今回のレクチャーは、電子書籍作成における原稿の執筆について扱います。僕は全部で4つの執筆方法を紹介する予定ですが、今回はその中の1つ「ミーティング」という方法についてお教えしていきます。今回紹介する方法を使えば、自分で1から書くよりも圧倒的に早い速度で原稿を作ることが出来るようになります。
今回のミーティング形式は、別の呼び方では「72時間メソッド」とも言われます。名前の通り、これはたった72時間で1冊の電子書籍を完成させる方法です。もしあなたに時間がなくて、3日間という本当に短期間で電子書籍を作りたいと思っているなら、この方法が最適でしょう。それでは具体的に3日間のスケジュールをお見せしながらステップバイステップで、やるべきことを紹介します。
今回お届けするノウハウはこちら
ミーティング:友人とテーマに沿って話し合う
信じられないかもしれませんが僕たちは、これから紹介する方法を使って圧倒的な速さでテキストコンテンツを作っています。実際に、僕たちはこの方法を用いて本を作っているのです。ですから、あなたもきっと使えるはずです。
まずはこの72時間で執筆するための方法である「ミーティング形式」の概要についてご紹介しましょう。でも一体、誰と何についてミーティングしたらいいのか。簡単に言えば、あなたが作った電子書籍のアウトラインについて、友人たちとミーティングを開催するのです。
ミーティングの手段はFaceTimeでもLINEでもZoomでも構いません。重要なのは、話し合う機会を設けることです。Zoomを使えば、ミーティングをしながら内容をワンクリックで簡単に録画することもできます。あなたの友人や同僚、顧客などを招待して、あなたの作ったアウトラインの内容について対談してください。この方法では、一方的に話すだけでなく対話によって内容を広げることが重要です。
この方法の素晴らしいところは、強制的にアウトライン作成の期限を設けられることです。みんなに時間を指定して集まってもらうわけですから、その時間までに何としてでも完成させなければいけません。みんなに「この日に僕の本のアイデアを聞いてほしい」と言っておいて、当日に準備ができていないなんてことは想像したくありませんよね。他人と約束することで「やらなければならない」という社会的プレッシャーが生まれるのです。
中には「ミーティングに参加してくれるような人が周りにいない」という人もいるかもしれませんね。そのような場合は、Zoomを使って1人で会議を開催することもできます。参加者が自分1人でも、しっかりと日時を決めてアウトラインを発表するのです。それを録画して後から見返すことで、アイデアを練り直すこともできます。
しかし、可能であればやはり他の誰かに参加してもらうと良いでしょう。人前に出ることで、エネルギーのレベルが上がると思います。人前でアイデアを話すことで、直観力が増し、創造性も高められます。
他の人が聞いていると意識することで、より集中し、要点を押さえて話せるようにもなるでしょう。さて、ここまでが「ミーティング」の方法の全体像です。ここからは、具体的に72時間で何をするのかについて見ていきましょう。
1日目:ミーティングの準備をする
最初の24時間でやるべきことは、ミーティングの準備です。実際の話し合いは2日目に行います。初日はアウトラインを完全に仕上げること、ミーティングの参加者を集めること、そして当日使うツールなどの対談環境をチェックをしてください。
準備#1:アウトラインを仕上げる
まずは、アウトラインを完成させましょう。アウトラインとはあなたが書籍に書きたい内容の一覧です。目次をイメージしてもらえば分かりやすいでしょう。あなたが電子書籍でカバーしたいポイントや自分の考えなど、すべてを書き出します。
もし、あなたがシリーズものの本を作りたいと考えている場合は、シリーズすべてを通したアイデアを書いてください。複数のアイデアがある場合も同様に、すべてを書き出します。
ただし、ミーティングで話す内容を台本のように一字一句決める必要はありません。本のテーマと盛り込む内容、伝えたいことが明確であればそれで良いです。何を話せば良いかを考える必要がないように、キーワードや補足なども書いておきましょう。
