2018年の2月末。Udemyから1通のお手紙が。日本版Udemyの規約変更についてですが。つい最近、YouTubeの広告収入プログラム(通称YPP)の規約変更があり、チャンネル登録者数1000人以下の人は広告収入を受けられなくなりました。こんな風に規約変更って、大抵は弱者を切り捨てるか、あるいは全体的に改悪に向かうのが普通です。でも今回の場合、逆のケースでした。Udemy Japanで活躍している講師たち全員にとってハッピーなお知らせでした。内容はシンプルです。講師の取り分を33%から50%に増やすよ、と。しかも過去に遡及して、2018年1月分から適用するとのこと。ちょうどよかった!僕はこの月、Udemyでの売上記録を更新していたんです。で、さっき確認したらこうなっていました。
ううっ。胸が熱い。2018年の12月から、冬の苦手な奥さんのために宮古島に長期旅行に出ていました。クリスマス、年越しを経て、のんびりと過ごしていました。トロピカルな場所でリラックス。その一方でUdemyが粛々とコースを売り続けてくれました。そして確定した$6746.52という売上。未だかつて、こんなにもクリエイターたちを「楽に」お金持ちにしてくれたプラットフォームはあったでしょうか。
僕が月々、手放しで70万円を”Udemyだけで”稼げるようになった秘訣。知りたいですか。(小声で)Udemyインサイトですよ。
Udemyで参入ジャンルを決める時、参考になるのがインサイトです。ここでこんな画面が出たらチャンスです。実際にインサイトには「またとないチャンス!」と表示されていますし。
ちなみに検索は今の所、英字のみです。だから「タイ料理」と検索するのではなく「Thai Cooking」と検索するようにしてください。受講生のニーズ(需要)が高くて、コースの数(供給)が低い場所を狙う。需給のバランスが大きく崩れている分野を攻めるんです。需給のバランスが崩れている場所を「ニッチ」と呼びます。「ニッチ」を参入者のいないマーケットと勘違いしている人が多いんですけど、「ニッチ」のベースには必ずニーズがないといけません。
仮に僕が「不味い料理を作るコツ」という(おそらく)オンリーワンのコースを作っても、それを買う人(ニーズ)がいませんから、これはニッチとして機能しません。インサイトで色々と検索してみて、受講生のニーズが高いにも関わらず十分なコースの供給がなされていない分野を探してみてください。そこがあなたの狙い目です。インターネットの世界では、これをニッチと呼びます。余談ですがデジタルコンテンツの世界に「ニッチ」のアイディアを導入したのは恋愛教材の販売者で名を馳せたエベンペーガンです。
Udemyでは「ビジネス」「テクノロジー」のカテゴリーが二大巨塔です。例えば「ビジネス」の分野ではPhill Ebinerさんが有名です。彼はブログの中で「もともと家を買うつもりはなかったんだけど、買っちゃった」と発言していました。「テクノロジー」の分野ではRob Percivalさんが有名です。日本では井上博樹さんが、Rob Percivalさんのプログラミングコースをローカライズしていますね。
次に大きいのが「写真」「デザイン」「言語」です。写真には、フォトグラフィーの他にビデオグラフィーやレタッチなどが含まれています。デザインはフォトショップやイラストレーターなどのAdobe製品の使い方や、ロゴの作り方、絵の書き方などが含まれます。言語はそのまま。説明不要ですね。日本人の大好きな「英語のお勉強」は言語カテゴリーに含まれます。
最後に「ライフスタイル」「音楽」「健康」「スポーツ」「ゲーム」「趣味」などがきます。料理はライフスタイル分野の一部です。Udemyという大きな市場の、割と小さなグループに属する「ライフスタイル」。さらにそこから細分化した「料理」となると、それはそれは小さな分野、ニッチ中のニッチに思えるかもしれません。じゃあ試しにCookingで検索してみましょう。
