今回のレクチャーでは、マーケティング・プランニング・プロセスについてお話しします。つまり、チーム全体で今後のビジネスのマーケティングの計画を立てる方法についてです。これを見れば、チームで集中的にマーケティングの戦略を練るための方法を理解できます。
あなた1人ではなく、チーム全体でマーケティング計画を立てましょう。そうすることで全体の目標を共有した上で、各メンバーが取り組むべきことを整理整頓できます。結果として、時間をより効率的に使い、常に全員が重要度の高いプロジェクトに集中して取り組めるようになるのです。今回は、1日がかりで開催する戦略会議「サミット」を紹介します。
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マーケティング・プランニング・プロセスとは?
マーケティング・プランニング・プロセスとは、具体的に言うと以下の一連の作業のことを指します。
- 現在のマーケティングに欠けていることを見つけ出し、より大きな成果を生み出すコンテンツを考案する
- アイデアに優先順位をつけ、より高い収益に繋がるプロジェクトを選別する
- ビジネスに成長をもたらさないプロジェクトをToDoリストから削除する
これを行うだけで、最終的にビジネスの成長に必要なロードマップが出来上がります。数あるアイデアからビジネスを10倍の成長に導いてくれるものを特定し、実行するプロジェクトに優先順位をつけるのです。
マーケティングについて学んでいる中で、「マーケティング計画やマーケティング戦略を定め、文書化する必要がある」と目にしたことがある人も多いのではないでしょうか。「そうは言っても、やるべきことが多すぎて、現実的な計画を立てられない」と感じたことがある人もいるかもしれませんね。
しかし、マーケティング計画を立てることは難しいことではありません。すごくシンプルに言えば、あなたがやるべきことは、壁にアイデアが書かれた付箋紙を貼って、それを並べ替えるだけなのです。
このプロセスのポイント:メンバー全員が参加する
さて、ここからは、マーケター向けの作業管理ソフトウェアを提供している「CoSchedule」で活用されているマーケティング・プランニング・プロセスに則って、その具体的な方法について紹介していきます。
先ほど少しお話しした通り、マーケティング・プランニング・プロセスとは、ビジネスの成長において実行すべきプロジェクトについて、優先順位をつけたリストを作成することです。リスト化することで、どのプロジェクトをいつ、どのくらいのスピード感で行うべきかが可視化されます。
なお、あなた1人ではなく、複数メンバーで構成されるマーケティングチームが存在する場合、マーケティング・プランニングにはメンバー全員に参加してもらうことが重要です。
Jake Knapp(ジェイク・ナップ)というマイクロソフトのエンカルタやGmailを作った人物がいます。彼が書いたベストセラーのビジネス書「Sprint」では「新たなプロジェクトを立ち上げる場合、より多くのチームメンバーを計画の初期段階から参加させることで、より多くのメンバーがあなたのプロジェクトを支持してくれるようになる」ということが書いてあります。
つまり、プロセスの早い段階でメンバーに意見を求めることで、彼らは「自分たちがこのプロジェクトを動かしている」と当事者意識を持つことができるのです。これは、CoScheduleでのマーケティング計画を立てる際にも意識されていることです。
また、プロジェクトの実行においては、アジャイル手法を取ることもポイントです。アジャイル手法とは、プロジェクトを短い期間、小さな単位で区切り、優先度の高い項目から順に取り組む方法です。
長期に渡る綿密な計画を立ててしまうと、ギャップが生じた際に修正したりプランを考え直したりする必要があります。一方アジャイル手法であれば、素早いサイクルでプロジェクトを実現しつつ、その過程で見込み客の反応やトラフィックをみながら柔軟に軌道修正できるのです。
マーケティング・ロードマップ・サミットとは?
CoScheduleでは、チームで新たなマーケティング計画を考える際、「マーケティング・ロードマップ・サミット」というイベントを開催しています。これはマーケティング計画を決めるための1日がかりのチームミーティングで、会議ではアイデアを出し合い、提案されたアイデアにそれぞれ優先順位をつけていきます。
日本ではサミットという言葉に、あまり馴染みがないかもしれません。AppleのWWDCのようなものをイメージしてもらうと良いかもしれません。沢山の人たちが、1つの会場に集まって何かのイベントに参加する。年に1回のお祭りのような感じです。AdobeならAdobe MAX、GoogleならGoogle I/O(アイオー)といった感じで、社外に向けて自社の製品や文化を布教するのが主な目的です。
ClickFunnelsも年に1回、Funnel Hacking Live(ファネル・ハッキング・ライブ)というサミットを開催しています。そこには、ClickFunnelsのCEOのRussell Brunsonはもちろん、ClickFunnelsで売上1億円を達成したTwo Comma Clubのメンバーもたくさんステージに登壇します。Funnel Hacking Liveのプロモーション動画を見ると、本当にお祭り騒ぎという感じがします。
場所ややり方を工夫することで、まるで合宿のようなワクワクした感じを演出することが可能です。Funnel Hacking Liveの動画では、本当にメンバー全員が楽しそうにしています。チームメンバーのクリエイティビティを引き出し、チームに一体感をもたらすことが可能です。
マーケティング・ロードマップ・サミットは、1日で行うこともできますし、1週間やそれ以上の期間に分散して行うこともできます。WWDCやFunnel Hacking Liveなんかはだいたい4日間か5日間くらい開催されます。ただし、今回の目的はマーケティング計画のブラッシュアップです。重大な決断を素早く下し、早く仕事に取り掛かるために、1日でやってしまうことをオススメします。
