大物起業家のアプローチ
(#003続き)今の職に興味を持てなくなったのだ。そこで心機一転、新たな会社を起こしたいと思った。新しい会社は、コンピューター通信関連のものがいいと思っていた。更に、優秀なプログラマーが必要だった。
大物起業家は友人に尋ねる。「誰かいい人を知らないか?」。彼は真っ先にアンドリーセンの名前を挙げた。大物起業家はアンドリーセンを知らなかった。しかしアンドリーセンはその大物起業家を知っていた。青年期に遊びまくったSGI・シリコングラフィックスマシンの創設者、クラークを知らないわけがない。
モザイク殺し
こうして大物起業家クラークとアンドリーセンは意気投合する。最初は何をする予定もなかった。だが話を詰めるにつれ、アンドリーセンは内側に秘める気持ちを爆発せざるを得なかった。
「俺は、モザイク殺しのツールを作りたい」
恨みはまだ晴れてなかったのだ。自分の作ったモザイクからは早く手を引いていたため、まだまだ改良の余地があった。その改良版を作ることで再びシェアを奪い返すことができると思ったのだ。
モザイクのシェアは市場の60%を占め、ここから追随することは不可能に思えた。もちろん彼らはヤル前から諦めない。多くの人が反対した。「また無料のものを作るのかい?」「ライセンスを再び誰かに剥奪されるよ?」・・・。アンドリーセンは聞かない。
Windowはベル、Macは牛
そしてネットスケープを発表する。Windows版がダウンロードされればベルの音を社内にならした。Mac版なら牛の声。軍配はWindows版にあがった。多くの人がネットスケープをダウンロードし始める。
最初は日本やオーストラリアの人がポツポツとダウンロードした。そのポツポツといった雨は、数時間後に豪雨に変わる。社内にベルの音がなりまくるのだ。
自分がかつて作ったモザイクを超える商品を作った。それがネットスケープだ。ネットスケープはモザイクよりも10倍早く動く。しかもクラッシュしない。もはや市場がモザイクを利用する理由はなくなり、皆がネットスケープに群がるようになった。
わずか21歳のイリノイにいた若者が2回も世界を席巻した。そして1回目も2回目も、彼がやったことは共通していた。もちろん1回目のモザイク同様、2回目のネットスケープも「無料」で世界にばらまいた。
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ネットで成功するための2つの要素
この一連の話から何が分かるだろうか?あなたがこれから世間の注目を集めたい時、あるいは大量のアクセスをあなたのサイトに集めたい時。アンドリーセンから学ぶことは多い。
キーワードは2つだ。
- 時間をかけて心を込めたコンテンツ・ツール・サービスを
- 全て無償でバラまく
たったこれだけでいい。もちろんネットスケープほどのトラフィックを集める必要はない。別に数十億ドル(数千億円)を手にしたいわけでもないだろう。その1/1000(1億円)でも転がり込んでくれば御の字といったところではないか?
それなら簡単かもしれない。「時間をかけて心を込めて作ったもの」を「無料」で配ってみよう。そうすれば勝手にアクセスは集まる。嘘じゃない。ネットでうまくいっている人たちはこの原則を黙って使っている。
だけどは僕は公開に踏み切った。あのFacebookもGoogleもYahooも、今思うと全部無料だ。
それがネットの法則だ。もしあなたがこれから一発、ネット上で大きなことを狙うなら「時間をかけて心を込めて作ったもの」を「無償」で配ってみよう。
両方を満たすことでバズの可能性を上げられる。片方だけでもうまくいくことがあるが、弱者の戦略としては、まず両方を満たした方が成功確率は上がる。
最初の段階で腹を据えてしまおう。「いいものを」「無料で」だ。
文責:石崎力也