今回は、「KISSメソッド」の重要性についてお話したいと思います。キスとは言っても、愛情を示すための口付けでも、ロックバンド「KISS」のメンバーのような格好をして、見知らぬ人に不快感を与える方法のことでもありません。ここで言うKISSとは、Keep It Simple Stupidの頭文字です。とにかくバカみたいにシンプルにしろ、という意味です。
これを見ているあなたは、動画広告づくりに挑戦しようというくらいですからクリエイティブな人間でしょう。そして、クリエイティブな人であれば、どうすれば自分の広告を最も魅力的に、楽しく、感動的にできるか、たくさんのアイデアを持っていることでしょう。しかし残念ながら、クリエイティブな人は、一度にたくさんのことを詰め込みすぎる傾向があります。そこで今回は、シンプルにすることの重要性についてお話しします。
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広告におけるシンプルさの重要性
広告は、できるだけシンプルにすることが大切です。シンプルを自分のクリエイティブな武器のひとつとして使いこなすことができれば、本来の目的を見失わずに済むのです。
シンプルさは、広告制作のプロセスの最終段階だと考えてください。広告を書き終えたら、その広告に戻って、「すべての言葉と映像に明確な目的があるか?」と自問してみましょう。
もしも、答えがノーなら、カットしましょう。製品を魅力的に見せるためには、広告は常にシンプルであるべきなのです。
複雑すぎる広告の失敗例
ここで、複雑にしすぎて失敗した広告を見てみましょう。以下は口コミサイト「LocalReviews」の動画広告です。ちょっと見てみましょう。
最高級のトマトと牛肉を何層にも重ねた、最高のラザニア。でもお客は飲み物に入っていた氷の個数が少ないと文句を言います。ラザニアを食べようともせず、このレストランに星1の評価を付けます。そのレビューのせいでお客さんが1人、また1人と減っていきます。
代わりに、となりの店にどんどんお客が逃げていきます。「あそこの店はパスタソースをコストコで買ってるのに」とシェフは嘆きます。
次は床屋さんです。意地の悪いお客さんが、自分の長髪をさらに伸ばすエクステをしたいと言い張ります。でも床屋でそんなこと出来ません。怒った客は、その床屋に星1つをつけます。
次は服屋さん。また意地の悪い客が来て、男女2つに分かれた試着室を見て、ジェンダー差別だと大騒ぎをします。ここまでにも、ところどころにジョークが入るのですが、その量が多すぎて、何の話をしていたか迷子になります。
そこにさっきのイタリアンのシェフが来て、自分もこういう悪質な客に泣かされた。あの星1のレビューを付けられたあの晩は一人で泣いていたと。
ゴリラの格好で店の呼び込みをするハメになった時に、自分の尊厳は地に落ちたと語ります。
「店に悪い評価が付けられて困っているって?僕も少し前まで同じように悩んでいたよ。でも、僕の店は救われたんだ。だから、この店も救えるはずだ。実際、僕も酷い評価が付けられてから、すべてを奪われたように感じたよ。顧客や評判、尊厳まで。僕はあの頃、どん底に落ちていたね。ところがあるサービスを使ってから、僕の問題はすべて消し去ったんだ」
そこで解決策が登場します。
さっきのお店のシェフです。「ジョルジオ・アルマーニの名のもとにその悪質客を止めろ」と言って洋服店に入ってきます。たぶん何かのジョークなんでしょうが、アルマーニのお店じゃなさそうだし、僕にはどういう意味か分かりません。
「LocalReviews.comは、すでにあなたのお店のファンである人々からの何百もの信頼性の高いレビューを集めます。 新規顧客が来て帰った後に、感謝のメッセージを送ることで、彼らの記憶がフレッシュなうちにレビューを残してくれるように頼みましょう。顧客はきっと良いレビューを残してくれますよ。」
どうでしょう?あまりに、たくさんのことが詰め込まれていますね。
この広告が、サービスが解決できる問題をどのように示しているかを考えてみましょう。どうにかして広告を面白くしようと思うばかりに、たくさんのジョークやおふざけが入りすぎています。
