酔っ払いたくなる理由。僕はお酒に弱いです。アルコール濃度5パーセントのサンミゲルビールを1本飲んでフラフラになり、6.9パーセントのレッドホースを飲み平衡感覚を失いコテージで転倒。
味も美味しいとは思わないし、酔っ払うと吐き気を催すので、飲んで良いことなんて一つもないように思えます。それでもたまに「今日は飲みたいな」と思う瞬間があるわけです。
サンプル数が少ないので、いつ僕が飲みたくなるのか自分でも分析できずにいましたが、最近ようやくわかった気がします。
奥さんが撮影に出ている間、僕は家で子守をしています。気温は35度。海のさざ波が聞こえる。赤ちゃんがベッドをクロールし近づいてくる。ポロシャツの襟についているボタンを噛み始めました。止めやがれ、も引き剥がすも直ぐにクロールし戻ってくる。コラ、と言うと泣き始める。お母さんはどこ、とダダをこねる。舘すすむさんの「バーチャルリアリティ入門」を枕元に戻し赤ちゃんを抱きます。現在午前8時。さっき水上ヴィラでスリーインワンの甘い(甘過ぎる)コーヒーと、たいして日の通っていないベーコンを挟んだブレッドを食べたばかり。1日が長い。奥さんが帰ってくると水着に着替え眼前のオーシャンに体を沈めます。独身なのか未亡人なのかわからないサーファー達が遠くの方で波乗りを楽しんでいます。レストランで「今日の波はどうだった?」とコミュニティの一員に聞かれても「いや、俺、子守で今日はサーフィンしないんだ」と返す日が続きます。まだ午後1時。1日が長い。ベッドに戻る。赤ちゃんがクロールしボタンを噛み出す。ベッドから抜け出し彼を抱き上げ窓際から海を眺める。満潮に近づく海はさっきよりも深さを増し、やはり先ほどと同じく引いては押してを繰り返しています。
「あぁ、今日はビールでも飲みたい」と僕は思うのです。
韓国人は若い子でもソジュの強い酒を飲みます。日本以上に労使関係が過酷だそうです。やってらんねえと思いながらもドロップアウトできない現状があります。そして、今日も酒が飲みたいと思っています。
「私のこと本当に愛してる?」と確認する時にはもう既に2人の関係には終止符が打たれています。周りからはいつも駄目な男ばかりを引っ張ってくる女と嘲笑されているのも知っている。でもやめられないの。そして、今日も酒が飲みたいと思っています。
お酒が欲しくなるタイミングって、こんな感じじゃないですか。良い時にお酒があるわけでもなく、悪い時にお酒があるわけでもなく。酒好きと酒嫌いがあるわけでもなく、飲みたいと思う瞬間の頻度に違いがあるだけです。僕はその頻度がめっきり少ないだけで、酒が嫌いなわけではありません。
つまりはそういうことなのです。