やめときなはれ。需要と供給のバランスがちっとも崩れていません。もしかしたら供給過多かもしれません。そんな分野に参入してはいけません。しかも月次収益の最高値が1ヶ月あたり$613ですから、仮にベストセラー化したとしても月々に$600ほどしか稼げない。料理というジャンルに参入し、苦労して1位をもぎ取ったとしても月々$600かあ。僕はこの売上を大きいとは思いません。なぜならUdemyには月々$16000(160万円ほど)をたった1コースで稼ぎ続けているコースが存在しているからです。
WordPressという巨大ジャンルですね・・・。僕は複数のコースを公開して、やっと$6700を稼げている程度なのに、彼(彼女)は1コースでその3倍弱を稼いでいるわけです。さすが英語圏。市場規模が違いますな。
さておき。
Udemyという大きな市場のごく一部しか占めていない「料理」という分野でさえニッチではないことがわかりました。ニッチはもっともっと分野を絞り込んだものです(繰り返しますが、絞り込みすぎてニーズのないジャンルを選ぶのはやめましょう。Udemyでうまくいっていない講師のほとんどはこの罠にハマっています)。
重要なのはここからです。
Udemyのインサイトは、それほど正確ではないことも覚えておいてください。データがある程度集計されていないと、インサイトは判断できません。大事なのはここです。インサイトで需給のバランスが崩壊している分野を探してもいいけど、正直、そんなのは誰でもできることです。1時間、テキトーに検索していれば、ゴマンとそういった分野が見つかるはずです。そういった分野にコースを1個ずつ供給していくのも1つの戦略です。実際にうちのお客さんにはそういう風にしてうまくやっている人もいます。でも、もっとユニークでクリエイティブな方法があるんです。僕がここで紹介すると、もうユニークな方法論ではなくなるんですけど・・・。
それは、Udemyのインサイトに現れてないが需給のバランスが大きく崩れている分野を見つけることです。2つのアプローチがあります。両方とも僕が考えたやり方なので、™️とか©︎をつけたいくらいです(冗談)。
- クロスプラットフォーム戦略
- プロダクトアウト戦略
クロスプラットフォーム戦略
Udemyだけで完結させるから、人と分野が被ってしまうのです。例えば、需要の多寡を別のプラットフォームで調べてみてはいかがでしょうか。AmazonとUdemy。Amazonですごい売れている本がある。でもUdemyでは同様のコースが見つからない。需給が崩壊している可能性があります。SkillShareとUdemy。SkillShareでベストセラー化しているコースがある。でもUdemyでは同じようなコースが供給されていない。これもやはり売れ筋コースになる可能性が高そうです。こんな風に別のプラットフォームで人気になっているジャンルを見つけて、それをUdemyに持ち込むという方法論です。
ネットだけで完結しなくてもいいです。僕はよく本屋に行くんですけど、急に平積みされた本や、急に棚の数が増えたジャンルなども狙い目です。
言語を超えて検索するのも面白いですね。日本ではあまりブームになっていないけど、アメリカではかなり盛り上がっている。そんな分野は良くあります。料理のジャンルであれば、スロークッカー(Crockpot)などがその典型です。逆に、日本では大ブームになっている「糖質制限」。ライザップが糖質制限の旗振り役だったと僕はみているんですけど、あれから数年遅れてアメリカでもLow Carb Diet(低炭水化物ダイエット)が盛り上がり始めたんです。この数年のラグの間に、コースを仕込んでおけば、今頃、僕は英語圏におけるダイエットのGuruになっていたでしょう(実際に2ヶ月で10kgを落としました。そして1ヶ月で8kg戻しました。乾杯!)。
そんな意味で「旅」は僕にとって重要な市場調査です。その国々で何が盛り上がっているかを実地で調べて、帰国したときに「あれ?」と思った分野。海外と日本との盛り上がりにギャップがある分野。うちのアカウントには、そういった分野にコースを仕込み、数ヶ月後、数年後にベストセラー化したコースがいくつもあります。
プロダクトアウト戦略
