あなたはフリーランスやデジタルノマドとして、海外で働きながら生活することを夢見ていませんか?ポルトガルのD8ビザ(デジタルノマドビザ)は、そんなあなたの夢を叶える可能性を秘めています。ここでは、D8ビザ取得に必要な要件と申請プロセスについて、2024年9月に在オランダポルトガル大使館から承認を受けた僕の経験を基に詳しく解説していきます。
僕がD8ビザの取得に挑戦したとき、このビザが比較的新しいものだったため、日本語の情報がほとんど見つかりませんでした。そのため、英語圏のReddit・Quoraなどを参考にしながら、手探りで申請プロセスを進めていきました。情報が常にアップデートされているため、政府公式サイト(SEF/AIMA/大使館)にリストアップされている書類だけでは不十分なことが多々あり、苦労しました。
当時僕はオランダに住んでいたので、オランダにあるポルトガル大使館から申請を行いました。この経験を通じて得た最新の情報を、これから申請を考えている方々のために、ここで詳しく共有したいと思います。海外で働きながら生活するという選択肢は、デジタル技術の発展とともに現実味を帯びてきました。特に、新型コロナウイルスの影響でリモートワークが一般化したことで、より多くの人々がこの ライフスタイルに興味を持つようになりました。ポルトガルは、その美しい景観、温暖な気候、そして比較的低い生活コストから、デジタルノマドたちの間で人気の目的地となっています。D8ビザは、そんなポルトガルで合法的に長期滞在し、働くことを可能にする重要な鍵となります。ビザ取得のプロセスは複雑に見えるかもしれませんが、適切な準備と理解があれば、決して難しいものではありません。
今回お届けするノウハウはこちら
必要書類
僕がD8ビザ(デジタルノマドビザ)の申請を決意してから、実際にビザが大使館から発行されるまでに6ヶ月(2024年の2月から8月まで)もの時間がかかりました。この長い過程で、多くの書類を準備する必要がありました。これらの書類は、僕の身元、財政状況、滞在目的を証明するためのものです。各書類の準備には予想以上に時間がかかり、特に海外にいる状態での準備は困難を極めました。
例えば、日本から戸籍謄本を取り寄せる必要がありましたが、これは海外にいる状態では特に時間がかかりました。戸籍謄本は婚姻関係を証明し、子供たちが自分たちの子供であることを証明するための重要な書類ですが、日本にいる家族や知人に依頼して取得し、国際郵便で送ってもらう必要がありました。このプロセスだけでも数週間を要しました。
僕が実際に準備した書類のリストは次の通りです:
– 有効なパスポート
– 定期的な収入の証明
– 銀行口座明細書
– ポルトガルでの賃貸契約書
– 犯罪経歴証明書
– 健康保険の証明
– 航空券の予約確認
– モチベーションレター
僕の経験では、すべての提出書類をポルトガル語または英語に翻訳する必要がありました。日本語で作成された書類は、公認翻訳者に依頼して翻訳しました。また、すべての書類にノータライズ(公証)またはアポスティーユによる認証が必要でした。僕の場合、ノータライズは弁護士に依頼し、アポスティーユはオランダの地方裁判所で取得しました。これらの手続きは、書類の真正性を国際的に保証するために不可欠でした。翻訳と認証には予想以上に時間とコストがかかりました。
収入証明の詳細
フリーランサーとしてD8ビザを申請する場合、過去12ヶ月間にクライアントがいたことを証明する書類が必要です。僕の場合、経営コンサルティングを仕事にしているので、コンサルティングサービスの契約書をポルトガル語に翻訳して提出しました。この契約書には、業務期間と報酬額が明記されていることが重要です。
eVisa Portal からデジタルデータとして必要書類を提出します。この際、4つのファイル、それぞれのファイルの大きさが2MB以内に収めなければいけません。コンサルティングの契約書の原本と翻訳には数十ページに及ぶため1つしか添付できませんでした。他に複数の会社と顧問契約を結んでいることを証明するために、契約書の原本と翻訳をGoogle Driveにアップロードし、共有リンクを1枚のドキュメントにまとめて eVisa Portal から提出するなどの工夫が必要でした。
さらに、実際にコンサルティング収入が入金されていることを証明するため、銀行口座明細書も提示しました。これらの書類によって、安定した収入源があることを示し、ビザ申請の要件を満たすことができます。フリーランサーの方は、同様の方法で収入を証明することが求められます。
