今回のレクチャーでは、SNSマーケティングを成功させるための戦略についてお話しします。今や、SNSはマーケティングにおいて非常に重要な役割を担っています。にもかかわらず、明確な目標設定やプランニングをせずに運用している人が多くいます。このレクチャーを学べば3つのステップで計画的なSNS運用ができるようになります。
SNSマーケティングを成功させるためには、まずプラットフォームの選定が重要です。その上でどんなコンテンツを投稿するのか、どれくらいの頻度で投稿するのかを戦略的に決めていく必要があります。それでは、まずは自分のビジネスに最適なSNSの見つけ方から見てみましょう。
今回お届けするノウハウはこちら
ステップ#1:参入するSNSプラットフォームを決める
どのSNSでマーケティングを行うべきかは、あなたがどんなビジネスを行っていて、どんな見込み客を抱えているのかによって異なります。まずは、ターゲットとする見込み客を理解することから始めましょう。
あなたのターゲット層が好んで使うSNSを知る
ターゲット層に明らかに人気のあるSNSを3〜5つリストアップしてください。あまりに多くをピックアップして、長いリストを作る必要はありません。なぜなら、あなたは今後それらのSNSでコンテンツを発信し続けなければならないためです。マーケティングにおけるSNSの運用というのは、簡単な作業ではありません。最初は1つか2つのSNSに注力するというのでも構いません。
ターゲットの使うSNSは競合他社が教えてくれる
さて、あなたのターゲットがよく見ているSNSをどう調べれば良いのでしょうか。最も簡単な方法は、競合他社のSNSの運用を調査することです。あなたのビジネス分野における5~10の競合他社をピックアップして、各企業がどのSNSのアカウントを持っているかを調べましょう。
主要なSNSであるFacebook、Twitter、TikTok、Instagram、YouTube、LinkedIn、Pinterest、それら全てで企業のアカウント名を検索して、それぞれのフォロワー数を書き留めてください。
これで、あなたの見込み客がどのSNSに集まっているのかを知ることができます。この時に併せて各SNSにおけるフォロワーとエンゲージメントの比率を記録しておくと、フォロワーのうちどの程度がアクティブユーザーなのかを予測できます。エンゲージメントとは、いいねやコメントなどユーザーからのリアクションのことです。
自分に合ったSNSを選ぶ
見込み客がどのSNSを使っているのかわかったら、それらのうち、どれを選ぶのが自分にとって最も効率的に成果を出せそうかを考えましょう。検討すべきポイントとしては、以下が挙げられます。
- ツールで連携させやすいSNSはどれか:BufferやHootSuiteなどはSNS投稿の管理や予約を提供してくれます。そういったツールと連携可能なSNSを選ぶと、作業負荷の軽減に役立ちます。具体的にはFacebook、Twitter、LinkedIn、Pinterest、Instagramなどであればこれらのツールとの連携が可能です。
- リターンが大きいSNSはどれか:あなたがこれまで比較的うまく運用できたもの、または他社で成功事例のあるものが有力候補です。
見込み客が集まっているSNSを、これらの条件に照らして順序付けしてください。例えばLinkedInは、ツールとも連携ができ、英語圏では人気がありますが、日本ではまだユーザーが少ないのでリターンが見込めないと判断するかもしれません。心配な場合はまずは上位の有名なSNSに絞って、運用を始めましょう。
1つのSNS上のいくつのアカウントを持つか決める
SNSプラットフォームを決めたら、次はそのSNS上でいくつのアカウントを運営するか検討しましょう。ビジネスの内容によっては、1つのSNSで複数のアカウントを持った方が効果的なケースがあるのです。それは具体的に、以下のような状況の場合です。
ニーズや興味が細分化された幅広い見込み客がいる場合
見込み客のニーズ・関心が細分化されている場合は、それぞれに合わせたアカウントを作るべきです。例えば、マーケティング向けソフトウェアを開発しているCoScheduleは、複数のTwitterアカウントを持っています。
1つ目は同社のサービスや技術サポート、製品アップデートなどを発信する企業の公式アカウント、2つ目は「10x Marketing(テンエックス・マーケティング)」という人気コンテンツマーケティングのアップデート情報を専門的に発信するアカウント、3つ目はCoScheduleのブログのコンテンツを発信したり、フォロワーとディスカッションをしたりするためのアカウントです。
Hubspotも同じく複数のTwitterアカウントを運用しています。1つは企業の公式アカウント。2つ目はHubspot Academyという動画などの教育コンテンツを中心としたアカウント。3つ目はHubSpot Developersという開発者向け情報を発信するアカウント。4つ目はカスタマーサポートを専門とするHubSpot Supportです。
