今回のレクチャーは、コミュニケーションによる会員維持率向上の戦略です。数年前、僕は、非常に収益性の高い会員制サイトのコンサルティングを手伝っていました。そのサイトには、会員定着率が非常に悪いという問題がありました。彼らは人を呼び込むのは得意でしたが、会員を維持するのが苦手だったのです。
実は、このコミュニケーションによる戦略は、自分たちのサブスクリプション – コンプリートバンドルを運営する中で生まれたものです。運よく、広告代理店の方々と繋がりがあるので、トラフィック自体は自由自在に集められます。またブログやYouTubeからも一定のトラフィックがあったので、お客さんは断らなければいけないほどたくさん来ていました。でも、リテンションがあまりに低い。大体平均して4ヶ月ほど会員はサイトを去って行きました。どうしてだと思いますか?
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コミュニケーションは課金していることを思い出させてしまう?
僕は収益性の高い会員制サイトを運営しているオーナー(僕のクライアント)にいくつか質問をしました。そのひとつは、「どのくらいの頻度でメンバーとコミュニケーションをとっていますか」というものでした。彼らの答えは「メンバーとコミュニケーションをとる?いや、それはしない」。なぜ、と聞くと「会員とコミュニケーションを取るたびに、彼らは毎月お金を払っていることを思い出す。そして彼らは退会していくことがわかったんだ。だから連絡しないんだ」との答え。
僕は、そこに問題があることがわからないのかと聞きました。会員と連絡を取るたびに退会者が増えるのは大きな問題です。メンバーとのコミュニケーションを避けるべきではありません。連絡を取ることで退会者が増えるなら、そこにはもっと大きな問題があります。つまり、メンバーが会員制サイトに求める価値と、実際に提供されているものとの間にズレがあるのです。少なくとも、彼の場合はそうでした。
ただし、僕が話した戦略を実行すれば、このようなズレは生じないでしょう。だからこそ、僕はあなたにメンバーと頻繁にコミュニケーションを取ることを勧めます。あなたがメンバーが求める価値をきちんと提供しているならば、コミュニケーションを取ることで、あなたのメンバーがあなたのサイトから受け取っている価値を思い出してくれるからです。 これは、先ほどの例とは全く逆ですね。つまり、コミュニケーションにより会員は自分たちがどれだけ得をしているかに気づき、会員定着率を上げることができるのです。
会員制ビジネスのオーナーは毎月の領収書を送りたくない
でも彼の言い分は理解できるんです。信じられない話ですが、世の中の大半のサブスクリプションを提供している企業は、毎月のように領収書を送ってきません。僕たちはクレジットカードの明細を見てはじめて「あ、こんなのにお金を払っていたんだ」と気づくんです。
つまり彼らは顧客にサブスクリプションしていることを気づかせたくないのです。彼らはこう考えています。お金を払いながらサブスクリプションを利用しない人が最も利益率の高い顧客だと。フィットネスジムの施設は使わないけど、お金だけは払い続けている会員が良い顧客だと考えている。だから、できる限り、こっそりと課金する。こちらから領収書を送るなんてもってのほか。だって顧客がサブスクしていることに気づいてしまうんだから、と彼らは考えている。
これは僕の経験です。
僕は以前、$997の商品を購入しました。Samcartの運営者である、Brian Moran の商品です。$997だから普通に買い切りだと思っていたんです。でも何故か毎月$199が追加で課金されている。次の月も、次の月も、これは何の請求か?とサポートに問い合わせたら、Samcartのビジネスプランの請求だと言われました。Samcartは確かに優れた決済システムですが、そもそも日本円が導入されていないの僕が利用する理由はないのです。$997の商品を買うと同時に、勝手に契約されていた$199のサブスク。
Brian Moran はイケイケのマーケケティングを仕掛けることで有名で、僕もこれまでいくつか彼の手法を真似させてもらいましたが、流石に今回の$997 + $199のサブスクはルール違反のような気がしました。ダークマーケティングの分類される、Hidden Continuity を彼はやっていたんです。サブスクの部分を隠して、$997の商品をオファーしていました。本当に$199のサブスクを隠してはいなかっただろうけど、オファーする時に買い手がそれに気づかないようにやっているんだと思います。
確かにその商品には、コミュニケーション機能がありませんでした。もしかしたらBrianは、コミュニケーションをとることでサブスクの課金に気付かれると考えていたのかもしれません。