銀行口座明細書の要件
D8ビザの申請には、過去12ヶ月の銀行口座明細書が必要です。この書類は英語で作成され、銀行からの判子(電子または紙への捺印)が必要となります。明細書は、申請者の安定した財政状況を証明する重要な書類です。いくら必要かは毎年変わっているので、他のサイトで最新情報を確認してください。
僕の場合、オランダとポルトガルの銀行口座にそれぞれ1000万円分のユーロを入金し、その証明書を提出しました。これにより、十分な資金力があることを示し、ビザ申請の要件を満たすことができました。移民弁護士からは、日本の銀行の証明だけでなく、ユーロでの貯金があることを証明するよう勧められました。
書類を準備する際は、審査をする人たちの手間を省くことを心がけました。例えば、日本円をユーロに換算する手間などは事前にこちら側で行いました。これは、AIMAという移民局が40万件ものペンディング中の申請を抱えており、面倒な申請は却下されやすいという現状を考慮したためです。審査官の負担を軽減し、スムーズな審査を促すことで、申請の成功率を高めることができると考えました。
書類を準備する前に移民弁護士と1回目の面談がありました。D8ビザはシンプルに金払いのいい外国人をポルトガルに呼び寄せるための施策であると言っていました。つまり審査基準ギリギリの収入要件と貯金額を提示するよりも、十分にお金があることを証明できれば審査は難しくないと。だから僕はコンサルティングの契約書を1社分だけでなく複数社分を提出したし、日本、オランダ、ポルトガルのそれぞれの銀行口座に要件を超える金額を入金した上で残高証明を出してもらい提出しました。
賃貸契約書の条件
D8ビザの申請には、ポルトガルでの賃貸契約書が必要不可欠です。僕の場合、妻がポルトに実際に行き、わずか3日間で契約を締結しました。しかし、その契約内容は「ビザの取得可否に関わらず1年払う」という厳しい条件でした。あとで移民弁護士と賃貸契約を一緒に確認した時に、次のようなことを言われました。
「あらかじめ僕たち(弁護士)に相談してくれていたら、賃貸契約書にはビザ承認後から家賃が発生する条項を盛り込むよう大家と交渉すべきとアドバイスしていたのに」と。
オランダの住宅事情が厳しかったため、ポルトガルでこれほど早く物件が見つかるとは予想していませんでした。
とはいえポルトガルでの信用がない状況でかつ住宅不足に陥っている場所での賃貸探しはそう簡単ではありません。妻が三日で物件を探し契約してきたことはほぼ奇跡に近いことだと僕たちは考えています。
ポルトガルの賃貸物件を探す際は、idealista.comというサイトが役立ちます。このサイトでは、様々な条件で物件を検索することができます。ちなみにオランダで2020年に賃貸を決めた時は家具付きで毎月1400ユーロ(85平米)でした。それが2024年の段階で1700ユーロになっていました。一方、ポルトのお家は120平米で毎月1200ユーロ。サーフィンができる海が近くにあり、ポルトの中心地に物件があることを考えたら、文句のつけようがありません。
賃貸契約書は妻がその場で大家からもらいました。ポルトガル語で書かれているので翻訳は不要でした。
犯罪経歴証明書の準備と翻訳
D8ビザの申請には、日本とオランダの2枚の犯罪経歴証明書が必要でした。当初、ポルトガル政府の公式サイトと移民弁護士のサイトには、直近5年間住んでいる国(オランダ)のもののみが必要と記載されていましたが、実際には日本の証明書も求められました。
日本の犯罪経歴証明書は在オランダ日本大使館で、オランダの証明書は現地の市役所で発行してもらいました。日本大使館からもらった書類は警察証明書というものだったはずです。大使館で指紋を取り、2ヶ月ほどで受け取りのメールが来ました。警察証明書は、英語やスペイン語などに翻訳されており、追加の翻訳は不要でした。
オランダの証明書は、ポルトガル語への翻訳が必要でした。これらの書類は、申請者の背景を証明する重要な役割を果たします。
ちなみに2つともの書類にはアポスティーユが必要でした。日本のものは無料、オランダの証明書は1枚20ユーロ近く払ったと記憶しています。
健康保険に関する注意点
