今回のレクチャーでは、SNSキャンペーンを成功させるための計画の立て方についてお話しします。綿密に立てられた計画ほど、成功への近道をさせてくれるものはありません。成功に必要なのは、堅実なプロセスなのです。このレクチャーでは、SNSでキャンペーンを打つ時に決めておくべき項目を解説していきます。
いざSNSで何かのキャンペーンを打とうとすると、何を決めたら良いのか?迷うかもしれません。成功へ導く計画を立てることは簡単ではありません。それには、クリエイティブな思考と戦略的な思考の両方が必要となります。また、チームメンバーを含め、アイデアを承認し実行に移すための関係者全員との綿密なコミュニケーションも必要です。まずは企画書を作るところから始めていきましょう。
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SNSキャンペーンに企画書が必要な理由
SNSキャンペーンにあたって、なぜ計画が重要なのでしょうか?その理由は、計画を立てることで、目標を達成するような投稿を意図的に、効率的に行えるからです。例えば、あなたがイベントを開催する予定があるとしましょう。イベントを思いついた時に、適当なSNSでそれについて発信することもできます。一方で、前もってよくイベントを計画しておき、事前に明確かつ一貫性のあるメッセージを発信することもできます。
これは僕の過去のお客さんを見ていて思うことですが、何かをやる前に決め事をしっかりしておかないと目標に向かうための行動がブレてしまいます。Twitterで見つけた面白そうなビジネス系のオンラインサロンに入ってみたり、新しいAIツールを試してみたりと周り道をしてしまいます。
どちらのアプローチがより良い結果を生むかは明確ですね。もちろん、全てのSNSの投稿を前もって計画する必要があると言っているわけではありません。当初の目的に沿っていれば、多少の突発的な投稿があってもいいのです。SNSの動きは速く、常に最新の情報を発信することも大切です。しかし、気まぐれにSNSマーケティングを行うのはよくありません。思いつきベースのくだらないコンテンツをダラダラと流すのはやめましょう。それでは企画書に載せるべき項目を紹介します。
項目#1:使用するSNSプラットフォーム
SNSキャンペーンの計画を立てるにあたって、最初に取り組むべきことはプラットフォーム選びです。その理由は、どのSNSを使うかによって掲載すべきコンテンツが変わってくるためです。例えば、Facebookでは効果的なコピーでも、それがそのまま質の高いツイートになるわけではありません。主要なSNSに適したコンテンツを理解してください。それは次の通りです。
- 最もWebサイトへの流入を促すSNS
- ニュース・エンタメどちらにも最適
- 動画のパフォーマンスが良い
- 画像とショートビデオなど視覚的なSNS
- ブログやウェブへの流入を促すには不向き
- ビジュアルを重視するブランドに最適
- Twitterよりもリポストが面倒
- インセンティブによるエンゲージメントは規約をチェック
- SNSであると同時にニュースプラットフォームのような存在
- リツイートやキュレーションがしやすい
- ブログ記事やウェブサイトをシェアするのに最適
- 画像に強い視覚的なSNS
- インスピレーションを得るために利用されることも多い
Linkedln
- プロフェッショナルなSNS
- 業界記事など専門的なコンテンツがシェアされる
どうでしょうか?頭の中にあったイメージと実際の特徴は一致していましたか?例えばInstagramはビジュアル要素が強い半面、他人の投稿をそのままシェアするリポスト機能がTwitterのリツイートよりもやりにくい傾向があります。またプレゼントなどのインセンティブを見返りにいいねなどのエンゲージメントを要求する行為は、Instagramの規約の中で違反となる可能性があります。詳しくは最新の規約を確認してください。
そのため、投稿のシェアを狙うのであればTwitterの方を選ぶかもしれません。現在運用している中で、最もパフォーマンスの高いプラットフォームを選んでも良いでしょう。また、苦戦しているSNSを伸ばすためのキャンペーンを計画することもできます。キャンペーンに使うSNSプラットフォームが選べたら、企画書に書き込んでください。
項目#2:キャンペーンの目標
キャンペーンを成功させるためには、明確な目標が必要です。何のためにキャンペーンを実施するのかを明確にしておきましょう。例えば以下のような目標例が挙げられます。
- フォロワーを増やす
- メルマガ登録の促進
- イベントを宣伝する
- 問題意識を高める
- 新製品や新機能を宣伝する
- ブランドの認知を高める
- フォロワーとのエンゲージメント強化
大まかな目標が決まったら、それを数値に落とし込みます。なおSNSにおける各数値は、それぞれ次の項目に関連付けられます。
- トラフィック
- フォロワー数
- エンゲージメント
- インプレッション
- コンバージョン
トラフィックとはアクセス数のことで、トラフィックが増えると収益や見込み客の増加につながります。またアクセスが増えると自然とコンバージョンが増えることが期待できます。
