あなたは子供をオランダの学校に入れる前に、オランダの学校はどんな環境なのか?ということを知りたいと思っているかもしれません。実際に現地の公立校に子供を通わせてわかったオランダの学校事情についてお話します。
北欧といえば教育制度がユニークだと言われています。日本人から見ると北欧は天国のような場所のように言われることもあります。ですが実際に移住して子供を学校に入れるとなると不安になると思います。だからといって日本語学校に入れるのはちょっと待ってください。オランダの現地の人たちが行く学校も素晴らしい制度が整えられています。そういったオランダの学校制度の特徴をこれから詳しくお伝えしていきます。
オランダの義務教育は無料だがルールが厳しい
オランダでは小学校が4歳からスタートします。日本より少し早いですが、最初のうちは遊びのようなことばかりやっています。これは子供たちを学校に慣れさせるためなんだと思います。ちなみにオランダの義務教育は基本的に無料です。なので4歳から18歳まで完全に無料です。これは高福祉国家ならではのベネフィットだと思います。
その代わり、オランダの学校はルールに厳格です。まず学校の登下校には必ず保護者の付き添いが必要です。子供たちだけで学校に登校しても学校に入れてくれません。保護者の付き添いを確実にさせるためです。これは子供を守るためのルールなのだと思います。このエピソード1つとっても、いかにオランダの学校がルールに厳しいか分かると思います。
さらに、朝の登校時間は8時20分から8時30分までのようにキッチリ決められています。この時間より前でも後でもダメです。この時間より前は門がまだ開いていないので学校に入れてもらえません。そして8時30分には門が閉められます。なので、門が開いている10分間を狙って保護者が送迎をしなければなりません。うちは子供が4人いるのでどうしても忙しい時には送迎をベビーシッターにお願いしています。
また正当な理由なく学校を欠席させると親に罰金が科せられます。これも子供が教育を受ける権利を守るためだと思います。その責任を親に求めるという考え方が日本とは全く異なります。罰金があるので子供を休ませて旅行に行くということはできません。その代わり学校の休みは年間で16週間あります。これは日本の2倍くらいです。僕は旅行が好きなので、この16週間の学校休暇を利用して旅に出ています。
学校ごとに独立した教育方針が存在する
オランダでは公立、私立に関わらずそれぞれの学校に独立した教育方針を持つことが認められています。また学区という考え方がないので、親は自分たちの教育方針と合う学校を自由に選択することができます。僕たちも子供を小学校に入れるためにいくつかの学校に見学に行きました。見学に行くとだいたいは校長先生が出てきて、直接話を聞かせてくれます。
校長先生と直接話ができるのでそれぞれの学校の方針を深く理解することができます。僕は学校なんてどこでもいいと安直に考えていましたが、いざ選択肢を与えられると迷います。3つほど学校を訪問しましたが、どの学校も素晴らしいビジョンを持っているので最後の最後まで迷いました。
学校からの連絡もすべてアプリ経由で行われます。毎日先生から学校での子どもたちの写真が送られてきます。子供たちの学習進捗やクラスの中での様子も日報のように届くのです。このあたりはしっかりとデジタルが活用されており、紙のプリントなどを整理する必要がないので助かっています。先生は少し大変かもしれませんが。
またオランダの小学校には宿題がありません。長期休暇も含めて宿題はゼロです。どのように宿題をゼロにしているのかは分かりませんが、家に帰ってからも親の負担が増えるようなものは採用しないというのがオランダの方針だそうです。日本のようにPTAやれとか学校が押し付けてくる感じではないのが印象的です。
そのせいか、たまに学校が募集する遠足の付き添いみたいなボランティアにも親御さんがこぞって手を上げます。例えば遠足に行くけど人手が足りないから、引率の親を募集すると結構な数の人が立候補します。普段から学校に感謝しているからこそ、率先して手伝いたいという気持ちが生まれているように見えます。
