今回は、動画広告の効果を最大にするためのスプリットテストについて解説します。広告スクリプトを書いていると、複数のパターンの広告を思いつくことがあります。複数のパターンの間のパフォーマンスの違いをテストして、効果のあったものだけを組み合わせて使う方法をお伝えしていきます。
「第一印象は一度しかない」という言葉を聞いたことがあるでしょう。第一印象が重要となる面接やパーティーでの自己紹介は、かなりのプレッシャーがかかるものです。しかし幸いなことに、動画広告では、さまざまなバージョンを試して、どれがより効果的かを確認できます。新しい上司にどうやって自分をアピールするか、何度もチャンスがあると思ってください。スプリットテストとはそういうものです。完璧な第一印象を与えるために、何度も挑戦できるのです。
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スプリットテストを行うべき2つの要素
広告のスプリットテストでは、同じ広告を2つ作り、どちらの広告が優れているかを確認するために検証します。フック、配色、スクリプトなど、どの部分を変更してみても構いません。選択肢は無限にありますが、僕たちはフックとCTA(Call To Action)の2つの要素をテストすることが最も大切だと考えています。
#1:フック
フックは、視聴者の注意を引くための最大のチャンスなので、特に重要です。フックをスプリットテストすることで、広告のパフォーマンスを最大化できます。フックを変えた後で、視聴者の15%がより長く興味を持ってくれたケースもあります。
フックの良し悪しで、その動画広告がスキップされてしまうか、それとも先まで見続けてもらえるかが決まってきます。またフックは動画広告の冒頭に来る部分なので、途中でスキップされた場合でもフックは必ず見られています。その点では、フックが機能しているかをきちんと計測しやすいといえます。
#2:CTA
CTAとはCall To Actionの略で、最後に「詳細は左下のボタンをクリック」などという視聴者に行動のための呼びかけをする部分です。広告はもちろん、視聴者に行動を起こしてもらわなければ、売上にはつながりません。これが、フックと同じくらいCTAが重要な理由です。CTAの重要性を理解するのに役立つのが、ピークエンドの法則です。
例えば、友人たちと3日間の音楽フェスティバルに行ったとします。あなたは、初日に最悪の経験をしました。渋滞に巻き込まれ、良いキャンプ場を取れず、暖かいビールと冷たいハンバーガーを食べるために5,000円も出費しています。
しかし2日目の夜、お気に入りのアーティストの過去最高のステージを観ることができました。そして最後の日。天気は良くて、出会った人たちと友達になり、最高の気分で車の窓を開けて自宅までドライブしました。
人間は終わりに起きた記憶を鮮明に覚えている、というピークエンドの法則に基づけば、初日が最悪だったとしても、2日目の夜に最高の時間を過ごし、最終日にもポジティブな体験をしたことで、3日間の思い出がポジティブなものとして記憶されます。
これは広告でも同じです。広告の途中で魅力的なコンテンツを提供し、最後に印象的なCTAで締めくくっていれば、広告全体の印象はポジティブなものになるでしょう。そして、製品に対してもポジティブな印象が関連付けられ、売り上げに繋がるのです。
そのため、フックとCTAの両方をテストして、最も魅力的で記憶に残る広告を提供することが非常に重要です。
スプリットテストでは大きく異なるアイデアを検証する
記憶に残る広告を作るためには、些細な違いを検証するのではなく、大きな違いをテストすることが大切です。2つの大きく異なるフックやCTAを作成し、どのバージョンの広告が売り上げを大きく伸ばすのかを把握するのです。
例1:似たようなフック
例えば、あなたが新しいペンの会社を立ち上げたとしましょう。次のようなフックをスプリットテストするのは、確実に時間の無駄になります。
「こんにちは、あなたはペンが好きですか?」
「こんにちは、僕の名前は石崎力也です、僕は本当にペンが大好きです」
これらは異なるフックですが、ほとんど同じことを伝えています。もしかしたら、時間と労力をかけてテストすれば、1つのフックが他のフックよりも2%優れていることが分かるかもしれません。全然違うパターンでテストしましょう。例えばこんな感じ。
「あなたはかつてローマで使われていた最高のペンをご存知ですか?」
このように、全く異なることを伝える2つのフックをスプリットテストすることに力を注げば、片方がもう片方よりも10~15%良い結果を出すことがわかるかもしれません。あなたの広告が何千、何百万ものビューを獲得している場合、パフォーマンスの15%の違いは、あなたのビジネスにとって大きな利益に繋がりますよね。
