今回のレクチャーは、電子書籍の作成について取り上げます。個人で電子書籍を執筆する際の5ステップのうち、2ステップ目である「書籍内容の決め方」です。ブレインストーミングとマインドマップ作成を使って、書籍内容を深堀りしていきましょう。この段階では、頭の中にある電子書籍についての全ての考えを吐き出して、それを整理していきます。
ブレインストーミングと聞くと、「そんなことはいいから早く本を書き始めたい。いつになったら執筆に入るんだ?」と感じる人もいるかもしれませんね。しかし、気づいていないかもしれませんが、僕たちはすでに本の執筆に着手しています。そのことだけは、初めに明確にしておきましょう。
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ブレインストーミングに使えるツール
さて、まずはブレインストーミングについて見てみましょう。ブレインストーミングとは、頭の中にある考えを思いつくままに書き出して、それを整理する作業です。ただ頭の中で考えるだけでなく、書き出すということが重要です。
ブレインストーミングに使えるツールはさまざまな種類があります。ペンと紙を使っても良いし、専用のソフトウェアを使っても良いでしょう。フリーソフトウェアとしては、FreeMindがありますね。他に有名なものではMindManagerといった有料ソフトがあり、これらは30日間の無料トライアルが利用できます。ツールは、あなたにとって使いやすいものであれば、何を使ってもいいのです。Googleで「マインドマップソフト」や「ブレインストーミングソフト」と検索してみてください。
ツール#1:紙とペン
デジタルの時代になっても人気のあるのは、紙とペンを使った古典的な方法です。僕はいつもお風呂の中で、防水紙と専用のペンを持ってブレインストーミングをしています。湯船の中で、電子書籍でやりたいことやカバーしたいことを書き出します。お風呂に座っていると、アイデアが紙いっぱいに広がっていき、それが徐々に整理された思考プロセスになっていくのです。
一通り頭の中のアイデアを書き出したら、僕は別の色のペンに持ち替えることにしています。例えば黒色のペンで大まかな本の目的や概要を描いたら、次は赤色のペンで細かい内容について書き出していきます。
ところで、もしあなたも僕と同じように、お風呂で考え事をするタイプなら、耐水紙の用意が必要です。
おすすめはオキナの「プロジェクト耐水ノートB6」のノートです。お風呂の中でもしっかりと書くことが出来ます。お風呂の中でアイデアを出したい人には、必須アイテムのひとつです。
ツール#2:Mindmeister
お風呂で考え事はしたくないという人や、シャワーで済ませるという人もいるでしょう。そういった場合には、専用のソフトウェアを使ってアイデアを練りましょう。もちろん、ブレインストーミングの方法はその他にもたくさんあります。具体的には、マインドマップ専用のアプリを使ったブレインストーミングが挙げられます。
有名なアプリとしては、Mindmeisterがありますね。無料版がありますが、有料版を使う場合でも月500円程度で使うことが出来て、すごく安いです。Mindmeisterはインターフェースが綺麗で操作性が良いのが特徴です。ブラウザですべて完結するのが、シンプルでオススメです。共同作業も出来るので使い勝手が良いです。
ツール#3:XMind
Xmindも世界的に有名なアプリです。ただダウンロード版に重点が置かれているので、さきほどのMindmeisterよりも少し操作性が劣る感じです。
ただ操作が単純なマインドマップ型のブレインストーミングソフトで、無料版も利用できるのでMindmeisterが合わなかったら試してみてください。
ブレインストーミングで大事なことは、頭の中にあるものを全て吐き出して、何らかの形で整理することです。この目的を達成できるのであれば、利用するツールは何でも良いのです。
ツール#4:ポストイット
最後は、デジタルから離れてまたアナログな方法を紹介します。僕は昔、巨大なホワイトボードを用意して、そこにすべてを書き出すということをやっていました。これは紙を使うのとほぼ同じですね。紙に書くか、ホワイトボードに書くかの違いだけです。大学生の頃には、小さなメモ帳にアイデアを書き出すこともしていました。いくつものメモを床に並べて整理していたんです。
メモ帳を使うよりも便利な方法は、ポストイットを用意することです。付箋のような小さなポストイットを用意して、アイデアが浮かんだらすぐに書き込み、壁に貼ったり、キャビネットに貼ったりするのです。いつでもすぐにアイデアをアウトプットできますし、後から好きな場所に移動させることができます。ポストイットが溜まってきたら、壁やホワイトボードにアイデアを整理し直すことも簡単にできるので、おすすめの方法です。