フォロワー数が増えると結果的にブランドロイヤリティが高まります。ブランドロイヤリティとは、そのブランドを信頼して好きでいてくれる人たちの度合いのことです。ブランドロイヤリティが高ければ、繰り返しあなたのブランドの商品やサービスを利用してくれる可能性が高いと思ってください。またフォロワー数の多いアカウントは認知度が増し、顧客を集めることにもつながります。
エンゲージメントはブランドロイヤリティに似た概念です。エンゲージメントとは特にSNSにおいては、いいねやコメントなどユーザーの具体的なアクションを指します。これはブランドとユーザーのつながりが強化されたことを意味しています。エンゲージメントが高まるとSNS投稿に繰り返し触れに来るユーザーが増えることになります。
インプレッションは実際にSNS投稿がユーザーの画面上に表示された数のことです。Twitterのリツートなどでシェアされ拡散されると、認知や権威性が向上します。インプレッションが増えるとアカウントを閲覧してくれる人の数も増えることになります。
コンバージョンとは、SNSの投稿を見たユーザーがこちらの利益になる行動を取ることを指します。例えば、リードマグネットの請求やオプトイン、キャンペーンの参加などがそれにあたります。つまり各SNS上の数値と、それに対する最終的な目標との関係は次のようになります。
- トラフィック:収益/見込み客/コンバージョン
- フォロワー数:ブランドロイヤリティ/認知度/顧客数
- エンゲージメント:ブランドロイヤリティ/認知度/閲覧者数
- インプレッション:認知度/権威性/閲覧者数
- コンバージョン:収益/見込み客/顧客数
例えば認知度を上げたいと思うのであれば、フォロワー数の増加を狙うことになります。
またキャンペーンで直接的に収益を上げたいのであれば、コンバージョン率を上げようとするはずです。その場合は第一生命がやっていたように、リツイートだけでなくアンケートを取るステップを加えても良いでしょう。第一生命のTwitterキャンペーンでは、SurveyMonkeyを使ってメールアドレスを入力させる流れになっていたようです。SNSキャンペーンの目標が決まったら、それを文章化してください。次のテンプレートが便利です。
「このキャンペーンにより、【任意の期間】の間に【任意の指標】を【任意のパーセンテージ】改善することで【最終目標】を達成する」
例えば「このキャンペーンにより、3ヶ月間でTwitterのフォロワーを25%増やすことで、ブランド認知を強化する」などです。目標はシンプルで、具体的かつ説明可能であることが重要です。
項目#3:ターゲット
目標が決まったら、キャンペーンのターゲットを明確にしましょう。対象を明確化することで、次のようなメリットを得られます。
- 見込み客にあった適切なコンテンツを作る
- ペルソナのニーズやメリットを満たすクリエイティブなコンテンツを作る
- コンバージョンを高める
ターゲットは、なるべく絞り込みましょう。例えば、自動車部品を販売している場合、雪の多い地域のフォロワーに冬の車用アクセサリーを宣伝するキャンペーンを行う手もあります。楽器を販売しているのであれば、ギターなど特定の楽器を演奏する人をターゲットにしたキャンペーンを行うこともできるでしょう。
項目#4:キャンペーンの内容
成功するキャンペーンは、ビッグ・アイディアに支えられています。「ビッグ・アイデア」とは、あなたのブランドの包括的テーマやコンセプトのことを指します。
ナイキの「Just Do It」というスローガンは、その典型的な例です。同社は、人々がワークアウトに嫌悪感を抱いていることが、ランニングシューズの購入を阻む障害になっていることに気づきました。そこで、「とにかくやってみよう」と思わせるようなメッセージを考案したのです。
AppleのShotOniPhoneは、世界的に有名になったキャンペーンです。iPhoneで撮影したとは思えないような写真が並んでいて、驚かされます。これはUGC(User Generated Contents)と言って、一般ユーザーの投稿をキュレーションしていくものです。一般ユーザーにハッシュダグを付けて投稿してもらい、その内容をInstagram上でリポストしていくのです。
UGCの利点は、自社でコンテンツを作らなくて良いことと、ユーザー目線のコンテンツが作れる点です。企業の作る投稿はしばしばよく出来すぎていて面白みがありません。写真もちゃんとしすぎているし、どこか広告やカタログっぽい既視感が出ています。UGCはその部分を解消して、消費者目線の写真や内容にすることができます。
日本であればSNSキャンペーンというと、アカウントをフォローしてリツイートする懸賞のようなものがすごく多いです。その中で差別化していくのもなかなか難しいです。ですが、その中でも面白いものが存在します。
サッポロポテトは遊び心を大事にしています。Twitterではユニークなキャンペーンを展開しています。通常のフォローとリツイートに加えて画像に謎解きを仕込んでいます。受験生応援ということで受験生を対象にして、彼らの勉強の息抜きにお菓子を食べてもらおうという狙いがあると思われます。
