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はじめての北陸新幹線
東京駅の23番線ホームから北陸新幹線「かがやき」は発車する。このホームは東北新幹線が東京始発になった時に、はじめて営業使用されたホーム。実は、その日、その時に仙台へ出張があって東北新幹線を利用したのだが、混雑を予想して八重洲と丸の内を結ぶ近くコンコースに整列させられた後、順番にホームへと誘導された記憶がある。懐かしい感覚がよみがえるホーム。
でも、そんなことは言ってはいられない。今回は、プロダクトローンチの商品とプリローンチコンテンツを作ってしまうという3泊4日の合宿。しかも、4日目は早朝から仙台への移動があるため、実質、3日間しかないというタイトなスケジュールだった。
北陸新幹線を使うと、東京から金沢まで2時間30分程度で到着する。しかも、車内は結構、空いているし、キーボードを打つ音で隣や前後の人に迷惑をかけないかと心配することもない。大まかに作ってあったプロローンチコンテンツを見直して、スクリプトを修正したりしていたら、あっという間に金沢に到着してしまった。
北陸名物の寿司ランチ
金沢駅では迎えに来てくれた石崎さんと、打合せを兼ねたランチ。金沢は、実は日本海でとれるお魚がとても美味しい街。なので、迷わず、石崎さんオススメの駅ビルにあるお寿司屋さんに入った。と言っても、カウンターで食べる高級店ではなく、ごく普通の回転するお寿司屋さん。ボックス席に陣取って、これからの段取りを打合せ・・・はあまりせずに、美味しいお寿司をいただいて合宿成功の予祝を完了した。
ちなみに、ここで話した内容を暴露すると、主に、3日間をどういう順番で何をするか、という段取りの話。撮影を主体にする合宿なので、天候や光の具合にスケジュールが半強制的に左右される部分がある。なので、天気の良さそうな前半に、撮影、収録の作業を詰めてやってしまって、後半に編集をやるという基本方針を確認した。
撮影会場は
撮影会場は、金沢から車で約40分程度。手取川の河岸段丘の上にあるログハウスだった。実はここ、数々のエバーグリーンプロモーションのコンテンツを生み出している動画収録の聖地とも言える場所。元々は、ログハウスメーカーのモデルハウスを体験宿泊も含めて宿泊施設として貸し出してくれているところで、内装も結構、オシャレだし、何よりも川沿いに広いウッドデッキがあるのが素敵。
腹ごしらえもしたし、近くのコンビニで飲み物と少しの甘いものを準備して、いよいよコンテンツ制作に入ることとなった。ちなみに、撮影会場を選ぶコツは、背景として使えるパターンが多いところを選ぶことが重要だ。
巷で行われているプロダクトローンチプのリローンチコンテンツの多くが、ホワイトボードを背景に講義をする形式だったり、最近多く見かけるのがクロマキーを使って背景を合成する手法。背景がビルだったり、本棚だったりするのを見て何となく違和感を感じてしまった方も多いのではないかと思う。それは、作られた背景だからこそ、感じるもの。もちろん、プリローンチコンテンツの内容によっては、その方がシックリくるものもある。でも、合成の画像を背景に、数人が対談するという構図は、若干、見飽きた感があるのではないだろうか。
僕たちが伝えたかったのは、本物のシチュエーションや、映像をコンテンツに入れることによる臨場感や、イメージを具体的に持ってもらえるプリローンチコンテンツ。理想を言ってしまえば、映画のように、見ているだけで引き込まれていくようなプリローンチコンテンツを目指している。そのためにも、動画の背景に映り込むアイテムには、どんなに細かい小さなものにも気を配っていきたい。そう考えて、会場を選んでいる。
背景を見て構図を決める
会場に到着して、まず最初にやったことは、メインの撮影場所を決めることだった。部屋は一戸建てで広いリビングとダイニングキッチンがあり、小ぢんまりとした寝室が付いているという構成。とりあえず荷物を寝室に放り込むと、構図を探すモードに切り替えて部屋全体を見渡して見た。
一つ目の候補はキッチン。それなりに素敵な食器や調理器具がログハウスの木の壁に並んでいる。これらを背景にしても、非日常的な空間は演出できるだろう。でも、最も良いと思ったのは、3方向に窓のあるリビングだった。実は、3方向からの採光は、どの方向から撮るにしても、窓の外の光量が多すぎて白飛びすること覚悟する必要がある。つまり、窓から見える風景を背景に使うことは難しいということ。