あなたはメンバーと頻繁にコミュニケーションを取ることを約束してください。
それでは、ここからはメンバーとコミュニケーションを取る具体的な5つの戦略を紹介していきます。
#1:今後のコンテンツについて話す
1つ目は、今後のコンテンツについて話すことです。これは本当に重要です。メンバーが未来に起きる何かを期待するほど、定着率は向上します。来週、あるいは来月に予定されているコンテンツについて、定期的にお知らせをしてみましょう。僕たちは以前、毎週金曜日にニュースレターを配信していて、その中で次の週に予定しているコンテンツを予告していました。そうすることで、メンバーに楽しみを与えていたのです。
「続きはCMの後」と一緒です。予告されると人は続きを見たくなります。
漫才の頂点を決めるM-1も、最終決戦の投票を終えて審査結果が公開される直前に上戸彩さんが「審査結果は…今年もCMの後で」と笑顔でいうのが恒例になりつつあります。一応、三組の漫才師はカメラに向かって舞台からこけるふりをしていますがCM中は一体どんな心境なのでしょうか?自分がM-1チャンピオンに選ばれるかもしれないという高揚感と、一方で選ばれなかったらどうしようという不安と。考えるだけで、僕が緊張してきました。
あなたの会員制サイトで「続きはCMの後」をどうやって導入すれば良いでしょうか?アイディアを出してみてください。
例えばTeachable のドリップ機能を使って30日ごとに会員制サイトのコンテンツを公開するのであれば、1つのモジュールの最後に次のモジュールの予告を入れておくと確実にリテンションは伸びるはずです。コンプリートバンドル2.0ではそのようにモジュールを構成してあります。
#2:自動応答メッセージを用意する
2つ目は、自動応答メッセージを準備することです。特に新規会員がサイトに馴染むためのオンボーディングプロセスにおけるメッセージは本当に重要です。会員がサイトに馴染めるように、一連のメッセージを用意しておくといいでしょう。もしある特定の時期に退会者が増えるとわかっている場合は、そのタイミングに合わせて配信してもいいですね。
今後のボーナスを予告するのも良い手です。これらはすべて自動送信が可能です。つまり、一度誰かが入会すると、初めに歓迎のメッセージが配信され、2ヶ月後にはボーナスのお知らせのメッセージが配信されるように設定するのです。メンバーが課題を終了した際にメッセージを配信するのも良いでしょう。
Teachable にはDripによるセクション公開に合わせてメッセージを送る機能があります。Zapierを間に挟むと、もっと細かいことができるようになります。
これはZapierが処理できるTeachable のトリガーです。「テストの結果が良かったら」というトリガーがありますね。「テストの結果が良かったら、商品の割引クーポンを発行する」などのZapは面白そうです。他にも、特定のコースが終了したら、あるいは特定のレクチャーが視聴されたら、というトリガーもあります。メンバーの退会率が高いレクチャーにトリガーを仕掛けてメールを送るのはどうでしょうか?メールの中で次のセクションや、次の月にもらえるボーナスの予告をすることでリテンションは伸びるはずです。
このような一連のメッセージは、一度設定してしまえば自動化できます。同様に、メンバーの記念日や誕生日に自動的にメッセージを送ることも可能です。事前に情報を登録して、その日に合わせたメッセージを送るように設定するのです。
#3:郵送物を送付する
3つ目の戦略は、郵便で何かを送ることです。僕たちはデジタルの世界に慣れているので、郵便物には馴染みがないかもしれません。しかし、そのパワーは強力です。1枚のシンプルなハガキでも構いません。それを送ることで、これまで2次元だったコミュニケーションを3次元にして、特別なものにできます。電子メールやメッセージは、誰しも普段からたくさんもらっているでしょう。しかし、物理的な郵便物をもらうチャンスははるかに少ないので、それが目立つのです。今後のイベントの告知をするのにも最適な方法です。
また、新規会員向けにウェルカムギフトを用意するのも良い戦略です。入会のタイミングやメンバーが何かの節目を迎えたときに、物理的なサプライズプレゼントを用意してください。海外のプレーヤーは実際にこれを行っています。予期しないプレゼントを受け取ったメンバーは例外なく喜んでくれ、会員制サイト内で共有してくれます。
そういえばCanvaに印刷機能が追加されましたよね。
印刷物は、紙だけではありません。Tシャツも印刷できます。まあ僕の顔が印刷されたTシャツなんて誰もいらないでしょうけど。知らない国を歩いていて、目の前から歩いてきた人が、石崎の顔が印刷されたTシャツを着ていたら、僕なら恥ずかしくて逃げます。
