今日は”タダで映画館に行く方法”をお教えしようと思います。
確か前野さんって方だと思いますが、彼の脳科学に関する書籍の中で「僕の人生が映画みたいだから、いちいち映画館に行く必要は無い」って感じのことを言っていました。
なるほど、映画館に行く人の心理を想像するに、映画を見たい人はお金を払ってまで映画の中の主人公の感情に移入したい、そーいった気分を味わいたい人たちだってことですね。もし人生が本当に喜怒哀楽に満ちていたら、わざわざ映画なんて見る必要がないでしょう。(・・・と、彼の書籍の内容から想像を膨らませてみました)
確かに、僕みたいに常に世界を旅しているような人種は、毎日が映画の中のように刺激に満ち満ちていて、わざわざ映画館に行く必要なんて全くないわけです。
・・・と言いたいところですが、僕ら夫婦は大の映画好き。海外ドラマ2、3本と2時間の映画を毎日1本見るくらいの映像コンテンツ中毒者です。
僕らの人生が刺激に満ちているかどうかは分かりませんが、僕らは主人公に完璧に感情移入してしまう性格なので、映画を見るたびに「戦争でパートナーを失った主人公に感情移入し、悲しい」「プロジェクトが大成功した主人公に感情移入に、嬉しい」「主人公をいつも貶めようとする敵が、憎い」といったあらゆる感情が心の中で生じます。
でも、ほら、映画館って高いじゃないですか。シンガポールだったら一回1000円くらい、マレーシアなら800円、韓国も800円(ハングル字幕)、フィリピンで500円、タイで400円くらいでしょうか。
Apple TVを使いiTunes経由で映画をレンタルすれば、$4.99かかりますから、毎日これらを3・4本見るとなると、だいたい月額で6・7万円かかる計算になります。現実に僕らは海外旅行中もそのくらいの金額を映像コンテンツに支払っていました。
でもある時を境に”タダで映画を見る方法”が分かってしまったのです。
それは、奥さんが実際にGili島で溺れた時を後日ベッドで二人で思い出した時でした。あれは確かカンボジアのシェムリップにいたときのことだったはず。
午前中にアンコールワットを見て、部屋に戻り、映画を見ながらビールを飲んでいるときのこと。映画のワンシーンで、シュノーケルをしているカップルが映りました。
その時、奥さんが唐突に「この後、私、溺れたんだよね」とかボソッとつぶやきながら、額に汗をにじませたのです。その顔はまさに溺れている最中に見せたあのピンチMAXの顔とまったく一緒でした。その顔を見て僕も当時の様子を鮮明に思い出し、急に背筋がゾッとして呼吸が速くなるのを感じました。
僕たちは、自分たちの頭の中にある記憶を再現するだけで、ものすごいリアリティを伴う感情をホテルの一室で想起していたのです。まるで自分たちが海にいるようでした。
3Dの映画を見ていたんですが、55インチに映し出される3D映画の何倍もリアルに、僕たちは海にいる情景を記憶から引っ張りだして再現していたのです。
「うわ!映画と一緒だ!」
二人は声を揃えて言い合いました。
この時はじめて「記憶にアクセスすること」はタダで映画館に行くようなものだと気づいたのです。それ以来、僕たちは時間がある毎に(特に寝る前に)、旅行中に経験したアンビリーバボーな記憶を思い出し、お互いに補完し合いながら明明と頭の中のスクリーンに映画を映し出していました。
僕の奥さんが九死に一生みたいなかなりネガティブな内容を思い出したように、僕らは好んで「悲しい」「苦しい」「ムカつく」「腹立たしい」「悔しい」といった感情を思い出してしまいます。
もうそれを思い出している間は、とにかく二人は超ブルーな気分になる。(笑)
「あいつ、ぶっ殺してやる」
「あのデブ、超キモいわ」
「悔しくて涙が出る」
・・・etc
でも、特筆すべきは、僕たちはこれらを娯楽として楽しんでいる点です。たまに過去の記憶に苦しみ続けている人がいますが、僕らからすると理由が全く分かりません。