でも、この会場の場合は、窓の周りに、結構素敵なアイテムがたくさん並んでいた。例えば、クラシカルなカメラ。もちろん動作してはいなかったが、撮影機材が大好きな人間から見ると40年近く昔のカメラが、とんでもなく可愛く見えたりする。そして、窓を背景にしても、適切な露出を設定できるであろうと思わせる、光の周り具合というか、被写体にも背景全体にも光が当たる場所が存在したこと。
ここしかないな、という直感のようなもので、石崎さんの意見をあまり聞くこともせず「ここにしましょう!」と口が勝手に動いていた。
昼の光と夕方の光
撮影場所で、もう一つ、気をつけなければならないのは、太陽の位置の変化による光の変化だ。昼間の撮影の主な光源は、当然ながら、太陽になる。直射日光では影が鮮明に出すぎるので、収録当日のような、快晴ではないけれど、薄く平均的に層雲がかかっているという状態は、光の変化が少なくて、収録にはとても良い。
それでも、地球の自転に合わせて、光源は移動していくし、夕方になればなるほど光は傾いていく。つまり、影が出てくる、ということと、色温度が若干変わってくることを意識する必要がある。とりあえず、竹岡が喋る予定の2番目のプリローンチコンテンツを収録し、その収録風景を撮影しながら教材の収録をする、という、ちょっと複雑な収録をこなしてしまうことにした。
自然光での撮影にこだわる
今回の収録の主体は、GH5とGH4と考えていたのだが、何と、石崎さんが秘密兵器を用意していた。それはカメラグランプリ大賞を受賞したフルサイズのミラーレス一眼、S1だった。マイクロフォーサーズと違って、ずっしりと思い機材は、昔、スチールで作画をしていた頃を思い出させるものだったが、室内での収録ということで重量がネックになることはない。
マンフロットの三脚を2本たてて、プロンプターを準備し、新幹線の中で修正したスクリプトをネット経由でiPadに落としてもらって準備完了。いよいよ収録が始まる。
プロンプターの使い方にこだわる
プロンプターを使う際に、気をつけるべきことがいくつかある。それは、喋る本人が画面の全体を見られるように、位置を微調整すること。これは、人によるのかもしれないが、文字が出てくるところを読む場合と、画面の中心付近を読む場合があるので、一番、見やすい位置を決めるのは、細かい点ではあるが最初に注意しておくべきポイントだ。
もう一つ、気をつけておきたいことは、スクリプトを改行する位置。実は、人は文章を喋るときに、ある一定量の文字を、先読みして、一つのセンテンスとして発声してる。ということは、一文が長い時や、文末の言葉で文章全体の意味が変わったりする文章をスクリプトに入れると、読むニュアンスが異なったりすることがある。
このニュアンスが、コンテンツの伝える力を大きく左右する。一つ一つの文章を、一文ずつ、本気で伝えていく。それには、本気で信じていること、本気で考えていることしか伝わらないし、より確実に伝えるために、ただスクリプトを読むのではなく、一文に『本気』を載せて『自分の言葉』として発する必要がある。
だからこそ、次の一文を、丸ごと読めるようにプロンプターの画面を調整する必要があるし、プロンプターの一文に入らないような一文の長さにしてはいけないということでもある。このこだわりが、伝わる、引き込まれるプリローンチコンテンツを作るために必要な重要ポイントだったりするのだ。
このニュアンスは、文章で伝えるのはとても難しいので、是非、僕たちのプリローンチコンテンをじっくりと最初から最後まで見て欲しい。きっと、言っている意味がわかってもらえると思う。
PLCを撮影する風景を教材として撮影する
今回の新しい試みは、プロダクトローンチのプリローンチコンテンツ制作風景を収録して、教材を作るということ。つまり、二重の作業を二人でこなすということだった。そして、その成功のポイントは収録を始めるまでのセッティングにある。
