あなたがオランダ移住を考えている場合、自分たちがその国で果たして歓迎されるのか?気になりませんか?オランダのデン・ハーグに家族で移住した僕が、日常生活の中で感じたオランダの移民事情をお話していきます。
海外移住を考えた時にまず気になるのが、人種や文化の違いでしょう。1人で移住する場合でも、家族で移住する場合でも移住先に国で歓迎されるかどうかは、重要な懸案事項です。まずはオランダが移民を受け入れている理由を理解してください。そして、なぜ移民がオランダに入ってくるのか。オランダの市民として馴染むために用意されたInburgeringのことも理解しておきましょう。
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オランダが移民に賛成する理由:労働人口が足りないから
オランダが移民を受け入れている理由として、僕はそもそも働き手の数が足りていないからだと考えています。ただし実際には国の中で人種同士の分断が起きています。ピュアなオランダ人はトルコ人やモロッコ人など特定の国からの移民のことをあまりよく思っていません。YouTubeにも彼らが差別を受けたみたいな動画がたくさんあります。
ただし、オランダにトルコ人やモロッコ人が多いのには理由があります。かつて1960年代に労働力の不足を解消するため、オランダはトルコやモロッコと労働者に関する協定を結んだそうです。そのため多くのトルコ人、モロッコ人が労働者としてオランダに入りました。その後、彼らが家族を呼び寄せたりしてオランダ内にだんだんとトルコ人、モロッコ人が増えたそうです。
オランダにはHighly-Skilled Migrantsというビザの枠があります。これは知的労働者という、高度なスキルを持った優秀な人材を集めるためのビザです。このビザを使ってオランダには多くのインド人が来ています。彼らがどのくらい優秀かというと、明らかに見ていて収入が高いです。お金持ちです。車もテスラに乗っていたりと、オランダ人よりもお金を稼いでいます。
Highly-Skilled Migrantsたちはオランダに移民として来ているけれど、そこでしっかり不動産も買っています。そのくらい稼ぎの良い仕事に就いているということを意味します。ただしそういう優秀な移民がいる一方で、貧しい白人も増えています。いわゆるPoor White(プアホワイト)と呼ばれる人たちです。優秀な移民などに職を奪われ、結構窮屈な思いをしているようです。
実際に僕の階下に住んでいる男性もその窮屈な思いをしているオランダ人の白人の1人です。彼は僕らと同じアパートに住んでいて、500ユーロの家賃を払っています。上の階の僕らは2000ユーロも払っています。どうやらオランダには、年に何%しか家賃を上げてはいけないというルールがあるようです。彼は家賃が上がる何年も前からの住人なので、500ユーロだけで済んでいるようです。
ただし、彼いわく引っ越ししたくても他の物件の家賃が高すぎて払えないそうです。どうやら1人で住んでいるようで、いつも寂しげな雰囲気を醸し出しています。彼と話していると、ああ生粋のオランダ人でも生活に困っている人はいるんだなと実感します。
かといって、移民が不当に差別されるということはあまりありません。移民が多く入ってきているので、オランダは移民に寛容な国です。スケボーのクラスに入っても生徒の半分は移民です。そのくらい移民が多いので移民だからとコソコソ生きるような必要はありません。それよりも重要なのは、あなたが周りの人にフレンドリーな態度で接することができるかだと思います。
なぜ移民たちはオランダに来るのか?