僕と小川さんも、韓国のソウルで1日だけの戦略会議を行ったことがありました。たった1日だったのですが、ソウルで集まって一緒にカフェで仕事をしました。
夜はお酒を飲みながら一緒にサムギョプサルを食べたのを覚えています。そこで僕のコンサルのセールスページを一気に作ったんです。たった1日の作業が、1件250万円のコンサルをその後何本売ってくれたことか。今でもすごく思い出深いし、すごくビジネスにインパクトがありました。
マーケティング・ロードマップ・サミットでは、今後4週間、6ヶ月間、1年間と達成期限を区切ったプロジェクトリストとビジョンを策定します。それぞれの期間におけるプロジェクト内容は以下のようなものが想定されます。
- 4週間:ロードマップ・サミット終了後にすぐに取り組むべき、具体的で実行可能な短期的なプロジェクト
- 6ヶ月:12ヶ月を通して達成するビジョンに必要な中期的プロジェクト
- 12ヶ月:「僕たちがこれを実行することで、世界にどのような変化をもたらすのか」という問いの答えになるような長期的なプロジェクト
測定可能なビジネスの成長という結果を出し、文字通り世界を変えるようなプロジェクトを実現するためのものであることをチームメンバーに伝えることで、強い関心を持って積極的に発案してもらうことができます。そして、サミットで決まったプロジェクトが実際に始まった時には、彼らは全力で取り組んでくれるはずです。
サミット成功のための3つのポイント
マーケティング・ロードマップ・サミットの開催を成功させ、優れたマーケティング計画を生み出すためには、以下の3つのポイントを抑えておく必要があります。
- ルールを定義する
- ミーティングに必要なツールを把握する
- 開催場所をクリエイティブにする
詳しく見てみましょう。
ポイント#1:ルールを定義する
参加者全員がマーケティング・プランニングへのアイデアを出すことに集中できるようなルールを決めましょう。このミーティングは、出席者全員が自発的・積極的に100%関与していなければ意味がありません。そのためには、ミーティングの目的を理解してもらい、日々の業務や課題などの雑念を一旦排除してもらう必要があります。
そのために、「普段の業務は持ち込まない」「各自、事前にアイデアを考えてくる」などのルールを事前に決めてください。そうすることで、1つ1つの業務や課題という細部ではなく、チーム全体の成功に集中できるようになります。
ポイント#2:ミーティングに必要なツールを把握する
ブレーンストーミング・ミーティングを成功させるためには、いくつかのツールが必要です。具体的には、ホワイトボード、ポスターサイズのポストイット、通常サイズのポストイット、ステッカー、マーカー、マスキングテープ、ストップウォッチ、スナックやドリンク、プロジェクターや延長ケーブルなどの各種ハードウェアなどです。必要なツールを事前に列挙し、チェックリストを作成しておきましょう。
ポイント#3:開催場所をクリエイティブにする
マーケティング・ロードマップ・サミットを成功させるためには、開催する場所も重要です。おすすめは、オフィスではないどこかクリエイティブな雰囲気の場所です。食事をケータリングしたり、レストランでランチをとったりしながら話し合うのです。
このように特別感を演出することで、特別なアイデアが生まれやすくなります。環境を変えること、歩くこと、新しいことに挑戦することは、創造性を高める効果があることが証明されています。Funnel Hacking Liveなんかは、わざと南国フロリダのリゾートっぽいところで開催していますね。
マーケティング・ロードマップ・サミットの事前準備
上でお話しした開催ポイントを踏まえ、実際にサミットの準備に取り組みましょう。具体的に行うべきことは、以下の5つです。
- マーケティング・ロードマップ・サミットにチームメンバーが参加できる日を探す
- 近所のコワーキングスペースや図書館、コーヒーショップなど、普段働いているオフィス以外で居心地の良い会議室を予約する
- 会場から徒歩圏内のレストランもしくはケータリングを予約する
- ミーティングを成功させるために必要なツールを揃える
- チームメンバーにミーティング参加への士気を鼓舞するようなメッセージを添えた招待メールを送る
メンバーを集めるためには、次のような内容の招待メールを送ると良いでしょう。
チームの皆さんへ
10月1日、今後半年間におけるマーケティング戦略と、来年のマーケティングビジョンを計画するためのミーティングを予定しています。 当日は、オフィスの外の〇〇ホテルで、皆さんに美味しいレストランでランチをごちそうしたいと思っています。 ミーティング前に一つお願いがあります。 「来年、僕たちの会社を成長させる最大のチャンス・アイデアは何か?」 この質問について考えてきてください。これは、ミーティング当日、1日をかけて僕たちが話すテーマです。 そのための基本的なルールとして、他の仕事など気が散るようなものは持ってこないようにしてください。この日は、各自が担当している業務の細かいことではなく、会社としての大きな成長計画を考えることに集中しましょう。
みなさんからどんなアイデアが出るか、僕たちが最終的にどんな決断を下すことになるのか、今からとても楽しみです。 こんな風にミーティングの趣旨を伝えつつ、ミーティングへの士気を高めるような文章を添えることがポイントです。
まとめ:チームで計画を立て質の高いアイデアを得る
ここまで、マーケティング・プランニング・プロセスの内容と実行方法について紹介してきました。
マーケティングの計画を立てる際には、マーケティング・ロードマップ・サミットの開催が有効です。このサミットでは、今後4週間、6ヶ月間、1年間それぞれに実行するプロジェクトやビジョンについて考えます。チーム全員参加で一人ひとりが今後のプランニングについて考えることで、今後のプロジェクトに、当事者意識を持ちながら積極的に取り組んでくれるようになるでしょう。今回はここまでです。またすぐにお会いしましょう。