#4:今後のイベントを予告する
4つ目は、今後のイベントを予告することです。先ほど、今後予定されているコンテンツの予告についてお話しました。それと同様に、今後のイベントをお知らせすることもおすすめです。
Jayson Gaignard(ジェイソン・ガイナード)は以前、「The Mastermind Talks」というイベントを販売していました。高額なイベントでしたが、それはすぐに完売しました。その理由は、彼がそのイベントに至るまでの過程を。コンテンツ化していたためです。それが会員向けの新しいコンテンツであれ、新しいコースであれ、イベントであれ、それに対して愛情と配慮を持って制作しているのを目にすると、人はそれを高く評価するようになるのです。
CovertKitのCEOは、社標に「Work in Public」を掲げています。直訳は、公の場所ではたらくです。これの意味するところは、まるで本社をガラス張りにして中が見えるように、透明性を持って働くということです。彼らは開発中のプロトタイプをインスタグラムに載せます。そしてフォロワーに「これどう思う?」と聞くのです。そう、彼のユーザーとコミュニケーションを取りながら商品を作っているんです。
さらに重要なことは、それを見たメンバーは期待感を持ってくれることです。人々に期待感を持ってもらうためには、コミュニケーションが必須です。コミュニケーションを取ることで、彼らは期待を抱くことができるのです。ジェイソンはこの点で驚異的な仕事をしてくれています。ブログの最下部では、実際に彼がどのように準備したかの例をお見せします。彼は定期的に同じイベントについての進捗報告をしていますが、そうすることで、メンバーはそのイベントの価値をより深く理解できるようになるのです。
もしあなたが今後何かのイベントを予定しているなら、それがウェビナーであれ、トレーニングであれ、ライブイベントであれ、ミートアップであれ、必ずその準備の進捗を頻繁に伝えるようにましょう。そうすることで、メンバーにとっての楽しみなイベントになります。彼らはカレンダーにマークを付けていて、そのイベントに参加したいと思うはずです。
Stu McLarenのTRIBE Liveでもそうしていますよね?その理由はまさに、ユーザーに参加してもらいたいからです。そして、それは素晴らしいイベントだからです。また、それ以上に重要なのは、日程や時間を知ってもらうだけでなく、皆さんに参加するのを楽しみにしてもらいたいからです。
#5:毎週コミュニケーションを取る
5つ目は、最低限のことですが、毎週のようにコミュニケーションを取ることです。先ほど、僕が運営していたある会員制サイトでは、毎週金曜日にコミュニケーションを取っていたとお話しました。そこでは、先ほど話した通り、今後のイベントがあればそれを伝えます。その他だと、コミュニティ内で話題になっている出来事を取り上げることもおすすめです。コミュニティを見て回って、多くの人が話題にしている事象があればそれを取り上げ、ニュースレターにも掲載します。そして、「これについてどう思う?」と全体に意見を聞くのです。そうすることで、メンバー同士の会話が生まれます。会話に参加する人が多ければ多いほど良いでしょう。なぜなら、会話に参加している人は、会員制サイトに居続ける滞在する可能性が高いからです。
話題がないのであれば、その週に配信したコンテンツを振り返って、そのコンテンツを見るべき理由を話しましょう。もし、あなたがすでに素晴らしいフィードバックやコメントを得ているのであれば、それを含めて話すとより良いですね。繰り返しますが、今後のコンテンツやイベントの情報も盛り込みましょう。
まとめ:メンバーと積極的にコミュニケーションを取る
とにかく、メンバーと頻繁コミュニケーションを取ることは大切です。冒頭で述べた通り、もしあなたがメンバーとのコミュニケーションを避けているのであれば、その裏にはもっと大きな問題があります。
ここで、メンバーとコミュニケーションを取るための5つの戦略をまとめます。1つ目は、今後のコンテンツを予告すること。2つ目は離脱のタイミングやメンバーが何かを達成した時、記念日や誕生日に自動送信のメッセージを送ること。3つ目は、何か郵便物を送ること。新規会員に向けたウェルカムギフトなどが良いでしょう。4つ目は、今後のイベントを予告すること。そして最後に毎週のようにメンバーとコミュニケーションを取ることです。
さて、ここまでコミュニケーションによる会員定着率向上の戦略をお話ししてきました。次は、最も強力な会員定着率向上戦略について紹介します。それでは、また次のレクチャーでお会いしましょう。