僕たちはGoogle DocsやGoogleスプレッドシートを作って、アウトラインを作っています。またアウトラインを作る段階で「ああ、これも話そう」といった思いつきを、メモの形で残しています。また「この資料を見せようかな」と思った参考資料のリンクも、シートの中に貼っておきます。
準備#2:参加者を募る
次にあなたと対談してくれる人を探しましょう。僕はよくビジネスパートナーの小川さんと一緒に対談をすることが多いです。もしあなたが既にビジネスをしている場合は、ビジネスパートナーやスタッフ、お客さんに声を掛けてみるのも良いでしょう。
僕らはお客さんとも対談をします。その際にはこんな風にお客さんにオファーしています。「今、こういうコンテンツを作っています。一緒に対談をしてくれたら、このコンテンツを無料で差し上げます。いかがですか?」このように相手にも必ずベネフィットがあるように丁寧にオファーすれば、ほとんどの方が対談に応じてくれます。
参加者と日程調整する場合には、Calendlyが便利です。こちら側でいくつか候補日時を出しておいて、参加者に選んでもらい予約してもらうことが出来ます。Zoomと連携しておけば、Zoomのミーティングリンクを自動生成してくれる機能もあり、すごく便利です。
Calendlyで予約されたイベントに対して、前日や直前にリマインドメールを送ることも可能です。これによって、お互いに勘違いやスケジュールミスを防止することが出来ます。どんな内容を送るかもカスタマイズ可能です。本当によく出来ています。
準備#3:プラットフォームのセットアップをする
続いては、Zoomなどのミーティングに使うツールをセットアップしてください。Zoom上でミーティングルームを作り、そのURLを参加者に送りましょう。またトラブルなどが起きないように、利用するツールのすべての仕組みを理解しておきましょう。
Zoomならばミーティングしながら、その内容を録画する機能がついています。この機能は1人でも試すことが出来ます。1人のミーティングを作り、そこで色々と触ってみて操作方法に慣れておいてください。
準備#4:アウトラインの最終チェック
最後にもう一度、ミーティングで話し合う内容について復習しましょう。アウトラインやメモを読み返してください。自分が網羅したいことがすべて書かれているかどうかをもう一度確認し、足りない部分があれば補います。
この作業は黙々とやっても良いですし、声に出して行っても構いません。どちらのやり方でも構いませんが、最終チェックは必ず行ってください。アウトラインを見ながら、どんな話の流れになるかな?ということを漠然とイメージしてみると良いです。対談相手とのやり取りを想像すると、追加で話したい項目なども浮かんでくるはずです。
もしあなたが経験豊富なスピーカーで、僕のように既に何千もの動画撮影や対談を行っているのであれば、この確認作業をスキップしたくなるかもしれません。しかし、あなたがどれだけスピーチに自信があっても、ミーティングの前には必ず2、3回読み返してください。なぜなら、本番が始まってから抜け漏れに気づいてしまった場合は、その場で修正するのに焦ったり、最悪の場合はもう1度ミーティングを開かなければならないからです。
事前にしっかり見直して準備しておけば、ミーティングを2度もやる必要はありません。ですから、最初から1度で終えるために面倒でもこのチェックの時間は作ってください。「僕はミーティングにもスピーチにも慣れているから、面倒なチェックは必要ない」なんて言わずにやってください。
準備#5:ミーティングの成功をイメージする
最後に少なくとも20分間、ミーティングの成功をイメージしてください。これも重要です。自分が自信を持ってアイデアをうまく発表している姿を想像して、その時の高揚感を感じてください。
僕はミーティングの前、いつもこれを行っています。参加者との会話をイメージし、資料についてしっかりと説明できている自分、新たなインスピレーションを得ている自分の姿を想像するのです。
事前にイメージをしておくのとそうでないのとでは、本番の結果に大きな違いをもたらします。実際のミーティングを成功させるために、自分が上手く進行している姿を想像してそれを感じてください。
2日目:ミーティングを開催する
さて2日目に入りました。いよいよミーティング当日です。この日にやるべきことを順番に見てみましょう。
当日やること#1:最終準備
