今回のレクチャーでは電子書籍の作り方についてお伝えします。電子書籍作成の3つ目のステップ、アウトラインの具体化についてです。アウトラインを作る目的は実際に執筆作業に入った時に、スムーズに筆を進められるようにすることです。これを見れば、電子書籍の構成を作る際に迷う心配はありません。
売れる電子書籍を作り上げるためには、綿密でバランスの取れたアウトラインを作ることが大切です。アウトラインとは目次をイメージしてもらえば良いです。ちなみにアウトライン作成は、本に盛り込みたいことをブレインストーミングした後に取り組むことをお勧めします。ブレインストーミングの詳しいやり方については、別のレクチャーでお話ししているので、そちらもチェックしてみてくださいね。
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アウトライン作成の方法
それでは、アウトラインを具体化するための方法を紹介しましょう。全ての本には冒頭、中盤、終盤の3つの幕があることを忘れないでください。単純なことのように聞こえますが、これを心に留めておく必要があります。
まずは、ブレインストーミングで書き出したトピックのリストを見てください。トピックを順番に並べる必要がある場合は、並べ替えてみましょう。例えば、何かを行う手順を教えるようなハウツー系の本を書く場合は、1から順に並べ替える必要がありますね。
特にそういった順番付けの必要がない場合は、リストアップしたトピックの中で最も重要なものを先に置いてください。多くの人が犯す間違いは、一番重要なトピックを最後に置いてしまうことです。これはもったいないので、やめてください。
これは、キリスト教の聖書に出てくるワインパーティーの話と同じ原理です。最初に最高のワインを出して、参加者のテンションを上げます。彼らは美味しいワインをたくさん飲んで、くつろいでくれます。その後、それほど美味しくないワインを出しても、彼らはすでに酔っているので、味の違いにそれほど敏感ではなくなっているのです。
電子書籍でも同じように、あなたの書籍の中で一番良いと思われる内容から始めなければなりません。ベストな部分を先出しするんです。そうすれば読者は冒頭からすぐに本に引き込まれます。もし冒頭につまらないものや、それほど重要でない情報を入れてしまうと、読者が途中で読むのを辞めてしまう危険性があるのです。
ここであなたは疑問を持つかもしれません。Kindleでは全体の10%程度を無料で試し読みできるようになっています。「でもKindleでは、本の最初の部分をプレビューできる。冒頭でとっておきの内容を無料で公開してしまうのは、もったいないんじゃないか」って。でも、そう考えるのはちょっと待ってください。
重要な内容を最初に置くことで、それを読んだ人は「無料でこれだけいい情報が手に入るなら、残りの部分も手に入れなければ。これにはお金を払う価値がある」と考えてくれるのです。ですから、優先順位の低い内容を冒頭に置いてはいけません。トピックのリストを作るときは、重要なものから始めましょう。
フィクション本のアウトラインの作り方
フィクションの本を作る場合も同じです。そのストーリーで起きる出来事を順番通りに並べ替えてください。冒頭では、緊張感を演出することも忘れないでくださいね。
もしも、1つのストーリーを作るのが大変だと感じる場合は、いくつかの短編小説を組み合わせていくのも良い方法です。異なる視点から、さまざまな時間軸でさまざまな出来事が描かれ、それが交差するのです。面白いと思える映画やドラマは、たいていこういった手法で作られています。
僕が読んだ小説に川越宗一さんの「熱源」という本があります。この本はサハリンを巡る壮大なアイヌ民族の物語を描いた小説で、直木賞を受賞した作品です。1つの物語を複数の人物の視点から、描いていく構成になっています。最初は全員の話が別々に切り替わって展開していくのですが、次第にそれらが互いにクロスオーバーしていくんですね。
自分で読んでいてもどんどん物語に引き込まれていく感じがしたんです。結論から言うと、これだけ重厚なストーリーなのにあっと言う間に読み切ってしまいました。自分が小説を書くなら、たぶんこういうクロスオーバー型の小説を書くだろうと思いました。自分が読みたいと思うような本を書く。この考え方で書き始めると案が浮かびやすいことはよくあります。自分がターゲットにしている人が読みたいと思う本を書こうと考えれば、間違いはないでしょう。