例2:全く異なるCTA
同じことがCTAのスプリットテストにも当てはまります。僕たちのオンラインコースの広告では、2種類のCTAをテストしました。 1つ目は以下です。
「もし、僕らの講座に興味があれば画面左下にあるリンクをクリックして、詳細をチェックしてください」
以下は、2つ目の広告です。
―「このノウハウはいつまでも提供されているわけではありません。僕はもうそろそろ話すのをやめます。オフラインモードになります。なんで?先延ばし思考の人に、このノウハウを提供したくないからです。
まだボタンが表示されているうちに、画面左下にあるリンクをクリックしてください。あなたが既に持っているスキルで儲かる会員制ビジネスを始めませんか?」
これは「自分は先延ばし人間なんかじゃない!」と反応する人に行動を起こさせるような、スパイスを効かせたトーンの言葉です。しかも「まだボタンが表示されているうちに」という言葉を埋め込むことで、このCTAが時間制限付きであることを視聴者に思い出させています。
ここでのアイデアは、普通のCTAとやる気を起こさせるCTAをテストすることでした。 両方の広告を掲載したところ、やる気を起こさせるものの方が、ユーモアのあるものよりも15%ほどパフォーマンスが向上しました。
例3:ビジュアルは違うけど同じ発想のフック
もう1つの例として、Jumpcutの広告を3つのバージョンに分けて見てみましょう。僕は昔からJumpcutの動画広告が好きでよく見ていました。なんていうかイタズラ感というか、おふざけ感がたまらないんです。まず1つ目いきましょう、動画の中ではある男がこう言いました。
「人生、最悪だ」と。そして彼は気が狂って、オフィスでチェーンソーを振り回します。
そしてもう1つは、「人生、最悪だ」という言葉の後で、ある男がオフィスの中で紙をばら撒いて暴れ始めます。これらは視覚的にも異なる見せ方をしましたが、テスト結果はほぼ同じでした。なぜでしょうか?なぜなら、それぞれのバージョンのアイデアが基本的に同じだったからです。そこで、同じ広告の別バージョンをテストしました。これは僕が大好きなやつです。
このバージョンでは、若い人がつまらない仕事をする毎日に気が狂ってしまうのではなく、年配の人がつまらない人生を送り、そのまま死んでしまうことを取り上げました。病院で心拍計がピーっと鳴ったところでKongが出てきてこう言います。
「悲しまないでください。だって彼の人生は最悪だったんですから。 何の役にも立たない大学の授業に1300万円をつぎ込み、行き場のない9時5時のつまらない仕事で終わった人生でした。きっと、彼は死んで幸せですよ。」
酷い内容に聞こえるかもしれませんが、かなりのショックがあります。そして、実際のテストではこのバージョンの方がはるかに良い結果を出しました。他のフックはすべて合わせても1,700万円の収益にしかなりませんでしたが、このフックは3カ月足らずで4,500万円の収益を上げたのです。
フック→CTAの順でスプリットテストを行う
スプリットテストで最も重要なものはフックですが、次に重要なのがCTAになります。まず成功するフックを見つけ、次にさまざまなCTAをテストしてください。この順番でテストしましょう。
異なるフックとCTAのバリエーションを組わせて、同時にテストする必要はありません。同時にテストしてしまうと、不必要に複雑なアナリティクスを行うことになるだけでなく、価値以上のコストがかかるからです。
フックとCTAを同時にテストしようとすると、その時点で6~8種類もの組み合わせの広告が必要になってしまいます。それほど多くの広告をテストしていると、統計上で有意なデータが得られず、テストの精度が落ちてしまいます。僕がお勧めするのは、まず3つ前後のフックをテストすることです。気に入ったフックが見つかったら、次にCTAを2つか3つほどテストします。
また、先に述べたように、大きく異なるアイデアのスプリットテストに力を入れ、小さな違いは気にしないようにしましょう。もちろん、スプリットテストを行う価値があるのはフレーズの変更だけではなく、ビジュアルや言葉のトーンの違いも大きな影響を与えます。
まとめ:スプリットテストで視聴者を惹きつける広告を作る
ここまで、スプリットテストの使い方やポイントを紹介してきました。紹介した通りスプリットテストは、異なるアイデアをテストする際に非常に有効です。作った広告は大きな広告費をかける前に、まずはスプリットテストで効果が出るものを絞りこんでください。
小さな違いではなく、大きな違いをテストするようにしてください。またテストの順序は、まずフック、そして次がCTAです。この効果的なテスト順序も覚えておいてください。それでは、またすぐにお会いしましょう。