創造性を高めるためにツールは適宜変更する
ここまで紹介してきたように、僕はいくつものブレインストーミング・ツールを使ってきました。僕の場合は、あるツールから次のツールへと次々と変え、そしてまた最初のツールへと戻ってくることが多いです。その理由のひとつは、何か新しいことや、いつもやっていないことをするという目新しさにより、創造性が高まると感じるからです。
「机の前に座るのはやめよう」「ホワイトボードに向かって、すべてを書き出してみよう」「新しく出たソフトウェアを使ってみよう」。このように、さまざまな新しいことに触れることで、脳が活性化し、良いアイデアも出やすくなるように思います。
ブレインストーミングでは、とにかく自分のアイデアを出し続けることが大切です。どんなツールを使うかは重要ではありません。あなたが何を考え出すかが大切です。
マインドマップの3つの型
さて、ここからは、電子書籍を作るためにマインドマップでどうブレインストーミングをしていくのか?その方法について紹介していきます。マインドマップの作り方には、大きく3つの種類があります。
マインドマップ#1:リスト型
1つ目は、リスト型のマインドマップです。これは、ハウツー系の電子書籍を作る際に特に有効です。作り方は簡単です。あなたが電子書籍に盛り込もうと思う内容をリスト化してください。それは質問のリストでも、ポイントのリストでも、ヒント、戦略、ツールのリストでも、何でも構いません。リスト型の特徴は、順番通りになっていない点です。思いつくままに書き出してください。
ひとつ覚えておいてほしいのは、全てのリストが本のメインテーマに沿っているということです。あなたが取り扱うテーマについての「20の事実」「27の間違い」「33のポイント」。このようにトピックをリスト化してください。例えば「電子書籍でお金を稼ぐための34の方法」というリストでも良いですね。
マインドマップ#2:サクセスパス型
次はサクセスパス型のマインドマップです。これは本当にただの地図のようなものです。まずは、電子書籍で教えようと思っていることの全てのステップを、ブレインストーミングで書き出してください。次に、どの順番で教えるかという時系列に並べ、さらに細かいステップについてブレインストーミングします。このようにして、本の最初から最後までの流れを書き出していってください。
ここで思い出して欲しいのは、「人々は電子書籍そのものを求めているのではなく、電子書籍から得られる結果を求めている」ということです。
想像してみてください。ここに1本の線があります。あなたの読者は左端にいて、彼が望んでいる結果はもう一方の右端にあります。もちろん、読者は今いる場所に満足していません。彼らはもう一方の崖に行きたいのです。さて、問題はこの線を右に移動していくのはそんなに簡単ではないということです。
そこで僕たちがしなければならないのは、彼が今いる場所から行きたい場所に行くために必要なステップを作ることです。ステップ1、2、3と段階を踏んで結果を出し、右端つまり結果に辿り着けるようにしてあげるのです。これを見込客の成功のための道、という意味で「サクセスパス」と呼びます。
僕たちは電子書籍に限らず、オンラインコースであってもハウツー系のコンテンツを作る場合には、必ずこのようにサクセスパスを作ります。読者に対して、「あなたが今いる場所から、憧れの場所に行くための方法を、ステップごとに正確にお見せします」と約束するためです。
僕は実際に「海外移住を実現する!オンライン講座・ビジネスの作り方」や「デジタルマーケティング完全ガイド 13コース in 1」という本で同じことを行いました。これらの本では、やるべきことをステップ・バイ・ステップで教えています。わかりやすい道筋があれば、読者は安心してそこを進めば良いと分かります。1つ1つ学び、行動し、課題をクリアすることで着実にスキルが身についていきます。
#3:ストーリー型
3つ目は、ストーリー型のマインドマップです。これは、フィクションの本を作る際に有効です。
初めに、ストーリーというものについて理解しておかなければならないことがあります。それは、多くの人々が「自分には物語なんて思いつかない。作家になんてなれない」と思い込んでいるということです。しかし、僕たちは皆、ストーリーの作り方を知っています。
すべての物語には、始まり、中間、そして終わりがあります。すべての劇や映画は基本的に3つの幕を持っています。序盤には緊張感の漂う演出があり、中盤ではプロットが構築され、さらなる緊張感や解決すべき項目が出てきます。そして結末は、すべての未解決事項がまとめて、解決されます。
ストーリーを作るためには、このような3幕の内容を決めて、登場人物のブレーンストーミングをすれば良いのです。そして、メインイベントに何を設定するのか、その物語の主なターニングポイントは何なのか、どのように問題が解決し、エンディングを迎えるのかを決めるのです。
