツ)と、「ビジネスへの興味を喚起すること」に重点を置いたコンテンツ(=インバウンド・コンテンツ)をバランスよく制作できるようになります。
テーマの優先順位を付けたら、各テーマごとに作成できそうなコンテンツについてブレインストーミングをしてみましょう。ここでは深く考えすぎる必要はありません。何かアイデアを思いついたら、すぐに、どんどん書き留めてください。
作成するコンテンツを書き出したら、それぞれに「3(良い)」「2(より良い)」「1(ベスト)」とランク付けしましょう。3は「インバウンド・コンテンツ」、1は「バイヤーズ・コンテンツ」であることを意味します。これらを3、2、1の順に並べ替えて、コンテンツ作成スケジュールに優先度の高いものから追加していってください。
一貫性のあるコンテンツを作ることは、マラソンを走るようなもの
出来上がったスケジュールに沿ってコンテンツを作成・発信することで、効果的なコンテンツマーケティングを実現できます。
作成すべきコンテンツが可視化されると、すぐにでも新しいコンテンツ作りに取り掛かり、出来上がったものを大量に次々と公開したくなるかもしれません。しかし、必ずしもそれが良い方法であるとは限りません。マーケティング・コンテンツの発信では、きちんと計画を立てて、一つずつ着実に制作することが重要です。
一貫したコンテンツを作ることは、マラソンを走るようなものです。短距離走ではありません。そして、初日からたくさん走れるわけでもないのです。しっかりと計画を立て、日々練習をして耐性をつけることで、最終的には短時間で何キロも走れるようになるのです。
コンテンツ・マーケティングも同じです。事前に計画を立てて、その通りに毎日少しずつ取り組むことで、効果的かつ一貫したコンテンツを生み出せるのです。
このことを実感できる一つの例をご紹介しましょう。マーケター向け作業管理ソフトウェアを提供している「CoSchedule」では、サービス開始からしばらくの間、週に2つのブログ記事を公開していました。しかしその後、ブログ記事公開のペースを週に1つに落としています。彼らは、「週2のペースでは、質の高いコンテンツを発信し続けられない」と感じたのです。
記事の公開数を減らした結果、彼らが作る1つの記事の分量は以前よりも多くなり、内容もより濃密になりました。つまり、コンテンツの質が向上したのです。結果として、ブログの購読者も増加しています。これは、一貫した質の高いコンテンツが、いかに固定的な読者を掴み、マーケティングの勢いを強めることに役立つのかを示しています。
また、彼らは投稿頻度を下げることで、「どうすれば質の高いコンテンツを週2回、投稿し続けられるか」という計画を立てる時間を設けられました。綿密な計画を立てた結果、現在では、彼らはコンテンツの品質を保ちつつ、投稿頻度を元の週2回に戻しています。ブログ記事や製品のアップデート情報、ポッドキャストエピソードなど、幅広く濃密なコンテンツマーケティング記事を投稿し続けているのです。
彼らには、質の高いコンテンツを生み出し続けるために、一度更新頻度を下げ、やり方を練り直すことが必要だったのです。マラソンのように走り続けるためには、まずはゆっくりと歩きながら、確実な計画を立てることが必要であることがわかりますね。
僕たちもYouTubeの投稿頻度を週2回から始めて、一気に週7回まで増やそうと検討したときがありました。そのためには、僕らの出している作り込まれたコンテンツ以外にも、もっとマス向けのコンテンツを作って合間を埋めようと考えたんです。マス向けのコンテンツとは、例えば「オランダの1ヶ月の生活費はいくら?」とか「オランダからパリまでテスラで行くと大変なのか?」といったものです。
確かにこういうコンテンツなら沢山の人に見てもらえるかもしれませんが、果たして成約につながるかといえば怪しいものがありますよね。典型的なインバウンド・コンテンツなので、そればかりを増やしたところでビジネスに大きなインパクトをもたらすかといえばかなり疑問でした。
なので結局、週3回の僕の顔出し動画と、小川さんが撮影している週2回の画面操作系のスクリーンキャストだけでいくことになりました。もしあのとき、もっと大量の動画を投稿する方に舵を切っていたら、今ほどの効率でビジネスを回せていなかったかもしれません。
あなたも、ハイペースで一気にコンテンツを生み出すのではなく、まずは最も優先順位の高いこと一つずつから始めてみましょう。そして、それができるようになったら、徐々にコンテンツの更新頻度を上げれば良いのです。
まとめ:優先順位を決めて効果的なコンテンツを作成する
ここまで、マーケティング・コンテンツにおける優先順位の付け方についてお話ししてきました。コンテンツには大きく分けて、多くの見込み客を獲得することを目的にした「インバウンド・コンテンツ」と、見込み客を製品・サービスの購入につなげることを目的にした「バイヤーズ・コンテンツ」があります。
コンテンツを売上につなげるためには、思いついたアイデアが「インバウンド・コンテンツ」「バイヤーズ・コンテンツ」のどちらに分類されるのかを理解し、各コンテンツに優先順位を付けることが大切です。クライアントに興味の度合いを聞きながら優先順位を付け、重要なものから取り組んでいってください。今回はここまでです。また次回、お会いしましょう。