D8ビザの申請には、家族全員分の海外旅行保険の証明が必要です。僕たちは12ヶ月分の海外旅行保険を購入しました。あるサイトには4ヶ月分でいいとか、半年分でいいとか書かれていますが、そもそも申請期間が読めないため4ヶ月分しか保険を買っていないと、ビザを提出する段階で海外旅行保険が切れているなんてこともあるかもしれません。そういう小さい出費を節約することでD8ビザに落ちるのは嫌だったので、僕たちは常に多め多めの発想で準備をしました。
2回目の面談で移民弁護士はクレジットカード付帯の海外旅行保険でも良いと助言してくれました。
保険には、ポルトガルでのけがの保障(治療費)と本国送還(レパトリエーション)の保障が含まれている必要があります。保険の規約は英語またはポルトガル語に翻訳して提出しなければなりません。僕の場合、契約した保険の規約が英語になっていなかったため、ポルトガル語に翻訳して提出する必要がありました。
ちなみに保険のポリシーは大量のページから構成されるため、これら全てを翻訳するようエージェントに頼むと嫌がられました。コストがかかりすぎると。だからオランダの保険会社に交渉して、英語で「ポルトガル滞在中、家族全員分の保険がカバーされていること」と「その保険には治療費と本国送還の費用がカバーされている」2点を盛り込んだ文書を作ってもらいました。
大使館にその文書を提出したところ、後で「オランダ語でもいいので」保険のポリシーをメールで提出するよう求められてました。
こんなふうに、大使館が求める書類と全く同じものを申請者が用意できるわけではないので、大使館のスタッフまたはエージェンシーと連絡を取りながら、それに近いものを準備するという姿勢が重要だと思います。もし僕が自分の勝手な思い込みや、ググっただけの情報を頼りに、多分これでいいだろうという推測の書類を持っていくと、ビザは却下されていたはずです。そもそも大使館のフェーズで書類を受け付けてもらえかったはずです。
航空券予約の取り扱い
D8ビザの申請には、往復の航空券予約の証明が必要です。審査が予想以上に長引く可能性があるため、4〜5ヶ月後の航空券を予約しておくことをお勧めします。これにより、ビザ取得後すぐにポルトガルに渡航できる準備が整います。
僕の場合、審査が長引きすぎて2回も航空券を捨てることになりました。このような事態を避けるためにも、余裕を持った日程で航空券を予約することが重要です。また、キャンセル可能な航空券や日付変更の可能なチケットを選ぶことも一つの対策となります。
ヨーロッパはそもそもチケットが安いので、2回分のチケットを捨てたとしても3万円ほどの損失で済みました。
その他の必要書類
D8ビザの申請には、モチベーションレターの提出も効果的と言われています。これは必須ではありませんが、申請者の意図を明確に伝え、審査官に良い印象を与えるために有用だとエージェンシーが言っていました。レターは英語で作成し、ポルトガルへの移住理由や自身のスキル・経験がポルトガル経済にどう貢献できるかを説明します。
また、長期滞在の意思を示すことも重要です。家族と一緒に移住する場合は、その旨もレターに記載しましょう。このレターを通じて、申請者のポルトガルでの将来的な計画や貢献意欲を伝えることができ、ビザ取得の可能性を高めることができるそうです。
とは言ったものの、僕はあんまりモチベーションレターの効果を信じていません。笑
大使館のスタッフと面と向かってやりとりした時も、モチベーションレターの存在だけが無視されていました。申請書が山積みになっているのに、そんな個々人の動機を1つ1つ読んでいる時間もないだろうというのが僕の意見です。
まとめ:D8ビザ申請に必要な書類と注意点
ここまでD8ビザの申請に必要な書類と注意点についてお伝えしてきました。最後に要点を7つにまとめました。
– D8ビザの申請には、パスポート、収入証明、銀行口座明細書、賃貸契約書、犯罪経歴証明書、健康保険証明、航空券予約が必要である。
– フリーランサーの場合、過去12ヶ月間のクライアントとの契約書と収入の証明が求められる。
– 銀行口座明細書は過去12ヶ月分が必要で、英語で作成され、銀行の判子が必要である。
– ポルトガルでの賃貸契約書が必要不可欠で、idealista.comが物件探しに役立つ。
– 犯罪経歴証明書は、直近5年間住んでいた国と出身国の両方が必要で、翻訳とアポスティーユが求められる。
– 健康保険は12ヶ月分の家族全員分の海外旅行保険が必要で、ポルトガルでのけがの保障と本国送還の保障が含まれていなければならない。
– 航空券予約は4〜5ヶ月後の日程で予約し、キャンセル可能なものを選ぶことが賢明である。