あなたがカメラの勉強を始めた時、あるいは一眼レフを購入した直後、カタログやネットでちらほら登場する「イメージセンサー(撮像素子)とはなんぞや」と思ったのではないでしょうか。蛍光灯のメカニズムがわからなくても電気を点けたり消したりできるように、イメージセンサーのメカニズムを理解していなくてもカメラをパシャパシャやることは可能です。もしかしたらイメージセンサーの構造を全く理解せずにカメラを上達させていったハイアマチュアな人やプロの人もいるかもしれません。あくまでもスキルの上達とは関係なく、知的好奇心を満たす記事になります。
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iPhoneのセンサーはSonyが作っていた
まずトリビアなネタから。イメージセンサーを作る会社は世界中にたくさんあります。その中でトップを独走するのが我ら日本を代表する企業・Sonyです。目立ったところでは、ウォークマン、Sony銀行、プレステなどがありますけど、イメージセンサーからも多くの収益を上げています。なんとiPhoneのカメラにすらイメージセンサーを供給していたというのですから、さぞスマフォ市場の拡大とともにイメージセンサーから利益をしっかりと確保していたことでしょう。あるガジェットメディアでは「iPhoneが1台売れるごとにSonyには2000円の収入がストックされる」とのこと。なんといっても世界のカメラの40%に対してSonyがたった1社でイメージセンサーを供給しているのですから。
撮像素子(イメージセンサー)と画素数の関係
センサーは大きければ大きいほど綺麗な絵が撮れると言われています。フォーサーズよりAPS-C、APS-Cよりフルサイズという風に。なぜか。センサーが大きいほど受光面積が大きくなるからです。満員電車をイメージしてください。車両の大きさは同じでも、山手線の混雑と札幌にある東西線の混雑はレベルが違います。当然山手線の方が混雑しています。密度が高いとも言えましょう。それゆえ、乗客一人一人のストレスは大きくなります。カメラで言えば、このストレスは、ノイズです。ノイズを減らし綺麗な絵にするためにやることは1つだけ。受光面積を大きくすることです。手段は2つあり、1つはイメージセンサーを大きくする、もう1つは画素数を落とす。電車の例で言うならば、車両を大きくするか、乗客の数を制限するか、の2つです。もちろん画素数(解像度)が高いほど細部まで描ききることができるので、むやみに画素数を減らすことはできません。ということで、綺麗な絵を追い求める人はやはりイメージセンサーの大きいもの(車両の大きいもの)を選ばねばならないでしょう。
大きいイメージセンサー何がネックか。値段です。撮像素子(イメージセンサー)は複雑な構造をしていますから、たった小指ほどの大きさを変化させるだけでも何十万円というプライスの違いが出てきます。またカメラも大型化するというデメリットもあります。
フルサイズとAPS-Cでは撮影範囲が異なる
ハイアマチュアや報道カメラマンなどのプロが使うカメラのイメージセンサーはだいたいがフルサイズです。ボディだけでも最低20万円ほどします(最近はどんどん値段が下がってきていますが)。それより1サイズ小さいAPS-Cは、入門機から高価格帯のカメラまでバラエティに富んでいます。初心者向けの雑誌を読めば「まずはAPS-Cからはじめてみては?」と書いてあることが多いように思えます。
さて、この2つ。イメージセンサーの大きさは違うから、APS-Cはフルサイズに比べて若干画質が劣るのは理解できます。それ以外に現実的な問題はあるのでしょうか。あります。同じレンズを使った場合、撮影範囲が異なります。例えば焦点距離が同じもの(仮に14mmとしましょう)を使えば、画角はフルサイズの方が大きくなります。まさにAPS-Cとフルサイズのセンサーサイズの違いが、画角の違いにダイレクトに反映されます。センサーサイズが小さいほど広角での撮影が難しくなります。逆にセンサーサイズが小さいほど望遠での撮影が楽になります。レンズの焦点距離を伸ばしやすいからですね。
一眼レフとミラーレスに画質の差はあるのか
イメージセンサーの大小で何が変わるか
さっき撮影範囲が異なるお話をしました。センサーサイズが大きいと広角での撮影に有利だけど、望遠は不利だと。その他にイメージセンサーの大小で変わることは何でしょう。図にしてみてました。
センサーサイズが大きければ常に写真は綺麗になるか
上図のようにポンポンと並べられれば「じゃあイメージセンサーが大きいもの買えばいいじゃないか」と早合点したくなりますが、その前に少し考えておきたいことを。僕が敬愛するイタリア人のビデオグラファー(レオナルドさん)はWatchtower of Turkeyで 2014年のVimeo大賞を受賞しています。多くのライバルがフルサイズの値段の高いカメラを使って撮影しているのに、レオナルドさんはGH3を使って撮影しています。パナソニックのGH3はフルサイズよりも2段階もイメージセンサーの小さい「マイクロフォーサーズ」を採用しています。彼の動画を見ていて分かるのは、綺麗な絵(ここでは写真だけではなく動画を含みます)をとるには次の幾つかの要素を総合的に満たす必要がある、ということです。
- メッセージ
- コンポジション
- レイアウト
- シャッターチャンス
- レンズ
1. 何を伝えたいのか。彼のメッセージは強力です。もちろん絵を解釈するのはビュアーの僕たちなんですけど、想像力を掻き立てるような写真の撮り方をしています。2. いわゆる構図ですね。コンポジションが悪ければどれだけ撮像素子の性能が良くてもダメです。それは3. レイアウトもしかりです。画面内のキャラや物の配置が悪ければ、やっぱり絵の魅力は落ちます。何より彼はフットワークが軽い。トルコに長く滞在し、滞在中は女性のガイドをつけてとにかくローカルな場所まで潜り込んだ。それゆえに4. シャッターチャンスが他のライバルよりも多かったと考えられます。またインタビュー記事ではライカ・パナソニックの女王的なレンズと言われている Noctioction を使っています。f1.2の評判高いレンズです。これら様々な要素を総合的に満たしてこそ、いい絵が撮れると僕は考えています。少なくともレオナルドさんの作品からそう感じ取りました。