ベイビーと定山渓温泉に行ってきました。北海道は1日で気温が下がるので紅葉の見頃はそんなに長くないってどこかで聞いたんですけど、それは正しかった。もうなんかヨボヨボでした。完全に葉っぱが落ちてしまった木々も多々。「はい、全裸でーす、見ても無駄ー」みたいなあるい意味、開き直ったような感じでした。もちろんこれは僕が勝手にそう感じただけであって、きっとは木氏は氷点下の外気に備え、寒い寒いと小さな文句をぶつくさ言いながらも、しっかりと根っこから養分を取っているんだと思います。
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罪悪感を貯める
ススキノで下車して「いつものように」フルーツケーキファクトリーでタルトを食べていました。札幌来てから5回行きました。甘くて美味しいものを食べていると(カロリーなんて全く気にしない)幸せな気分とこの状態を維持するために働かなきゃという気分が同時に起こります。とはいえ、今は「抜き」の期間であり「流し」の期間なので働くことはしません。奥さんの表現を借りれば guilt(罪悪感)を貯める・・・という感じです。こんな遊んでばっかりの人生でいいのだろうかという罪悪感みたいものが生まれるそうです。遊びの期間なのでそんなフィーリングはないほうがいいんだけど、それ(guilt)が自然発生するんなら、せめてそれを貯めておいて、仕事するときに爆発させればいいんじゃないの?と提言すると「そんな感じでいいのかなあ」と30%ほど納得してくれたようです。残り70%は彼女自身が哲学することでしょう。
大学入学式の日、人生どうしようか考えていた
実はこのフルーツケーキファクトリーの本店に学生時代にも何度か足を運んだことがあるんです。最初に足を運んだ日、僕はスーツを着ていました。大学の入学式でした。友達なんて要らないと思っていたので、新歓募集のチラシを一切受け取らずにスタスタと(たぶんムスッとした顔で)歩き、さあこれからどうしよう、僕の人生をどうしようかと考えていました。
A3の大きな紙を文房具屋で買って、フルーツケーキファクトリーに入店。タルトを頼み2階へ移動します。隣には高校生のカップル。彼らの使う語彙を形態素解析すると、おそらく受験生のよう。イケメンと美女でした。隣には大学生になったばかりの男がいます。彼らのプライオリティと僕のプライオリティは全く違います。彼らは大学入試に向けて勉強すればいいでしょう。大学生の僕は何をすればいいのでしょうか。
まあとりあえず彼らのことはどうでもいいんです。他人事ながら、将来の彼らが少しでもハッピーな人生を送れているならそれでOKです。問題は僕です。さて今からどうしようか。大学生活を、僕の人生をどうしようか。先ほど購入したA3の白紙にプランを書き始めます。第一筆目・・・司法書士の資格を取る。第二筆目・・・公認会計士の資格を取る。あれから10年ほど経っているのに、書きながら恥ずかしくなっている28歳の僕がいます。まあ18歳とか19歳の考えることなんてその程度のことです。きっとあなたもそんな感じでしたでしょ。どうなんだろ。
つい先月までは大学入試の勉強していればよかった
なぜ白紙を広げてプランニングをしていたかというと、プライオリティが急激に変わったからです。ここで白紙を黒くしておかないと、まるで羅針盤を持たずに航海するかのごとく、きっと大学生活で難破するのは明らかでした。浪人生活を終えて人より1年遅れていたので挽回しなきゃみたいな焦りがあったのかもしれませんね。少なくとも僕にはそう思えていたのです。つい先月までは大学入試に向けて勉強していればよかった。それが優先事項の第1位でよかった。でも今は違う。
・・・かつての僕が考えていたことを文字にするとそんな感じではないでしょうか。
ちなみにこんな風にプライオリティが急激に変更されゼロから予定を作り直すという経験をこれまで何度か経験しました。「よっしゃ、今から何をしようか」とポジティブにそれを捉えていた時もあれば、「マジかよ、今から何をすればいいの」とネガティブにそれを経験したこともあります。いついつの体験がネガティブでその他のはポジティブでした・・・みたいに個別に説明できるほどプライバシーを公開するにはまだまだ恥ずかしすぎるといいうか時間が経っていないので、とりあえずオブラートに包んでおきます。お蔵入りすることになるかもしれません。
妊娠検査器が陽性を示した日
例えば、奥さんが妊娠した日。正確には母子手帳をもらった日。いや違うな。モントリオールで奥さんの生理が止まりバンクーバーのウォルマートで購入した二種類の妊娠検査器が両方とも陽性を示した日。あの日を境に僕の(僕らの)プライオリティは一変しました。ちょっと金回りが良くなったこともあり、期限を決めずに旅行しますか、と軽いノリで宜野湾に向かいました。浦添にあるアメリカ領事館でB1/B2のビザを取り、沖縄からニューヨークへ。ニューヨークからサウスカロライナ、シカゴ、モントリオール、バンクーバーと一ヶ月ごとに住む都市を変えて、毎月Airbnbに15万円ほどを払いながら旅をしていました。
