今回のレクチャーでは、コンテンツを用いた会員定着率の向上戦略についてお話しします。メンバーの定着率を高めるために、あなたのコンテンツには何が必要なのでしょうか。もしあなたの会員制サイトの退会率を減少させる9つの方法があったら、あなたは知りたいですか?そのうちのいくつをあなたのビジネスに適用させたいですか?実はコンテンツに関するリテンション戦略は9つもあるのです。
なぜ9つもコンテンツに関するリテンションがあるのでしょうか?理由はシンプル。ほとんどの会員制サイトはコンテンツの戦略を持っていないが故に自爆をしているのです。自分の知っていることを何の脈絡もなくただ会員制サイトに放り込めばいいと考えている人があまりにも多すぎます。コンテンツはたくさんあげたほうが良い、という間違った思い込みが会員を苦しめています。
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コンテンツの配信方法に関する2つの例
具体的な話に入る前に、ちょっとしたお話をしたいと思います。
事例#1. 年間のコンテンツ配信スケジュールを公開したところ購読者数が3倍になった
数年前、Women’s Living誌は定期購読者を増やすことに非常に力を入れていました。
今は旬のキーワードであるサブスクリプションも、もともとは雑誌の定期購読を意味する単語でした。僕が大学生の時、アルクの英単語帳を使っていました。Subscribe には「定期購読する」という訳が当てられており、かっこがきで(新聞や雑誌の)と書かれていたのです。
今は月額課金の全てをサブスクリプションと呼びますし、YouTubeのチャンネルを登録するのもSubscribe ですね。まさかここまでサブスクリプションという言葉が日常に溶け込んでくるとは思いませんでした。
もともと雑誌はサブスクリプションで決済してもらう商慣習を持っていました。うまくいっている雑誌は最先端のマーケティングをしています。まるでうまくいっている会員制サイトと同じように。成功している定期購読の雑誌からは多くのことを学べます。
さて、Women’s Living誌の話。彼らは普段、読者にとって関心のある話題を集めた本を、毎月販売していました。テーマは月ごとによって変わり、翌月のテーマはその前月にならないと告知されません。
ところがある日、1人のWomen’s Living誌の社員が「これを完全にひっくり返してはどうか」と提案しました。つまり、年の初めに、その年に取り扱う予定の全ての話題を予め読者に知らせたのです。すると、定期購読者数が3倍になりました。大幅な改善ですね。その背景にある心理とは、会員に対してテーマを前もって提供したことで、会員はその年に得られる情報や体験できることを知れたのです。
要約するとこうです。
従来は雑誌の毎号のテーマを前の月にその都度発表していた。それを年間購読してもらえるように予め1年分の号のテーマを公開したところ、購読者が増えた。
そういえば勝間和代さんも勝間塾の月例会も年間のスケジュールを公開していますね。2年先のテーマまで公開しています。
事例#2. 過去のコンテンツを見れなくしたことで新規会員から不満をもらった
別の会員制サイトを運営していたときも、同じ経験をしたことがあります。僕は数ヶ月間、様々なコンテンツを制作してきました。そのとき、僕たちは、新規会員には入会時以降のコンテンツのみにアクセスできるようにすると決めました。過去のコンテンツは、お金を払わなければアクセスできないようにしたのです。結果としてそれは裏目に出てしまったんですが、最初にこれをやろうと考えたのは、何ヶ月も前から毎月支払いをしてくれているメンバーには、敬意を表したいと思ったからです。しかし現実は、新しいメンバーから、すぐに不満の声が届いてしまいました。
これらの例から、会員維持率に関する戦略は「それを実行することでメンバーはどう感じるのか」を考えることが大切だと言えます。
入った時点よりも過去のコンテンツは見れずに、前から入っていたお客さんだけがコンテンツを見れる状態でした。過去のコンテンツにはアクセスできるようにすべきかどうか?あなたはどう思いますか?かつてコンサルティングでも同じ質問をいただいたことがあります。
どうやったらTeachable で過去のコンテンツを見れないようにすればいいですか?って。不公平感が生まれないように、昔から入ってくれている人には多くのコンテンツにアクセスできるようにしたいと。今の僕ならこう言います。「そのコンテンツ戦略は新規会員の不満を増やしますよ」と。
コンテンツに関する会員定着率向上のための9つの戦略
それでは、あなたが会員の定着率の向上のためにできる戦略的なことをいくつか紹介しましょう。コンテンツに関する戦略は、全部で9つあります。
#1:小さな成功体験を経験してもらう