悔しい記憶も、ムカつく記憶も、悲しい記憶も全て、%%name%%さん個人にしか再現し得ない、ひどく固有な体験の塊です。わざわざ映画館に行ってお金を払って主人公に感情移入し「悲しい・・・」とか涙流している人に比べたら、タダで同じことができるんだから、かなり幸せな部類だと思います。
僕は過去の記憶は全て「タダ映画館」みたいなものだと思っているので、好きな時に好きなだけ浸ります。もちろん毎日、そういった娯楽で遊びすぎると、ダメ人間になってしまうので、仕事が終わった後とか、買い物している奥さんを待っているときとか、意図的に記憶を引っ張ってきて思い出して、タダで映画鑑賞をしています。
過去の記憶に捕われるなんて、バカげています。
「あの時、あの選択をしていれば今頃・・・」なんて想像するのは、仮想のベターな自分を想像して無駄にエネルギーを投下しているようなものです。仮想のベターを想像するんだから、勝ち目がありません。
当時の自分は、その時与えられた情報から最善の選択をしました。つまり僕たちの意思決定は常にベストなわけです。そのベスト・ベスト・ベスト・・・の積み重ねが今の自分を作っているわけですから、今の自分がベストであるに決っています。
それ以外の自分を世界中のどこを探しても見つかりませんから、やっぱりいまココにいる自分がベストなわけです。
僕の起業家友達に年商4億のSEO会社を経営しているSというヤツがいますが、彼はいつも「俺を裏切ったH.Tを絶対に許さない」といつも言っています。H.Tは僕も知っている敏腕プログラマーで、Sの共同創業者なんです。SはいつもH.Tが裏切ったと言う。
彼曰く「あの時、H.Tがうちのライセンスを他社に無断で譲渡しなきゃ、今頃俺たちはもっとリッチだった・・・」って言うんです。
でも僕からすると、どうして「H.Tがライセンス契約を結んでくれたおかげで年商4億の会社を作れた」と思わないんだろうと不思議で仕方ありません。
僕も創業メンバーの1人が勝手に僕のアイディアを盗み、それを製品化して別の会社に売られた経験を持ちますが(たぶんSの例よりもっと悪い事例だと思う)、当時も今もなんとも思っていません。
その創業メンバーは「契約書が無いから、これは誰のものでもない。作ったのは俺だ」と言い放ち、勝手に会社を去っていきました。この前、友人の弁護士とパタヤのビーチで飲んでいる時に「少額訴訟で訴えればすぐに決着つくよ」と教えてもらったんですが、僕はその創業メンバーがそれほどお金を持っていないことを知っているので、訴えるなんて想像もしませんでした。
それよりも契約書の重要性を教えてくれた彼に感謝しています。彼のおかげで六本木という舞台で起業することもできましたし。(彼は今、カリフォルニアの大学院でCSISを勉強しています)
過去の記憶なんて、タダの映画みたいなもんです。嫌な記憶も悲しい記憶もムカつく記憶も全て、娯楽です。それに捕われるから時間を浪費するだけで、自分だけに固有な娯楽だと理解できれば、これほど幸せなことはないでしょう。
世界を旅していると、良い意味でも悪い意味でも、喜怒哀楽に満ちた体験をたくさん味わうことができます。ってか、ムカつくことなんてしょっちゅうです。日本人だったら絶対にそんなことしないよなみたいなことを平気でやってきます。「ボッタくる」「順番に並ばない」「嘘をつく」なんて日常茶飯事です。
でも、それらを娯楽のためのネタだと理解できれば、なんてことはない。
僕らみたいに進んで、ぼったくられるようになるでしょう。(笑)
過去の記憶は、娯楽。
この事実を理解できたとき、映画代がかなり節約できるようになりました。(笑)
石崎力也
ps:なーんだそーゆーことかよって落胆してしまった人は、直接「映画 無料」とか「海外ドラマ 無料」とググって100サイトくらいをクロールすれば、そのうちの1つは違法配信の動画がありますので、そちらをご覧下さい。タダで見れるはずです、きっと。