マインドマップ作成の実例
さて、ここからはブレインストーミングとマインドマップ作成の実例について見てみましょう。ノンフィクション本とフィクション本に分けて、それぞれ紹介していきます。
初めに、ノンフィクション本のマインドマップの具体例についてです。ここでは、「防災パーフェクトガイド」というノンフィクションのハウツー本を作る際のマインドマップをお見せします。
まずは、その本でカバーする事項をいくつかのポイントにまとめましょう。この本の場合は、最初のポイントは「なぜ災害に備えて準備をするのか」です。そして2番目のポイントは、「直面する可能性のある主な災害の種類」としましょう。
2番目のポイント「直面する可能性のある主な災害の種類」には「自然災害」と「人的災害」の2つが考えられます。これらがサブポイントです。さらに掘り下げると、「自然災害」には、水害、ハリケーン、洪水、風や竜巻、地震、火事などがあります。
「人的災害」としては内乱、暴動、経済的崩壊、政治的崩壊などが挙げられますね。人的災害なんて、ちょっと遠いどこかの紛争地域のことに感じるかもしれません。欧州に来てみてわかったことですが、先進国と言われる国にいても意外と他人事ではありませんでした。
2021年11月には僕の住むオランダでも、パンデミックの最中に暴動が起きました。ウィルスに対する政府の規制強化に反対する抗議デモで、市民と警官隊が衝突しました。うちには小さな子どもが3人もいるので、もちろんこんな日には外出すらまともに出来ません。
これらはすべて、本の中で取り上げる必要があるものです。このように本の中でカバーすべきことを、ブレインストーミングしてみてください。
もちろん、先に挙げたものが僕の本の内容の全てではありません。書きたいことはもっとあります。例えば、災害が起きる前に何を準備すべきか、避難バッグには何を入れておくべきか、応急処置の方法、水はどう用意するのか、小さな子供やお年寄りをどのように避難させるべきかなど。これらすべてに対応しなければなりません。頭に浮かぶ数多くのカバーしたいことを整理するために、ここでリスト化してみましょう。
- 最初の3日間を乗り切るためのルール
- 緊急時に冷静さを保つ方法
- 緊急時に生き残るための3つの柱(水、避難場所、食料)
- 停電が長引いたらどうするか
- 1週間以上の災害状況への対応
- 短期的・長期的に家族の安全を確保する方法
- 誰を信用すべきか、そして誰を信じてはいけないか
- 災害が悲劇にならないようにするために備えること
- 用意しておくべき武器と、即席で作れる武器について
- 助けを待つか、より良い環境を求めて去るべきか(森の中に閉じ込められた人が、車を捨てて事故現場を離れ、迷子になって死ぬという例を盛り込む)
- 家族間のコミュニケーションのツール
- ニュースや最新情報の収集方法
- 信憑性のない悪い情報に惑わされない方法
- 短期的・長期的な食料と水の確保方法
- 交通手段や自分の車の燃料の維持について
- セキュリティ確保の方法
- 一時的もしくは永続的な転居の検討
一通りのトピックを書き出しましたが、それぞれについてさらにリサーチを進めると、他にも書くべきことを見つけられるでしょう。その場合は、リストに足していってください。リストを作っているうちに、いくつものアイデアが浮かんでくるでしょう。少なくとも、基本的な事項すら知らないことについて、本を書こうとは思わないですからね。
もしも、あまり詳しくないことについて書かなければいけない場合も、リストを作るのは簡単です。「防災」「サバイバル」「災害への備え」といったキーワードに関する本のトップ10を探して、それらの本のセールスコピーと目次を全てまとめてみてください。すると、例えあなたが防災について何も知らなかったとしても、防災についての電子書籍の適切なアウトラインを考えられるでしょう。
もちろん、これは例えです。あなたは防災についての本を書く必要はありません。あなたはおそらく、防災には興味がないでしょうからね。あなたは、あなたが書きたい、共有したいと思うトピックについて書くべきです。
まとめ:ブレインストーミングで頭の中を整理する
今回は電子書籍を作成するために必要なブレインストーミングの方法について紹介しました。まずは頭の中にある「書きたいこと」を、好きなツールを使って書き出してください。そして、それらをリスト化したり、順序立てて並べ替えてください。
あらかじめブレインストーミングやマインドマップ作成をしっかりと行っておくと、抜け漏れなくコンテンツを作ることができます。また、後に執筆作業を開始した際にも「何を書くべきか」と迷ってしまうことを防げます。スムーズな執筆のための重要な下準備と捉え、じっくりと取り組んでみてください。では、またすぐにお会いしましょう。