あなたはネットで物販をする個人事業主として、売上を伸ばすための効果的な施策を探しているかもしれません。日々の運営で多くの課題を抱えながら「もっと効率的に売上を上げる方法はないだろうか」と考えているのではないでしょうか。ここでは、セールスファネルの一部であるカートファネルを活用して、物販で成功を収めた3つの実例を詳しく解説します。これらの事例から具体的な施策のヒントを得ることができます。
ここ数年でセールスファネルという言葉が日本にもようやく浸透してきました。それをなんとか物販にも応用できないかと考えている人がいるのも当然の話です。物販に向いたファネルにカートファネルがあります。カートファネルを使うとまるで1回のセールスから、大きな売上を狙うことができます。しかし、具体的にどのように構築すれば良いのか、どんな成果が得られるのかについては、まだまだ多くの人たちが手探り状態です。そこで注目したいのが、すでにカートファネルで成功を収めている個人や企業の事例です。ここではそれらの成功事例を紹介し、その戦略と具体的な施策を詳しく解説します。
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事例1:FiberFix – 様々なオファーで粘着テープを販売
FiberFixは、非常に強力な粘着力を持つ修理テープを販売する企業です。同社は当初、Amazonなどのオンラインモールで商品を販売していました。しかし、オンラインモールでの販売では価格競争に陥りやすく、利益率が低くなりがちです。そこでFiberFixは、自社ECサイトでの販売を強化し、カートファネルを導入することで、顧客単価と利益率の向上を目指しました。
FiberFixのカートファネルで特筆すべきは、その巧みなオファー設計です。フロントエンド商品として1インチ幅のFiberFixを据え、「3つ購入するごとに、幅の違うテープを3本無料でプレゼント」という魅力的なオファーを展開しています。この「3つで5個分」というオファーは、顧客の「お得感」を効果的に刺激し、まとめ買いを促進する効果があります。さらに、1インチ幅のFiberFixを3個、6個、9個、12個、15個、30個と、様々な数量で購入できるオプションを提供しています。
最初の注文時に商品を選ばせる仕組みの設計も非常に巧みです。最初の注文時にいくつかの選択肢を与え、購入の数量をお客さんに選ばせていました。購入数量が増えるほど割引率が高くなるように設定されており、多くの顧客が真ん中の選択肢(9個)を選んでいました。これは行動経済学で有名なダン・アリエリーの「予想どおりに不合理」という本でも紹介されていた心理効果です。また、注文確認画面では「ヒートラップ」という耐熱版テープを半額の9.97ドルで追加購入できるオーダーバンプを提示しています。約30%の顧客がこのオファーに飛びついていたそうです。
さらにFiberFixは、複数のアップセル商品も効果的に配置しています。まず「スターターキット」という種類の違うテープの3つ詰め合わせセットを提案し、次に耐熱テープなど別のセット商品、最後にテープの保管用バッグを提案します。各アップセルページでは1セットか2セットかを選べるようになっており、2セットの方がよりお得になるよう設計されています。その結果、約19%の顧客がアップセル商品を追加購入したとのことです。
このようにカートファネルでたくさんのオファーを試した結果、FiberFixはAmazonでの販売価格12.99ドルに対し、カートファネル導入後は平均注文金額を74.97ドル(約6倍)にまで向上させることに成功しました。この事例から、魅力的なオファーと商品数量の選択肢、そして適切なタイミングでのアップセル提案が、顧客単価向上に大きく貢献することが分かります。特に物理的な商品を扱う場合、同じ商品の複数購入を促す戦略が非常に有効であることを、この事例は示唆しています。
事例2:Camping World – 人気商品をフロントエンドに据える
Camping Worldは、キャンピングカーから小物まで、キャンプに関連するあらゆる商品を取り扱う大手専門店です。同社が直面していた課題は、1万点以上もの商品を扱う中で、どの商品をフロントエンド商品としてカートファネルを構築すべきか、という点でした。この課題に対して同社は、徹底的なリサーチを行い、「最も売れている商品」を特定することから始めました。社員への聞き取りや実店舗での調査を重ねた結果、意外にも「溶けるトイレットペーパー」が最も売れている商品だということが判明したのです。
