今回のレクチャーでは、動画広告を作る前のリサーチ段階として、ユーザーへのインタビューで広告に役立つ情報を得る方法、なぜメソッドについて解説します。ユーザーへのインタビューで遭遇する問題に、表面的な回答しか得られないことがよく挙げられます。表面的な回答とは、例えばなぜこの商品が好きなのですかとユーザーに尋ねても、単に「良いから」「役に立つから」「かっこいいから」など抽象的な回答しかしてもらえないことを指します。
表面的な回答では、ユーザーの心の中にある具体的な気持ちを知ることができず、広告作りのための十分なリサーチをすることができません。インタビューなどで表面的な回答を得て、あなたはその回答を嬉しいと思うかもしれません。しかし、その回答はあなたのユーザーを理解するのに役立つでしょうか。ユーザーを理解する、そして、広告作りに有益な気づきを得るためにユーザーからの回答をもっと深く掘り下げる方法をお伝えします。
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表面的な回答を深掘ることで広告作りに役立つ情報を得る
ユーザーへのインタビューやリサーチを始めたばかりの頃は、優れたリサーチと表面レベルのリサーチの違いを理解するのは難しいかもしれません。しかし深いリサーチができなければ、ユーザーの表面上の答えを、広告のスクリプトを書く際に使用することになります。表面上の答えは、ユーザーのコアとなる動機や悩みに直結していないので、最終的に説得力のない広告が出来上がってしまいます。
説得力のある広告に繋がる有益な理由や気づきを、インタビューなどを通して得るためには、ユーザーが話してくれた1つ1つの回答を、より深く掘り下げる必要があります。良い回答を得られるかはあなたの力次第です。インタビューされた時、多くのユーザーは、表面的な回答が頭に浮かぶ傾向にあります。最初にユーザーが浮かべた回答は、ほとんどの場合、あまり深い答えにはならないでしょう。最初に得た回答を活用しながら、ユーザーの考えや気持ちについてもっと深く掘り下げるのが、インタビューしているあなたの役目となります。
なぜ?を繰り返す「なぜメソッド」で回答を深掘りする
ユーザーから表面的な答えが返ってきても、その答えを確実に深掘ることができる、シンプルな戦略をお伝えしましょう。その戦略こそ、なぜを繰り返して回答を深掘って行く、なぜメソッドです。僕は3児の父ですが、子供の学習にも似たようなプロセスがあることに気が付きました。
例えば、うちの息子が「僕もコーヒー飲みたいんだけど?」と聞いてきたら、僕は「子供はコーヒー飲んだらダメだよ」と言います。息子がすかさず「どうして子供はダメなの?」と言うと、「だって、コーヒーは大人の飲み物だから」と僕は答えます。これが1つ目のなぜ?です。それでも納得しない息子は「どうして、大人だけなの?」と食い下がります。これが2つ目のなぜ?です。このあたりから回答に困ってきますよね?僕は少しだけ考えてこう答えます。「子供が飲むと頭がブースト去れ過ぎちゃうからね」と。さて、次のなぜには何て答えましょうか。
子供が自分の周りの世界を理解するときに、なぜ?という質問を積み重ねることで平面的ではなく、立体的な視点から理解できるようになります。同じ方法は、トヨタ自動車でも「なぜなぜ分析」として使われていることで有名です。問題の特定に5回のなぜ?を繰り返して、解決策を探っていく方法です。英語圏でも5回のなぜ?という意味で、5 Whys(ファイブ・ワイズ)という名前で広く知られています。
ユーザーが最初に答えてくれる回答は、基本的にレベル1の深さしかありません。答えがどんな内容であっても、相手がなぜそのように感じているのかを知る必要があります。その真相に迫るために、ユーザーに回答の詳細を話してもらえるような質問をするのです。回答を深く掘り下げていくのです。ユーザーの回答を深掘るために、なぜそうなのかを聞いてください。なぜに答えてもらうことで、回答の深さはレベル2の深さになります。レベル2の深さの回答に、もう一度なぜと尋ねると、その回答はレベル3の深さになります。