こうやってテキストで説明すると比較的わかりやすいですが、僕が最初に動画を見たときあまりにもわかりにくくて驚きました。問題がどこなのか、なかなか理解できませんでした。彼らは悪評に悩まされているローカルビジネスの問題を取り上げていたのです。
この広告の失敗は、エンターテインメント性を重視するあまり、必要な情報を伝えられなかったことです。広告内でのエンターテインメントと情報のバランスが、エンターテインメントの方に偏りすぎていました。
これはもう広告というより、娯楽動画と言ってもいいかもしれません。皮肉なことに、情報を犠牲にして娯楽性を高めることに注力した結果、どちらでもない広告になってしまいました。明確なメッセージを伝えるには、あまりにも多くのことが行われています。
複雑な広告の改善例
さて、次は僕が作った広告のスクリプトの初稿と改善版を見てみましょう。この広告の目標は、広告を使わないで集客をすることがいかに非効率的かを視聴者に実感してもらうことでした。
#1:まずはフックをダイエットする
まずはオリジナル版のフックからお見せします。次に、最終的にどのように編集したかをお見せします。これが古いバージョンです。
「どうも石崎力也です。次の動画を見る前にちょっとお知らせいいですか?実はこの動画広告、1回あたり0.1円で出せるんです。つまり1000人に広告を届けても、100円の広告費だけでYouTubeに広告を出すことができるんです。」
しかし、これではダラダラと事実を並べ立てているだけです。僕は、もっと視聴者の共感を呼ぶようなフックにしたかったのです。 そこで、このような文章に変更しました。
「朗報です。僕と広告代理店の担当者が、あなたのためにYouTube広告に関するコースを作りました。ネット集客に関する悩みを今日やめませんか?」
しかしこれでも、ちょっと長すぎると感じます。僕たちは、「どうしたらもっとシンプルにして、要点を素早く伝えられるだろうか」と考えました。何度か練り直して、最終的にできたフックはこちらです。
「YouTube広告マスタークラスでネット集客に関する悩みを今日やめませんか?」
僕たちがこの文章を採用した理由の1つは、要点を伝えることができるからです。これはとてもシンプルで、人々の注意を引く、本当に素晴らしいフックです。
しかもYouTube広告マスタークラスというのが、「なんとなく分かるけどそれ何」と思ってもらえる謎を残しています。ドラマや映画で言う、続きが気になるようにする仕掛け、いわゆるクリフハンガーのような効果を発揮します。
これを聞いた視聴者は「え、今日でネット集客の悩みが終わるの?」と考えてくれるはずです。こういう疑問を、彼らの心の中のトリガーにして、この先の内容に興味を持ってもらいます。
#2:問題提起をスリムにする
さて、次の段落に行きましょう。視聴者が抱えている問題を認識してもらいます。
「毎日ブログを書き続けるめちゃめちゃしんどいですよね?ネタ切れもするし、時間もどんどんなくなっていきます。iPhoneに向かって一人で喋り続けた動画をInstagramにアップロードしていませんか?どれだけの人があなたの動画を見てくれているでしょうか?きっと動物園のサルの方があなたよりインプレッションが多いです。説明会集客をして面談で高額な講座を売り続けるビジネスモデルにもそろそろ限界が見えてきた頃だと思います。それがダメになったら次はどうしますか?」
これだけでも、かなりまともな文章ですよね。何の問題もありません。しかし僕は、脚本が完成した後にもう一度、「どうしたらもっとシンプルにできるだろうか」と考えました。そして、「よし、余計な言葉はすべてカットしよう」と決めました。
まずは、ここで話していることは全て重要なのか?と自問します。ここで大事になるのは、「毎日ブログを書き続ける」や「iPhoneで撮った動画をInstagramにアップする」、そして「説明会集客を続ける」といった作業をこの先もずっとやり続けるのはしんどくないですか?という問いかけです。