これらは目的やターゲットによって、うまくアカウントを使い分けてる良い例と言えるでしょう。
複数の製品、サービス、拠点がある場合
異なるビジネス分野において複数の製品やサービスを提供している場合、製品ラインごとにSNSアカウントを作ると良いでしょう。
例えば、CoScheduleは、販売しているサービスのひとつ「Headline Studio」専用のTwitterアカウントを持っています。このアカウントでは、主にマーケティングにおけるヘッドラインに関連したコンテンツのみを共有しています。そして、CoScheduleが運用している他のアカウントでは、それ以外の活動や製品の情報発信をしています。
複数の拠点がある場合も同様に、複数のアカウントを作りましょう。さまざまな場所で展開しているフランチャイズ店をイメージしてください。HubspotもJapanやFrance、Brasilなど国を分けたアカウント運用をしています。企業アカウントが存在するほか、各店舗もそれぞれで個別のアカウントを運用しているでしょう。こうすることで、より地域に根ざした投稿が可能になり、そこに住むお客さんにとって最適なサービスを提供できるようになるのです。
経営者としてだけでなく、個人としても知名度がある
あなたがブランドの開発者としてだけでなく、個人として多くの人に知られている場合も、アカウントを複数持つべきと言えるでしょう。1つはブランドの企業アカウントであり、もう1つはあなた個人のアカウントです。個人アカウントで多くのフォロワーを抱えているなら、そこで企業アカウントの投稿を共有することもできますね。
なお、2つ以上のアカウントを持つ場合は、そのSNSで複数アカウントを管理するツールがあるか、複数アカウントを1人が持つことが利用規約に違反していないかを確認してください。例えば、Facebookの個人アカウントは1つしか持てませんが、管理できるページの数には制限がありません。
ただしお察しの通り、最初から複数アカウントを運用するのは難しいです。1つのアカウントを育てつつ、ある程度軌道に乗った段階で次のアカウントに着手することを推奨します。
ステップ#2:発信するコンテンツの内容を計画する
利用するSNSを決めたら、次は発信するコンテンツの内容を計画しましょう。僕は常々、「ブログを書くなら、自分の強みを生かすことがベストだ」と言っていますが、SNSについても同じことが言えると思います。
一貫したテーマで投稿する
SNS運用で多くの人が犯すミスの一つは、そのアカウントのテーマに合わないコンテンツを発信してしまうことです。SNSを運用していると、つい、あなたの個人的な興味に基づいた投稿をしたくなることがあるかもしれません。
自分が気に入った本の引用や、見た映画の話をしたくなるかもしれません。それがアカウントのテーマに沿っていれば問題ありません。もしそうでない場合は投稿を控えてください。しかし、あなたが有名人やインフルエンサーでない限り、アカウントのテーマに沿わないコンテンツは、フォロワーにとって有益ではありません。
特に、あなたのビジネスがニッチな分野である場合、テーマを逸脱することは危険です。フォロワーにとって興味のない発信が続くと、簡単にフォロー解除されてしまうはずです。
見込み客を失わないためには、あなたのテーマが何であるかを理解し、それに関連するコンテンツはどのようなものかを前もって書き留めておくことが極めて重要です。
まず、あなたのブランドが何であるかを一文で書いてください。それは、例えば「靴」など普遍的なものに設定してください。次に、それをサブトピックに分解します。例えば「ランニングシューズ」「ジョギングのコツ」「健康レシピ」「予算」などですね。アカウントのプロフィール文に書いてしまうのも手です。
このリストは、あなたがブログで使っているカテゴリーとよく似ているはずです。そして、SNSで発信する全てのポストについて、このリストと照らし合わせて、適合するかどうかを確認してください。取り上げたいトピックの上位3つを横書きで書き出し丸で囲み、トピック間のベン図を作成します。そして、発信したいと考えているトピックがどこに属するのかを可視化しましょう。
もし、共有したいコンテンツがカテゴリーに当てはまらない場合は、プライベートで使っている個人アカウントで発信しましょう。
自分が作成できる投稿がどんなものかを考える
コンテンツの内容も一貫性があったほうが良いでしょう。自分が何を作るのが一番得意なのか、以下の質問に答える形で考えてみてください。
- コンテンツ制作のために、どんなアプリやソフトを利用しているか?
- ライティングが得意か、デザインが得意か、動画撮影が得意か?
- 苦手な分野を助けてくれるチームメンバーはいるか、それとも一人でやっているのか?
- 自分自身が楽しんでいるSNSは何か?
- ユーモアのセンスに自信があるか、それとも知的な情報発信に自信があるか?
