このレクチャーでは、アンケートから得た漠然としたデータや回答を、理想の顧客像 = ペルソナ、という形で強力なストーリーに転換していく方法についてお話ししていきます。ペルソナをビジネス書の作家にすれば本当に作家がお客さんとしてやってくる。東京で活躍している年収1000万円以上のセミナー講師に設定すればその通りの顧客がやってくる。ペルソナを設定し、1ミリのズレもない狙った顧客がきたとき、あなたは「え、魔法?魔法?」って思うことでしょう。
まず、アンケートの結果はいかがでしたか?このトレーニングでは、アンケート結果が必要となります。そのため、まだリサーチをおこなっていないという場合には、必ずアンケートをおこなってください。少なくとも10人からのフィードバックは欲しいところです。まだ、10人以上の回答を得られていないということであれば、まずはアンケートを積極的に行うところから始めましょう。
データをペルソナに変換する
10人以上のフィードバックを得られた方は、Typeformを使ってレビューしていきます。この方法については、後ほど詳しく説明していきます。おそらくアンケートを行って結果を得た人はすぐに分かったかと思いますが、得られたデータ自体はそれほど刺激的なものでも、魅力的なものでもないということです。数字と統計…それは無機質な数字と文字の羅列です。だから、数字や統計をストーリー形式に転換しなければなりません。僕が何を言いたいか、今はまだ正確に理解しなくて構いません。これからちゃんとお話をします。
さあ、まずはTypeformに戻りましょう。前回のトレーニングで作成したアンケート。実は誰にも送ってません。今回はあなたに事例をお見せするためだけにアンケートを作ったので、Typeform上で自分で回答しダミーデータを入力しておきました。ただ、もちろんのことですが、これは実質上なんの意味もないデータです。価値のあるデータを得るためには、アンケートの実施は必須であることはお忘れなく。
それでは軽くアンケートに目を通してみましょう。RESULTS ボタンをクリックします。そうすると別の画面が表示され、フィードバックを確認することができます。回答数やアンケートを開始した人のうち何パーセントがアンケートを完了したか、回答にかかった平均時間などが表示されます。もしアンケートの回答時間が2分以上であるならば、あなたのアンケートは長すぎる可能性があります。アンケートへの回答に時間がかかってしまうと、回答完了率が下がるリスクが上がります。
まずは、こちらをご覧ください。年齢カテゴリーに1つずつ、回答が為されていますね。まあ、ダミーデータなんですけど。「20歳未満」「21歳から30歳」「31歳から40歳」「41歳から50歳」「51歳以上」のカテゴリーにそれぞれ1人ずつ回答者がいることがわかります。他にも様々なカテゴリーごとに回答を確認することが可能です。
”SUMMARY(概要)”のボタンを押してみましょう。そうすると、全ての回答が表示されますね。
単にこれらの回答を見て、データの意味を推測するようなことはしたくありません。これらのデータを使い、理想の顧客像を作りたいのです。複数の見込み客がいる中で、1人の架空の人物を作るということです。しかし、この架空の人物は、すべての見込み客を象徴する存在でもあります。リサーチによって得たデータをもってして理想の顧客像を作ることで、見込み客とつながりやすくなります。
見込み客の全体が男性と女性のどちらかに偏っていない場合には、基本的にバランスの取れた統計を取ることができます。今回の例では、女性と男性の比率が60:40のバランスになっていますね。理想の顧客像の名前を考えましょう。何度も言いますが、理想の顧客像は見込み客全員のシンボルとなる存在なので、性別に関係なく使用できる名前を選ぶことがおすすめです。そうすることで、見込み客の性別によってどちらかを排除しなくてよくなります。
もし、あなたの見込み客のほとんどがどちらかの性別に偏っているのであれば、男性名・女性名のどちらか適切な方を選んでも構いません。名前は、彼ら自身を表すものです。今回は、理想の顧客像に田中さんと名付けましょう。この名前は、男性名・女性名どちらでも使用できるという点で気に入って、よく使っています。田中さんという名前を理想の顧客像につけることで、常に「僕は田中さんのためにコンテンツを作っているんだ」という気持ちを抱かせてくれます。
ペルソナのストーリーをGoogle Docsに書き出す
この画面を見ながら作業することができるように、Google Docsも用意しておきました。これが、そのGoogle Docsです。まだ何も書き込まれていませんね。この段階では、なんの意味もないただの「無題のドキュメント」でしかありません。
まずは名前から書き出しましょう。「田中さんは…」と。
この作業で、あなたは見込み客に関していくつか決定をしていかなければなりません。アンケートによって得たデータのうち、どれがストーリーを作る上で本当に意味のあるものなのか。これについて見極め、取捨選択をする必要があります。ここでの目標は、あなたがコンテンツ作成をする上で良いアイディアを紡ぎ出すことができるようなストーリーを作ることです。
