アマンダリが世界中のセレブを魅了する最高峰リゾーツと知ったのは帰国後、fmiznと日比谷線の中で宿泊費を調べたときだった。「え・・・ただ俺たち飯くっとっただけやん!!金稼いでもう一回絶対いくしな!」そう誓ったのを今でも思い出す。
[amazonjs asin=”4163762809″ locale=”JP” title=”アマン伝説 創業者エイドリアン・ゼッカとリゾート革命”]
しかもその時行ったアマンダリは完全に貸し切りだった。ウブドに花火を連発で打ち上げるあの集団にはさすがに大学生の僕らも驚いた。あの集団とは・・・そうアムウェイ・・・みたいな喋り方しているとそーいったネットワークビジネスが嫌い!みたいな言い方だけど、僕はアムウェイに対してはとってもニュートラル。好きでも嫌いでもない。どっちでもいいと、どうでもいいの中間くらいです。
エロマッサージは気もちかった
「やる気のスイッチ」の著者である山崎拓巳さんにひょんなきっかけから接点が生まれ、一緒にバリに行くまでになった。これまで味わったこと無い贅沢というかラグジュアリー(って一緒か)を肌感覚で2週間味わい続けた。高級レストラン、極上スパ、(エロ)マッサージ、水上ヴィラ、五つ星ホテル、かし切りビーチは全て僕の経験外の所にあり、見るもの見るもの全てが新しかった。(気もちかった)
で、何を思ったか。当時19歳?の僕は何を思ったか。3億円プレーヤーたちが集まる場所に19歳の大学生二人は何を思ったか。Fmiznはホテルのコテージでタバコをふかしながらこう言った。
こんくらいかよ、バリ島!
「いって、こんくらいか」
その発言には溜め息が十分につまっていた。そう、僕らは飽きていた。目をドルマークに変えて、夢を売りつけてくる人たちと一緒に行動するのが疲れていたし、なにより、お金を使いまくっても僕らの幸福度は「行ったとしてもこのくらい、このくらいか」と思った。
人生の速い段階でそういう経験をしておいてよかったと思う。20代になっても「金持ちになりたい」とか言いながら、無能、無知、サラリーマンをやっている人を見ると「30代になってもどーせ同じこと言ってんだろ」って毒を吐きたくなるって、留学先の韓国人(こちらも有名なプログラマー)は言っていた。そう、いつまでも幻想を追い続けなくてもいいように、僕たちがなりたいと思っているものに、できるなら10代のうちに、遅くとも20代のうちに断片でいいから経験をしておくことは非常に重要なことだと思う。
溜め息まじりの幸福
僕とfmiznは当時は今以上にアホで無知だったから、お金さえあればいいと思っていた。お金が全てを運んできてくれると思っていた。でも19歳がバリ島のアマンダリで気づいたことは「いって、こんくらいか」という溜め息まじりの幸福だった。
その後、僕らは似非学生起業家を一旦脱却し(結構儲かっていたんだけど)、僕はシドニーとアメリカに留学し、fmiznはGスポットの研究を始めた。その間、僕らがやっていたことは、本を読んだり、Adobe製品をいじったり、20代のあるべき姿をスカイプで語ったり、保険の入っていない車で交通事故にあった話だったり、8番ラーメンがいかに恋しいかということ。頭の中から既に幸福になりたいという願望はどこかに消えていた。だって既に十分自由で十分幸せだったから。
情報発信もせず、自分をFacebookの中に隠しているだけでいいのかい?
こーいった本の危なさは読者に「金持ちになったらいいよ」とか「リゾーツは素晴らしいよ」と幻想を見せ過ぎる可能性があることだと思う。ぶっちゃけバリ島なんかツアーでいけば5,6万円でもいける。で、アマンダリまでタクシーで行って、見学してくればいい。絶対に「この程度か」って思うから。この程度かって思ったから、これだけに人生を捧げることがあほらしくなってくるし、ここに行くために彼女とのコミュニケーションを減らすのは、ちょっとどうかと思う。彼女と格安ビーチでダンブラウンの本を交換しながら一緒に読んだり、感想を交換したり、たまにセックスしたりする方がよっぽど幸せだと、僕は思う。(僕の場合はセックスの頻度が高いけど)
結局僕らは作られた世界に生きているんだなって。誰かに与えられた価値観で生きているんだなって。そういうことがしっかりと肌感覚で理解できたら、僕の中のセレブに対する反抗心も消え、アマン伝説内で革命者とされているアマンの創業者エイドリアン・ゼッカが2014年に東京に作るアマン東京を楽しめるのかもしれない。来年だね。全然、招待状来ていないあたりが、僕がまだ「そーゆー」シンジケートに入れていないんだなって思い、「それは素晴らしいことだ!」と安堵を覚えると同時に、「この貧乏人が」とセレブへの嫉妬を醸成してくれる。
文責:石崎力也
追伸:全然書評になっていないや。本格ノンフィクションならすごい。フィクションばりのエイドリアンストーリーだった。慶応卒の旅行ジャーナリストってのも素敵です。
追伸2:そういえば拓巳さんの名刺には六本木って住所が書いてった。あんまりアマンの悪口を言わない方がいいかもしれない。(てか言ってない!アマンは本当に素敵なリゾートだった)