テニスとアコギに没頭する日々が六ヶ月も続きました。そろそろ飽きてきたね何か新しいテーマを決めようか・・・と奥さんに言ったところ「次はタイでムエタイな気がする」とのこと。奥さんは人生のほとんどを数学の勉強に費やしてきた人なので、フィジカルな活動を求めていたようです。彼女の選ぶテーマはテニスとかムエタイとかサーフィンみたいに、かなりアクティブなものがほとんど。一方の僕は、人生の早い段階でそれなりにフィジカルな活動をやってきたので、むしろメンタルよりのテーマを求めていました。ギターとかカメラとかアニメーションとか。
バンコクにあるムエタイスクールを幾つか検討し「ここ、寮もあるらしいよ」と盛り上がっていた時に、妊娠発覚。
僕たちにキャリアはなかったけど考え方はそこらへんのキャリアウーマン・キャリアマンと同じく「今は子供は、ちょっと・・・」と暗黙の了解を抱えていたし、タイでムエタイをするという奇異な発想を奥さんは喜んでいたようだったので、突然のイベントに二人は当惑しました。ちなみにこの記事を、未来のある時点で僕たちの息子は読むことになるかもしれない。そこで君に伝えておきたいことがある。当惑はしたけど、失望したことは一度もないです。何より今、ものすごくハッピーです。(最後の3センテンスは息子へのメッセージでした)
予定変更!片道航空券を購入し、帰国
まず僕たちがやったことはプランの大幅な変更でした。バンクーバーから日本へ帰国するというそれなりに大きな予定変更です。片道航空券を買い、英語が通じる病院を探し、住む場所を決める。次にやったことは、マインドの切り替えです。もちろんプラクティカルな情報もたくさん詰め込みましたよ。Amazon Kindleで「出産」「妊娠」のキーワードに引っかかる本を片っ端から読みました。コーヒーは飲んでもいいのか。魚介類を食べてもいいのか。妊婦を支える夫の役回り(ストレスを与えるな、とか)。予備知識に5冊ほど妊娠執行人みたいなエロ漫画も読んでおきました(二周しました)。
ススキノで広げた白紙にどんなことを書いたかほとんど覚えていないけど、確かなことは2つあります。この2つはそれ以降も踏襲されているので、全くの的外れということもないはずです。
- 書いたことはほとんど実現されていない
- でもそれなりにハッピーである
神田昌典さんがフォレストから出版しベストセラーになった非常識な成功法則には「棚をガサゴソやっていると、かつての自分が書いた夢リストみたいなものが出てきた。驚いたことにそのほとんどが叶っている」のようなストーリーがありました。ちなみに自己啓発本の幾つかはこの物語をコピペしているので、かなりインパクトのある話なんですね。僕も読みながらワクワクしていました。
残念ながら僕はそれほど優秀ではないというか、天邪鬼なところがあるというか・・・。確かに書いたことはほとんど実現されていない。しかし「書いてないことがそれなりに実現されている」んです。当時Airbnbなんてサービスはありませんから、書こうにも書けません。仮にAirbnbが存在していても、僕の中に情報としてそれがなければ、やはり書けません。僕たちの目標は現状の持つ情報量に限定されます。
コーヒーが美味しければ人生は変わる
また時間は心の関数をちょっとずつ変化させます。そりゃそうだ。村上春樹を読み、アムステルダムに飛び、世界の情勢を傍目で確認し、新しい友人ができ、旧知の親友と別れ、ドナルドトランプさんのスピーチを聞き、心地よい春風を受け、一定量の向かい風に心を痛め、Michael BubleのHaven’t Met You Yetを聴き、仕事がうまくいったり、うまくいかなかったり、コーヒーが美味しかったり、美味しくなかったりすれば、多かれ少なかれ思考の枠組みは変わります。
当時の心と現在の心に同じ入力をしても、出力は(人によっては大きく)異なります。
変わるのは自分の心だけではありません。息子が生まれたり、息子が病気をしたり、息子が太ったりして、外的環境が変わり、やはり僕たちの考え方に影響を与えます。
考え方が変われば、過去の自分が書いたことを再評価することができます。ある時は「子どもっぽいなあ」と評価し、ある時は「いいこと書いているじゃん」と評価をする。まあ大抵は前者なんですけど。
また考え方が変われば、プライオリティも変わります。過去の自分が立てた予定に縛られる理由はありません(少なくとも僕の場合はそうでした)。優先順位が変わり、時間と努力の配分方法が変わる。当然ですが結果も変わります。
センター試験の点数が60点のあいつが今は・・・
笑い話のようですが、あの石崎(初めて受けたセンター英語は60点/200点)がTOEIC講師を自称しているんです。子どもを溺愛し、妻を適度に愛している。午前1時にBose SoundLink で Try A Little Tendernessを聞きながらコーヒーを飲み、ブログを書いている。GoProを頭につけて、ドローンを飛ばし、DSLRを首から下げて、はしゃいでいる。スープカレーを食べるためだけに札幌に来ている。どれ一つとして紙に書いたものはありません。紙に書いていないことに時間を投下し、そのうちの幾つかが実を結び、それなりにハッピーをやっている。
紙に書いたことが実現すれば嬉しいし、書いていないことが実現しても嬉しいです。
どのみちそれなりにハッピーなんです。たぶん。
たぶんね。
石崎