実はオランダの小学校で通知表をもらって驚いたことがあります。通知表は紙ではなくデジタルでもらえますが、驚いたのはそこではありません。すごいのは通知表の項目です。項目は大人とのコミュニケーション、同世代とのコミュニケーション、言語能力の3つだけです。頭が良いか、いかに勉強ができるかということではなくコミュニケーションに重点が置かれています。
頭がいいことより、コミュニケーションを重要視するオランダの学校システムにアジアの島国からきた我々は驚かされています。こういった環境で育つわけですから、こっちには僕のようなコミュ障のような人は本当に皆無です。端的に言えば、好きなことを好きと言える子供を育てるか、嫌いなことを嫌いと言えない子供を育てるか、の違いなのではないかと思うんです。
これには移民の多さも関係しているかもしれません。ある学校の校長先生と話しているときに彼が「うちの生徒の国籍は合計40を超えます」と話していました。その学校はインターナショナルスクールではありません。これだけ母国語や文化の異なる国から人が集まっているのですから、コミュニケーションが重要視されるのも納得できます。
学校には子供を夢中させる工夫がたくさん
オランダは子供の幸福度が世界一と言われています。学校教育を見ていてもそれを垣間見ることができます。まずは子供が学校に行くのを楽しみにしていることです。僕なんかは小中高と学校が嫌で嫌で仕方なかったです。なので子供たちが前のめりになって行きたいと思える学校制度が実現されていることに本当に驚いています。
アートや図工などの子供たちが楽しめる活動がたくさん行われています。よく学校で作ったものを持って帰って見せてくれます。また子供の自主性を尊重しているのもオランダの学校教育の特徴と言われています。子供たちは朝学校に登校すると、その日学びたいことを自分たちで決められます。それから先ほども話題にしたように、学校ごとに独自のカリキュラムがあるので子供自身に合った学校を選べることも大きいでしょう。
また学校の中では誕生日を盛大に祝います。お誕生日の子はその日の学校の主役みたいに大切にされます。そうやって1人1人にスポットライトを当てて大切にしてあげることで、子供は自分が価値ある人間だと感じることができます。そうやって誕生日1つとっても、子供の自尊心を育むように工夫されています。
学校で行われる仮装パーティーも、子供たちが楽しみにしているイベントの1つです。学校で仮装パーティーをやるというのも日本人の僕からするとすごく新鮮です。僕自身は学校でそういう自由な雰囲気のイベントを経験したことがなかったんです。でも結構な頻度で行われていて、機会があるごとにうちの息子がスパイダーマンのコスチュームに着替えてワクワクしています。
授業では学校の外にもよく足を伸ばしています。バスで美術館とかにしょっちゅう行っています。こういうのは子供からしたらすごく楽しいはずです。学校の外に出るみたいな特別感のあるイベントだからです。よく休暇に子供たちと旅行していると子供たちが「あーそろそろ学校に行きたくなってきた」とか言うので、本当にうまく学校制度が設計されています。
ちなみにうちの子供は割りとおとなしいタイプだったので、学校に行ってくれるか心配していました。しかも学校には移民の子もたくさんいるのでうまく馴染めるか心配だったんです。でもそういう性格の子でも張り切って学校に行くくらい、学校が魅力的です。それだけでもオランダに来てすごくよかったなと思っています。
まとめ:子供ファーストの学校制度が整っている
ここまでオランダの学校制度についてお伝えしてきました。最後に要点を6つにまとめました。
- オランダの義務教育は無料だが時間や休みに関するルールがとても厳しい。
- オランダではそれぞれの学校に独自の教育方針があり、親が自由に学校を選ぶことができる。
- 小学校では宿題がなく、学校から親に押し付けられる仕事や義務が少ない。
- 学校教育では頭の良さよりもコミュニケーション能力が重要視されている。
- 授業の中に図工や校外学習などの子供が楽しめる活動が積極的に導入され、子供が楽しく学校に行けるよう工夫されている。
- 学校では学ぶ内容を自分たちで決めさせる。誕生日には学校でその子を盛大に祝っている。これにより子供の自主性と自尊心を育む教育が実践されている。