子供をハンモックに入れてみました。寝るかと思ったら興奮してもっと揺らせと。はあ、僕の長い休日が始まりました。
12時間後。手洗いの洗濯を終えました。汗をダラダラと流しながらハンモックに揺られこの文章を書いています。15ペソ(30円くらい)のコーラを片手に。一昔前「ハンモックに揺られて時間を気にすることなく南の島で生活したくないですか?」みたいな情報商材がよく売れましたね。そんなクソな生活に憧れる人もネジが緩いけど、それを餌にして情報弱者から金を巻き上げる人もかなり趣味が悪いです。ハンモックに揺られ時間を気にすることなく南の島からこの文章を書いていますけど、この生活自体にバリューがあるなんて一切感じません。別になくても構いません。
生活リズムに緩急を出すために「無理矢理」南の島にやってきただけで、こんな生活が続くと思うとゾッとします。ハンモックに揺られたいなら東急ハンズで買ってきたヤツを家のどこかにぶら下げればいいだけの話です。南の島がいいならオキュラスリフトのヘッドマウントディスプレイを買って仮想現実の中でプーケットにでも行ってください。現地の海よりVRの方がよっぽど綺麗な海が見れます。え?現地の女の子と逢瀬をエンジョイしたい?大丈夫。ゴールドマンサックスの試算では2025年までにVR市場は9兆円にまで伸びるそうです。そのほとんどがエンタメからの収益なんですって。もちろん風俗産業も含まれます。VRで遠距離恋愛中の二人が発情し交わる時代がすぐそこまできています。南の島に住む小麦色の肌をした現地の女性と仮想セックスするビジネスが立ち上がるのは容易に想像できます。
ふと思ったんですけど、VR市場が仮に立ち上がったとしても外食産業にはほとんど影響がなさそうですね。外食産業というか「食全般」においてVRってほぼ無力ですね。そうか、旅行には南の島にきて美味しい料理を食べるという経験も込み込みなんですね。そしたら家でハンモック買ってVRでプーケットに行っても駄目なのか。現実に食感を刺激する体験がないから。
ま、いずれにせよ南の島なんてたいしたことありません。やってみればわかります。ようやく日本にもLLC文化が根付いてきたようです。マレーシアまでエアアジアで5000円で飛べる時代です。取り敢えず関空まで行ってしまえば南の島なんて一万円以下で行けます。シーズンオフ(2月と6月と11月)を狙えばもっと安く行けます。
行って、その体験のショボさに打ちのめされてみて下さい。「やる気のスイッチ」で有名な山崎拓巳さんにバリ島へ連れて行ってもらい、アマンダリやインターコンチネンタルを体験させてもらい、僕は打ちのめされました。ウブドの森に花火を打ち上げて、それを見て泣いている友人を見て、僕は心底情けない気持ちになりました。その時、友人は何を思ったのでしょうか。俺も年収3億円稼いで仲間たちとワイワイやりたい、とか?
シェアリングエコノミーの時代です。これまで高くて手を出せなかった車や家も1週間ほどなら簡単に借りられるようになりました。ウェストバンクーバーにあるお城みたいな家を丸借りしたことがあります。買うとしたら数百億の物件です。そこで何を思ったか。夜中怖すぎ。廊下の奥の部屋から電話が鳴りました。誰が出るんでしょうか。お城を内側からライトアップする要領で電気をパチパチと付けて、数分かけて未開の部屋へ到着。電気に出ると「あ、そうそうWi-Fiのパスワードは、、、」
そんなのメールでよこせ!
プールも1日で落ち葉だらけになりましたし、寝る前に全てのドアが施錠されているか確認するのに1時間かかりましたし、セキュリティが24時間ずっと1人や2人見回ってないと心配になるほど大きな家でした。なーんだ、豪邸ってこんなに面倒なんだ、と身に染みて理解しました。
何をやるにしても、体験程度でいいならその経済的コストはそれほど大きくありません。まずはお試しでいろいろやってみて下さい。やってみてそれを続けたければ本格的にお金を貯めて、所有するなり、継続するなりすればいいだけの話です。
僕らは家も車も(なんと免許も!)ありません。借金もローンもありません。
家族全員の荷物はたったの20キロです。資産価値のあるものは、お客さんからいただいた加賀友禅のハンカチと動画撮影用カメラのLUMIXくらいです。あとは明日にでも下取りに出さなきゃいけないようなユニクロのパンツや、息子が引っ張っりすぎてラッパーが着るようなダボダボなシャツしかありません。僕らにとって衣類は消耗品でしかないので、旅先で買って酷使して捨てる代物です。このリゾートにはパソコンすら持たずにやってきました。それでもなんとかやっていけるんです。どうせ買ってから後悔するものばかりなので、買うのがひどく億劫になりました。
まるでシンガポールのマーライオンを見るかのように、その体験のショボさにガッカリすることもたくさんあります。だから体験そのものに過剰な期待をするのもいつからかやめました。
本当に好きなことって、お金を貯めたりしてやるような代物ではないと思うんです。好きならもうやっている。
祖父に連れられて小学3年生の時に三国競艇場に行きました。競艇場で赤帽車のセタさんという人に出会いました。セタさんの所持金は300円。予想紙すら買えない軍資金です。300円でどんなギャンブルができるだろうから、子ども心に思いました。小学3年生の僕ですら2000円持っていました。今ならわかります。セタさんは競艇が好きなんです。
ハンモックが好きな人は、もう揺られています。現時点で揺られていない人は、たいしてハンモックが好きじゃないんです、きっと。
時間ができたら英語を勉強してみたい。お金があったら世界一周してみたい。自分にスキルがあれば起業してみたい。
うーん、好きならもうやっていると思うけどな。