コンテンツを話す人、今回の場合は竹岡の位置を決める。あとでわからなくならないように、床にマーカーを置く。その位置で、プロローンチコンテンツを撮影する機材をセッティングする。今回は2カメで撮影するので、それぞれの背景と構図を確立する必要がある。2カメで撮る時、コンテンツを話す人があまり前後左右に動くと構図が崩れる可能性があるので、ボディアクションは控え目にする必要があるかもしれない。まぁ、本気で喋るので、ついつい、力が入ってしまったり動いてしまったりするのだが、フレームアウトするような極端なものでなければ、それはそれで良いかもしれない。
プリローンチコンテンツの収録体制が整ったら、その全体を収録する別カメラを準備する。こちらは、ある程度、教材の内容によって動いてもいいし、動きがあった方が、見ていて飽きない教材となるので、今回はRonin-sというスタビライザーが準備されていた。実際、竹岡もはじめて実物に触れたのだが、実に優れものだった。映像を創るということは、こういうことなのかも、というイメージが自分の中に出来てきたことが、とても有難いことだった。
さて、実は、もう一つ用意して行ったものがある。それは、OsmoPocktという小さな3軸ジンバルのカメラ。外出してBロールを撮影する一助になればというので持って行ったのだが、これにハイパーラプスの機能が付いていた。OsmoPocketの広い画角を利用して、撮影現場全体を画角に入れながら、少しずつ画角を変えながらタイムラプスの撮影を自動的にしてくれる。これってすごくない?と思わず言ってしまいそうな機能だった。
ということで、初日のプリローンチコンテンツの撮影は、一つ目がプリローンチコンテンツを収録する機材。2つ目がプロローンチコンテンツを撮影する教材を収録する機材。そして3つ目が全体の様子を収録する機材という3重構造の撮影となった。なかなかこんな収録をしている人はいないのではないだろうか。なんか、クールでしょ!(笑)
撮影したらすぐに編集する
プリローンチコンテンツは、事前にスクリプトを準備していたので、一発撮りで完成度の高いものが出来上がる。撮り直しがない、ということは、作業がとてもスムースに進むということ。2番目のプリローンチコンテンツを収録し、プリローンチコンテンツ収録の教材用のコンテンツを収録したあと、石崎さんはすぐに編集作業に取り掛かった。
実は、編集作業は編集が一つの目的ではあったのだが、編集している画面を収録することによって、どのように編集するのかという教材作りも兼ねたクリエイティブな作業になっている。なので、編集するだけではなく、なぜ、ここで、その操作をするのか、という解説を加えながらの編集作業になる。普通の編集作業に比べると時間はかかるが、別に教材を作るよりも、全体としてははるかに効率の良い作業手順と言えるだろう。
ちなみに、この時に編集したものは、2番目のプリローンチコンテンツだ。音楽のチョイスも秀逸だし、音楽のテンポに合わせた画面の切り替えも、普通のプロダクトローンチでは絶対にお目にかかれない切れ味鋭いものになっている。興味のある人は、是非、一度、映像を実際に確認して欲しい。きっと、こんな映像を作りたい、と思うようになるかもしれない。
夕食は焼肉の予定だったのだが、、
夕食は近くにある焼肉屋さんに行こう、という話になっていた。昼はお寿司で夜は焼肉。何とも贅沢な合宿、となるはずだったのだが、なんと期待していたお店がお休み。。もう一つの候補のレストランも、残念ながらお休みで結局、スーパーでステーキ肉と食材を買って自炊になった。なんか、バーベキューっぽくていいね。
これも、一軒家を借りたからこそ可能になったオプション。会場選びも、ここまで考えておくべきなのかもしれない。ちなみに、お風呂やシャワーも何度も浴びることができるし、洗濯機も使えるので空き時間に洗濯も出来る。旅慣れた石崎さんは必要最小限の荷物で、ログハウスにある設備をフルに活用している。これも、短期間にコンテンツを完成させて行くための創意工夫の一つと言えるかもしれない。
ちなみに、アルコールは控え目にして、夕食後も石崎さんはスクリーンキャストの教材作り。竹岡は次の日のスクリプトの修正や、コンテンツの作りこみに勤しみ、時間がたつのを忘れてしまうほどの高い集中をキープしていた。
合宿の楽しみは、その場でコンテンツがどんどん出来上がって行くという実感が持てること。さて、合宿第2日はどんな成果物が出来上がるのか。次の記事を楽しみにしていてくださいね。