そう考えると、ネタ切れの話もカットしてみていいし、どれだけの人があなたのインスタを見ているかもカットしてみていい。説明会集客がダメになったときの話も、説明会集客をまだやっている認識がある人は既に危機感として持っているはず。ここもカットします。こう考えて、余分な部分をカットして、それ以外の3つの問題のみ取り上げることにしました。最終的には、僕はこのような文章を作りました。
「あなたはいつまで誰も読んでいないブログを毎日書き続けるおつもりですか?あなたはいつまでiPhoneに向かって一人で喋り続けた動画をInstagramにアップロードし続けるおつもりですか?あなたはいつまで説明会集客をして面談で高額な講座を売り続けるビジネスモデルを継続しますか?」
基本的にはまず単純化するのです。それから「さて、どこにジョークや補足を加えようかな」と考えるのです。どこにユーモアを加えようか? あるいは、視聴者のモチベーションとなるフレーズを、どこに加えようか?と考えます。
#3:重複している問題提起を削除する
さて、僕たちは集客の問題について話しました。もう一つ話したいことは、かといって広告媒体の1つであるFacebook広告には問題があるということです。次の内容を見てみましょう。
「僕らも一度広告をやろうと思い失敗しました。Facebook広告に出稿しましたが、あまりに審査ポリシーが厳しすぎて全く広告が通りません。仮に通ったとしても、またいつ審査落ちになるかと思うと、全く不安定な広告媒体だと言わざるを得ません。」
ここでも全く同じことをします。まずは、ここで話しているポイントをすべて見てみましょう。削っても問題ない箇所はあるでしょうか。
「僕らも一度広告をやろうと思い失敗しました。」これが最初のポイントですね。これは、他の2つの文章とほぼ同じことを言っています。このフレーズはあまり意味なしていません。だから、これはカットします。
次のポイントは、「Facebook広告の審査ポリシーが厳しい」ということです。しかし、これを言い換えてもっとシンプルにする方法もあるでしょう。
仮に審査ポリシーに一度通った場合でも安心できない、これは素晴らしい指摘です。 確かにこれはコンサルのお客さんからもよく聞く話なので、他にも困っている人が沢山いるはず。この問題が彼らにとって大きな問題であることは明白です。
さて、これらのポイントのどこを削るかを考えましょう。「僕らも一度広告をやろうと思い失敗しました。」これは後半部分と被っているので削除で問題ありません。「審査が厳しい」「仮に審査に通っても不安定」この2つは、ビジネスをする人にとって良い訴求ポイントだと思います。
さて、これらのポイントをまとめて、最終的にどうするかを考えてみましょう。
「近年、Facebookの広告ポリシーが暴走しています。審査に通らないのがほとんど。運よく審査に通って広告配信できていたとしても、いつ彼らの禁止令に触れるかわからず怯える毎日。」
シンプルになりましたね。ちなみにこの段階で、どんなひねりやジョークを入れるかまでは決めません。この段階では「ここにジョークを入れる」とだけメモしておく。それだけで十分なんです。
あとで10個くらいのジョークを考えて、その中からベストなものを選べばいいんです。ただ、シンプルにするということを重視して、「ここに何かジョークを入れる」というような表現にしています。
まとめ:シンプルな広告で製品を魅力的にアピールする
動画広告は、できるだけシンプルにすることが大切です。スクリプトの初稿を確認して、自分が言いたいことは何か、どのポイントを残すべきか、どのポイントを捨てるべきかを考え、そして残したいポイントを見ながら、どうすればそれをよりシンプルにできるかということだけを考えましょう。
迷ったときは、常にシンプルにすることを覚えておいてください。そして、台本を作るときには、「削れるものは削るべきだ」ということを覚えておいてください。そうすることで、あなたの製品やサービスを明確かつ印象的に表現することができます。今回は以上です。また、すぐにお会いしましょう。