1つ目は、メンバーに小さな成功体験をしてもらうことです。良い方法は、特定のレッスンを完了してもらうことです。それは、あなたが準備したオンボーディングのコンテンツを完了することかもしれませんし、また別のコンテンツを完了することかもしれません。何にせよ、あなたが行うべき最も重要なことは、新規メンバーに小さな成功を体験してもらい、それを祝うことです。
小さな成功が何であるかは、会員制サイトや市場によって異なるでしょう。あなたがやるべきことは、メンバーが達成すべき小さな成功を考えて、それを新規メンバーに伝えることです。 この戦略の良いところは、初めに成功体験を得ることで、会員制サイトに対する期待を大きくできることです。
僕たちの場合であればチャットワークコミュニティへ自己紹介をお願いしています。大人になって自己紹介かよと思う人もいれば、自分のことを晒したくないという人もいます。僕もどちらかといえばそういったタイプです。だけど、課題としては今後待ち構えているものに比べたらはるかに簡単です。メンタルやプライドさえ許せば、自己紹介なんて人生で何度もやってきたことですから、ぱぱっとできちゃいます。
自己紹介をすると、メンバーからの祝福がある場合とない場合があります。これはリアルな話。なぜ祝福がないかといえば、場の空気を凍らすような変な投稿をしたり、ズレた感じの自己紹介をするからです。まあそういった経験もインターネットビジネスをスタートする第一歩と言えるでしょう。僕もよくやります。場の空気が凍ったりするようなズレた投稿すること。それも1つの経験です。
あなたはどんな小さな成功体験を用意しますか?重たすぎず、できれば10分で達成できるようなことがいいです。99%の人が乗り越えられるような簡単なものを設定してください。
#2:コンテンツをオーバーラップさせる
2つ目の戦略は、コンテンツをオーバーラップさせることです。 オーバーラップとは、2つ以上のものが重なり合うこと。つまり、1つのコンテンツを月をまたいで提供するのです。
多くの会員制サイトオーナーは、毎月コンテンツを配信しています。しかし、それはほとんど単体のパッケージのようなものです。1月はAというトピックについて語り、2月はBというトピックについて語るという形式です。しかし、これはあまり得策ではありません。
僕が初めてオーバーラップ戦略に触れたのは、何年も前に所属していた会員制サイトでした。月額350ドルがかかるサイトで、大学を卒業したばかりの当時の僕にとっては本当に大金でした。それでも僕がこの会員制サイトに居続けたことには理由があったのです。その会員制サイトでは、毎月、毎月、新しい本を届けてくれました。
本の内容は、成功や時間管理などの一般的なトピックについてです。僕はお金がなかったので、最初は「登録して1ヶ月分の本をもらったら、解約しよう」と思っていました。もしかしたら、あなたの会員制サイトメンバーも同じことを考えているかもしれませんね。
ところが、いざその高額な会員制サイトに入会してみると、彼らは初月に1冊だけでなく、2冊目の本の前半も届けてくれたのです。僕は2冊目の本の後半も手に入れたくなりました。そうして次の月まで続けて、2冊目の本の後半と、3冊目の本の前半を手に入れました。すると、僕は次は3冊目の後半が欲しくなります。 毎回毎回、本の半分が手に入らないので、結局その会員制サイトにずっとお金を払い続けたのです。
コンテンツをオーバーラップさせることは、本当に強力な戦略です。もちろん、それは届ける本を前半と後半で分けるだけなくとも構いません。例えば、あるテーマについて、1ヶ月でパート1を作成して、次の月にパート2として継続するなど、様々な方法でコンテンツを次の月にオーバーラップさせることができます。どんな方法であれ、コンテンツをオーバーラップさせることは、本当に強力な会員定着率の向上戦略です。
Drip形式で運営されるモジューラー型の会員制サイトはそういう意味では最強です。だって、全てのモジュールを完成させないと1つのものが完成しcliませんから。もし途中で解約しようものなら、それまで構築してきた仕組みがゼロになってしまいます。ビジネス系の会員制サイトはモジューラー型のサブスクリプションにすることをお勧めします。そうすれば、モジュール前後の繋がりはもちろん、全てのモジュールが1つのゴールを目指して強く関連したものになります。
例えば、あなたはウェビナーローンチに関する会員制サイトを運営しています。5つのモジュールから構成されているとしましょう。
- モジュール#1. ジャンルを決める
- モジュール#2. 商品を作る
- モジュール#3. ウェビナーを作る
- モジュール#4. 自動化する
モジュールの前後は当然ながら関連しあっていますが、モジュール1から4の全てが「ウェビナーローンチを成功させる」という1つのゴールに関連づけられています。モジュール2の「商品を作る」まで完了した会員のほとんどはモジュール3を継続するでしょう。商品だけ持っていてもそれをウェビナーで売らないと意味がないからです。
なぜ僕たちが会員制サイトを作る前に会員の辿るべきロードマップ = サクセスパスを制作したか理解できたのではないでしょうか?
