東日本大震災は経済的にも甚大な被害をもたらした。政府は建物、施設などの物的資産の損害を16〜25兆円と試算している。ほかに災害がなければ達成できたと見られる経済活動の損失(間接被害)があり、国内のシンクタンクや世界銀行は、2011年度実質GDPが、従来の見通から0.2〜0.5%低下すると見ている。回復には数年かかることが予測され、初年度のGDPが0.5%低下、回復に5年かかるとすると、5年間で失われるGDPは8兆円程度にのぼる計算だ。
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2日後に増税の話をはじめよう
震災から2日後といえば、より緊急な救助・救済の話をせねばならない。その時に、菅元総理と谷垣自民党総裁は増税について話し合っていた。復興構想会議や復興資金の使い方において後手後手を踏んでいるようだけど、増税に対してのフットワークは超速すぎる。小さなベンチャーの経営者なら、源泉徴収税の左端に「復興に関する税金」の項目が付け足されていることが確認できる。実際には、
- 復興特別所得税として2013年1月から25年間、所得税の税率が2.1%上乗せ
- 個人住民税均等割として2014年6月から10年間、住民税を年間1000円上乗せ
- 企業には「復興特別法人税」として実行税率を5%下げたうえで、2012年4月から3年間税率を2.4%上乗せ
・・・されることに決まった。
課税の平準化理論
復興のために100億円必要だと仮定すると、この100億円をどう調達するかが問題になる。今回の増税という手段はなきにしもあらずだけど、はたしベストな方法だと言えるのか?答えはNo。経済学には「課税の平準化」という理論があり、たとえば100億円の国債を発行し、それを100年に分けて償還するという理論がある。これは直感的で分かり易いし、学術的にも極めて正しいことが示されている。今回の増税のように短期間で大きな支出を賄おうとする必要は無い。
増税によって復興スピードは遅くなる?
中小企業の社長さんは特に、またサラリーマンの人も同じことを思ったはず。「増税をすれば被災していない地域の我々の経済活動が萎縮し、余計に復興スピードは落ちるぞ!」・・・と、「その通り!」という返答以外が見つからないほど的を得たご意見。モノが売れなければ生産も減る、という小学生でも分かるフォーミュラを無視して、増税をやれば、震災ショックから経ち直るスピードが余計に遅くなると思うけど、あなたはどう思う?
アメリカの大学教授は口を揃えてNo!
僕がアメリカとシドニーに留学しているときに、共通してEconomy Departmentの教授陣は口を揃えて「tax increase(増税)は間違っている」と言っていた。日本の大学でも”テレビに出ていない”大学教授はみんなこの「課税の平準化」を持ち出して「増税は無意味」を唱えていた。法学部の先生ですら、「増税は駄目だ」と・・・。でも”テレビに出る”大学教授はみーーーんな「増税はやむなし」をぶちまけた。政府の意向にそった発言をすれば研究費がつくのかな?まさか、名刺に「審議委員」って肩書きを書くためだけにやっているとか?
文責:石崎力也
参考文献:
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