今回は、動画広告を作る際の2種類の戦略、アフィニティ・マーケティングとダイレクト・マーケティングについて解説します。この2種類の違いを知ることで、あなたの動画広告が何を目的とするのか、そしてどのように見込み客へ商品を届けるのか、目的と行動が一致するようになります。
動画広告を作る上で、あなたのブランドを間接的に広告するのか、商品を売るために直接的に広告するのかによって2種類の戦略に分けることができます。それがアフィニティ・マーケティングとダイレクト・マーケティングです。これらはあなたが動画広告を作る上で間違いやすいポイントです。これを間違えると全く効果の出ない動画広告を作ることになってしまうので、よく注意して聞いてください。では早速始めましょう。
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2つの広告タイプ【アフィニティ・マーケティングとダイレクト・マーケティング】
2つの違いを説明する前に、カミソリのブランドである「ダラーシェイブクラブ」のCMの例を出しましょう。
ダラーシェイブクラブのCEO、Michael Dubin(マイケル・デュビン)氏が「dollarshaveclub.comとは?月々1ドルで高品質のカミソリをあなたの家にお届けします。」と熱弁するCMです。何を売ろうとしているのか疑問に思うでしょうか?もちろん、そんなことはありませんよね。彼らはカミソリを売ろうとしています。これは非常に明白で疑問の余地がありません。
では逆に、何を売ろうとしているのかわからない広告もありますよね?そう、それこそがこのレクチャーでお伝えする内容です。これはアフィニティ・マーケティングと呼ばれるものと、ダイレクト・マーケティングと呼ばれるものとの違いです。この違いを説明することで、あなたのビジネスの広告戦略になぜこの違いが重要なのかを理解していただきたいと思います。
広告タイプ#1:ダイレクト・マーケティング
まず、ダイレクトマーケティングについて説明します。ダイレクトマーケティングとは、広告を見てすぐに行動を起こしてもらうためのマーケティングです。つまり、見込み客に広告を見てもらった後に、すぐに商品を購入してもらうことを目的としています。先ほど例に出した「ダラーシェイブクラブ」のCMは、ダイレクト・マーケティングに分類されます。
この種の動画広告には、クリックすると自社のウェブサイトに直接アクセスできるリンクが最後に付いていることが多いです。最近、インスタグラムでこのような広告が多いことにお気づきでしょう。インスタグラムの投稿から直接商品を購入してもらおうというものです。これは、ガジェットブランドのAnkerやメンズスキンケアのBULK HOMMEのようなD2C(ダイレクト・トゥ・コンシューマー)企業、つまり製造から販売まで一貫して行う企業に特に人気のある手法です。
僕らの動画広告もこのダイレクト・マーケティングに基づいて作っています。
これは僕が広告代理店の代表である吉野さん一緒に作った「YouTube広告マスタークラス」を売るための動画広告です。動画の中で商品の概要、手に入る結果、価格などを直球で解説しています。もちろん、動画の冒頭では視聴者が興味を持つような導入文を用意して、視聴者がスキップボタンを押すのを防ぐなど、沢山の工夫を入れています。
YouTube広告の出稿に興味があるお客さんがいれば、その場で販売ページを訪れて買っていきます。動画を見た人のうち何人がリンクをクリックして、そのうち何人が購入したのか?広告を継続するかの判断に必要なデータもきちんと出すことができます。なにより、広告が出たその場ですぐに商品が売れていくので、直接的で効果の高い方法です。
広告タイプ#2:アフィニティ・マーケティング
アフィニティ・マーケティングは、ダイレクト・マーケティングとは目的が大きく異なります。ダイレクトマーケティングでは今すぐ何かを買ってもらいたいと考えますが、アフィニティマーケティングでは、広告するブランドを、自分のライフスタイルやアイデンティティの一部として受け入れてもらいたいと考えます。すぐに行動を起こしてもらうようなものではありません。このタイプのマーケティングを採用しているブランドは、数千億円とは言わないまでも、数億円の価値があるのが普通です。NikeやAppleのような企業です。
例えばSerena Williams(セリーナ・ウィリアムズ)、Colin Kaepernick(コリン・ケーパーニック)、LeBron James(レブロン・ジェームズ)などを起用した刺激的なNikeのコマーシャルを見たときをイメージしてください。彼らの目的は、あなたがすぐにテレビを消して新しい靴を買うことではありません。むしろ、あなたとの間に感情的なつながりを築こうとしているのです。
直接的なメッセージがCMに含まれていなくとも、刺激的でクリエイティブな映像を見せることで、ブランドイメージを視聴者の記憶に刻み、親近感を高めることができるのです。だから刺激的なCMを記憶に植え付けられている状態で新しい靴が必要になったとき、「Nikeを買わなくちゃ」と思うようになります。さらにその靴を履くと、レブロンやセレナ、コリンとつながっているような気がするのです。特定の製品というよりも、イメージを購入しているのです。