これらの質問に答え、どんなタイプのポストを作成できるかを現実的に考えてみましょう。才能とリソースの両面から、自分の強みを見つけることができます。
投稿内容の方針が決まったら、次は以下の3つの項目について具体的に計画しましょう。
#1:イメージの計画
現代のSNSでは画像が非常に重要です。印象的な画像を使った投稿は収益に繋がりやすいです。どんな投稿に、どんな画像を使うのかを計画してください。
画像を作成するのが苦手な場合や、高価なツールやプロのデザイナーを雇うことができない場合は、Canvaなどのツールを使ってみましょう。無料で質の高い画像を作成できます。ちなみにCanvaの使い方を教えるようなTwitterアカウントも今ではたくさん存在しているので、Canvaを使う際のコツを学ぶことができます。
#2:イベントの計画
あなたの製品やサービスにおけるイベントに関するポストを計画しましょう。セールやプロモーション、プロモーション期間など事前に決めて、それに関する投稿をいつ、どのように行うのかを決めてください。
#3:ポスト内容の計画
最後に、自分に向いている投稿とはどんなものかを、もう少し突き詰めましょう。継続して投稿を続けるためには、自分が苦手なことを避けることが大切です。
例えば、SNSでフォロワーと議論することが好きでない場合は、フォロワーに質問するような投稿や、議論を呼びそうな投稿は意識的に避けましょう。
「SNSを使うのに、人との会話を避けたい」などと言うのは冒涜的に聞こえるかもしれませんね。しかし、僕のような内向的な人はすぐに疲れ果ててしまうのです。僕は良質なコンテンツを作成できますが、それに対する意見などは最小限しか処理できません。
このように、自分に正直に得意・不得意を明らかにしましょう。そして、自分の強みを活かして、自分の能力を最大限に発揮し、確実にコミュニケーションできるコンテンツを作るのです。
ステップ#3:目標・頻度・予算を決める
参入するSNSと、それをどう利用するかが決まったら、最後に具体的な計画を立てましょう。計画は、紙であってもデジタル端末であっても良いですが、具体的な日付とやるべきことをカレンダーに記入することが大切です。これは、必要なときに、必要なことを全て確実に行うための最良の方法です。
SNS運用の目標を定義する
まずはSNSで何を達成したいのかを明確にしてください。ブログへのトラフィックを増やしたいのか、フォロワーを増やしたいのか、メールの購読者を増やしたいのか、売上を上げたいのか。
全員がSNSでまったくゴールを持っているわけではありません。あなたにとってのゴールを書き出しましょう。そして、それを具体化してください。ブログへのトラフィックを増やしたいなら、毎月何PVを得たいのかを決めます。
なお、この目標は年に数回、必ず確認するようにしてください。当初決めた目標が、今のあなたが望んでいることなのか、具体的な数値目標は適切かを見直すのです。もし、目標を既に達成していたり、あまりに非現実的と感じたりするような場合は、適切なものに修正しましょう。
投稿頻度を計画する
SNSでのコミットメントと、フォロワーを増やすためには、一貫した頻度で投稿することをおすすめします。次のデータは、各SNSでの最適と言われる投稿頻度です。
- Facebook: 1 日に 1 投稿、1 日おきに 1 つのテーマをキュレーション
- Twitter: 1 日 15 ツイート、1 日 7 ツイートをキュレーション
- LinkedIn: 1 日 1 投稿、1 日おきに 1 つのテーマをキュレーション
- Pinterest: 1 日に 11 ピン、1 日に少なくとも 5 つのピンをリポスト
- Instagram: 1 日に 1 ~ 2 投稿、1 日に 1 つのテーマをキュレーション
このデータを参考に、コンテンツの公開計画を立ててください。
ここで重要なことは、コンテンツのフィードの仕組みを理解することです。例えば、フィードに日々の投稿が流れていく FacebookやTwitter などでは、1 つのコンテンツを複数回公開することが最善です。一方で、Pinterest やInstagramでは、古い投稿が再びトップに表示されることもあるため、その限りではありません。
予算を計画する
成功するSNS戦略には、広告予算を含める必要があります。事前に予算を決めずに支出を行うのは最悪です。広告に頼らない集客をオーガニック集客と呼びますが、オーガニックと広告を組み合わせることでさらにSNSの運用をブーストすることが可能です。
SNSマーケティングが初めてという場合は、料金がいくらになるか検討もつかないかもしれません。それは問題ありません。まずは自分が払える金額の上限を決めて、それを超えたら、目標に対してどれだけ成果が出たかを確認してください。この作業を繰り返すのです。
各SNSでどんな投稿が効果的かを理解することで、徐々に予算を有効に使えるようになります。僕らも広告を運用しているのでわかるのですが、いきなり予算を上げてしまうとシステムが無駄撃ちしてしまう可能性が非常に高いです。効果を確認しながら段階的に広告費用を上げていくことを推奨します。
まとめ:戦略的なSNS運用で着実に成果を上げる
今回は、戦略的なSNSマーケティングを行うために必要なことについて解説してきました。個人で楽しむためにSNSを使うのと、ビジネスのためにSNSを運用するのとでは、使い方が全く異なることが理解できたのではないでしょうか。
自分がSNSで何を達成したいのかを明確にして、具体的な計画を立て、定期的に成果をチェックしてください。SNSで成功するためには、このステップが非常に重要です。今回は以上です。また次回、お会いしましょう。