この発見を活かし、Camping Worldは「水に溶けるトイレットペーパーを4ロール、無料でプレゼント」という強力な無料オファーでカートファネルを構築しました。日本では当たり前の水に溶けるトイレットペーパーですが、海外では必ずしもそうではありません。そのため、キャンプやアウトドアを楽しむ人々にとって、この商品は非常に重宝されるものだったのです。同社はさらに、商品の使い方を説明する動画広告も制作し、商品への興味関心を効果的に高めることに成功しました。
Camping Worldの事例から学べる重要なポイントは、カートファネルの成否は適切なフロントエンド商品の選定にかかっているということです。たとえ多くの商品を扱う企業であっても、徹底的なリサーチによって「売れ筋商品」を見つけ出し、それをフロントエンド商品として活用することで、効果的なカートファネルを構築することができます。また、「無料オファー」が新規顧客獲得に非常に有効であることも、この事例は示しています。
事例3:Jamie Cross – 個人事業主でも成功できる!カートファネルの力
Jamie Crossは、オーガニックのボディローションバーを販売する個人事業主です。彼女のブランドはMIG Soap(ミグソープ)という名前で展開されています。ボディローションバーとは石けんのような固形タイプのボディローションのことです。Jamie Crossの事例が特に興味深いのは、個人事業主という小規模な事業者でありながら、カートファネルを効果的に活用して大きな成功を収めている点です。
Jamie Crossのカートファネルは、5分間のウェビナー形式の動画広告から始まります。この動画で商品の魅力を丁寧に訴求した後、商品セレクターで1個、3個、4個、6個から選べるオプションを提供しています。ここでも多くの顧客が、デフォルトで選択されている「3個」を選んでいるそうです。さらに、約4ドルの追加で配送を早めることができる「急ぎの配送オプション」をオーダーバンプとして提供しています。
アップセルの設計も非常に巧みです。最初のアップセルでは、通常34ドルのボディローションバーを1本25ドル、2本なら40ドルという割引価格で追加購入できるオファーを提示します。次のアップセルでは「フェイスローションバー」と美容液のセットを、通常38ドルのところを28ドル、2セットなら50ドルという特別価格で提案しています。「ボディ用を買ったら次は顔用もいかがですか?」というオファーの仕方もとても上手です。
これらの取り組みの結果、Jamie CrossはClickFunnelsのTwo Comma Club Awardを受賞するほどの成果を上げることに成功しました。この賞は100万ドル以上の売上を達成した事業者に贈られる賞です。つまり彼女はカートファネルを導入したことで、1億円以上の売上を達成したことになります。
ちなみに僕、石崎力也も2021年に日本人で初めてこの賞を受賞しました。僕の場合はオンラインコースの販売でしたが、Jamieと同じようにセールスファネルを使うことで、1億円以上の売上を達成しました。Jamieの事例は、個人事業主や小規模ビジネスでも、適切なカートファネルを構築することで大きな成果を上げられることを示しています。特に動画広告による商品価値の訴求と、段階的な価格設定による追加購入の促進が、売上向上に大きく貢献していることが分かります。
まとめ:カートファネルで売上アップを実現した3つの成功事例
ここまでカートファネルを活用して成功を収めた3つの事例を紹介してきました。最後に要点を4つにまとめました。
- カートファネルでは、魅力的なオファーと商品数量の選択肢、適切なタイミングでのアップセル提案が顧客単価向上に大きく貢献する。
- 物理的な商品を扱う場合は、同じ商品の複数購入を促す戦略が非常に有効である。
- 多くの商品を扱う企業でも、徹底的なリサーチによって「売れ筋商品」を見つけ出し、それをフロントエンド商品として活用することで効果的なカートファネルを構築できる。
- 個人事業主や小規模ビジネスでも、適切なカートファネルを構築することで大きな成果を上げられる。