自分で海外移住しておいて変な質問ですが、そもそもなぜ移民たちはオランダに移住するのでしょうか。まずは僕の話からしていきましょう。僕の場合は、アジアとアメリカではない場所に住んでみたい気持ちがあったからです。僕は大学生の頃からネブラスカ州立大学やシドニー工科大学に交換留学生として行くほど海外が好きでした。
大学の長期休暇も友達とインドでバックパッカーしたり、他にも色々な場所に一人旅をしていました。結婚してからは、妻と一緒にアジアやアメリカをぐるぐる回っていたんです。だからそろそろヨーロッパに行ってみたいと思ったのが1つのきっかけでした。じゃあ何で旅行じゃなくて移住までしようと思ったのか。
それはヨーロッパに拠点を1つ作ればあとはLCCや電車でヨーロッパの国を色々回れると思ったからです。ヨーロッパを旅行の拠点にしようと思ったんです。あともう1つは、日蘭通商航海条約(Treaty of Commerce and Navigation Between the Netherlands and Japan)の存在が大きかったです。これは簡単に言えば日本人がオランダに簡単に移住できるようにする条約です。
明治時代に結ばれた条約ですが、これのおかげで日本人は他の国の人達よりもオランダ移住に関しては優遇されているのです。ちなみにこの条約はおよそ90年以上も忘れ去られていました。21世紀になって1人のオランダ人の移民弁護士が偶然この条約の存在を再発見したそうです。弁護士の名前はステファン・ルーロフスさんです。
僕が移住手続きをお願いしたのがまさにこのステファン・ルーロフスが率いる「Adam & Wolf 移民弁護士事務所」(https://www.immigrationlawyersnetherlands.com/)でした。手続きには様々な書類が必要ですが、僕がお願いしたときはトータルで2,000ユーロですべてやってくれました。
では日本人以外の人たちはなぜオランダに移住するのでしょうか?大きな理由は賃金だと思います。僕の知り合いにオランダに来たイタリア人のエンジニアがいました。彼が来た理由も賃金でした。彼いわくオランダに来ればイタリアの3倍の給料で働けるそうです。でも結局彼はオランダの不安定な天気に耐えられずに、パンデミックのタイミングで自国に帰ってしまいました。
オランダに限って言えば、教育制度がとても充実しています。小学校は4歳から始まります。小学校には子供の喜ぶプログラムがたくさんあります。うちの子供が学校に行きたくないと言ったことはこれまで一度もありません。授業も工夫されていて、宿題はありません。この辺は、仕事と余暇をしっかり分けるオランダ人の考え方が反映されているのかもしれません。
オランダには日本人学校も英語のインターナショナルスクールもあります。もちろん、オランダの公立学校(パブリックスクール)では授業はオランダ語です。オランダの義務教育は4歳から18歳でその間はずっと無料です。公立学校であっても学校ごとにそれぞれのカラーが異なります。僕たちも学校を4つくらい回って、校長先生と直接話して最終的に小学校を決めました。仕事や賃金の他にも、家族がいる場合は高水準の教育も移住の大きな理由になるかもしれません。
移民を自国になじませる「Inburgering」プログラムとは?
オランダでは、移民を社会の一部として受け入れるための仕組みが整っています。つまり移民がオランダの社会の中に溶け込んで、周りの人たちとうまくやっていくためのサポートです。具体的には彼らに市民権を与える前に、オランダ生活に必要な言語、知識を与えることになっています。それがInburgeringと呼ばれる市民化プロセスです。簡単に言うと市民にして認めてもらうための学科テストです。
オランダでは移民が市民権を得るために、オランダの言語や社会に対する知識の確認テストを義務化しています。これは日本人が大好きなあのTOEICそっくりです。違うのは、語学の他にオランダ生活に必要な社会的知識が問われる点です。学校、医療、交通ルール、国王、地理など様々な問題が出ます。これらのテストに合格することで市民権が与えられるようになっています。
テスト勉強する過程でオランダ語のリスニング、リーディング、ライティング、スピーキングなどの能力も養われます。受ける側の移民からすればテストを受けなければならないという形式を取っています。ですが、これはオランダ政府側から見れば移民のためのサービスです。彼らが社会や文化に溶け込んで、周りの人達と仲良くやっていけるような仕組みをInburgeringとして用意しているのです。
まとめ:オランダ人は労働者を求め、移民に寛容である
ここまでオランダが移民に賛成する理由と、移民にまつわる話題をお伝えしてきました。最後に要点を5つにまとめました。
- オランダが移民を受け入れているのは労働人口が足りないからである。過去にも特定の国と協定を結び労働者を呼び寄せた歴史が存在する。
- オランダは移民の多い国であるため、移民だからと差別されることは少ない。周りと仲良くできるかどうかは移民かどうかよりも、本人の社交性に影響を受ける。
- オランダへの移民は、オランダに高い給料や高水準の教育を求めてやってくる。
- 日本とオランダの間には日蘭通商航海条約があるため、日本人は諸外国の人に比べてオランダへの移住が比較的容易である。
- オランダへの移民は、市民化プログラムであるInburgeringのテストを受ける。テスト勉強をする過程でオランダ語の知識やオランダ生活に関する知識が学べて、オランダに溶け込みやすくなる。