暑いですね。
ここ数日でいきなり暑くなりました。
数日前に37度で日本一の暑さを記録したのは、僕の地元・金沢です。
いやー、あの日はどれだけアクエリアスを飲んでも体内から蒸発され、すぐに喉がカラカラになりました。家にいればクーラーをガンガンにつければ済む問題ですが、あの日(というか最近はずっと)撮影をしていたので、ずーっと直射日光の下で仕事。仕事って言っていいのかな。ただ動画を撮っていただけなんですが。僕らは東南アジアのリゾートに長期滞在するのが好きなんで、フィジカル的には暑いのに慣れているんですけどね。来月からカタンドアネス島に入るので、金沢のこの暑さも良い体慣らしになりそうです。
(これは前回オフロードバイクでカタンドアネス島を滑走した時の写真)
さて今日はディクテーターのお話。
アメリカで発刊されているストーリーテリング(系)の本で常に紹介されている、あるピザ屋のもったいない逸話…をご存知ですか。
ある時、疲れた顔をした女性がお店に入ってきました。ミートボールピザはありませんか、と単刀直入に注文をしました。店員は申し訳なさそうな顔で「すみません、マダム。あいにくミートボールのピザは置いてありません」と答えます。そうですか、と女性。
「病気で食欲のない夫に、今食べたいものは?と聞いたらミートボールピザが食べたいと言っていたので。これまで何件ものもお店を回りましたが、どこも置いてありませんでした。このお店でダメならもう諦めるしかありません」と続けました。
状況を飲み込みハッとした店員は「ミートボールピザはありませんが、ミートボールだけを単品でご購入いただくことは可能です」と機転を利かせます。しかし女性は「時間がないのです」と繰り返すだけ。結局女性は何も買わずに店を出て行きました。
その数時間後。ピンポーン。女性の家の呼び鈴がなりました。女性がドアを開けるとそこには先ほどの店員が。
「お待たせしました、ミートボールのピザです」
数日後、病気が原因でその女性の夫が亡くなります。そして一通の手紙がピザ屋さんに届きました。
夫は病気のせいで食欲もありませんでした。とにかく体力をつけたほうがいいから何か食べたほうがいいと勧めると、唯一彼の口から出てきたのは「ミートボールのピザを食べたい」という言葉でした。それから何件も探し回り、ミートボールのピザを探しました。あなたのお店でダメなら、もうあきらめようと思っていたところでした。あの日、うちまでピザを届けてくれて本当にありがとう。あれがうちの主人の最後の食事になりました。主人はとても喜んでいました。本当に感謝しております。
・・・というストーリー。この逸話が原因でこのピザ屋は一気にその知名度を上げ…と言いたいところですが、そうはなりませんでした。なぜでしょうか。
このストーリーを書き留める人がそのピザ屋にはいなかったからです。もちろん人の死をトリガーにしてお店を繁盛させようという気概がなかったのかもしれません。しかしそれでも「我々は顧客第一のピザ屋です」と控えめにアピールする材料にはなったはずです。
P&GやIBMなど名だたる世界的大企業にはブランドマネジャーやブランドエディターなる役職が存在します。日本でいうなら「広報」でしょうか。彼らの仕事は、ただ単に広告を打つことだけではありません。社内・社外で起こった出来事をつぶさに書き留める。この書き留める作業を英語ではディクテーションと言いますね。そしてこのディクテーション作業をする人間をディクテーターと呼びます。暇があれば dictator を辞書で調べて欲しいのですが、第一義に暴君・独裁者、第二義に書き留める人、とあります。
そうなです。かつては文字を操れる人間が、その国を治めていたわけです。世界の歴史を紐解くと、圧倒的な権力を獲得したあらゆる組織(宗教・国家・会社)を見ると、そのきっかけに必ずストーリーがあります。そしてそのストーリーを広める役割が必ず存在するわけです。典型的な例がバイブルでしょう。フロントエンドとして本を出版して、本の中で売りたい商品を広告するモデルをバイブルマーケティングなんて言ったりしますよね。バイブルの中には「どこからそんなアイディア湧いてくる?」と思うほど巨大でしかも体系的なストーリーが連ねられています。誰かがストーリーを書き留めた(あるいは創作した)のです。
きっとのそのディクテーター(文字を書き留めた人)に、うちの宗教の教義も作ってよ・・・と頼めば、もしかすると世界三大宗教ではなく、四大宗教、五大宗教とその数を増やせる可能性だってあるはずです。まあそんな冗談はどーでもいいんですけど。もしバイブルがなくてもこれほどの信者を獲得できていたかと問われれば、自信を持って「当たり前だろ」と答えられる宗教幹部はいないでしょうね。
(ネット回線のない世界でのんびりするにはカタンドアネス島がベストです)
あなたは自分のストーリーを書き留めていますか?
独裁者にならなくとも、それなりに影響力のある人間にはなれるかもしれませんよ。