ミーティングをする前の朝一番に、アウトラインやメモを見直してください。加筆修正したい部分が見つかれば直します。それから、Zoomなどの使用するプラットフォームの設定と、インターネットの接続状況を再確認してください。
以前、僕はオンラインミーティングの途中でインターネットが使えなくなったことがありました。海外のネット回線は日本ほど安定していません。その時は別の回線を用意していたので慌てずに処理できましたが、最悪なのはミーティングの時間になって、ネットの故障に気づき何もできなくなってしまうことです。
回線だけではありません。録画機能についても何か問題が発生した場合に備えて、バックアップの機器を用意しておきましょう。Zoomを有料版にアップグレードするとクラウドに録画できるようになります。クラウドに録画すれば、ローカルのマシンがクラッシュしても録画がきちんと残るので安心です。その他にも参加者の1人を共同ホストとして、その人のローカルマシンに録画してもらっても良いでしょう。
もしZoomの録画機能を使わない、または別のソフトでミーティングを行う場合にはCamtasiaやScreenFlowなどの画面収録ソフトを使って録画しても良いです。もし画面収録がうまくいってなくても、音声データだけあれば文字の書き起こしが出来ます。音声データだけでも残せるように、バックアップとしてICレコーダーやスマートフォンのボイスメモを使って、音声を録音しておくと良いでしょう。
当日やること#2:ミーティングの開始
指定した時刻になったら、ミーティングを開始します。まずは対談相手に対して、参加してくれたことへの感謝の気持ちをきちんと伝えましょう。少しアイスブレイクを行いましょう。相手が緊張している場合は、その緊張を解くような雑談をして、リラックスした雰囲気を作ってください。
そしてあなたのアウトラインを見せて、本の構想について語ってください。話している途中にインスピレーションが湧いてきたら、それに従って話しましょう。プレゼンをしているうちに、潜在意識が働きアドレナリンが出て、新たなアイデアやインスピレーションを得られるというのは、よくあることです。流れに身を任せることが大切です。
忘れて欲しくないのは、このミーティングは電子書籍を作るためにやっているということです。ですから、自分の話し方や事前に決めた内容にこだわりすぎる必要はありません。話している間にアイデアが浮かんで、話題を掘り下げることが出来ればそれだけ本の内容が増えることを意味します。
話している間に何かを思いついた場合は、自分自身に対してメッセージを残しても構いません。「ここには例を挿入した方が良い」「この部分にはあの画像を加えよう」などですね。実際に僕もいつもそうしています。「小川さん、ここにはセールスページのスクリーンショットを入れましょう」という感じです。
最終的に文章に起こして編集する際に、必ずあなたが目を通すはずです。未来の自分に対するメモとして、メッセージを残すのは編集作業の手助けになります。自分のためのミーティングですから、好きなようにやればいいのです。必要なことは何でもやってください。
当日やること#3:フィクション本の場合の進行方法
さてこのミーティングという執筆方法は、フィクションの物語の本を作るときには、あまりふさわしくないかもしれません。しかし、全く使えないことはありません。大まかなアウトラインを対談相手に話して、適宜質問をもらうのです。
「その時、現場では何が起こってたんですか?」「その場面の状況が曖昧だけど、もっと詳しく聞けますか?」このような質問がいくつも来るでしょう。それに対して、即興で思いつくままにストーリーを作って回答してみてください。
これは、実は僕が子供たちといつもやっている遊びです。僕が物語のナレーションをして、彼らからの質問に答えていくだけで、フィクションの本が半ば自動的にできあがるのです。あなたが一生懸命にならなくても、対談相手からの質問があなたの物語の穴を埋めてくれるのはよくあることです。
当日やること#4:文字起こしサービスへデータを提出
ミーティングが終了したら、来てくれた人たちにお礼を言い録音を切ります。そして、その録画をすぐに文字起こししましょう。ここでは自分で1から文字起こしする以外に、いくつか文字起こしのオプションを紹介します。今はAIが自動で文字起こししてくれるサービスも色々とありますし、他人に依頼しても良いと思います。