マーケットインとプロダクトアウト。これはマーケティング業界の専門用語です。マーケットインは、市場調査をして売れそうなものを作るやり方。プロダクトアウトは、先に商品を作ってしまう方法です。マーケットインは商人的アプローチです。プロダクトアウトは職人的アプローチです。Udemyのインサイトで需給を調べてからコースを作るのは、マーケットインの手法です。一方、iPhoneを作ったスティーブ・ジョブズのように、先に商品を作ってしまい、あとで消費者を納得させるのが、プロダクトアウトの手法です。ジョブズ、すっげえいいこと言ってます。
人は形にして見せて貰うまで自分は何が欲しいのかわからないものだ。
そりゃそうだ。iPhoneがこの世に登場する前に「iPhone欲しいなー」って思っている人は皆無だったはず。スティーブ・ジョブズがiPhoneというプロダクトを先にアウトしたおかげで、スマフォ市場が創造され、人々は「欲しい」と思うようになったわけです。どれだけ市場調査をしたところでiPhoneという製品は生まれません。
で、僕らがこの手法を採用するわけです。と言ってもiPhoneを作るほどたいそれたことではありません。やることはシンプルです。市場調査を一切せずに、コースをリリースし続ける。Udemyでコースを公開するには、5本以上のレクチャー(合計30分以上)が必要です。Udemyでコースを作るのはそれほど難しいことではありません。実際、Udemyのおかげで、リードタイムがかなり短縮されました。Udemyはまさに All in oneのプラットフォームです。新たにドメインを取る必要もないし、動画をホスティングするサーバーを借りる必要もない。お客さんとコミュニケーションをするためにMailChimpと契約する必要もないし、PayPalの決済ボタンを導入する必要もありません。カメラで撮影した動画をUdemyにアップロードするだけ。それだけでコースが完成します。
じゃあそんなに早くコースが完成するんだったら、手当たり次第にコースを作ってみればいいんじゃない?というのがプロダクトアウト戦略です。とはいえ、僕らのリソースは有限ですから、がむしゃらに時間を投入してばかりではいけません。まずは小さく始めます。それで市場の反応を確かめます。Udemyで無料のミニコースを作るんです。それで、受講生の入りが良かったり、5つ星の評価がたくさんついたり、リリースしてすぐに質問が投稿されたりする・・・こういった反応を素早くキャッチするんです。で、このコースは有料化したら売れそうだと思えば、値付けをして、あとはUdemyの一律プロモーションが売ってくれるのを待つだけ。もちろん5レクチャー(30分)のコースではあまりにも小さいので、売れ行きは良くないはずです。お得感がありません。有料化した段階で、いくつかのレクチャーを追加しましょう。
僕らは各国を旅しながら世界中の料理を作り続けています。ある時は現地の人から教えてもらったとっておきのレシピをレクチャーにしたり、ある時はレストランで食べた美味しいレシピを自分たちで再現してレクチャーにしたり、ある時は「この料理こうしたらもっと美味しくなるよね」と和風に、あるいはフィリピン料理風にアレンジしたものをレクチャーにしたりします。いずれにせよ、僕たちが本当に美味しいと思った料理だけをレクチャーにしているので、作った後に味見して不味かったら、仮に3時間かけて撮影したとしてもボツにします。結構、そういうことってあるんです。
スティーブ・ジョブズの名言をUdemy用に修正するなら、こうなります。
Udemyの受講生はそのコースが販売されるまで、自分は何が欲しいのかわからないものだ。
実際、Udemyを検索していて「こんなコースあったんだ!」という発見はよくありますよね。当初予定していたものとは全く違ったコースを買ってしまった。そんな衝動買いが発生するのも、1コース数千円で販売されているからです。Udemyあるある、ですね。
プロダクトアウト戦略のコツは、本人が心の底から楽しむ必要があります。市場調査をしていないので、売れない可能性も十分にあるからです。それでも落ち込まないでいられるのは、「自分が楽しいからいいや」と思えるからです。あなたはどんな料理をUdemyで紹介したいですか?あなたはどんな料理を心の底から楽しんでできますか?