今回は、会員制サイトでより効果的に見込み客へアプローチできる「Selling Through Stories(ストーリーを通した販売)」について解説していきます。これは言うなればあなたの商品が、お客さんから見てより魅力的に見えてしまう魔法の公式です。
僕の経験則で言えば、この公式を使うことによって販売が何倍も簡単になります。ストーリーを通して、会員制サイトの売り上げをどのように獲得していくのか。具体的な事例も合わせて見ていきましょう。
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会員制サイトを販売するためのストーリーに関する3つの誤解
はじめにお話ししたいのは、ストーリーのタイプについてです。ストーリーには一定のタイプがあって、全てのストーリーが同じような形に作られているわけではありません。では具体的な話をする前に、ストーリーについて多くの人が抱きがちである誤解について、少しお話をしていきましょう。
ストゥマクラーレンの友人でもあるライアン・レベックは、『Ask』という著書を書き上げました。彼が教えてくれた1つの教訓は「どれだけ素晴らしいストーリーを持っていたとしても、人々の関心を集められるとは限らない」ということでした。
この教訓は、あなたの直感とは反するものかもしれません。だって、素晴らしいサクセスストーリーがあるのなら、聞きたくなりませんか?しかしその答えは、実は「ノー」なんです。まずはここを受け入れましょう、残念ながらそれが現実です。
誤解#1:求めているものにマッチしていないストーリーを投げる
彼らのやりとりを紹介しましょう。ライアンはストゥにこう言いました。「もし素敵かつ静かで、ロマンチックな旅行にいくとしよう。オンラインでリゾートと検索すると、ホテルのレビューが出てくるよね。評価がすぐに分かるようになってる。★が5つ付いているリゾートホテルがあったから実際に見てみよう。このホテルにはたくさんの利用者がいて、★5のレビューがたくさんあるね。じゃあ、このホテルは『素敵で、静かで、ロマンチックな旅行』に合ってるかな?」と。
ストゥはそのホテルの内容を見て、バチェラーパーティ向け、つまり新郎が独身最後の夜を同性の友人と過ごすパーティーのこと、と書いてあったので『素敵で、静かで、ロマンチックな旅行』には合ってないと思いました。そして「多分、合わないと思うよ」と答えたんです。それに対してライアンは、「でも、星が5つのレビューが多いよ?」と聞き返してきました。
どういうことだろう?と、ストゥマクラーレンはまだ彼が言いたいことの本質をうまくとらえられていない様子でした。そんなストゥの顔を見て、彼は続けてこう言いました。
「君のビジネスに関連する例を挙げよう。マイケル・ハイアットのサクセス・ストーリーについてだ。彼が初めて会員制サイトをスタートさせたとき、すでにプラットフォームを持っていたし、見込み客もたくさん抱えていたよね。それに、マイケル・ハイアットという名前の認知度も高かったはず。でも、大抵の人には見込み客はいないし、マイケルのようにプラットフォームを持っているわけでもない。だから、彼のケーススタディを知ったところで、同じようにはできないんだ。」
わかりますか?つまり、どれだけ素晴らしいストーリーを持っていても、スタート地点から違うと思えば全く参考にならないんです。同じように求めている旅行プランが合わなければ、いくら多くの人が★5の評価をつけていても意味がありません。
ひと昔は情報商材を売るセールスレターに「私は5億円稼いでいます。あなたもこのノウハウを使ってフェラーリを乗り回してみたくありませんか?」といった文言が散りばめられていました。でも多くの人は追加のお金は欲しいと思えど、5億円も要らないしフェラーリにも乗りたくないと思っていました。
だから仮にあなたが5億円を稼いでいたとしても、見込み客の求めているストーリーにマッチしないのであれば、その言い回しは避けるべきなのです。もっと地に足のついた、具体的で、彼らの想像しやすいストーリーを使うことが大事です。
誤解#2:スタートラインはできるだけ遠いほうが興味を持って受け入れられる
ライアンは話を続けました。「それよりも、もっと自分と近い人の成功事例が聞きたいと思わないかい?まだ駆け出しで見込み客がいないけど、数ヶ月かけて会員制サイトを立ち上げできた、とか。マイケルのように何千人ものメンバーを入会させたなんて成功事例とは、比べものにならないかもしれない。けれどそっちの方がはるかに親しみやすいし、興味も持ちやすいと思うんだ。」
ようやくストゥは、彼が何を言いたかったのかを理解することができました。そして、これが同じようにあなたにも理解してもらいたいポイントです。世の中にサクセス・ストーリーは数多く存在しますが、全ての人が平等に、同じスタートラインから駆け出しているわけではありません。だから、どんなサクセス・ストーリーでも人々が興味を持ってくれるというのは大きな誤解なのです。
ここで、これまで自らを億万長者と偽っていた人たちは「ドキッ」とします。なぜかわかりませんが、僕に絡んでくるおじさんたちは億万長者でもないのに、自らを億万長者と自称します。名前も会社名も聞いたこともないし、会った瞬間いきなり求めてもいないアドバイスをしてきたりします。なんですぐマウントとろうとするんでしょうか?