#3:決まった時間にコンテンツを公開する
3つ目の戦略は、決まった時間にコンテンツを公開することです。
かつて僕は金融系YouTuberの井上遥介さんと一緒に仕事をしていた時に、初めてその効果について知りました。井上さんは非常に人気のあるYouTubeを運営していて、動画を更新する曜日と時間を固定していたのです。毎回毎回、同じ曜日の同じ時間にブログをアップする。そうすると、チャンネル登録者は自然と彼の動画を見ることを日々の習慣に取り入れるのです。
ポッドキャストなどでも同様です。例えば毎週月曜、水曜、金曜の19時に公開すると、リスナーは毎週その時間にポッドキャストを聞くことを日々の習慣として取り入れてくれます。このような習慣的なコンテンツを作成して、毎週または毎月同じ時間にアップすると、より多くの人が継続して見てくれる可能性が上がります。コンテンツは、毎回決まった時間に公開しましょう。
僕たちの場合であれば、YouTubeの動画を月曜日と木曜日に公開しています。
コンプリートバンドルのコンテンツは入会から30日ごとに1つのモジュールが公開されます。
定期的にコンテンツを配信する、がポイントです。
#4:達成証明書を発行する
4つ目は、達成証明書の発行です。人は、自分の進歩を祝ってもらうことが大好きです。会員制サイト内における何かの課題を修了した後や、何かの目標を達成した時には、達成証明書を発行してあげましょう。会員制サイトにおけるゴールが何であれ、その達成を認め、祝うのです。達成証明書は、進歩を祝い、褒めるために最適な方法です。
一緒に仕事をしている臨床分子栄養医学研究会の宮澤さんは、Teachable から1ミリオンダラー達成(1億円達成)のトロフィーをもらいました。ある程度の金額に到達するとTeachable から担当者がつくようになります。僕たちも宮澤さんもそれぞれ担当者がついています。
宮澤さんのTeachable を担当するキャメロンはこう言いました。「今、毎月4000のTeachable が立ち上がっています。そのうち1ミリオンダラーを達成するのは3つのスクールだけ。日本で1ミリオンダラーを達成したのは宮澤さんがはじめてです」と。
残念ながら僕たちは決済をThinkificとClickFunnelsとPayPal で受けているので、まだTeachable には1億円の売上が計上されていません。今後、Teachable でも決済を受ける予定があるので、宮澤さんに続いて日本人二人目の1ミリオンダラー達成者としてトロフィーを受けたいと思っています。
さて、Teachable が1億円達成者にトロフィーを送るように、あなたも会員に達成証明書を発行しましょう。Udemyをコースを受講すれば修了証をオンラインで発行しています。僕がお気に入りのギター練習アプリYousicianも次のレベルに到達すると、Certificate(証明書)を発行してくれます。こういったデジタル修了証を発行するWebサービスもありますし、ThinkificやTeachable にはデフォルトでその機能が備わっています。
僕たちの場合、コースを全て完了した人に、特定の商品を最安値で購入できるオファーを自動で投げています。達成者に対してオファーするなんて失礼とあなたは思うかもしれませんが、案外皆さん商品を購入してくれます。最後までコースを視聴してくれたということは、僕たちのコンテンツを気に入ってくれている証拠ですから、次の商品もきっと満足してくれるに違いないと僕らは見込んでいます。
#5:フォーマットを充実させる
5つ目は、コンテンツにアクセスできるフォーマットを充実させることです。僕たちはモダリティをかえる、頻繁に言います。別の五感で情報を受け取ってもらうことを意味します。
利便性の向上は、会員の定着率を保つのためにとても重要です。以前僕が所属していた会員制サイトでは、毎月DVDが届けられました。しかし僕はDVDを見るのがあまり好きではありません。その代わりに僕は、その音声だけを利用していました。例えばドライブ中や、スノボやサーフィンに行く時なんかに、音声だけを音楽の代わりに聞くのです。
このように、好きな方法でコンテンツにアクセスできるのようにすることは大切です。ひとつのコンテンツを様々なフォーマットで制作しましょう。そうすることで、より多くの人があなたの情報にアクセスできます。
僕たちの商品にあるフォーマットの例を紹介します。
- ビデオ
- オーディオ
- トランスクリプト
- ワークシート
- テンプレート
- Zoomのレコーディング
- 画面共有(スクリーンキャスト)
だいたい1つの商品につき、これくらい違ったフォーマットのコンテンツを含めるようにしています。
#6:会員に意見やアイデア投稿を促す