何か作業をするたび、例えば新しい商品をローンチするたび、毎回アンケートを実施してデータを取り出して研究をしたいですか?それは、できるだけ避けたいですね。だからデータから理想の顧客像を作り出し、「自分の見込み客は誰なのか」ということを思い出せるストーリーを手元に置いておくべきです。
次に「何歳ですか?」という質問に対する回答を見てみましょう。回答を見てみると、すべての年齢層に均等にデータが入っていますね。したがって、ターゲットは50歳以下の人としましょう。
10件以上の回答を集めたら「31歳から40歳の人と、41歳から50歳の人が多いようだ。僕がターゲットにしようとしているのは、まさにこの年齢層。なぜなら、僕の受講生の中で最も成功しているのは、これらのカテゴリーの人だから」と判断することができるはずです。
先ほど「田中さんは…」と書いておきました。ここから、この人物像のアイデンティティを書き込んでいきましょう。アイデンティティとは、見込み客について知っている何かしらの情報です。たとえば、こんな感じで書いていきます。
「田中さんは、大企業の正社員です。」と。もしくは具体的に「田中さんは、ソフトバンクで働く正社員です。」といった感じで書いていくこともできます。
ここで重要なのは、あなたの見込み客のアイデンティティや特徴を明らかにしていくことです。すでにデータがあるので、パーセンテージに合わせた特徴を追加していってもいいでしょう。「田中さんは、40歳から50歳までの大企業で働く正社員です」といった感じです。
女性と男性の割合が60:40なので、理想の顧客像をどちらかの性別に寄せる必要はないでしょう。すでに中性的な名前をつけていますし、どちらかである必要はありません。
次に「結婚の状況」に進みましょう。80%は結婚済みということですね。では「田中さんは、40歳から50歳までの大企業で働く正社員で、幸せな結婚生活を送っている。」と追記しましょう。
「家族の世帯年収」に関する質問…ほとんどの回答者が、年間500万円を稼いでいるとのことです。もちろん架空のアンケートなので、年収が高い低いはあまり気にしないでください。この結果を受けて「田中さんは、40歳から50歳までの大企業で働く正社員で、年間500万円以上を稼いでおり、幸せな結婚生活を送っている。」と文を変えました。結果を受けて、理想の顧客像に関しての情報を書き加える時には、できるだけ自然な文の流れを意識してください。
では、次にNPS(Net Promoter Score)を見てみましょう。僕のブログを友人や同僚に推薦してくれる確率については…ほとんどの人が「9」か「10」と答えました。それでは、先ほどの文にこの情報も書き加えましょう。「田中さんは、僕のブログが大好きで友人に勧めたいと思っている。40歳から50歳までの大企業で働く正社員で、年間500万円以上を稼いでおり、幸せな結婚生活を送っている。」
もう一度言いますが、あくまで性別については中性であることに注意してください。なので、見込み客を指して「彼らは…」と言うことはできますが「彼は」とか「彼女は」とは言わないようにします。
さあ、作業に戻りましょう。田中さんについて他に知っていることはありますか?そうですね。田中さんの名前は、厳密には田中さんではありません。山崎英子、松井孝太郎、波多野智也、菊地竜太…このように見込み客一人一人には、固有の名前があります。この点については、後ほど詳しくお話をします。
ハイパーレスポンダーの回答に注目する
では、自由回答式の質問について見ていきましょう。もし、あなたのリサーチの主目的が自由回答形式の質問であるならば、ハイパーレスポンダーに目を向けるようにしましょう。これは、Ryan LevesqueのASKメソッドで学んだ概念ですね。基本的にここであなたが必要とするのは、回答を比較することです。
「お金も時間も制限がないとすれば、これから5年間でどんなことをしたいですか?」という質問に対して「パリで1ヶ月休暇を取る」と答える人もいれば、「次のAppleを作る」と言う人もいるかもしれません。もしくは「数億円規模のビジネスを展開したい」という回答者もいるかも。
それに対して「僕はオンラインコース クリエイターのための素晴らしい会社を作りたいと思っています。彼らの目標設定・ライフスタイル・生産性などの面をシステム化することで、成功できる確率を格段に上げていきたいんです。」とか「家族が豊かな愛の中で成長し、ボランティア事業への寄付をすることで社会に貢献する姿を見せたい。そして、職場にいる時以外は、仕事のことを気にせずに生活できるようになりたい。」とか、こういった詳細かつ熱心な回答もあるかもしれません。
Ryan LevesqueのASKメソッドには、何百、何千と莫大な数の回答があった際、どういった回答に注目すべきか理解するためのシステムや公式が用意されています。そして、注目すべき回答と注目する必要のない回答の違いをすぐに見分け、重要な部分にフォーカスを当てることができるようになります。
回答を読んで、回答者によって示されているテーマをメモしていきましょう。たとえば「素晴らしい会社を作る」ということが書かれていますね。お金や時間という縛りがなければ、ということではありますが、これは1つの重要なテーマになりそうです。他にも家族やボランティア事業への寄付など…こういったテーマも見つかりました。