さておき。彼らは情報商材を販売していた大御所のセールスレターに騙されて、お金を稼ぐためには自分の収入をでっち上げて自分を大きく見せる必要があると勘違いしています。
ある人はブログのサイドバーにアフィリエイト報酬のスクショを貼り付け、本当は瞬間最大売上をずっと掲載しているだけなんだけどと内心びびっている。
ある人はアメブロのトップに自己紹介ページへのリンクを何個も貼り、ふと我に帰った時に「こんな長々と書いた自己満の物語誰が読むん?」と思うことがある。
ある人は自分の嘘が暴走して頭が完全にあっちの世界に行ってしまっている。現実世界が楽しくないから精神世界に逃げたんでしょ?と言わたら崩壊するような不安定な日々を送りながら。
スタート地点が嘘なのですから、そこから展開される全ての物語が嘘になります。
でも、人々は大きく誇張されたストーリーや、でっち上げられた嘘を求めていません。仮に大きい数字や稼いだ金額に騙されて寄ってくるような人間は「学生起業したいが口癖の大学生」や「自分のことを賢い消費者だと勘違いしている主婦」あるいは「何か信じるものがないと生きていけないメンタルの弱い人」ばかりです。
そして彼らはあるとき自分たちが騙されていたことに気づき、逆上します。
誤解#3:リアルなストーリーよりも素晴らしいストーリーの方が好まれる
誇張された嘘のストーリーで情報弱者を集めて虚構のビジネスを作らなくていいです。
自分が見込み客よりも特定の分野で一歩、あるいは半歩先にいる事実が伝わるリアルなストーリーの方がはるかに魅力的だし、数字だけに反応する情報弱者を集めなくても良くなります。
ちなみに僕は先日大人用のおむつを買いました。すぐにおしっこを漏らすからです。泌尿器科にかかるような疾患を持っているわけではなく、ただ単に大量の水を飲むからなんですけど、日本だったら公衆便所もあるしコンビニもあるから余裕で生きていけますが、ヨーロッパではそうはいきません。
少なく見積もっても5回はパンツにおしっこを漏らしました。それもあってはいけないようなシチュエーションです。1回はサーフスクールのメンバー揃ってビデオを見ていました。僕とインストラクター除いて全員女性です。僕はその席でおしっこを漏らしました。
もう少し具体的に言うとトイレ行ってくると言い階下の有料トイレに行き、Apple Watch で支払おうとしても反応せずゲートが開きませんでした。そこで終わり。運よくウェットスーツを持っていたので、ウェットスーツに着替えて部屋に戻ると、サーフ仲間は「は?なんでお前もうウェットスーツ着てるねん?」みたいな目で見てきたら、ことの経緯を丁寧に説明すると、みんな笑ってくれました。
サーフスクールが終わった帰り道、少し濡れ気味のウェットスーツでトラムに乗り込むと、乗車しているオランダ人に「は?なんでこいつウェットスーツ着てるねん?」みたいな目で見られて、7駅を過ごしました。
・・・どうですか?僕がここで数億円稼いだストーリーを話してもあなたは耳を傾けてくれませんが、オランダで漏らした話は聞いてくれますよね?時に人は素晴らしいストーリーではなく、リアルなストーリーを好むのです。覚えておいてください。
会員制サイトを販売するための3つのストーリータイプ
では具体的に、3つのタイプのストーリーがあるという話を説明していきます。それぞれの特徴を踏まえた上で、お客さんにどういう魅せ方ができるのかを想像してみてくださいね。
ストーリータイプ#1:駆け出しの人たちに親しみを抱かせるファースト・ステップ・ストーリー
1つ目は、ファースト・ステップ・ストーリーと呼ばれるタイプです。まずサクセスパスについて考えてみましょう。サクセスパスは、お客さんが成功するために必要なロードマップです。段階を追って、順に成長を実感しながら変化する未来の自分が見える役割を果たします。
このストーリーの主役となるのは、サクセスパスの極めて初期段階にいる人たちです。ファースト・ステップ・ストーリーで紹介する成功はとても小さなものですが、彼らにとっては成功への第一歩。とても大きなものでもあります。