6つ目は、会員に意見やアイデアなどのコンテンツ投稿を促すことです。僕はどのような会員制サイトでも、会員から様々な意見を投稿してもらうことを勧めています。その理由は、会員制サイトへ意見を投稿したメンバーは、サイトの成長に大きな貢献をしたことを感じるからです。会員制サイトの成長に貢献したメンバーの定着率というのは、大幅に上昇します。
会員にアイデアを投稿してもらい、それを共有するには様々な方法があります。実際、僕が会員制サイトの中で見たことのある方法のひとつは、1年を通して会員からのアイデアや投稿を集め、それを1冊の本にまとめて、コミュニティから本として出版するというものです。メンバーはこの本をとても気に入ったそうです。意見を投稿したメンバーは、今までにない形で人々から認められ、コミュニティ内におけるの知名度が上がりました。そして、彼らのようにサイトの成長に貢献したメンバーの定着率は大幅に上昇しました。
#7:ボーナスを用意する
7つ目は、ボーナスを用意することです。人は、ボーナスが大好きです。思いがけないボーナスを手に入れることで、喜びと興奮を経験し、会員制サイトに対するモチベーションを上げられます。
サプライズボーナスを与える際に注意すべきは、そのタイミングを戦略的に決めることです。会員制サイトというものは、時間が経つにつれて、いずれ会員数が減少し始める時期がやってきます。それがいつなのかは誰にも分かりませんが、会員の離脱が増えるタイミングを特定しましょう。そしてその時期の直前に、ボーナスの内容を説明するのです。
例えば、3ヶ月目に会員が減るタイミングがあるとわかった場合、2ヶ月目の終わり頃に、3ヶ月目に配信予定のボーナスを告知しましょう。会員制サイトを抜けることを考えていたメンバーに「やっぱりボーナスが欲しい」という期待感を持ってもらうのです。そうすることで、彼らに離脱を考え直してもらうことができます。戦略的なボーナスを考えて、可能な限り会員が減るタイミングに合わせて、それを提案しましょう。
#8:便利なツールを作成する
8つ目は、会員だけが利用できる便利なツールを作ることです。これは本当に強力な戦略です。人々にとって便利なツールを作ることで、会員制サイトは非常に安定します。
AJブラウンという男性の例を挙げて説明しましょう。彼は金融取引の分野で会員制サイトを持っており、そこで人々に株を売買する方法を教えていました。彼は、それまで約20分間かかる売買の作業を20秒に短縮するツールを作りました。これを使うことで、メンバーは時間を大幅に節約することができるようになります。それから彼は、そのツールを利用している人たちに向けたコンテンツを制作するようになりました。そして、そのツールを使えるのを会員制サイトのメンバーだけに制限したのです。
もし、あなたが教えている内容をより簡単に、あるいはより早く実践できるようなツールを作って、それを会員制サイトの中に組み込めば、メンバーの定着率の向上に大きな効果があるでしょう。その便利なツールに依存した人たちが、会員制サイトを使い続けるからです。
#9:コンテンツの全体像を見せる
最後に、ちょっとした戦略をお伝えしたいと思います。
これはメンバーシップビジネスの第一人者、Stu McLarenがポッドキャストの中で話していたことです。
数年前、Stu McLarenはジョン・チャイルダーという男の下で働いていました。彼は素晴らしいコンテンツを提供し、そしてそれを非常に魅力的に見せることに長けていました。例えば、彼は「チャイルダーズ・チャンク」というDVDシリーズを販売していました。DVDを1枚ずつ売るような、個別販売をしていました。DVDは、素敵なパッケージに封入され送られてきます。本棚にそれを飾ってみると、あることに気付きます。背表紙が、何かの絵の一部のようになっているのです。つまり、1枚、2枚、3枚、6枚買っただけでは、その絵は不自然で不完全なままなのです。そう、もし個別販売されているうちの数枚だけを買ったとしても、それは棚の上では全く見栄えが良くないのです。そのDVDシリーズの全てを揃えた時に、絵が完成し、綺麗な見た目になるのです。
もちろん、これはDVDの背表紙でのみ使える戦略ではありません。他にも様々な方法が考えられます。しかし、コンテンツ全体をどう消費してもらうかを考えることは本当に重要です。
まとめ:戦略を1つずつ実行する
繰り返しになりますが、ここまで話したコンテンツに関連した戦略の全てを、一気に実行する必要はありません。ただし、コンテンツをどのようにパッケージ化したり、配信したりするかを意識することで、会員定着率は徐々に向上していくことを覚えておきましょう。
次のレクチャーでは、会員定着率の向上に注いて、より具体的な戦略についてお話しします。またすぐに、お会いしましょう。