毎日さまざまな種類の謎解きが出るので、フォロワーも飽きずに参加することができます。もちろんフォロワーとリツイートだけで懸賞に応募できるのですが、それ以外の要素もプラスで加えています。このようなクリエイティブなアイデアを出すために、以下の2つについて考えてみましょう。
またJALの北海道キャンペーンは販促効果も狙った良い例です。北海道で開催される花火大会のプレミアム席への招待券のプレゼントキャンペーンでしたが、投稿のコメント欄にあなたの好きな北海道というテーマでコメントし、キーワードに「北海道いきたい」と書かせるものでした。参加者は北海道にまた行きたくなるというモチベーションを高めてもらうことができます。またJALで北海道に行くというコンバージョンに近づくわけです。
- あなたのターゲットが抱えている課題は何か
- あなたのサービスが解決できることは何か
そのほか見込み客の興味と、あなたの製品やサービスが交わる部分を見つけるという観点で考えてみるのも良い方法です。
項目#5:投稿の頻度とスケジュール
続いては、キャンペーンのための投稿の頻度とスケジュールを決めましょう。これは宣伝する内容、予算、期間によって異なります。
- 夏のセールを宣伝するために、セール期間中は毎週投稿する
- 大規模なチャリティーイベントを企画している。 動画撮影の予算があるため、動画に適したSNSを中心に投稿する
- 上司からTwitterのフォロワーを増やせと指示されたため、 Twitter限定でシェアを促すキャンペーンを行う
どれも、マーケティング担当者がよく直面する状況ですね。それぞれ全く異なる目標であり、異なるSNSに異なる投稿をする必要があります。目的達成に本当に必要なコンテンツの量を決めましょう。そして、適切な労力で実現可能な計画を立てる必要があります。例えば、大規模で長期的なSNSキャンペーンであれば、次のようなスケジュールが立てられるかもしれません。
- Facebookであれば12件
- インスタグラムであれば12件
- Twitterであれば24件
- LinkedInであれば5件
- Pinterestであればピン3回
一方で、あなたが作成したオリジナルの調査レポートを宣伝する小規模なキャンペーンを行うとします。Facebookのフォロワーは興味を示さないかもしれませんが、TwitterやLinkedInのフォロワーには多くのプロがいるでしょう。この場合、次のようなスケジュールで十分でしょう。
- Twitterであれば12件
- LinkedInであれば3件
これは決して科学的な数字ではありません。重要なのは選択したSNSごとに、どれだけの投稿を作成するかを単純に考えることです。試行錯誤が必要かもしれませんが、それはそれでいいのです。計画を立て、実行し、何が起こるかを見るだけです。
僕も新しいKindle本を出した際には、メール経由で無料キャンペーンなどを行うことがあります。その場合は3日ほど前から予告していき、期間中は毎日メールを送っていきます。予告を行うことで期待感を醸成できるので、ただ単にキャンペーンを開始するよりも反応がよくなります。特に開始日と最終日はエンゲージメントが高くなるので、重点的に知らせていきます。
SNSキャンペーンを企画書に落とし込む
上司にキャンペーンの企画書を提出する必要がある場合は、次の内容を含めるようにしましょう。
- キャンペーン名
- アイデアの簡単な要約
- 想定する対象者についての簡単な説明
- 何件の投稿を作成するか
- 具体的な指標に結びついた明確な目標
加えて、キャンペーンで行う各投稿のアウトラインを含めてください。各投稿でどんな内容を投稿するか?という簡単なメモです。例えばコンテストを実施するキャンペーンの場合、次のような概要を提出できます。
- 最初の投稿:コンテストの紹介
- 2つ目の投稿:コンテスト内容を説明するプロモーション
- 3つ目の投稿:当選時間が迫っていることを伝えるプロモーション
- 4つ目の投稿:応募を促す最後の投稿
- 5つ目の投稿:「コンテストは終了しました」という投稿。まもなく当選者が発表されることを知らせる
大規模なキャンペーンであり、非常に多くの投稿を計画している場合、全てのアウトラインを書き出すことは合理的でないかもしれません。企画書の内容は、状況に応じて最適化してください。
まとめ:事前計画でSNSキャンペーンを成功させる
- SNSキャンペーン開始前に企画書で内容を決定しておけば、明確な目標の元に運用ができます。
- キャンペーンに使うプラットフォームは、コンテンツの性質に合ったものを選んでください。
- キャンペーンのターゲットは絞り込むことでコンテンツの内容やコンバージョンを上げるための工夫が明確になります。
- キャンペーンの内容はターゲットの抱える課題を捉え、解決できるものにすると良いです。
- キャンペーンの頻度とスケジュールは、キャンペーンの大きさに合わせて調整してください。
- SNSキャンペーンに企画書に記載する内容は使用するSNSプラットフォーム、キャンペーンの目標、見込み客(ペルソナ)、キャンペーンの内容、投稿頻度とスケジュール、各投稿のアウトラインです。