このタイプのストーリーが素晴らしいと言えるところは、同じ駆け出しの人たちにとって親しみやすく、かつ魅力的に聞こえるということです。「自分にもできるんだ」というモチベーションにつながりますし、ストーリーの主役に自己投影することも簡単にできます。
もしあなたの見込み客の多くがサクセスパスの初期段階にいる場合には、ファースト・ステップ・ストーリーを紹介することをおすすめします。
例えば僕が会員制サイトの販売方法を教えるOSB2.0の商品を販売するのであれば、ファースト・ステップ・ストーリーには、商品を購入したばかりの人になぜこの商品を選んだのかその理由を聞くでしょう。
ストーリータイプ#2:ある程度のステップを踏んでいる人に有効なミッド・ジャーニー
2つ目は、ミッド・ジャーニーと呼ばれるストーリー・タイプです。ここでもサクセスパスについて、よく考えてみましょう。ミッド・ジャーニーの主役となるのは、すでに会員制サイトをスタートさせている人や、いくつかのステップや創意工夫を実行してある程度の成功を収めている人たちです。
ミッド・ジャーニーは駆け出しの人たちにとっても刺激的です。しかし最もモチベーションを与えられるのは、同じく旅の途中にいる人たちです。もしあなたの見込み客の多くがすでにある程度のプロセスを歩んでいる場合には、このタイプのストーリーを紹介してあげましょう。
僕の商品であれば「OSB2.0はとても実践的です」といった声や「1つ1つのレクチャーが細かく分かれており進捗を感じられます」といった受講してみての感想も魅力的なストーリーですが、「石崎さんの言う通りにやったらTeachableで会員制サイトを作れました。WordPressのプラグインで作ったサイトがいかにダメなものか今ならよくわかります」といった成果物が具体的に表現されているストーリーもインパクトがあります。
ストーリータイプ#3:すべてのステージを経験した人向けのフィニッシャー・ストーリー
3つ目は、フィニッシャー・ストーリーと呼ばれるストーリー・タイプです。すでにサクセスパスを歩み終え、すべてのステージを経験した人たちが主役となります。例えば、会員制サイトの超えるべき難関を乗り越え、何千人規模の会員を抱えているとか。かなり大きな成果を残した人たちを想定しています。
フィニッシャー・ストーリーは、会員制サイトというビジネスの大きな可能性を描くのに有効です。かなり大きな枠組みで捉えていると考えてください。ただこのタイプのストーリーに親近感を覚える人は、かなり限られています。だからこそ悩みを共有できることが少ないです。一度親しみを抱けば、強烈に信用してくれるでしょう。
ちなみに僕はこの後、サーフィンに行くのですが、僕は自分自身のプライベートを開示することがフィニッシャー・ストーリーだと考えています。別にそれほど贅沢をしているわけではないけれど、家族と趣味にたっぷり時間を使っていることが伝わればいいなと思いながら、適宜、自分自身のプライベートを開示しています。
ちなみに僕は日本の運転免許証が失効してしまったので、テスラのモデルXを買って金持ち自慢することすらできません。仮にオランダで免許を取ったとしても、車を使う機会がないので、週末にカーシェアを利用するか、中古のカローラを買うくらいでしょうけど。
こういった等身大のストーリーは人を惹きつけます。リアルだからです。
もっと言うとストーリーから感情や幸福が滲み出てきます。ストーリーは本来、嘘をつかない限り、そういう性質を持っているものです。
ストーリーに命を吹き込む方法は感情面にフォーカスすること
これらのストーリーの中で特に重要なのは、その経験の中で主役となる人物がどんな感情を味わったのかを明らかにすることです。主役が何をしたかだけではなく、何を考えていたのか、何を感じたのか。