なぜを尋ねることはとても重要です。何度でもなぜを繰り返しましょう。なぜとユーザーに問うのは、理由を聞きたいからです。理由のない回答は説得力に欠けてしまいます。なぜその回答になったのか、その理由の真相に迫らなければ、ユーザーから得た回答は、説得力のある広告作りには役に立ちません。レベル3の深掘りができて、はじめて広告に役立つ回答が得られると思ってください。
なぜを繰り返すことで、ユーザーがなぜに答えられない状態になったとしましょう。それは、あなたが十分に回答を深く掘り下げたことを示します。深掘りができたことは、あなたがユーザーの最も深い動機や気持ちに限りなく近い、貴重な情報を得られたことを意味します。
インタビューでなぜメソッドを使う際は言い回しが重要
ユーザーから得た回答が表面的であれば、なぜと尋ねて深掘りするのが大事と言いました。ここであなたに注意してほしいことがあります。なぜメソッドの名の通りになぜという言葉ばかりを使い、ユーザーへインタビューをしないということです。なぜ以外のさまざまな表現でも、なぜと同じ効果を得ることができます。なぜ?なぜ?なぜ?っと聞かれ続けたら、あなたは、イラッとしたり不快な気持ちになったりしませんか。そもそも人は理由を聞かれると、少し身構えてしまう傾向があります。なぜあなたが、なぜと質問をするのかと疑ってしまうのです。なぜ?なぜ?なぜ?と質問を続けるのは上手なインタビューではありません。
僕らはこの方法を商品アンケートにも採用しているので、言い回しの例としてご紹介します。
これは僕らの商品CashLabのアンケートで、実際にお客さんから送られてきた回答です。CashLabは、オンラインコースビジネスの作り方を教える体系的なコースで、月額払いのサブスクリプション制です。サブスクなので毎月満足して受講してもらえるコースにしていくために、受講者にTypeformを使ってアンケートを取り続けています。1つ目の質問は、CashLabに満足しているかを聞いています。次の質問はもう少し踏み込んで、他人に推薦する体裁でCashLabの良さを少し客観的に書いてもらいます。最後の質問では50文字以上という制限をつけて、お客さんからもっとお話を聞けるようにしています。
最初から突っ込んだ質問をしてしまうのではなく、表面的なことから順番に聞いていってください。僕らの例をお見せしましたがこれ以外にも質問の仕方は色々あるので、あなた自身も試しながら、自分にあった質問セットを作っていってください。
回答を深掘りしながらも、ユーザーを安心させることができるかはあなた次第です。「そのお話、もっと教えてもらえますか?」「それについてもっと知りたいです」という言葉でも回答を深掘ることはできます。ポイントは、実際に「なぜ」と言わなくても「なぜ」と聞く方法はたくさんあるということです。なぜを繰り返して回答を深掘っていく、なぜメソッドをインタビューで活用していきましょう。
まとめ:ユーザーの回答を深掘りし情報を得ることで、説得力のある広告が作れる
繰り返しになりますが、インタビューでユーザーから表面的な回答しか得られなければ、説得力のある広告は作ることができません。インタビューの際に、ユーザーから得られる最初の答えがどんなに浅くても、なぜメソッドを活用できればその答えを深く掘り下げることが可能です。
なぜメソッドを使用する際には、なぜを様々な言い回しで表現することがポイントとなります。相手にしつこいと思われないように質問の仕方にバリエーションを持たせてください。言い回しを研究して、自分の鉄板パターンを作りつつ、ユーザーとの会話量を増やしてリサーチを進めてください。ユーザーの回答を深掘りし、ユーザーの最も深い動機や気持ちを知ることが、説得力のある広告を作るための大きな一歩です。良い言い回しを思いついたら、ぜひコメント欄で教えてください。それではまたお会いしましょう。