アウトライン作成の4つのポイント
続いては、アウトラインを作る際に気をつけたい3つのポイントについて紹介します。適切な分量、適切なバランス、適切な作業時間についてです。それぞれについて見ていきましょう。
ポイント#1:スムーズに執筆できると感じるまで作り込む
アウトラインをどの程度まで作り込むべきかと悩む人もいるかもしれません。アウトライン製作の大きな目的は、執筆の段階に入った時に、スムーズに書き進められるようにすることです。
そのためには「よし、このアウトラインに沿って、それぞれの項目について書いていけば、自然と本は完成するな」と思えるくらいの内容が必要です。そしてアウトラインには、それを一目見て「自分がカバーしたいポイントがすべて揃っている」とわかるくらいの詳細さが必要です。正直なところ、これは感覚的な部分もあります。
アウトラインをどこまで綿密なものにするかは、あなた次第です。大事なのは、自分が「これなら大丈夫。執筆を最後まで進められる」と思えるところまで仕上げることです。
ポイント#2:バランスを意識して作成する
アウトラインを具体化する際のもうひとつのポイントは、バランスです。僕は電子書籍の各セクションには1つずつ読者が気にするであろう質問を設定して、まるでその質問に対する回答を書くように内容を執筆してくださいと話しています。
ですが、その答え方によっては1セクションごとのバランスがおかしくなる場合があります。具体的にはある質問に対しては2通りの回答を用意して、別の質問には50通りの回答を用意するというようなことは避けてください。こういうことをやると、明らかにバランスが崩れますよね。
その場合は50通りの回答が出てきてしまうトピックは除外して、別のものに差し替えた方が良いでしょう。本の各章が0.5ページなのにも関わらず、ある1つの章だけ30ページもあるというのは避けましょう。バランスが大切です。
「それぞれの見出しに対して2つのポイントを設定して、さらにそれぞれのポイントに対して2つずつのサブポイントを設定する」などの大まかなルールを決めても良いですね。
ポイント#3:時間を区切って作業に取り組む
アウトラインを具体化する際には、45分から60分のまとまった時間で行い、作業の間には10分から15分の休憩を挟むやり方がおすすめです。そうすることで、集中力が持続しやすくなります。
人によっては、「45分は長すぎる」と感じるかもしれませんね。その場合は、20分ごとに区切って、10分の休憩を入れれば、1時間ごとに40分の作業ができます。25分の作業と5分の休憩を繰り返すポモドーロメソッドは、集中力と生産性を高められることで知られていますね。自分が集中力を維持できる時間で区切って、細かく休憩を入れることが大切です。
iPhoneやMacにも、ポモドーロメソッドで25分の作業と5分の休憩を自動で測ってくれるアプリが沢山あります。アプリストアの検索ウィンドウに「ポモドーロ」と打ち込んでみてください。アプリによって細かな挙動の違いがあるので、自分の好みのものを探してみてください。
ポイント#4:集中を邪魔しない心地のよい音楽を掛ける
ちなみに作業する時の音楽も紹介しておきます。僕がこのような創作活動をするときに心がけているのは、歌声の入っていない音楽を静かに流すことです。特にクラシックやアンビエント音楽は、創造性を刺激することで知られています。
僕が実際に作業するときにかけているのは、Lofi Hiphop(ローファイ・ヒップホップ)というジャンルの音楽です。ザラザラとした質感の曲で、これすごく集中できるんです。
試しにYouTubeで「Lofi Hiphop」と検索してみてください。たくさんの曲があり、無料で聴くことができます。24時間ライブ配信しているアカウントもあるので、毎回違う曲を聞きながら新鮮な気持ちで作業することも出来ます。すごくオススメです。
まとめ:アウトラインを具体化して執筆に備える
ここまで、アウトラインを具体化する方法についてご説明してきました。アウトラインは、今後あなたが執筆を進める際に、テーマからブレることなく、また抜け漏れなく本を作り上げるための道標となります。
アウトラインは、実際に執筆作業に入った際に「これに沿って書けば、自然と本は完成する」と思えるくらいの分量が適切です。本の構成バランスや作業時間も意識しつつ、アウトライン作成に取り組んでみてください。また今回紹介した作業のコツも役に立てば嬉しいです。今回は以上です。また次回のレクチャーを楽しみにしていてください。