あなたは営業担当として、たくさんの見込み客にメールを送信する際、毎回同じような文面を書くことにうんざりしていませんか? 「クライアントごとに合わせた内容にしたいけれど、時間がない…」 そう感じている方も多いのではないでしょうか。
見込み客へのメール営業は、ビジネスにおける重要なコミュニケーションツールの1つです。しかし、それぞれの相手に合わせた適切なメール文面を考えることは、思いのほか時間と労力を要します。そこで注目されているのが、AI技術を活用した営業メールの自動生成です。ここからは、GoogleスプレッドシートとChatGPTを連携させて、相手の会社情報に合わせてパーソナライズされた営業メールを自動生成する方法をステップバイステップで解説していきます。
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ステップ1:Googleスプレッドシートで見込み客リストを作成する
多くの顧客に一斉送信する営業メールは、テンプレート文だけではなかなか反応を得にくいですよね。そこで、顧客の心を掴むために、冒頭文や挨拶文を相手の業界や会社の情報に合わせてカスタマイズすることが重要になります。しかし、手作業でカスタマイズするのは大変な労力が必要です。そこでChatGPTを活用して、この作業を自動化してみましょう。しかもスプレッドシートを使うことで、複数の宛先に送る文章を一気に作成することができます。
AIによって顧客ごとにパーソナライズされた挨拶文を生成することで、簡単に他社との差別化を図ることができます。そこで、まずは営業メールを送信する見込み客のリストを作るところから始めましょう。今回はGoogleスプレッドシートを使います。スプレッドシートには会社名、担当者名、メールアドレス、ウェブサイトなどの情報を入れる欄を作ります。
例えば、トヨタ自動車の営業担当者にメールを送信する場合、「会社名」列に「トヨタ自動車株式会社」、「担当者名」列に「山田太郎」、「メールアドレス」列に「yamada@toyota.co.jp」、「ウェブサイト」列に会社のWebサイトからその会社に関する情報を持ってきて入力します。
サイトのURLを入れるよりも、サイトから会社概要などの情報をコピーしてくる方が精度がよくなります。同様に他の見込み客の情報も入力していき、見込み客の分だけ情報のセットを作っていきます。
ステップ2:スプレッドシートにChatGPT連携アドオンを導入する
次に、GoogleスプレッドシートにChatGPTを連携させるためのアドオンを導入します。スプレッドシートのメニューバーから「拡張機能」>「アドオンを取得」を選択し、検索バーに「GPT for Sheets and Docs」と入力して検索します。
表示されたアドオンを選択し、「インストール」をクリックします。アクセス許可を求められるので、指示に従って許可を与えます。ちなみにこのアドオンをずっと使い続けるにはお金を払う必要がありますが、最初はトライアルとして無料で使うことができます。また使用するAIエンジンの種類によっては無料で使うことができます。
アドオンをインストールしたら、ChatGPTをスプレッドシートで使えるように設定する必要があります。メニューバーから「GPT」>「GPT for Sheets and Docs」>「Open」を選択すると、右側にアドオンの設定画面が表示されます。一番上のHomeと書いてある場所の右にChatGPTのアイコンがあるのでクリックします。そして「Set API Keys」というボタンをクリックしてください。ここにChatGPTのAPIキーというものを入れていきます。
APIキーとは、ChatGPTのような外部サービスにアクセスするための、いわば「パスワード」のようなものです。APIキーを使うことで、GoogleスプレッドシートからChatGPTの機能を利用することができるようになります。ChatGPTのAPIキーは、ChatGPTの開発元のOpenAIのページから取得してきてください。APIキーの取得にはChatGPTのアカウント登録や決済情報の入力が必要です。
https://platform.openai.com/api-keys
APIキーを使ったことがない人はここで注意が必要です。APIキーを使うと、ChatGPTを利用した分だけ料金が発生する「従量課金制」になります。通常のChatGPTは月額定額制ですが、APIキーを使う場合は使えば使うほどお金が掛かると考えてください。1回ごとの利用では10円も掛からないはずですが、大量の情報を処理したり繰り返し利用することで金額がかさむ可能性があります。
ただし、OpenAIのアカウントを作成すると、最初に5ドル分の無料枠としてクレジットがもらえます。そのため、しばらくは無料でChatGPTを試してみるとよいでしょう。無料枠のクレジットを使い切ってしまうと、その後は有料での利用となるので注意が必要です。使いすぎると予想外に高額な請求になってしまう可能性もあるので、最初は無料枠で試してみて、1回の利用でどのくらいの金額が掛かるのか?確認しながら本格的に利用するのがおすすめです。
APIキーを入力したら、「Your API key has been saved.」と出るはずです。
次にSettingsから「Creativity (temperature)」の値を0.5程度に設定します。この値は、ChatGPTの出力の創造性を調整するパラメータです。この値が高すぎると、ChatGPTはよりランダムで予測不可能な結果を出力するようになります。創造性が高すぎるために問題が出てきます。
今回の目的である「丁寧で適切な挨拶文」を生成するためには、0.5程度の値が適切です。 他の設定項目は、デフォルトのままで問題ありません。これで、ChatGPTをスプレッドシートで使えるようになりました。
ステップ3:ChatGPTに指示を与えるプロンプトを作成