Appleも同じです。皆さんの中にはApple製のノートパソコンを抱え、Apple製のiPhoneをポケットに入れて、さらにはApple製の時計を腕にしている人がいるかもしれません。またApple社が所有するBeats社のヘッドフォンでこれを聴いている人もいるかもしれません。かく言う僕も家にはiMacが2台あるし、定住する前のつい最近までMacBook Proを毎年のように買い替えていました。もうiPhone以外のスマホは使いたくないし、Apple Watchだってもう何本目だろうと毎回思うのです。ブランド物には興味のない僕も、Appleのブランド戦略にだけはやられてしまっているようです。
ほとんどの人は、初めて購入した製品を愛し、ロイヤルカスタマーになります。ロイヤルカスタマーとは、商品だけではなくその製品を作り出すメーカーに愛着を持ち、購入し続ける最上位の顧客ですね。だからあなたがApple社製の商品を使う理由も、ブランドに価値を感じているからだと予想されます。Appleがこれほどまでに成功している理由は、ブランドを中心とした文化を作り上げているからです。最近のコーヒーショップを見渡すと、多くの顧客が自分のお気に入りのコンピューターを広げています。彼らはコンピュータの無料広告をしているようなものです。これはアフィニティ・マーケティングの典型的な例です。
あなたが目指すのはアフィニティ・マーケティングではない
先ほど紹介した2つのアフィニティ・マーケティングの例は、地球上で最も大きなグローバル・ブランドの2つであることにお気づきでしょうか。なぜならこれは、資金を持っている巨大なブランドにのみ意味のあるマーケティングだからです。すぐには購入に結びつかない広告を作る、資金的な余裕があるからこそできるわけですね。
これをご覧になっている皆さんの中には、すでにビジネスを成功させている方も多いと思います。しかし1,000億ドル規模のブランドのために、ビデオを作っている方は恐らくいないと思います。僕がこの話をしたのは、前提を間違えた広告の例を出されることが多いからです。ビデオ広告の作り方をアドバイスしていると、NikeのCMなどを参考にしたり、OldSpiceがスーパーボウル用に作ったCMがとても面白かったりと紹介されることがあるんですね。
しかし、あなたが作るべき広告とNikeやOldSpiceが作る広告には大きな前提の違いがあります。その違いは次のようなものです。NikeとOldSpiceは、すでに僕たちの文化の一部となっているブランドと言っても過言ではありません。人々がこれらのブランドを楽しんでいるのは、ブランドがすでに確立されているからです。だからこそこれらのブランドは、広告で直接製品をアピールするのではなく、広告の中でクリエイティブで刺激的なことができるのです。
僕たちもかつては、アフィニティ・マーケティングの考え方を元に広告を出稿していたことがありました。YouTubeに出して人気だった動画をそのまま広告として出稿したんです。石崎力也という指名検索が増えたらいいなと思ったし、元々僕らのチャンネルで人気のあった動画なので、広告でも反応が取れるだろうと思いました。ですが結果は失敗。やはりダイレクト・マーケティングで出した直接コースを販売する広告ほど、大した効果が出ませんでした。アフィニティ・マーケティングは、既に誰もが名前を知ってるブランドを、さらにイメージアップさせるための戦略ですから無理もありません。
このレクチャーをご覧になっている方の多くは、すでに誰もが知っているようなブランドの広告を作っているわけではないと思われます。そのため、アフィニティ広告はほとんど意味がありません。僕らがやったようなアフィニティ・マーケティングでの失敗を繰り返さないように、ダイレクト・マーケティングを採用してください。あなたがアディダスのマーケティング部長なら別ですが。
まとめ:目指すべき広告タイプはダイレクト・マーケティング
さて、あなたが目指すべき広告タイプは理解していただけたでしょうか。ぜひ今までに見たコマーシャルで学んだことは、確実に忘れてくださいね。なぜなら、僕たちが人生で何度も目にしてきた広告の大半は、お金持ちの企業のために作られたアフィニティ広告だからです。そこで、テレビで見たことのある広告を真似するのではなく、視聴者の注意を引くだけではなく、すぐに顧客になってもらえるような目を引く広告を作るためのダイレクト・マーケティング戦術に注目してほしいと思います。
どうしても動画を作り始めると、シネマティックでクールな雰囲気のイメージ広告みたいなものを作りたくなります。分かります。僕も海外のビデオグラファーに感化されて、世界各地と撮りためたフッテージをカッコよく編集するというのをよくやりました。そこに自分の名前を添えて、世界中の人に見せたくなります。フワッとした雰囲気のアフィニティ・マーケティングに逃げずに、ダイレクト・マーケティングを採用したあなたの商品を売る直球の動画広告を作ってください。
もっと深く考えられるようになれば、成功したオンライン広告から成功法則を見いだせるようになれますよ。ここでお伝えしたことを忘れずに、動画広告の作り方について学びを深めていってくださいね。ここまでで何か質問はありますか?もし何かあれば、コメント欄でお知らせください。ではまたお会いしましょう。