今回のレクチャーでは、電子書籍制作のための具体的な方法をご紹介していきます。電子書籍を制作するプロセスを5つのステップに分けた場合、今回紹介するのはファーストステップとなる「フォーカス・ステートメント」です。電子書籍の執筆中にあなたが脇道に逸れてしまわないために、今回の話が参考になるはずです。
さて、「フォーカス・ステートメント」という言葉を初めて聞く方もいるかもしれません。これは電子書籍の執筆に集中するために非常に重要なものです。具体的にどのようなものなのか。そして、なぜそれが必要なのか?どんな風にあなたの執筆活動を助けてくれるのか?このレクチャーでは、これら全てを知ることが出来ます。早速見ていきましょう。
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フォーカス・ステートメントで本来の目的に沿った文章を作る
「フォーカス・ステートメント」とは、一言でいえば、自分がこれから何を作ろうとしているのかを一文で表現する文章のことです。途中で書籍の内容がブレたり、書籍のコンセプトを作家自身が見失わないようにするための「誓いの言葉」と言っても良いかもしれません。
フォーカス・ステートメントの目的は、あなたが何を作っているのかを脳にインプットすることです。これを作ることで、あなたの潜在意識は、電子書籍に何を含めるべきか、あるいは含めるべきでないかに、常に集中することができます。潜在意識にフィルターをかけることで、効率的に、まとまりのある本を完成させることができるのです。
具体的に言えば、フォーカス・ステートメントとは「この電子書籍は〇〇について書かれている」というような文章です。これを用意することで、あなたの脳に「自分が執筆するのは何についての本なのか」をインプットできます。そうすることで、それに関係ないものがすべてカットされるのです。頭の中に「私はこれについて書くんだ」というしっかりとしたアンカー、つまり重りを置くようなイメージです。
多くの人が自分の本を完成させられない理由のひとつは、いわゆる「スコープクリープ」によるものです。スコープクリープとは、プロジェクトが進むにつれ、本来の目的を超えてそれが肥大化してしまうことです。つまり、執筆を進めるにつれ、「あれもこれも」と当初の目的を超えるような内容まで盛り込んでしまうのです。しかし、フォーカスステートメントを用意することで、どんな内容を含めるべきか、そしてどんな内容は除外すべきかがわかるようになります。
フォーカス・ステートメントのテンプレート
では、どのようにフォーカス・ステートメントを作ったら良いのか?と、あなたは疑問に思っているはずです。もしかすると、すごく長い誓いの文章を作らなければならないと思っているかもしれません。
でも安心してください。フォーカス・ステートメントはとても短い4つの文章から成り立っています。もしフォーカス・ステートメントが5ページとかすごく長い文章だったら、読み直すだけでも何十分も掛かってしまいます。それでは、わざわざステートメントを見直すことも無くなってしまいます。
そこで僕らは、このフォーカス・ステートメントを以下のように短い文章のテンプレートにしました。4つの括弧内にそれぞれフレーズを入れるだけで完成します。それは次のようなものです。
- この本は【 自分の専門的なスキル・ノウハウ 】に関するもので、
- 【 ターゲットとする見込み客 】を助けます。
- 【 独自の解決策 】を紹介して、
- 【 見込み客に約束する変化 】を約束します。
1つ目は「この本は【 自分の専門的なスキル・ノウハウ 】に関するもので、」というもので、ここには本のメイントピックを入れてください。
2つ目は「【 ターゲットとする見込み客 】を助けます。」で、これは想定読者や見込客となる人のことです。これも結構重要です。書籍を書いているうちに、誰に書いていたのか迷わないようにしっかりと言葉にしておいてください。
3つ目は「【 独自の解決策 】を紹介して、」というもので、あなたが読者に対して提供できる独自の主張であったり、ノウハウなどを指します。
4つ目は「【 見込み客に約束する変化 】を約束します。」ということで、ターゲットとなる見込客がこの本を読む意義についてを説明しています。通常見込客は、本を読む前に何らかの悩みを抱えている状態です。そんな見込客をどこへ連れて行くのか?という方向性をこの文章で定義づけてください。
では、テンプレートを紹介したところで具体的な使い方を見ていきましょう。
フォーカス・ステートメントの具体例
さて、ここからは、フォーカス・ステートメントの具体的な例をいくつか紹介していきます。
「この本は【 自然災害への備え 】に関するもので、【 未就学児を持つ家族 】を助けます。【 僕がスーツケースとバックパックだけで子連れ世界旅行をした経験やノウハウ 】を紹介して、【 小さな子どもが居ても災害時に対する安心感が持てること 】を約束します。」
僕が防災について本を書くなら、このようなフォーカス・ステートメントを用意するでしょう。この文章があることで、本の中でカードマジックのプレイ方法について話したり、休暇の取り方について話したりと、あまり無駄な話をすることはなくなります。
災害が発生した場合に、家族の安全を守るためにどのような準備をしておくべきか、これに焦点を絞って文章を作ることができるのです。執筆を進めるにあたって「これについて書くべきか」と迷った際には、フォーカス・ステートメントに当てはまるかどうかを判断すれば良いのです。
他の例もいくつか見てみましょう。
「この本は【 サブスクリプション 】に関するもので、【 オンライン上に新しい収益を作りたい人 】を助けます。【 英語圏の知見・ツール・ノウハウ 】を紹介して、【 毎月100万円の安定収入 】を約束します。」
これはサブスクとオンラインでのビジネスに関する本の例ですね。
「この本は【 腸内環境 】に関するもので、【 メンタルが落ち込みやすく、仕事のパフォーマンスが上がらない 】を助けます。【 グルテンフリーとサプリメントによる副腎疲労の改善方法 】を紹介して、【 あなたの症状が緩和され、また元気に活動できるようになること 】を約束します。」
これは健康本の例です。
「この本は【 幸福 】に関するもので、【 人生に何かが足りないと感じている人 】を助けます。【 最新の研究から明らになった健康、お金、人間関係、精神的な幸福に関する50のコツ 】を紹介して、【 あなたの人生がポジティブなものになること 】を約束します。」
これは自己啓発についての本の例ですね。このようなフォーカス・ステートメントを作ることで、僕の頭はすぐに「これから自分が書きたい内容は、健康、お金、人間関係、精神的な幸福の4分野のいずれかに当てはまるだろうか?」と考え始めます。
たとえ僕が画期的な数学のテクニックを思いついたとしても、この本には含めないでしょう。目的に焦点を合わせるだけで、すぐにその本の内容を作れるようになるし、入れるべきでない内容を排除することができるようになるのです。
「この本は【 ダイエット 】に関するもので、【 お腹まわりがどうしても気になる30代の女性 】を助けます。【 1日10分でテレビを見ながらでもお腹を引き締められる9種類のエクササイズ 】を紹介して、【 毎日鏡の前で自分に自信が持てるようになること 】を約束します。」
実用書についても、その本の目的は何か、その本を読むことで読者に何をもたらすのかということを明確にしてください。重要なのは、あなたが読者にどのような結果をもたらそうとしているかということです。
まとめ:フォーカス・ステートメントで芯のある本を製作する
ここまで、フォーカス・ステートメントの概念と役割についてお話ししてきました。フォーカス・ステートメントを作ることで、本来の目的から外れることなく、筋の通った電子書籍を作ることができます。
ここで挙げたいくつもの例を参考にしながら、あなたも自身の電子書籍の目的について、改めて文章化してみてください。そして、内容にブレのない、芯の通った電子書籍を作りましょう。それでは、またお会いしましょう。