APIキーの設定が完了し、ChatGPTがスプレッドシートで使えるようになりました。早速、この拡張機能を使って挨拶文を生成してみましょう。ChatGPTに指示を出すには =GPT() という関数を使います。この関数の中に、引用符 “” でくくってプロンプトと呼ばれる指示文を入れていきます。例えば、「はじめまして」という言葉を生成したい場合は、=GPT(“「はじめまして」という言葉を生成してください”)と記述します。
今回は相手のウェブサイトの情報をChatGPTに見せて、その内容に基づいて宛先毎に異なる営業メールを生成するように指示します。例えば次のようなプロンプトが良いでしょう。
あなたは、反応率の高い営業メールを書く専門家です。あなたの目標は相手に強い興味を抱かせ、読み進めたくなるような魅力的な営業メールのの冒頭文を書くことです。この書き出しは、メールを受け取った相手に「私たちが事前にリサーチを行い、あなたのビジネスを高く評価している」と感じさせることを目的としています。
例えば、「御社のウェブサイトを拝見しました。仕事に対して生涯保証を提供されていることに感銘を受けました。品質への強いこだわりを感じます」のように、具体的な内容を盛り込むと効果的です。以下のビジネスのウェブサイトを参考に、魅力的で簡潔な営業メールの冒頭文を作ってください。自然で親しみやすい文章になるように心がけ、不自然な表現は避けてください。ウェブサイトの情報は以下のとおり:
この文章の続きに先ほどのウェブサイトの情報を入れたセルを指定します。具体的にスプレッドシートのセルに、入れる文字列は次のようになります。
=GPT(“ここにプロンプトを入れる”, D2)
このようにGPTという関数として、ChatGPTに指示を入れていきます。特定のセルを参照させたい場合は、引用符の外側に半角でカンマを打ち、それに続けてD2のようにセルの番号を入れます。こうすることで、他のセルを引用したプロンプトにすることができます。
営業メールを自動生成する
先ほど作成したプロンプトが記述されたセルに注目してください。セルに関数 =GPT() を入力すると、しばらくの間「処理中」という表示が出ます。これは、ChatGPTがあなたのプロンプトを理解し、最適な回答を生成するために必要な時間です。しばらく待つと、ChatGPTが生成した文章がセルに表示されます。
もし最初のセルでうまく文章が生成されたら、他のセルにも関数をコピー&ペーストしてみましょう。貼り付ける際には、関数の中にある参照先のセルを各行のものに変更することを忘れないでください。通常はコピーアンドペーストをすれば、その部分の行の番号をD2、D3、D4と自動で適用してくれるはずです。
この作業を繰り返すことで、スプレッドシートに登録されている顧客全員分の営業メールの本文を、一気に作成することができます。AIの力を借りれば、これまで多くの時間と労力を費やしていた営業メールの作成業務を大幅に効率化できるのです。
スプレッドシートとChatGPTを組み合わせてたくさんのことを自動化しよう
営業メールの自動生成以外にも、この手法は様々な場面で活用できます。例えばクラウドソーシングサービスで仕事を得たい場合も役立ちます。案件の詳細ページを参照して、依頼文をカスタマイズするのも良いと思います。発注者の立場からすると、自分の案件内容をしっかり理解した上で応募してくれる人を見つけやすくなります。一方、受注者側も、発注者のニーズを的確に捉えた提案ができるようになります。これによりマッチング精度の向上と、円滑なコミュニケーションが期待できます。
また複数の求人に応募する時の履歴書などを作成するときにも役立ちます。募集要項ページの内容を踏まえて作成するのにも役立ちます。企業が求めるスキルや経験、価値観などを織り交ぜながら、自分の強みをアピールすることができます。AIが生成した文章をベースに、自分らしさを加えることで、採用担当者の心に響く履歴書になるはずです。
さらに顧客サポートの場面でも活用できるかもしれません。問い合わせ内容やユーザーの属性情報を参照しながら、適切な回答やアドバイスを提示することができます。定型的な回答に加えて、一人ひとりに合わせたパーソナライズされた対応が可能になるでしょう。スプレッドシートを使えば、複数の問い合わせに関して一気に同じプロンプトで回答を作らせることができます。
他にもブログ記事の執筆や、SNS運用におけるフォロワーとのコミュニケーションなど、様々なシーンで応用が効くと考えられます。相手の情報や文脈を踏まえた上で、メッセージを相手ごとにカスタマイズすることは今の時代すごく重要になっているからです。
AIの力を借りることで、コミュニケーションの質を高めつつ、作業の効率化も図ることができます。ただし、完全に自動化するのではなく、最終的には人間の目で確認し、微調整を加えることが大切です。AIはあくまでも補助的なツールであり、最後は人間の感性や判断力が物を言うのだと信じています。AIに使われるのではなく、うまくAIを活用できるようにしてください。
まとめ:ChatGPTを活用して見込み客に響く営業メールを効率的に作成しよう
ここまで、相手の会社情報に合わせてパーソナライズされた営業メールを自動生成する方法をご紹介しました。最後に要点を4つにまとめました。
- ChatGPTとGoogleスプレッドシートを連携すれば、顧客ごとにパーソナライズされた営業メールを一気に作成することが可能である。
- ChatGPTとGoogleスプレッドシートを連携するには、GoogleスプレッドシートのGPT for Sheets and Docsという拡張を使用する。
- ChatGPTをAPI経由で使用することになるので、通常のChatGPTとは異なり従量課金制になる点に注意が必要である。
- Googleスプレッドシートを使えば、営業メール以外にも、クラウドソーシングの応募や履歴書作成、顧客サポートなど、様々な場面でこの手法が活用できる。