Notta(ノッタ)というサービスは、AIを使った自動の文字起こしサービスです。月額900円で毎月30時間分までの文字起こしが可能です。さらにこのサービスには、Notta Botという会議の自動文字起こしをしてくれる優れた機能があります。Botが自動でZoom会議に出席者として参加してくれて、会議中にバックグラウンドで文字起こしをやっておいてくれるものです。
こういったAIを使った自動文字起こしサービスは、安価で高速ですが最後は人の手による手直しが必要です。ですが、1から文字起こしをするよりも圧倒的に早く文字起こしが可能です。サービスによっては無料のトライアルもあったりするので、まず試してみるのも良いでしょう。
2つ目のオプションはクラウドソーシングサイトです。クラウドワークスのようなサイトで文字起こし専門の外注さんを雇うんです。この方法が一番時間が掛かりますが、比較的安価でしかも人の手が入っているので機械よりも正確です。
外注さんを探して、やり取りする時間などを考えると1日で2時間ほどのデータを文字起こしするのは難しいかもしれません。通常、2時間の動画で作業に数日間かかります。単価は動画1分につき50円〜80円ほどです。2時間にすると6000円〜1万円です。確かにAIよりは高価ですが、人の手が入っているので手直しの手間がグッと減ります。
3つ目のオプションが一番値段は高いですが、最も正確で納期が短いです。それは文字起こしを専門とする会社に依頼することです。2時間の動画で即日納品にすると約9万円ほど掛かります。納品スピードを5日間などに落としても3万5000円ほどします。クラウドワークスで外注さんを探す手間が面倒な場合や、よりプロフェッショナルな品質を最初から求める場合には選択肢に入るかもしれません。
3つの書き起こし方法を紹介しましたが、一番安くかつ最短で書き起こすならば、AIによる自動書き起こしサービスを使うことをオススメします。ただしこの方法では、自動書き起こしの後にあなた自身で機械が認識できなかった部分を修正する必要があることを忘れないでください。
3日目:ミーティングの内容を編集する
さて、3日目です。この日はミーティングの内容を編集して、原稿として完成させます。
文字起こしの原稿が返ってきたら、早速編集作業に入りましょう。まずは「えーと」や「あー」などの不要な文字を取り除きます。これをケバ取りと呼びます。依頼した方法によっては、このケバ取り作業を既にしてくれているところもあります。
そして、話したことを章や節に分割します。通常、書籍中の1つの節はアウトラインの1項目または1つの質問に対応します。つまり20の質問に答えているのであれば、おそらく20の節に分けて書くことが必要になります。シンプルな構成にすることが大切です。
書き起こしのまま、全く編集されていない文章をそのまま電子書籍にしてはいけません。反対に編集しすぎると、結局全部最初から自分で書いた場合よりも時間がかかってしまうかもしれません。
「適当でいいや」と言うのも良くないし、「きっちり編集しなくちゃ」と言うのも良くありません。その中間で「これでいいんじゃない?筋が通っているし、すんなり読めるし十分だよ」と言えるくらいが適切です。
完璧を求めて終わらないよりも、完璧でなくても終わらせられた方が良いです。あくまで原稿を完成させることを優先させてください。さてこれで3日間の制作プロセスが完了しました。これが「72時間メソッド」です。
まとめ:徹底した話し合いで72時間で本を作る
これが72時間で1つの電子書籍を完成させる、ミーティングという方法です。つまり他人との対談で内容を膨らませることを狙います。その様子を録画し、テキストに書き起こして編集する形で書籍の原稿を作ります。この方法だと圧倒的な速さで原稿が完成します。
しっかりとアウトラインを作成し、人々に自分の頭の中にあることを話し、彼らからの質問に回答していくことで、本を完成させるのです。さて、この方法を知って、電子書籍作成のイメージは少し変わったのではないでしょうか。「これは良い、このやり方なら僕も実際に本を作れそうだ」と思って頂けたかもしれません。電子書籍を作るのは、何も難しいことではないのです。さて、今回のレクチャーはこれで終了です。またお会いしましょう。