また周りの人たちは何を考えたのか、何を感じたのか。どんなことを言ったのか、疑問や恐れ、不安はあったかなど…すべてのことを明らかにしましょう。感情面にフォーカスすることで、より見ている人の心を揺さぶるストーリーとなります。命を吹き込むことができるんです。
僕らが市場調査をしていたときに、内面で起こった葛藤や苦悩についてよく話していたことがあります。僕らはストーリーを語るとき、必ず心の中で起こる苦闘を共有するようにしているんです。
僕たちが発見した見込み客の内面で起こっている葛藤や苦悩はこうです。
- 毎日ブログを書いてYouTubeに動画をアップロードしているのに全然伸びない
- 実家暮らしをしているのがバレると嫌だから特商法を記載せずに商品を販売している
- 父親から「ネットビジネスなんかやってないでお前も公務員試験を受けろ」と言われている
- 大きな額を稼ぎたいわけではなくストレスの少ない仕事で生きていくだけのお金が欲しい
- 自分の情熱や興味あるいは好きなことを仕事にできたらこんな素敵なことはないと思っている
- だからYouTuberという職業に憧れるけど、カメラなどの機材周りに弱い
- 忙しく働いているけど、もっともっともっともっと自由な時間が欲しい
こういった内面の葛藤は、僕がこれまで公開してきたコンテンツの中で何度も何度も登場しているはずです。「あ、その表現どこかで聞いたことある!」と思った人もいるでしょう。
なぜなら悩みや不安ほど、見込み客の心の琴線に触れられるものはないですからね。それこそが見込み客の心と繋がるための、大きな仕掛けです。心が繋がれば、あなたの言葉を全面的に受け入れてくれるようになるでしょう。
よくある質問:ケーススタディがない場合はどうすればいい?
ここで、よくある質問にもお答えしておきましょう。それは「まだケーススタディがないんですけど、どうすればいいのか?」というものです。ケーススタディとは、事例を挙げて検討してもらうことですね。でも心配しないでください。ちょっとした工夫があれば大丈夫です。
あなたがすべきことは、変化を経験した人のストーリーを探すことだけです。そのストーリーの主役は、あなたの生徒ではないかもしれませんね。しかしあなたの会員制サイトを通して得られる変化と同等の変化を経験した人のストーリーであれば、なんら問題はありません。
ストーリーにおいて注意したいのは、あなたについて伝えることがメインではないということです。伝えるべきは、変化を通じ変革を迎えた人たちの物語です。あなたが与えられる変化や約束できる姿を伝えてください。
そうすることで「私もそのストーリーの主役のように変化したい」と思う人が出てくるはずです。そして人々は、やがて解決策を探し始めます。そんな人たちの目の前にタイミングよく現れるのが、あなたなのです。
まとめ:伝えるべきストーリーはあなた自身のものじゃなくて構わない
さて、ここまでの話をまとめていきます。まず、ストーリーには3つのタイプがありました。ファースト・ステップ・ストーリー、ミッド・ジャーニー、フィニッシャー・ストーリーです。すべて重要です。見込み客によって、どれが最適かが決まります。
ライアン・レベックが教えてくれた通り、ストーリーの主役は平等ではありません。それぞれに立場があり、持っているものがあり、弱みもあります。その点をよく理解して下さい。そして、あなたの見込み客に合わせたストーリーを語るようにしてください。
もちろんあなた自身のストーリーである必要はありません。あなた自身が語れるストーリーがあるなら、ぜひそれを使ってください。でも、ストーリーがなくても問題ではありません。同じような旅を経験し、変化を経験した人の例を見つけるだけでいいのです。
ファースト・ステップ・ストーリー、ミッド・ジャーニー、フィニッシャー・ストーリー。どれがあなたの見込み客にとって最適でしょうか?今のところは、この点をよく考えてもらえれば結構です。
それではこれで、今回のレクチャーを終わります。ここまでの流れで、何か不明点はありますか?わからない点があれば、下記のコメント欄で教えて下さいね。それでは、またお会いしましょう。