ハイパーレスポンダーのテーマを全て書き留め、それ以外の回答と比較をしていきましょう。すると「次のAppleを作る」「数億円規模のビジネスを展開したい」という回答は、素晴らしい会社を作るというテーマに合致していることがわかります。
「借金をせず、子どもたちの大学の学費のために貯金を始め、ボランティア事業にもっとお金を寄付したいと思っています。」といった回答もあります。これは、ボランティア事業というテーマに合致していますね。これで、すでに2つのテーマを見つけ出すことができました。1つは「素晴らしい会社」で、もう1つは「ボランティア事業」です。
これらのテーマは、もちろんアンケートの回答者によって大きく異なってきます。ただ、やることは同じで、見つけ出したテーマを理想の顧客像のストーリーに追加していくことです。
話をストーリーに戻しましょう。具体的な数字を選んでいきましょう。「田中さんは47歳で幸せな結婚生活を送っている。」と。先ほどまでは40歳から50歳といった感じで範囲を設定していました。しかし、日常会話で友人を紹介する時に「石崎力也は、30歳から40歳で…」なんて言い方はしませんよね。
続いて、2つのテーマを加えましょう。「田中さんの本当の夢は、世界をより良く変える素晴らしい会社を作ることだ。」そして「世界を良い方向に変えるだけではなく、ボランティア事業に惜しみなく寄付できるようになりたいと思っている。」という一文も加えておきます。
さて、次の質問を見てみましょう。「パーソナルプラットフォームを構築する際、一番の問題はなんですか?」というものでしたね。回答には「良質なコンテンツを作る時間がない」「ブログを書く余裕がない」「ソーシャルメディアの構築に時間がかかりすぎている」といったものがあります。
ハイパーレスポンダーの回答も見てみましょう。「僕は今、自分のビジネスを運営することに夢中になっており、プラットフォームの構築についてどんな最新情報があるのか知る時間がありません。それに疲れていて実際に行動を起こす余裕もないんです。」と書かれています。
ここから見つかるテーマは、集中力の欠如や時間管理…といったところでしょう。ハイパーレスポンダー以外の回答にも「時間がない」といった回答が多かったですよね。これはピックアップしましょう。
そして、ストーリーに追加します。「夢自体は実現可能だが、田中さんにとってビジネスを加速させるプラットフォームを構築するための時間を見つけるのは難しい。」と。
次に連絡先情報についてです。回答者が少ない場合には、連絡先情報を使って実際に連絡を取り、いくつかの質問をする中で理想の顧客像の詳細を詰めていくことができます。おそらくアンケートの結果を受けて、これまで思いつきもしなかった質問が出てくるでしょう。そういった質問を後日連絡をする中で尋ねていくことがおすすめです。
一方でアンケートの回答者が多い場合には、ハイパーレスポンダーに連絡をしてみましょう。前回のレクチャーでも言いましたが、連絡先情報を書いてくれているかどうかもハイパーレスポンダーであるか否かを見極める重要な要素です。回答の長さだけではなく、連絡先を教えてくれているかどうかもチェックしましょう。連絡先を教えてくれているということは、あなたのコンテンツに興味を持ってくれているということを表します。
まとめ:文章を書くときにはいつもペルソナ宛に書くこと
さて、これで理想の顧客像は完成です。一度、目を通しておきましょう。
田中さんは、僕のブログが大好きで友人に勧めたいと思っている。40歳から50歳までの大企業で働く正社員で、年間500万円以上を稼いでおり、幸せな結婚生活を送っている。田中さんの本当の夢は、世界をより良く変える素晴らしい会社を作ることだ。また、世界を良い方向に変えるだけではなく、ボランティア事業に惜しみなく寄付できるようになりたいと思っている。夢自体は実現可能だが、田中さんにとってビジネスを加速させるプラットフォームを構築するための時間を見つけるのは難しい。
ここで完成した理想の顧客像は、いつも手元に置いておいてください。どのような方法で理想の顧客像を作っても構いません。大事なのは、理想の顧客像をいつも見えるところに置いておき、アンケートを行った際にはこれをアップデートすること。そして、いつも理想の顧客像が正確に設定されていることです。
それから、あなたがブログやメーリングリストに送るための文章を書く時には、いつも「田中さん」宛に書くことを意識してください。もちろん、名前はいつだって変えることができます。大事なのは、見込み客の象徴となる1人の人物に宛てて文章を考えるということです。誰か1人のことを真剣に考え、その人が抱える問題を解決しようとすることで、充実したコンテンツが作れるようになるだけではなく、見込み客との距離を縮めることができます。
また、ストーリーを振り返ることによって、田中さんがどのような問題を抱え、どのようにその問題を解決できるのか考えることが簡単になります。田中さんは何を気にかけているのでしょうか。田中さんが目標を達成するためには、どうすればいいのでしょうか。
わかりましたね?ここでの秘訣はリサーチをするたびに、自分のリサーチの主目的や理想の顧客像を見直す習慣を身につけることです。ちなみに、今回やったようなアンケートは少なくとも年に1度は行いましょう。
このプロセスで、これまで気づかなかった何かに気付けましたか?何か新たな発見があったらコメント欄で教えてください。